朝井まかてのレビュー一覧
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上方言葉がぽんぽん飛び出て、でっちや商人が出てきて、上方落語みたいだった。風景描写や年中行事、野菜のことなど、大阪通になれるくらい詳しく書いてあって、面白い。
大阪に来たばっかりの他所の人とか、詳しくなりたい人とか、これを読んだらいいと思う。
大阪の風情を書きたかったのかな、というところで、思っていたより恋愛要素は薄かった。商人としての生き方とか、主人公の自分を励ます言葉とか、さりげない言葉にはっとする、胸に刺さる書き味があって、この人の魅力だなあと思う。
たんかきるところとか、主人公の亡き夫への気持ちとか、ここぞ、というところの聞かせ方がうまい。江戸時代の話だけど、夫婦や子ども、独り身の話などはいまにも通じるところがあった。
上方言葉の意味がじんわり染み込む、まったりとした、江戸時代の大阪の風情を味わえる小説。 -
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江戸から明治へ時代が変わる、150年程も前の大奥が舞台。だけど、これだけ時が経ち、技術も科学も医学も、あらゆることが進化し、女性が働くことが当たり前になった今でも、変わらないことが多いんだなあと思った。
女が集まるところで起こる、嫉妬・足の引っ張り合い(まあ、これは男世界での権力争いも同じことなのだろうけど)。男が起こす戦争に翻弄される女と子供。
解説には、この本は「女の居場所の物語」「戦争と政治に居場所を奪われた女の物語」だと書いてあったけど、そうだなあと思う。そして、そう言う意味でも、今もこの時代も、女性にとって同じだな、と感じる。
男性の中には、そんなことはないと思う人も多いと思うけど、今の時代であっても、女性が1人で自分の足で立って生きていくのは、やはり男性よりは大変なことだし、政治でも経済でも、女性が男性と同じように、中心で動かす力を持つのは、まだまだ先だな、と思うし。
でも、だからこそ、将軍の寵愛を求めて、男性に寄りかかって生きていく為に、女だらけの世界で争っていた印象で語られやすい大奥の女性達が、自分の働きで自分の生活を立て、自分の足で立っていることに、生き甲斐や誇りを持っていたんだと、改めて気づかされた、この本は面白かったな、と思う。
そして、いつの時代も、皆、色々な理由から、経済的にも気持ち(言動)的にも、自由に生きられない人が多くて、周りに忖度せず、自由に生きている人は、輝いて見えて憧れるんだな、と思った。大奥でも、ふきが人気があったように。 -
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去年、NHKの明治神宮の森という番組や
昆虫写真家の佐藤岳彦氏の 写真展
「 明治神宮の森 」を見に行って、明治神宮の森の豊かさに驚いた。そこには何千、何百種もの昆虫や粘菌、きのこが存在していて、観て観たいと思った。しかも、原生林ではなく、全て人工林でできていると知って、この森の成り立ちにすごく興味を持った。明治神宮の森の成り立ちや、歴史をもっと知りたいと思っていた時に、平成から令和へ時代が移り変わり、そういえば明治天皇や大正天皇の時の代替わりはどんなだったか知らない、当然生まれていないからだけど、いろんなことが知りたくなってたときにこの本 落陽 に出会った。 明治天皇の人となりをうかがい知ることがなかったが、読んでみてほんの少しでもどういう天皇だったか、触れてみると、だから、日本の皇室が今ここにまで発展し慕われているんだなという思いになった。明治神宮の森がなぜあんなにも豊かな森なのか、見えない力が存在する感じがするのは、明治時代とゆかりがあるからだ。
明治維新の頃の激動や、大正、昭和へと激動の時代を経て今日の新しい時代を迎えた時、天皇という国の象徴がどれだけ偉大で崇高であること、いい国だと思った。 さすが、朝井まかてさんだなと思った。 -
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若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれた三人組も今や三十路前。
お以乃、お志花、お蝶は、ある日江戸から伊勢へと旅立った。
それも、抜け詣り!
立場は違えど、家に、境遇に鬱々としたものを抱える三人が、
東海道を旅し、様々な事件に巻き込まれる、道中記。
一膳めし屋のお以乃、御家人の妻お志花、小間物屋の女主人お蝶。
かれこれ半年ぶりの再会が伊勢への抜け詣りとなったのですが、
十八、九歳頃につるんでいた時とは異なり、それぞれの立場の
違い、抱えている問題があります。それでも性格は変わらない。
道中、それが原因で反目し合ったりもするのですが、
いざ事件に巻き込まれると、過去のようにそれぞれの性格と特性を
活かして一致団結する姿は、なかなかのもの。
老夫婦を助ける人情物、恋に身を焦がす恋愛物、賭博場での
立ち回り有りのアクション物と、バラエティーな内容です。
それでいて、江戸、とりわけ東海道の風俗、伊勢詣りの様子等、
きちんと描写されているところは、さすが。
他の登場人物も良かった。特に、柄杓作りの正ちゃん(^^♪
洒脱なご隠居一行も・・・彼等のように将来、三人組がまた、
仲良くお伊勢詣りに出掛けられたら良いなぁと思いました。
しゃんしゃんと♪ -
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テレビドラマの放送が始まった。
書名は知っていたけれど、読んだことがなかったので、ドラマ第一話を見た。
騒々しくて、内容もガチャガチャしていて、正直、なんじゃこりゃ、と思った。
「昔はいけてたのに」という思いは、もちろん江戸の人にだってあったのだろうけれど、表現がそのまんま。
ネオ時代劇(ミュージカルでもなんでもありのエンタメ時代劇)かと思ったのだ。
それで、第一話で見るのをやめた。
でもー、なぜか原作を読んでみようと思い立ってしまったのだ。
お伊勢参りのガールズ・ロードムービーといった趣の小説。
読んでみると、だんだん猪鹿蝶の三人に愛着がわいてくるから不思議。
三人が自分の境遇を振り返り、自分が行くべき道をそれぞれ納得して進んでいくように変化していく。
端的に言えば、二十八の三人(現代の年齢感覚だとアラフォーくらいにあたるだろう)が、本当の大人の女になっていくお話、と言えるだろうか。
ここ辺りが丁寧描いてあって、納得して受け入れられるからだろう。
特に、男勝りのお以乃の、次郎長との恋と別れはいい。
時を重ねることによって見えてくる人間の多面性みたいなものに着目しているのも面白い。
自分にも、友にも、「昔から変わらないなあ」という面があれば、「前はそんなじゃなかったのに」という面を見出したりする。
ちょっとしたことだけど、それが人物像のリアリティにつながっているのかな、と思う。