朝井まかてのレビュー一覧

  • 最悪の将軍

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    第五代将軍徳川綱吉、と聞くと思い浮かぶのは生類憐みの令。
    歴史の授業でしか知識がなかったのだが、この作品で、悩み、決意し、様々な思いを抱きながら、ただひたすらに政に邁進した姿を見せてもらえたように感じる。
    武士が、戦のない世を続けていくことの難しさ、いびつさを、改めて思う。
    武ではなく文で治めることを目指したこと、犬にフォーカスされがちだが、慈悲の心、命を大切にしたいという強い思いから令を発したことなど、新しい視点で綱吉を見て感情移入してしまった。

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    2021年07月27日
  • すかたん

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    しばらくぶりに読む、朝井まかてさんの作品。
    筋立の確かさとリズムの良い文章は常のごとく、そこに商売を巡る騒動といくつかの恋が重なり、気がつけば物語の世界にすっかり入り込んでいた。登場人物がみな魅力的で生き生きとしているからか、誰の気持ちもよく分かる気がして、時代物なのに、同じ時間・空間にいるような隔てのなさがある。
    重さと軽さのバランスが絶妙。

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    2021年07月25日
  • 雲上雲下

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    「草どん」と呼ばれる一本の草が子狐に話をせがまれ、次々と昔懐かしい民話や昔話を語る。
    浦島太郎やおむすびころりんとか傘地蔵、かぐや姫や桃太郎も。童話本などで記憶にある話とは少し違い、朝井まかて風昔話集。
    かと思っていたら、章の三で、雲上と雲下が交錯し、俄然様相が一変する。
    この小説は、お伽噺を題材に、それらの話が現代では歪められたり、忘れ去られていくことへの著者の危機感を著したものだった。
    作中人物に語らせる。
    「今どき、薪割りや草履編みなんぞと言うても通じねえもの。年寄りも結局、子らの喜ぶ新しいもんを与えて機嫌を取る。若い者らに合わせるので、精一杯だ」
    さらに、現代の精神的に余裕のない世情を

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    2021年07月13日
  • 福袋

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    売れない役者、湯屋の娘、絵描き・・・等々
    江戸の市井に生きる人々を描いた短編集

    どの登場人物も懸命に生きていて
    その懸命さが可笑しみを誘う

    じみじみと楽しい1冊

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    2021年06月24日
  • 雲上雲下

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    草どんの語る話はいずれも魅力たっぷり。

    福耳彦命の話はイマイチ乗れなかったですが、天上界に既に神はいないということは、何となく得心出来てしまった。
    明日彦は今、何をしているのだろうか。

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    2021年06月06日
  • 雲上雲下

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    章ノ一・小さき者たち
    草どんと、子狐/団子地蔵/粒や/亀の身上がり/猫寺
    章ノ二・勇の者たち
    通り過ぎる者/お花/湖へ/小太郎
    章ノ三・物語の果て
    草どんと、子狐と山姥/神々の庭/空の下

    長い年月、何をすることもなく目の前の景色を眺めて時を過ごしていた草どん。「お話し」を語り始めれば、次々と想いの底から浮かんでくる。
    まさかのファンタジーを楽しく懐かしく読んでいたのに、もう終わってしまった。
    世界は少しずつ変わっていくけれど、変わらないものが一つでもあれば、それはとても嬉しいことでした。

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    2021年04月16日
  • 雲上雲下

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    どこかのランキング企画で目に留まって、文庫化待ちでチェックしていたもの。本作者の”~西鶴”も面白かったし、ってことで。最初は、良く知られた昔話をちょっとアレンジして、それを作中作風に語り聞かせという体で紡いでいくのかと思っていたら、途中からだいぶ雰囲気が変わっていくことに。語り手自らの物語が最後に描かれて、ラスト、語り継がれるべき童話が失われつつあることに対する警鐘が鳴らされる。壮大な結構。身につまされるものもあった。

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    2021年04月05日
  • 御松茸騒動

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    主人公の上から目線 見下した感 
    清く正しくが 必ずしも歓迎されない社会

    コミュニケーション下手で頭脳明晰な主人公が
    人間味ある成長をしてく

    幸せって地位でも名誉でもなく
    他人ではなくその人自身が幸せと思うことやなー

    大殿 素晴らしい。
    もっと大殿の考えを聞きたかった

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    2021年03月26日
  • 眩(新潮文庫)

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    江戸時代の暮らしぶり、浮世絵を生業とする人々の生活が伝わってくる作品。後から葛飾北斎や葛飾応為の作品と合わせてみると、なお染み入る。「吉原格子先之図」と「夜桜美人図」は、その繊細な美しさに溜息が漏れてしまった。

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    2021年03月18日
  • 悪玉伝

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    これは・・・忖度。

    そりゃご政道は綺麗ごとでは済まないでしょうし、忠相の推察通りならそれは私利私欲ではないのだろうけど、吉兵衛の立場に立ってみれば何たる理不尽、不正義、悪逆非道。色々あっても概ね評価の高い将軍吉宗や大岡越前が何故に?と悲嘆にくれる思いです。(それだけ面白かった、と言うことです。念のため。)

    唐金屋の大義は何だったんでしょうかね。商人のメンツとありますが、もしや単なる親馬鹿ではないのでしょうが。。。都市再開発のための地上げですか?


