あらすじ
戦国の気風が残る江戸時代初期、徳川幕府公認の傾城町・吉原が誕生した。吉原一の大見世「西田屋」女将の花仍は、自身の商いは二の次で町のために奔走する夫・甚右衛門を支えながら、店を切り盛りしていた。幕府からの難題、遊女たちの色恋沙汰、陰で客を奪う歌舞伎の踊子や湯女らに悩まされながらも、やがて町の大事業へと乗り出していく――。時代小説の名手が、江戸随一の遊郭・吉原の黎明と、そこに生きる人々の悲喜交々を描く傑作長編。
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初めは日本橋にあった吉原が、新吉原として浅草に移転するまでの波瀾万丈な物語を、吉原一の大見世・西田屋の女将の花仍(かや)の視点から描く大作。
元吉原が始まったのが江戸時代初期、新吉原への移転が明暦の大火(1657年)以降なので、大河ドラマ『べらぼう』の舞台は新吉原ということになる。
花仍をはじめ、西田屋のトラ婆、清五郎、松葉屋の女将多可、三浦屋の女将久、若葉など、登場人物たちがなんとも魅力的で、そのどうにもならない運命に心が痛むが、惹かれてしまう。
江戸の大火は延宝から慶応のおよそ200 年間の間に22回も起きており、江戸はそのたび焼き尽くされた。それが吉原の運命も左右していく。
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江戸の傾城屋が結集し御免色里の元吉原を造り、大火を経て新吉原に移るという吉原の生い立ちを、一人の女将の視点で描いた大河作品。
他の時代小説では流行の発信源としての華やかさや、男女の感情に迫る舞台として扱われる吉原を、ここまで風情をもって描写した作品を他に知りません。
流石は朝井さんというべき素晴らしい一冊でした。
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なんだろうこれって、昨日も一気に読み終える金と銀、まさかやーあさいまかてをほんの1日で終えるとは。よっぽど面白くて朝井まかてが合うんだろうな、吉原に新吉原に街を一から作るという物語で、歴史も読めたし花魁の粋も素敵だな。甚右衛門の生き様が一本通る、死に際もだよ、貢献して最後はひっそりとか。清五郎にトラ婆にかやが死ぬ場面も全部出てきて、身近にあるのだよと教わったよ。桜も吉原に咲くから、凄いやり方で。
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戦国乱世が終わって、吉原が出来上がるまでの物語を一人の女将の目から描いた作品。
元々、新しいものが作り出されていく作品が大好きな私には最高に面白かったです。
葦しか生えず、水はけも悪い最悪の土地に売色の場所を作ろうという江戸幕府の思惑から始まった吉原の計画。
土地を埋め立て、ここで生きていくためのルールを定めて、ここへの力への入れ方は凄いなぁと思いながら読んでいました。
戦国の時代は終わって新しい時代を自分たちで作っていくのだという巨大なエネルギーと売られてきて色を売る女たちの哀しさ。その対比の見事なこと。
朝井さんの小説は本当に面白いです!
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江戸中に散っていた傾城の場をひとつに集めた「吉原」
大火事や幕府からの移転命令にもまけず
しぶとく生き残ってゆく吉原の姿を
ひとりの女将の目線で描いた作品
吉原って最初から浅草にあったわけじゃないんだ・・・
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吉原の西田屋の女将・花仍と、日本一の遊郭吉原の姿を描いた長編小説。鮮やかな筆致で遊女たちや吉原を創り上げた人たちの姿が描かれていて、歴史を学び直したくなった。
歴史を学ぶことが今、そしてこれからを考える何よりのヒントになるんじゃないかなと思います。
(歴史=暗記だと思ってしまってる学生、良い先生に出会って欲しいな、と、他人事みたいで申し訳ないけど、思います。。。)
途中から本の感想とずれまくっちゃった!!
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吉原が好きだ。
成り立ち、歴史、文化、とかく吉原という街そのものに興味がある。
今では(も?)ソープランド立ち並び、「堅気」の女には入りにくい街ではある。
道を歩けばまっすぐ歩いているはずなのに、大きくカーブして、何処にいるのかわからなくなる。
昔の姿を伝える見返り柳は代替わりし、角に建てられたという稲荷神社がかつてを偲ばせる。
吉原を行き来する人を見てきた大門もない。
しかし、そこにある歴史に惹きつけられる。
性産業そのものは、良いものとは思わない。
必要悪とも思わない。
今も昔も、女にとっての苦界が男にとっての楽園であるのなら、せめて、それが紛い物であったとしても華やかな誇りのある、そんな「悪所」であってほしい。
そう思うのは、現実を知らない人間の描くただの夢だろうか。
さて、本作では、まだ日本堤に吉原が来る前の話から始まる。
花仍(かよ)が桜田(千代田のお城付近)で西田屋の女将として花見に出かけ、乱闘騒ぎを起こすところから物語は始まる。
負けん気強く、直情径行。
突っ走るばかりの女将。
たくさんの女を見てきた。
まちづくりに奔走する甚右衛門とともに吉原を作ってきた。
決して順風満帆ではない。
人の死を見てきたし、汚いものも見てきた。
だが、尊敬する夫と夢を見、奔走したたまちづくりのなんと志高いことだろう。
遊女の立場ではなく、経営者の立場から見た本作は、吉原を舞台とした物語としては珍しい。
そこしか知らない、だからこそせめて、という生き方には悲しさも感じるが、今いる場所で必死になる姿に心が動かされてならない。
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吉原というと真っ先に花魁が道中を練り歩く様子が目に浮かびます。しかし、実際はどのような仕組みになっているのか、そこにいる人々はどのように過ごしているのか分からずにいましたが、この小説を読みその成り立ちも含め理解できました。
