朝井まかてのレビュー一覧
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柳宗悦の家で女中として働くサチの見た、柳家の暮らし、宗悦と彼の友人である河井寛次郎、濱田庄司との交流、民藝運動の歩みが描かれる。日常生活の中の道具に美を見出し、その美しさを世に伝えようとした彼らの活動。そのために気に入った道具を好きに買うのだが、そのためには勿論資金が必要。稼ぐためには働かないと公言する宗悦を、妻である兼子が歌って稼いで支えている。兼子さんはパワフルで潔く、濃やかな気遣いのできるとても魅力的な女性である。
兼子さん含め、作る料理がとても美味しそう。そしてとても贅沢である。旬の食材、当時一般的だったとは思えない肉や乳製品。洋食のメニューも豊富で、ご相伴にあずかりたいと何度も思った。
サチと一緒に働く女中のばあやが、微妙にサチをいじめたりするのだが、サチがさっさと扱いをマスターしてしまい、上手くやっていくのがおかしかった。 -
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一時は近世の実在人物を描いた歴史小説が多かったまかてさん、2023年の『どら蔵』に続く(間に『グロリアソサエテ』が入ってますが)、原点回帰的な人情物の時代小説~連作短編~です。
主人公の水茶屋・ささげやの女将のお玉は予知能力者。とは言え、ささやかな能力で、手に触ることによってその人の数年後の姿が思い浮かぶと言うレベル。持ち込まれる悩みも左程の事は無く、予知能力はあくまで背景です。物語は亭主を事故で亡くし苦戦するお玉と、それを取り巻く人々の助け合いを描く人情物の時代小説です。違和感を感じさせない話の持って行き方や、季節感の織り込み方など流石に慣れたものです。
ただ、ちょっと人名に苦戦。最初に登場した時に名前が明かされず、次回で明らかになる例が多く、途中で少々混乱してしまいました。 -
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朝井まかて『眩』。
朝井まかて作品、初読み。
葛飾北斎の娘・お栄こと、葛飾応為。
北斎の娘として、父を支えながら、その才能に葛藤しながら、絵師として、自らの画風を見出していく…
善治郎との叶わぬ恋、甥・時太郎の起こした不始末への尻拭い。
なかなか知ることもなかった、葛飾北斎の娘・応為。葛飾北斎自体、浮世絵師であることと『富獄三十六景』程度くらいしか知らないが…
江戸っ子の小気味よさが感じられる。
最後に自分の画風にたどりつけて、よかった。
支え続けるだけの人生だけではなく…
しかし、時太郎だけは…
いつまで経っても…
ろくな最後は迎えられないんだろうが…
お栄には長澤まさみがぴったりだったと。
ずーっと長澤まさみだった。
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タイトルと帯に惹かれて。
帯には「根づかせたい、日本の花を 運びたい、あなたのために」と書いてある。
私は植物が大好きなので、植物関係で時代ものの小説なんてたまらんのだ。
開国前の長崎。
タイトルの先生というのはシーボルト。
そう言えば昔長崎に行った時にシーボルトの何かがあったような…行かなかったけれど。
なのでシーボルトって名前は知ってるけど何した人?状態で読み始めた。
とはいえ主人公はシーボルトではなくそのお庭番。
それぞれのキャラクターも良くてストーリーも気持ちよく進んで面白かった。
ただちょっと最後はかけ足気味というか、これで終わりかという物足りなさがあったかなぁ。
もうちょっと、最後のあたりの展開をがっつりと読みたかった…。
まあそんなわがまま心は出ちゃったけども、面白かった!
朝井まかては3作目かなあ?
結構好きな作家さんかも。 -
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ネタバレ大河べらぼうが始まった1月末ごろに読んだ時には、なかなか進まず断念していた本作。
フル視聴後にもう一度手に取るとスルスル読めました。
登場人物の多くが知っている人になり、役者の顔も浮かぶので読みやすくなりました。
今の朝ドラばけばけにも通じるところがありますが、武家というのはしきたりも家督のことも、難しいものだと思いました。子供が無事に成長することも難しい時代にあって、後継がいなくなれば身内の子供を養子にしたり株を買ったり。。
出版社が変わりながらも28年もかけて、視力を失いながら口述も活用して長編小説を完成させたとのこと、里見八犬伝に俄然興味が沸く。いつか読んでみたい作品です。
ちょっと調べただけでは、馬琴が奉公先でうけた暴行によりつけられたアザが、八犬士のアザにつながったことが史実かどうか判別できませんでしたが、そこに胸を打たれました。 -
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朝井まかてさんは初めて読む作家さんだ。きっかけはなんだったろうか。。忘れてしまった。それだけ積んどく期間がながかった。
徳川五代将軍綱吉と御台所の物語。四代将軍家綱が薨去するところから物語が始まる。綱吉が主人公はとても目新しい。時代小説としては、儒学の思想が色濃い。文治政治推進として堀田正俊の抜擢による綱吉将軍時代の最初期の政治から始まる。その後、親政期を経て側用人牧野、柳沢の時代へ29年の治世が綱吉目線とそれを精神的に支える妻の目線を交錯させるように描いている。
封建制という今と違う社会であるので将軍の考えていることを下層へどう伝えていくか。宮廷政治化する江戸城内の雰囲気も良く分かったが、綱吉個人の考えと老中、奉行さらには庶民の思いの乖離を綱吉は嘆くのだが、伝え方にも問題はなかったのか自身への振り返りの少なさが小説としての表現に歯がゆさがあった。
この小説は、江戸城内だけが舞台だ。とにかく城内から動かない。最後の最後、御台所が増上寺境内にて柳沢吉保会話を交わすところが城外でのシーンで印象深い。ただ、全体的に思考小説というべきか。将軍綱吉の覚悟のみが際立つ内容だった。
最新の史実研究が反映されているので犬公方、生類憐みの令、貨幣対策など今とは違う評価の元、内容が構成され主人公の思考が紡がれているので江戸時代前中期を学び直すという点では驚きも多かった。