朝井まかてのレビュー一覧

  • 悪玉伝

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    大坂の商家の後継ぎ問題に大坂町奉行だけでなく幕府の中枢まで関与するなんて壮大なフィクションだなと思っていたら、後書によると詳細は別として大筋は史実だったのですね。
    銀を基準とした商人の町 大坂と金が流通する武家社会の江戸との間で発生する、両替差益による経済の浮沈を巡る攻防が興味深い。
    現代に生きる自分としては商人側を応援したくなりますが、幕府体制の安定が第一義である武家の理屈も理解できます。
    そんな中で、大岡越前守が裁きの名手としてではなく、苦悩する役人として描かれているところも良かった。
    司馬遼太郎賞受賞に納得です。

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    2023年06月01日
  • 朝星夜星

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    極貧の家に生まれた丈吉は阿蘭陀船で調理を学び、幕末の長崎で本邦初の洋食屋を始める。
    長崎で若き五代友厚、岩崎弥太郎、陸奥宗光らの知遇を得、五代の勧めで大阪でホテルを開業し、大阪経済界の大立者となっていく。

    民間の立場で国家に貢献したいという熱意は時代の空気か。
    不平等条約を背景に、政治家、実業家たちの気概も熱い。

    妻ゆきの視点で書かれる本書は、同時に草野家の家族の物語でもある。

    まだ「人生五十年」の時代なのか、大きな仕事をした人々はみな50前後でこの世を去り、草野家縁者の命も短い。

    言葉のやり取りなど、作者の大阪人らしさが本書のところどころに顔を出す。

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    2023年05月31日
  • 落花狼藉

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    吉原の西田屋の女将・花仍と、日本一の遊郭吉原の姿を描いた長編小説。鮮やかな筆致で遊女たちや吉原を創り上げた人たちの姿が描かれていて、歴史を学び直したくなった。
    歴史を学ぶことが今、そしてこれからを考える何よりのヒントになるんじゃないかなと思います。
    (歴史=暗記だと思ってしまってる学生、良い先生に出会って欲しいな、と、他人事みたいで申し訳ないけど、思います。。。)
    途中から本の感想とずれまくっちゃった!!

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    2023年05月07日
  • 最悪の将軍

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    犬公方などとあだ名される江戸の五代将軍徳川綱吉の話。
    何となく知られた人物を、意外な側面から違った評価をら加えて描く手法、大好きです。

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    2023年05月07日
  • 先生のお庭番

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    ネタバレ

    「らんまん」関連ということで。シーボルト先生のお庭番が主人公の物語。どちらかというと淡々と進んでいくんだけど、最後に大事件が・・・。あまり史実を知らなかったけど、真実はどうだったのかね。
    ラストシーンで登場した「日本植物誌」が、翌朝の「らんまん」に登場してびっくりしたわ!オタクサの絵がきれいでした。
    朝井まかてさんは初めて読んだけどなかなかいいね。他の作品も読んでみよう。

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    2023年05月07日
  • ちゃんちゃら

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    江戸時代の庭師の話。悪役が出てきて、勧善懲悪の期待が高まっていく。ところが終盤に身内が黒幕だったことが判明するというまさかの展開。勧善懲悪の爽快感が無くなったと思ったら、主人公・ちゃらが、、、ところが最後は、、、終盤は話が大きく動きます。面白かった。

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    2023年04月15日
  • すかたん

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    武士の後家が生きていくために大坂の青物問屋に女中奉公に上がり、慣れない風習と仕事に戸惑いつつも市場構造の改革を目指す若旦那を支える話。
    一言で言えばこんな感じですが、若旦那は信念と人柄だけで暴走するタイプだし、主人公の知里も最初の頃は単なる使えない女子衆だし、お決まりの敵役もなかなか巧みで一筋縄ではいかないところに加え、御家さんや志乃さんといった格好いい女性達の存在が物語を引き締めている。
    当時の大坂の様子が窺えるところも良し。

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    2023年04月09日
  • 朝星夜星

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    日本初の洋食屋「自由亭」の誕生物語。
    料理人である草野丈吉の妻ユキの目線で描かれているところが、より物語に入りやすくさせているように感じた。
    明治時代の長崎、土佐、大阪の著名人もたくさん登場して、激動の時代の歴史がリアルに感じられる。
    しかし、この時代のユキのような生き方は、とてもじゃないけど出来そうにないなと思った。
    色んな意味でとても強い女性!

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    2023年04月05日
  • 落陽(祥伝社文庫)

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    明治神宮造営の物語。
    あの神宮の森が、実は人工の森で、しかも大正に作られたとは、にわかには信じられないような、そんな事実のお話。
    造園にも、明治大正の新聞記者にも、思い入れがなかったので、読み通すのに少し苦戦した。

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    2023年03月21日
  • 恋歌

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     水戸藩の武士以徳に嫁いだ、江戸の商家の娘登世の物語。   
     恋歌を読むことによって、日本史の勉強をしていたのに忘れてしまった事柄を記憶に残せるように思う。例えば、桜田門外の変については、経緯や天狗党が関わっていたことは全く覚えていなかった。単語だけ覚えて、その由来まで学ばなかったからかもしれない。
     水戸藩の様子についても全く知らず、天狗党と諸生党の対立と天狗党の乱の発生の様子についても興味深く読む事ができた。

     以徳の妹てつの言動によって、武家と商家の違いと水戸藩の質実剛健さを知ることができた。
     大日本史の編纂によって他藩より税金が重かった事が天狗党の乱の一因となっている。高邁な目的

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    2023年03月09日
  • 残り者

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    おお!! 5人の残り者各々が主人公の短編が、ストーリーとしては繋がっていて、非常に読み進めやすかった。大奥ってどうも興味をそそられる!! クセ強のキャラ揃い、なかでもふき殿最高(^^)最後の最後もいい終わり方だった!!

