【感想・ネタバレ】白光のレビュー

あらすじ

日本初のイコン画家・山下りん その情熱と波瀾の生涯!
明治13年にロシアに留学しイコンを学ぶ。一途さゆえ周囲と衝突し芸術と信仰のはざまでもがきながら生きた女性を描く感動長編。

「絵師になりたき一念どうにも抑え難く」茨城県笠間を飛び出した15歳の山下りん。東京で工部美術学校に入学を果たし、西洋画の道を究めようと決意する。ロシヤ正教の宣教師ニコライに導かれ、明治13年、聖像画制作を学ぶため帝政ロシヤに渡るのだが――情熱に従って生きた日本初のイコン画家を描く圧巻長編。解説・酒井順子

※この電子書籍は2021年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

恥ずかしながら、イコンというものの存在を初めて知りました。
わたしは絵は描けませんが、これまで漠然と「絵を描くということは芸術」なのだと思っていたので、主人公が思うように絵を描かせてもらえず苦しんでいる間、そのように仕向ける指導者の想いはまったく理解できませんでした。しかし主人公が突然「信仰」を理解するシーンは、それまでの価値観が剥ぎ取られるような、それでいてすべてが腑に落ち、憎しみが削げ落ちて愛の光に包まれるような、インパクトのあるものでした。
読後半年以上経ちましたが、あの表現し難い衝撃のようなものは胸に残っています。
中途半端でなく信仰に生きることを貫く人の、凄みのようなものを感じました。

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2025年07月26日

Posted by ブクログ

山下りんという聖像画師の一生を描き切った、読み応えのある本でした。
りんが壁にぶつかりながらも、次第に画師として1本の道をしっかりと形作っていく様子に胸打たれました。
人の人生を小説という形で味わえる、最高の作品だと思います。読めて良かったです。

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2025年02月13日

Posted by ブクログ

幕末に生まれ、絵を描くことに大いなる情熱を燃やし、単身故郷を飛び出した山下りん。
維新により回天成ったとは言え先例のない女性洋画家を目指し、あらゆる可能性に挑み険しい道を切り開いて行った先にあったのは、自らが求めた光溢れる西洋画とは似ても似つかない陰鬱な宗教画。

後に日本正教会でただひたすらにイコン画を描き続けた彼女が果たして本当に望んでいたものが何だったのか、想像すると何だかとても切なくなった。

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2024年11月06日

Posted by ブクログ

序章 紅茶と酒とタマ―トゥ/開化いたしたく候/
工部美術学校/絵筆を持つ尼僧たち/分かれ道/
名も無き者は/ニコライ堂の鐘の音/終章 復活祭

絵師になりたい りんの眼鏡に適う師匠はなかなかいない
西洋画を極めようとするも 留学先ではイコンしか学べない
彼女のじりじりと焦りに似た気持ちが伝わってくる。
絵を学ぶための手段に見えた信仰が少しずつ心になっていくようにも見える。
そんな事をしてもいいの?と思う時もあったけれど、絵画への望みを見つめ続ける彼女がまぶしい

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2024年06月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 文明開化、下級武士の娘が絵画を学ぶ苦労が読み取れる。お雇い外国人の表と裏、「先進国」での日本人の扱われ方、日本での女性の地位など、さまざまなことが書かれている。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

知らなかった。こんな女の人が日本にいたなんて。
朝井まかての本によく抱く感慨ではあるけれど、これは群を抜いていた。

前半は痛快だ。
ご一新直後の明治、「わたくしも開化致したく候」と書き置きを残して笠間から江戸まで歩き通す。連れ戻されても絵が描きたいという熱は冷めない。
東京ではできたばかりの芸術大学を試験だけでもと受けて合格し、ついには通うことになる。
やがて師を失い、友に誘われ教会に入り、ついにはそこからロシアへ留学する。

