朝井まかてのレビュー一覧
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「草どん」と呼ばれる一本の草が子狐に話をせがまれ、次々と昔懐かしい民話や昔話を語る。
浦島太郎やおむすびころりんとか傘地蔵、かぐや姫や桃太郎も。童話本などで記憶にある話とは少し違い、朝井まかて風昔話集。
かと思っていたら、章の三で、雲上と雲下が交錯し、俄然様相が一変する。
この小説は、お伽噺を題材に、それらの話が現代では歪められたり、忘れ去られていくことへの著者の危機感を著したものだった。
作中人物に語らせる。
「今どき、薪割りや草履編みなんぞと言うても通じねえもの。年寄りも結局、子らの喜ぶ新しいもんを与えて機嫌を取る。若い者らに合わせるので、精一杯だ」
さらに、現代の精神的に余裕のない世情を -
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大阪商人の跡目争い。
大阪東町奉行の裁きで一件落着した…はずだったが・・。
何故か将軍・吉宗直々の声がかりで、江戸にて再審の運びとなる。
背後で蠢く大きな力、
そして、
それぞれの思惑とは…
大阪、京を股にかけ、湯水の如く銀子を使い放蕩の限りを尽くし、己の身代を食いつぶす主人公・木津屋吉兵衛は、生家である薪問屋・辰巳屋を継いだ実兄・久座衛門の急死の知らせを受け駆けつけるが、かねてより反りの合わない辰巳屋大番頭・与兵衛が全てを取り仕切り、吉兵衛を蚊帳の外へ追いやる。
兄の娘・伊波の婿にと養子に迎えていた乙之助を操り、辰巳屋の身代を我が物にすべく策を弄する与兵衛だったが、吉兵衛によって -
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大奥最後の日に残った5人の奥女中の会話で彩られる本作。
一人称である「りつ」の目線で物語が描かれるが、1つの会話から枝が広がり話題がコロコロと転がっていく。テンポは良くないのだが、この感じが「りつ」の控えめでありながらも思慮深く武家ならではの芯の強い性格を色濃く反映しており、また話の流れを崩さずに史実を読者に伝えていく形式が非常に上手い。
大奥でしか生きてこなかった人が急に外の世界に出される。加えて逆賊の一味という刻印を背負っていく。歴史を学ぶ際に彼女らの立場に立って考えたことはなかったが、非常に残酷で恐怖の状況である。それでも前に進まなければならない、皆同じ立場なのだから、と対局的に場を -
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ネタバレ2020/9/21
私もしぼると先生がいい人なのか悪い人なのか結論を付けられぬまま本を閉じた。
うーん…と思ってたけどでも、人ってそうやんな。
いいとこばかりの聖人もおらんし、極悪人にもたぶんいいとこはあるんやろう。
いい悪いの判定も人によって違うし。
先生は確かに妻子を愛してたし、草木も愛してた。
自然は制圧するもんやし、虫の声は雑音やから殺してしまえと思ってても。
思ったよりドライにいろんなものを諦めて捨てて行っても。
みんな連れて行けばいいと思ってたけど、そんな簡単にはいかないんだな。
友人付き合いしていた人や教え子のような人たちが死んだり失脚したりしてたのはどう思ってたのかな。
やぱん