あらすじ
私、四十になったら死ぬの。松井須磨子の後を継ぐと目された女優、伊澤蘭奢が、口癖の通り早逝した。そして集まった四人の男。愛人兼パトロンである実業家の内藤、蘭奢が人妻だった頃からの恋人、徳川夢声、サロンに出入りする帝大生の福田、そして生き別れの息子、佐喜雄。彼らそれぞれが見た蘭奢の姿が、一人の女の像を結び始める――。男たちを幻惑しながらもひとすじに生きたある女優の肖像。
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Posted by ブクログ
今より女性が真っ直ぐに夢を追うのが難しい時代に女優という道を選んだ蘭奢と彼女を取り巻く男達の物語。
世間の目も生活も厳しかったろうに、自分の才を信じて母や妻という肩書きを捨てた蘭奢のなんて強いこと、他の女性にはない輝きを持ってたからこそ、蘭奢と同じように才能や高い志を持った男達が彼女に惹かれていったんだろうなぁ。
かなり脚色は加えられてると思うけど、かつての日本にこんな凛々しく強い生き方をしていた女性がいたのかという驚きとそれにも関わらず知名度が決して高いわけじゃないという驚き。
個人的に夢声(敏雄)と蘭奢(繁)の関係性が1番すき。
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Nからの招待状/丸髷の細君/イジャラン/茉莉花/
焦土の貴婦人/逆光線/手紙/桜の枝の面影
後の記――あとがきにかえて
伊澤蘭奢 四人の男たちを通して見る彼女はそれぞれに違う。それが一人の女の複雑さを見せる。
女優でなくても、誰に対しても同じ面しか見せてない人は滅多にいない気がする。相手が変われば自分も変わる、きっと
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好き勝手に読み始めた代償または対価
明治時代
亡くなった女優 伊澤蘭奢
彼女の愛人や恋人、息子の四人が顔を合わせる場面から始まり
各章で各々が蘭奢との接点を振り返る。
ちょうど三谷幸喜さんの映画(謎の女とその恋人たちが振り返る話)が公開してた頃、亡くなった女優の謎(自殺か他殺か)、一人の女性をめぐり関わった人によって印象が様々に変わるような話を勝手に期待して手に取る。
他の作品名の中に「眩」があり、ドラマ版を見ようとしてたので何かの縁だと購入した。
関係性によって見え方が変わりはしたのだけど、途中本人目線のパートもあったので
途中からは気にせずにいた。
サスペンス要素は無いとわかり読むのを少し止め、あとがきを読んだり出てくる人たちについて調べる時間を取る。
皆さん有名な方々だったと知らず、そこから読み方が変わる。ちょっと調べただけでは出てこない部分をつなげて想像して埋めてくれていることに気づく
何より最近出た本だと分かっていても「当時の表現」が隅々まで出てくるため、(当時がどうだったかまではわからないものの)明治の空気を感じながら歴史の隙間を覗いているような読書だった。
蘭奢が人妻だった頃からの恋人・徳川夢声
冒頭の今では態度がでかい毒を持った人柄だけど学生時代に蘭奢の色気に翻弄されている姿の対比がなんか良かった。
途中までフィクションとして読んでたからか調べれば何かしら過去の出来事が見られるのは不思議な感じ。
Posted by ブクログ
大正時代のお話で、当時のことや言葉の知識があまりないので最初はとっつきにくいと感じた。読んでいくうちに少しずつ馴染んでくる。
実在していた方の小説をどうやって書いているのかがすごく気になった。
演じるということに全てを込めている所がかっこいいと思った。
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大正時代を、時代を切り拓いた人の物語でした。
朝井まかてさんは、私たちが知らなかった人たちの人生に焦点をあててくれて、本当にうれしい。
牧野富太郎さんの物語も、読みたい。
Posted by ブクログ
朝井氏の大正ロマンものである。
女優・井澤蘭奢にまつわる短編集。大正ロマン味たっぷり。言葉遣いから各種読み方まで大正である。文体も大正。江戸モノの朝井氏に慣れている身としては、冒頭から挫折しかかったものの、そのうちに慣れるだろうとページを手繰っていったのである。活劇、演劇、当時の女性のありかたなど、どのページをめくっても大正の風をかんじられる作品である。
あとは、いかに読者が文体に慣れ楽しめるかの技量にかかっているといえよう。
大正ロマンがお好きな方にオススメである。