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    2023年02月24日
  • 先生のお庭番

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    長崎の出島でのシーボルト先生のお庭番熊吉の物語。熊吉の気持ちを所々切なく思った。

    江戸時代の奉公の様子、当時の日本人とシーボルト先生の考えの違い等を知る事ができて、面白く読めた。

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    2023年02月21日
  • 落花狼藉

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    遊女・遊廓モノでは珍しく、遊廓の経営者を描いた作品。吉原の創成期の話。終盤に菱川師宣や松尾芭蕉が登場するのはご愛嬌でしょうか。

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    2023年01月10日
  • 落花狼藉

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    吉原が好きだ。
    成り立ち、歴史、文化、とかく吉原という街そのものに興味がある。
    今では(も?)ソープランド立ち並び、「堅気」の女には入りにくい街ではある。
    道を歩けばまっすぐ歩いているはずなのに、大きくカーブして、何処にいるのかわからなくなる。
    昔の姿を伝える見返り柳は代替わりし、角に建てられたという稲荷神社がかつてを偲ばせる。
    吉原を行き来する人を見てきた大門もない。
    しかし、そこにある歴史に惹きつけられる。

    性産業そのものは、良いものとは思わない。
    必要悪とも思わない。
    今も昔も、女にとっての苦界が男にとっての楽園であるのなら、せめて、それが紛い物であったとしても華やかな誇りのある、そん

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    2023年01月09日
  • すかたん

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    主人公・知里は江戸っ子。藩主の大坂城代赴任に伴い、藩士の夫と共に大坂で暮らすようになるが、一年ほどで夫は病で亡くなる。ひょんなことから青物問屋「河内屋」の上女中となる。そこで遊び人で問題児の若旦那が起こす色んな問題に巻き込まれながらも、若旦那に惹かれていく。憎めない人柄の若旦那と知里がどうなっていくのかと終盤は一気読みでした。知った地名が沢山出てくるし、上方の言葉が心地良い。とても面白かったです。

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    2023年01月02日
  • 落陽(祥伝社文庫)

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    明治神宮鎮座百年というちょうど一年前の今頃、初めて明治神宮を参拝しました。原宿の喧騒が嘘のように、一歩足を踏み入れた瞬間に空気が変わるのを体感しました。この本に出会い、明治神宮創建のきっかけを知り、またあの素晴らしい森が自然ではなく、全国からの献木であったというのは驚きでしかない。もう一度、じっくり明治神宮を、神宮の森を歩いてみたい。そして、伏見桃山陵へも…。

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    2022年12月25日
  • 恋歌

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    幕末、水戸藩尊王攘夷派天狗党の志士である一人をただ男として、愛して嫁いだ娘、登世。恵まれた商家の贅沢な生活を惜しげも無く捨てる。
    水戸藩は、困窮していた。嫁いだ先でも、持参金を使い果たす生活が続く。それでも、世間知らずな娘には、幸福な日々であった。
    官軍になれなかった天狗党は、その妻子までも逆賊として投獄されていく。そこは、飢えと処刑の凄惨な泥梨だった。
    内乱と殺戮の水戸から江戸へ逃れた、登世は、和歌の修行に励み、歌人中島歌子となっていく。
    この小説は、弟子の一人が歌子の手記を読むという構成になっています。明治になり歌子は「萩の舎」を開き和歌や古典を教えていました。教え子の一人には樋口一葉。彼

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    2022年12月09日
  • 悪玉伝

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    ネタバレ

    非常に本格的。
    歴史と創作を極めてうまくミックスさせていて見事。
    見事だけれども
    これが好きかというと、すきではない。
    オチであるキリシタンの証拠には苦笑した。
    そうまでして固く信仰を守ったくせに、平然と他者に陰謀をなす唐金屋という設定は、あまりに矛盾していると思うが、この感想はキリスト教徒のみにしか思い浮かばないかもね。

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    2022年12月04日
  • 草々不一

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    身分やしきたりに縛られる武士。
    それでも彼らには彼らなりの生活があり苦労がある。

    そんなホロリとしながらくすっと笑える姿を描いた短編集。

    漢字の読めない隠居侍が亡き妻の手紙を読むために
    手習い所へ通う表題作がいちばん好き。
    妻の最後の1文が秀逸

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    2022年12月02日
  • グッドバイ

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    幕末の長崎、油商・大浦屋のあるじはお希以(けい)。自分の「やりたいこと」を見据えて突き進む。潤沢なエネルギーを存分に使いこなすその勢いがまぶしい。
    窮地でさえ蹴散らす感じがする。時にはあきれる事もあるけれど、他人の思惑など気にしないんだろうな。

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    2022年11月24日