江戸時代の初め、城下と隔られた日本橋のはずれの町に位置する場所、吉原で遊廓を営んでいる西田屋の女将、かよ。彼女は幼少期に迷子か捨子かもわからず育った素性の持ち主ですが、主人の甚右衛門に拾われ育ち、女房になって間も無い。ずっと年上の甚右衛門は、売色稼業の吉原を発展させるために様々な見世を一ヶ所にまとめた場所を造り、他の町では売色が出来ないように公儀から許しを貰う。ここから始まる物語ですが、主人公のかよも含め、遊女やその周囲で働く様々な人物が個性豊かで、境遇が恵まれないことを踏まえながらも、生き生きとしていて惹き込まれます。
そして、その生き方が“外道”という言葉が当てはまるほど壮絶な道を歩んだ親仁さん(ととさん)、甚右衛門の偉業が吉原の興盛の基礎を造ったことに間違いないのでした。
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花街としての吉原を江戸初期の幕府に認めさせた実質的創始者である庄司甚右衛門の貰い子で後に女房となった花仍の一代記。
売色御免(専売)の公許を受け、侍の世から商人の世に変わる中、幾度の大火事や公儀の命令による移転、裏で売色をする風呂屋や茶屋との争いなどの困難と戦いながら、太夫を擁する花街としての矜持を失わず、吉原を他と同格の「町」として築き上げた甚右衛門とそれを支えた花仍。
町を支える大女将としての生を全うし、孫たちに見守られて迎える眠るような最期は、激動の生涯の末のご褒美だろうか。
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江戸の初期、吉原を幕府公認の傾城街にしようと働きかけた者達がいた。大見世の女将の花よの一代記。幼い頃迷い子だったかよを引き取り、後に夫となった甚右衛門と共に吉原を造り、何人もの妓達をまとめて見世を切り盛りするかよ。だが生来の気の強さで周りとぶつかる事も多い。そんなかよを叱咤しつつ導いてくれるやり手婆や揚げ屋の女将、番頭など人に恵まれながら成長する。
後の吉原の安定が、意外にもこんなに多くの苦労があってこそだったのだと知る事ができる。女郎を主人公にした物は多いけど、見世の女将を主人公にした話は珍しいのでは。それも吉原が出来たばかりの頃の話で読み応えあった。
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吉原が舞台なので、遊女たちの色恋沙汰が淡々と続く小説かとの思惑は、見事に外れた(良い方に)。
主人公とも言うべき西田屋の女将花仍も夫の甚右衛門も狂言回しとも呼ぶべき役割で、主役は傾城町吉原そのものではないだろうか。
著者は、江戸随一の遊郭となった吉原をその黎明期から緻密なタッチで描き出し、吉原の変遷や遊女たちの実態を、読者の目の前に開かせてくれた。
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202208/とても面白かった!さすが朝井まかて先生!これも名作!素人考えなのは承知の上で、もっともっと読みたいので、年月とばさずに日常や再建のとことか細かく書かれた上下巻にして欲しかった…。
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売色御免/吉原町普請/木遣り唄/星の下/
湯女/香華/宿願/不夜城
「吉原」が誕生した経緯。その後の幕府との駆け引きを吉原が生き残る方向へ向けるための思案。何となく栄華を誇っていたと思っていたけれど、それなりの努力があってこそだったのですね。春を売らせる男たちにも矜持があった。そういう人もいたかもしれない……
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大変失礼な言い方だけど、最初あんまり期待しないで読み始めたのだけれど、期待?に反して、面白かった。志を持っていれば、仕事に貴賤はないのだと思った。
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吉原がどう作り上げられたのか…
それに関わる老若男女の苦労人たちの強い思い。
色恋の話にはさほど触れず、どのように吉原があのような傾城街に出来上がったのか、その時代の流れが興味深く綴られている。
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初の朝井まかてさんをaudibleで。
吉原と言っても性描写や色恋沙汰はなく、遊女にはスポットが当てられてない。
同業者と争いつつも、幕府から命じられる移転や夜間営業の禁止の無理難題、密かに客をとる歌舞妓の踊子や湯女への対応などを共に乗り越えて吉原を繁栄させていくお話。
個人的には経営のことよりも、同業の女将や番頭の清五郎、血のつながらない家族たちとの人間味あるやり取りがよかった。
鬼花仍と呼ばれて誰からも嫁にもらうことを拒まれた伝説をもつのがおもしろい。
ストーリー自体は、死別、大火事、経営に影響あがあった事だけをかいつまんで、時代が大きく飛ぶので印象に残りにくかった。
章が変わると孫がいて、ひ孫がいて、と前章からの時間経過があっという間。
売色について誰も嫌悪感がなく当然の職として描かれているのが不思議な感覚だった。
Posted by ブクログ
江戸幕府開闢後間もなく、幕府の許しを得て吉原遊郭を創設した庄司甚右衛門の妻として妓楼西田屋の女将となった花仍の目を通して語られる、吉原とそこに生きる遊女たちの物語。
江戸歌舞伎の始まり、猿若勘三郎や伊達騒動の殿様なんかも登場するし、明暦の大火にも見舞われて、なかなかダイナミックな時代の動き、変わり目を感じる話でした。
ちょっと終盤の展開が飛ばし過ぎなのが勿体ない感じもありますが、遊女若菜とその忘れ形見の鈴、その娘菜緒、菜緒の子の小吉と、血は繋がらないけど、心の葛藤を越えた絆に結ばれた家族に囲まれて、花仍の賑やかな晩年は安らいで見えました。