ロシアでの日々は読むこちらも苦しかった。冬の暗さや寒さ、押し込められたような空気がりんをますます追い詰める。彼女の姿は青ざめ彷徨う宗教画の登場人物そのものだ。

「聖像画は芸術であってはなりません」というオリガ姉の言葉は、りんだけでなく私にもショックだった。美術館でいわゆる宗教画を観てもなにも響いてこないと感じるのは、このあたりに理由があるような、と思い当たったからだ。
しかし一方で、知人の芸術家が言っていた言葉がよみがえる。「東南アジアとかインドの石窟寺院や遺跡のレリーフや仏像・神像の無名性に惹かれる。個性が没した先の個性に興味がある」という主旨だった。
若き頃のりんは、ロシアで学べると思った西欧画(ルネサンスのイタリア画)から遠ざけられて憤慨する。まずは型があってこそ、万人が見てその時々に彼・彼女らの心持ちを映すものであるべきで、そこに個人の思い入れや考えは邪魔である、という教えに気付けない。
いや、彼女には夢と希望があったのだ。華やかで生き生きした、美しい絵画を描きたかった。その技術をモノにしたかった。それを言葉もわからず押さえつけられては、誰だって反発するだろう。
この点ーーーなぜりんにじゅうぶんなロシア語教育を施してから発たせなかったのか、行きの船での仕打ちーーーについてはニコライ師の判断を疑う。

最近世界史の教科書的なものを読んでいるので、プロテスタント、カトリック、正教会の考え方の違いやそれらが引き起こした国同士のあれこれに深く納得がいった。ニコライ師の考え方が正教の考え方だとするなら、正教は日本人向きだ。「沈黙」の宣教師たちとの考え方・感じ方の違いの大きさに驚く。かねてから「人は生まれながらに罪を背負っている」という考え方がどうにも腑に落ちなかったのだが、正教はそうはとらえておらず、性善説だというのも視界が明るくなるようだった。落語の人間感に通ずるところがある。

歳を重ね、一度は放擲した聖像画に戻ってからのりんが、じわじわと信仰について、描くということについて腹落ちしていく過程が生々しい。
芸術とはなんだろう、と考え込まされる。

長生きしたりんが次々人を見送って、でも穏やかに郷里で暮らす姿にホッとする。ロシアという国の越し方にも思いを馳せた。地政的にも難しい国だ。

大河か朝ドラになってもおかしくない、波瀾万丈な山下りんの人生であった。

直後に読み始めた「猫の刻参り〜三島屋変調百物語」の冒頭、冨次郎がりんと同じようなことを言われるのでぶんぶん頷いてしまった。洋の東西を問わず、絵の習得の肝は同じらしい。

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2025年02月20日

Posted by ブクログ

大河ドラマ、というよりは連続テレビ小説。
なんと激動の世の中を生きた画師であることよ。
生きるとはままならないなあ。
しゃあんめえ。
祈ることの尊さと描くことへの業がないまぜになって明治から大正、昭和という時代の荒波に揉まれている。こういう時代が有ったのだと、一口に語ることは簡単だけれど、社会の有り様というのはこうまでも変化してしまうものであるのだと驚愕する。

いま私が見ている景色、社会はほんの少し先にはまったく違ったものになっているかもしれない。

それでも生きていく。
醜かろうが、過去の己の無知に恥の念を覚えようが、圧倒的劣勢だろうが、誰かに嫌われようが。

しゃあんめえ、と唱えて、それでも歩いていく。
生きるとはそういうことかもしれない。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

日本初のイコン画家、それも女性画家の物語。
ただひたすらに絵を描くことを愛し、求めて求めて求めて、突き進んで、ロシア留学までして、帰国してからも、という物語。物事を突き進むすさまじさに息をのむ。
正直、「これは主人公・りんが悪いのでは?」と思うシーンも多々ある。それくらいでなければ、己を突き進めないのだとも思わされる。そしてりんはロシアである疑問を抱くのだが、その謎が後半になって紐解かれていくにつれ、絵画と時代と宗教と、それらの意味深さに胸が熱くなるのだ。
骨太の物語を求めておられるかたへ、胸を張ってオススメできる1冊である。

