朝井まかてのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ本作は、長崎の三女傑の一人、茶葉商人の大浦慶を描いた歴史小説です(ちなみに残りの二人はシーボルトの娘で医師の楠本イネ、ロシア語を極めロシア人専用ホテルなどで繁盛した道永栄)。
・・・
で、やはり人物がダントツに面白い。
幕末に商家の一人娘として生まれたものの、祖父が跡継ぎたる父を見限り、孫の慶へ英才教育を施すという背景もあります。この慶が、落ち目の家業である油商ではなく、当時藩の直轄だったオランダとの交易にどうにかして食い込もうと奮闘します。
ちなみに、お慶さん、驚きのどストレート発言が信条。
せっかく婿をとったのに、数日で離縁したいと周囲に漏らす。それも、「これはダメな男」だとの勘。 -
Posted by ブクログ
江戸幕府開闢後間もなく、幕府の許しを得て吉原遊郭を創設した庄司甚右衛門の妻として妓楼西田屋の女将となった花仍の目を通して語られる、吉原とそこに生きる遊女たちの物語。
江戸歌舞伎の始まり、猿若勘三郎や伊達騒動の殿様なんかも登場するし、明暦の大火にも見舞われて、なかなかダイナミックな時代の動き、変わり目を感じる話でした。
ちょっと終盤の展開が飛ばし過ぎなのが勿体ない感じもありますが、遊女若菜とその忘れ形見の鈴、その娘菜緒、菜緒の子の小吉と、血は繋がらないけど、心の葛藤を越えた絆に結ばれた家族に囲まれて、花仍の賑やかな晩年は安らいで見えました。 -
Posted by ブクログ
北斎の娘、葛飾應爲(お栄)の一生。8割が北斎の晩年の足跡とお栄の関係ということで物足りない感じが続く中、友であり懸想相手の英泉(善治郎)の死や北斎の死を挟んで自ら絵師として大きく一歩を踏み出す姿に最終的には引き込まれた。
言い方は難しいが、愛する父北斎が彼女の重石になっていたのかと感じた。北斎が長生きでなかったら、應爲ももっと多くの名作を残していたのだろうか。
本作では甥の時次郎がキーとなっている。読み手としては何ともムカつく出来損ないの甥で厄病神である一方で、最後に見せたお栄と時次郎の互いへの親族愛のようなものを見ると血の繋がりの良さと厄介さをより感じた。また、今読んでいる北斎にまつわる -
Posted by ブクログ
シーボルトつながりの本は、これで何冊目だろうか?
この作家さんの描く世界は丹念に積み上げた史実を、、素敵な物語に仕上げています。
出島のシーボルトの植物園に出入りの植木屋から専属の職人をと依頼があった。
そこで決められたのが一番年下の熊吉。
先輩の職人たちは皆外国人のもとで働きたくはなかったのであった。
熊吉、実は蘭語を習いたいと心のうちで密かに野望を持っていたのだった。
熊吉はそのまじめな働きぶりと、工夫を重ねた植物園の造園方法で一目置かれる。
熊吉、バタビア人のオルソン、シーボルトの日本人妻お滝は仲良くなり共に食事もするように。
才能も機転も聞くシーボルトは、幕府の要人らの受けも良い