朝井まかてのレビュー一覧
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幕末、長崎の油商・大浦屋の女あるじ、のちの貿易商・大浦慶の胸躍る生涯の物語である。
個人的に、ラストシーンが膝を打つほど決まっている作品は傑作だと思っている。本作はまさに膝を打つほど。胸アツでございました。
幕末のころ、いわば「女子はだまっとれ」という時代に、海の外の者たちと商売を始める──お慶とともに「どうやって!?」と胸をつかれ、「なんとかしたい」と願い、失敗し、商機を手に入れてホッとしたり。そんな思いを存分に楽しめる作品なのだ。
中盤から幕末でおなじみの面々の名前がにぎやかしていくのも楽しい。後半では、きっと朝井さんもお慶たちと別れるのが淋しくなっているんだなあとまで感じる愛おしい文章。 -
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NHKの人形劇『新八犬伝』観てたんだけど覚えてない。ただ、八犬士が持つ珠の文字「仁義礼智忠信孝悌」はあの番組で覚えた。そっか、曲亭馬琴さんが原作者なんだ。しかしなんとも精力的な執筆活動ではありませんか。筆が早いったって矢継ぎ早の創作。おまけに超几帳面で、徹底した校正は出版社泣かせ。妻の百はかなりの癇癪持ちとあるけど、馬琴の性格に対するストレスは相当なものだったんじゃないの。滝沢家再興へのこだわりは尋常ではないし、歳時における食などの支度も指示があまりに細かい。とはいえ、江戸読本を育んだあの気力は凄まじい。
PS これってタイトルと中身がどうなんだろう? -
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大河ドラマ、というよりは連続テレビ小説。
なんと激動の世の中を生きた画師であることよ。
生きるとはままならないなあ。
しゃあんめえ。
祈ることの尊さと描くことへの業がないまぜになって明治から大正、昭和という時代の荒波に揉まれている。こういう時代が有ったのだと、一口に語ることは簡単だけれど、社会の有り様というのはこうまでも変化してしまうものであるのだと驚愕する。
いま私が見ている景色、社会はほんの少し先にはまったく違ったものになっているかもしれない。
それでも生きていく。
醜かろうが、過去の己の無知に恥の念を覚えようが、圧倒的劣勢だろうが、誰かに嫌われようが。
しゃあんめえ、と唱えて、それ -
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幕末から明治にかけての過酷で混乱をきたした時代。
その時代を運命に翻弄されながらも懸命に生き抜いた、樋口一葉の師・歌人中島歌子の半生を綴った作品。
物語は歌子の弟子が、彼女の手記を読み返すという構成。
人気歌塾の主宰者として一世を風靡した彼女がどの様にして生き、何を思い胸に秘めてきたのかが記されていた。
無知なもので、中島歌子さんの事知らなかった〜。
「恋歌」はSNSでもよく見かけて、なんとなく気になってたので読んでみたのだけど、まさかこんな辛い内容だったとは。。
この時代には珍しい商家の娘・登世(歌子)と水戸藩の武士・林以徳の恋物語。
恋物語でもあり、幕末の内乱の多かった時代を描 -
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初まかて作品。
江戸城無血開城。言葉は知っているけど漠然としていたものが、大奥に焦点を当てて鮮明になりました。
大奥ものが好きで、さらに江戸城明け渡しの日の出来事ということで楽しみにして読み始めました。
自分も一緒に大奥に残っているように、登場人物たちと一緒にドキドキしながら読み進めました。
いつ官軍が来るかと思いながら、自分の身の上を打ち明ける夜の語らいの場面が1番心に残りました。
残念だったのは、自分の中の和服に関する知識が乏しく、これってどんな色?とか、どんな服?と逐一調べながらでないとわからなかった事です。改めて和服や色に関して調べて、きちんと知識を持って読むとより楽しめたな、と思 -
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朝井まかてさんの歴史小説ははずさない!
しっかり読ませてくれます。
「類」では森鴎外の末っ子、「眩」では葛飾北斎の娘、この「恋歌」では中島歌子、とあまり他の小説では描かれない人を主人公にして描くのがすごいなぁ、目の付け所が違うなと思います。
幕末というと坂本龍馬や新撰組が有名だけど、水戸藩の話というのは聞いたことがなく、この小説で初めて知りました。
水戸藩内での内乱の末、敗れた天狗党の妻子たちに行った仕打ちは読んでいて辛いものでした。
君にこそ恋しきふしは習つれ さらば忘るることまをしへよ
恋することを教えたのはあなたなのだから、どうか、お願いです、忘れ方も教えてください。
懸命に生きて -
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江戸時代の戯作者、曲亭馬琴の波乱万丈な生涯を描く。
第一章 ある立春 第二章 神の旅 第三章 戯作者
第四章 八本の矢 第五章 筆一本 第六章 天衣無縫
第七章 百年の後
主要参考文献有り。
9輯98巻106冊の読本『里見八犬伝』を28年かけて
完結させた、曲亭馬琴の生涯は、茨の道の如く。
家督を継ぐが、仕えた若君の癇症に耐えかね出奔。
紆余曲折を経て、山東京伝との出会いがその後の運命に。
蔦屋重三郎の耕書堂の手代になり、出版業界の内情を学ぶ。
そして戯作者となり、潤筆料を得るまでになっていった。
だが武士の誇りと拘りは山東京伝や葛飾北斎、様々な板元など
対人関係に仇をなす。また、常 -
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シーボルトの薬草園の園丁=お庭番となった熊吉を主人公とした、史実にフィクションを織り交ぜた時代小説。
熊吉の草木や彼の仕事に対する真摯な接し方に、心が和み「読んでいる身が浄化され」る。
シーボルトに敬愛の念を抱き、必死に彼のために熊吉は仕事をこなすが、台風により薬草園が甚大な被害を受ける。
熊吉が黙々と片付けをしていると、シーボルトが忌々しげに吐き出す。
「なにゆえ、やぱんの者は怒らぬのだ。怒りこそ闘いの力になるのであろうに、なにゆえ唯々諾々と受け入れる。・・・我々は常に自然を闘うことで知恵ば磨き、技を発達させてきた」と。
熊吉は目が歪み、天と地が揺れた様な気がした。
「先生にとって、自然は共