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2024年05月31日

Posted by ブクログ

選んだ読みたい本が、思わぬところでシンクロしていたという興奮をくれた「白光」。ロシア正教のイコン画家・山下りんの生涯を描きます。

自分の心が求めるものに人生を捧げる覚悟を持ち、そのためならばまず行動という人間の山下りん。彼女の心にたぎる熱意が走りすぎて、多くの軋轢を生み出してしまう。そのことに気づくのは、失ってしまってから。

熱意があればこそ、りんを支えてくれる存在や手助けしてくれる存在もあるのですが、大きすぎる故に持て余されてしまうことも事実。安易ではあるけども、時代が違えば、彼女と周囲の人間の関係性も違ったものになっていたはず。
互いに尊敬し、互いの長所短所を慮り、終生の友人となれたはずではないでしょうか


りん自身が終生の道であると思い定めた画業。それが覚束なくなってから、これまでを振り返り、多くの人々との関わりに感謝することができたのは、我執からの解放のように思えて美しさもあるけども、悲しみもあるように思いました。

いつも今いる場所から離れた時に、そこにいることの意義を知る。それを手遅れと諦めずに、手遅れであろうとも、失敗であろうとも、経験から何かを得てきた得ることを諦めなかったから、物語終盤の透徹さにつながっていったのだろうと思います。

『グッドバイ』に続いての朝井まかて。
困難と不屈の女丈夫でした『白光』も。

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2024年04月26日

Posted by ブクログ

面白かったんだけど、ずーっと重い、苦しい話だった。あまり好きになれない主人公だったな。

「道を知るというは、重荷を背負うことにございます」

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2024年03月26日

Posted by ブクログ

江戸から東京へ移り変わるとき。
貧乏藩士の娘「りん」は絵で身をたてるために
ひたすら邁進する

ロシアへ行き、やがてニコライ堂のイコン作家となるが
時代はやがて日露戦争へ・・

激動の人生を送ったひとりの女性を描いた重厚な作品

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2025年12月23日

Posted by ブクログ

画家山下りんの波瀾万丈の人生。
ブレずに生きるとは、なんと窮屈なものなのか。頑ななほど縛りはキツくなり、他人から見れば常識に外れる。「絵師になる」という思いを遂げるため、なりふり構わぬ行動のその先で彼女が得たものはなんだったのか。
死の間際、多くの人が自分に正直に生きれば良かったと思うらしい。彼女は81年の生涯を閉じる時、人生をどう振り返っただろうか。

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2024年12月27日

Posted by ブクログ

実はラグーザお玉の話と間違えて手を出した。
明治時代・女性画家・渡欧…
経歴もちょっとかすってるっぽいですが
こちらはロシアに留学して
イコン制作で多くの作品を残した人でした。

山下りんさん、なかなかの気丈夫さんで
留学先の修道院でも
言葉もわからないのに納得するまで激論。
西洋絵画を学べると思って行ったはずが
模写させられるのはロシア正教のイコンばかり。
(教科書に載ってた、あの平面的なモザイク画?)
そりゃ腹も立ちますわ。

宗教画に美は不要、という修道女たちの考えもわかる。
逆に信仰心のない人間でも
心を込めて描かれた宗教画を見て
グッとくることもあるのが難しいところ。

帰国してからは、ロシアの政変と
日本の軍国化に巻き込まれ
彼女自身も絵で名をなすことへの渇望と
信仰心との間で悩んだり。
波乱の人生を追体験する物語でした。

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2024年06月28日

Posted by ブクログ

イコン画というものをこの本を読んで初めて知った。

たまたまだけど、今見てる朝ドラの主人公と重なる部分もありました。(本書の感想では無いですが)

読むのに時間がかかった1冊。

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2024年06月10日

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