    とっても不思議ちゃんのお瑠璃が最後に少し、救いになりました。

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    2021年03月17日
  • 悪玉伝

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    第一章 満中陰 第二章 甘藷と桜 第三章 白洲
    第四章 鬼門 第五章 依怙の沙汰 第六章 辰巳屋一件
    第七章 波紋 第八章 弁財天

    悪玉の一代記と思っていたら、もっと悪い奴がいっぱい出てきた。吉兵衛は「悪玉で無い」と言えないとは思うけどね。

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    2021年01月25日
  • 悪玉伝

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    大阪商人の跡目争い。
    大阪東町奉行の裁きで一件落着した…はずだったが・・。

    何故か将軍・吉宗直々の声がかりで、江戸にて再審の運びとなる。

    背後で蠢く大きな力、
    そして、
    それぞれの思惑とは…



    大阪、京を股にかけ、湯水の如く銀子を使い放蕩の限りを尽くし、己の身代を食いつぶす主人公・木津屋吉兵衛は、生家である薪問屋・辰巳屋を継いだ実兄・久座衛門の急死の知らせを受け駆けつけるが、かねてより反りの合わない辰巳屋大番頭・与兵衛が全てを取り仕切り、吉兵衛を蚊帳の外へ追いやる。

    兄の娘・伊波の婿にと養子に迎えていた乙之助を操り、辰巳屋の身代を我が物にすべく策を弄する与兵衛だったが、吉兵衛によって

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    2021年01月16日
  • 最悪の将軍

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    綱吉の小説を初めてしっかり読んだ。愚かな将軍として描かれているものにしか触れたことがない分、新鮮だった。綱吉の思いや賢さに周りの理解が届かなかったのか。今の世の中なら当たり前に通用する考えが通用しない時代だったのか。

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    2021年01月15日
  • 残り者

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    大奥最後の日に残った5人の奥女中の会話で彩られる本作。

    一人称である「りつ」の目線で物語が描かれるが、1つの会話から枝が広がり話題がコロコロと転がっていく。テンポは良くないのだが、この感じが「りつ」の控えめでありながらも思慮深く武家ならではの芯の強い性格を色濃く反映しており、また話の流れを崩さずに史実を読者に伝えていく形式が非常に上手い。

    大奥でしか生きてこなかった人が急に外の世界に出される。加えて逆賊の一味という刻印を背負っていく。歴史を学ぶ際に彼女らの立場に立って考えたことはなかったが、非常に残酷で恐怖の状況である。それでも前に進まなければならない、皆同じ立場なのだから、と対局的に場を

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    2021年01月09日
  • すかたん

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    とってもよかった~!
    夜更けに読み始めて、そのまま読んでしまった。軽快な恋愛ものでありつつ、舞台である大阪の人たちが好みそうな勧善懲悪ものでもある。
    かっこつけたキラーフレーズとか、取り澄ました一文とかがあるわけじゃないのに、ああすきだなあと思わされる文章だ。朝井まかて、やはりとてもすき。

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    2020年12月30日
  • 阿蘭陀西鶴

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    教科書に出てきた江戸時代の文化人…ほどの知識しかなかったが、テレビで井原西鶴について知り興味を持ってたどり着いた本。
    よくありがちな調子のいい道楽者で豪傑みたいな人物像を想像してたけど、物語の主人公である盲目の娘と同様にページが進むにつれ西鶴の情の深さやユーモアのある生き様に魅せられた。
    また読みながら家の中の様子、台所風景が目に浮かぶ美しい文章だった。
    西鶴のみならず江戸時代の文芸をもっと知りたいと思った。

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    2020年12月29日
  • 福袋

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    ラジオ深夜便 ラジオ文芸館
    暮れ花火
    ガッテンの小野さん朗読(^_^;)
    なんか変だなぁって思ったのは一瞬
    たちまち登場人物が生きて語り出します

    以前に読んだ「百日紅」を思い出す
    北斎の娘も絵師だったもんね
    カッコいいですね
    江戸の人々って魅力的です


    2022/4
    前回は朗読で一部を↑今回は改めて文字で全体を
    生き生きとした江戸の人々がいい感じ
    現在もこんな時間が何処かで流れてるかもしれないけど
    やっぱり江戸という時代が面白い
    人間じゃない筆が語る話よかったな

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    2022年04月24日
  • 銀の猫

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    江戸時代の介護のお話。当時は長男が親の世話を最後までみるから家督を譲られるということを知った。お金持ちは介護を今でいうヘルパーさんに頼み、彼女がやさしく対処するなかでのお話。人に優しくできる人は何らかの痛みを知っている人だということも描かれている。

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    2021年08月22日
  • 落陽(祥伝社文庫)

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    明治天皇の崩御後
    その「御霊」を祀るために東京に作られた「神宮」

    150年後の「杜」のために尽力する人々。
    それを見守る新聞記者

    武士の時代であった江戸時代から、文明開化の明治へ。
    明治とはどんな時代だったのか
    そして明治天皇はどんな思いで時代を過ごしたのか

    今まで考えてみたこともなかった内容で
    いろいろ調べてみたくなりました。

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    2020年09月22日
  • 先生のお庭番

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    ネタバレ

    2020/9/21
    私もしぼると先生がいい人なのか悪い人なのか結論を付けられぬまま本を閉じた。
    うーん…と思ってたけどでも、人ってそうやんな。
    いいとこばかりの聖人もおらんし、極悪人にもたぶんいいとこはあるんやろう。
    いい悪いの判定も人によって違うし。
    先生は確かに妻子を愛してたし、草木も愛してた。
    自然は制圧するもんやし、虫の声は雑音やから殺してしまえと思ってても。
    思ったよりドライにいろんなものを諦めて捨てて行っても。
    みんな連れて行けばいいと思ってたけど、そんな簡単にはいかないんだな。
    友人付き合いしていた人や教え子のような人たちが死んだり失脚したりしてたのはどう思ってたのかな。
    やぱん

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    2020年09月21日