朝井まかてのレビュー一覧
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2024年7月に朝井まかて先生の『朝星夜星』を1ヶ月かけて読み終えました。この小説は、早朝から夜遅くまで働くという料理人の重労働を描きつつ、自分の好きなことに一生懸命になる姿を描いています。最初は少し心配でしたが、読み進めるうちに面白くなり、一気に読み終えました。ユーモアと感動が織り交ぜられており、笑ったり涙が出そうになったりしました。料理のレシピや晩年の認知症についての描写もあり、現代の問題にも触れています。
舞台は幕末から明治維新。その偉人の活躍の話ではなく、ごく庶民の眼からみた話です。主人公の草野丈吉とその妻ユキのホテル創業の苦労が描かれ、丈吉は自分の命をかけて働く偉大な人で、日本の洋食 -
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彼女と私を考えた。
少し似ていて、決定的に違っていて、彼女は私の師匠にはなるかもしれない、同年代なら親友にはなれないけど、ライバルにはなれるかもしれない。
志すものは違えど、無二のライバルに。
それは自分を高く見積もりすぎかしら、「あんたなんか眼中にありゃしねぇよ」と嗤われるかしら。
そんなことを考えた。
彼女の生き様は私には決して真似できないものではあって、美しくも不格好で誇り高い絵師の生き様だった。
時折あまりに女の思考回路に虫酸が走ったこともあったけど、最後の数章のお栄は生き生きとしてこれぞ葛飾応為なのだと思った。
波乱であったとしてもいい人生を生きたのだろうと思うこの物語の最後がとて -
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ネタバレ森鴎外の末子、類を主人公とする小説。
評判の良い小説と聞き、内容を全く知らずに読んだが面白かった。
昔の風俗などよく調べ、上質の文章で綴られていると感心しながら読んでいたが、途中でモデル本人たちの著作が多いに下敷きになっているはずと気づいた。
よって、評価はできないが、引き込まれて読んだことは確かだ。
戦後は、お金がないないと貧しい生活に終始した類だが、晩年は別荘地の家を建て替え、後添いをもらって暮らす。一体庶民には真似のできない暮らしぶりだ。どうやって成り立っていたのか、謎のまま終わった。
どんなに貧しくても生まれながらのお坊ちゃんは内面が貴族のままなのであった。
もともと鴎外はあまり好 -
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幕末、長崎の油商・大浦屋の女あるじ、のちの貿易商・大浦慶の胸躍る生涯の物語である。
個人的に、ラストシーンが膝を打つほど決まっている作品は傑作だと思っている。本作はまさに膝を打つほど。胸アツでございました。
幕末のころ、いわば「女子はだまっとれ」という時代に、海の外の者たちと商売を始める──お慶とともに「どうやって!?」と胸をつかれ、「なんとかしたい」と願い、失敗し、商機を手に入れてホッとしたり。そんな思いを存分に楽しめる作品なのだ。
中盤から幕末でおなじみの面々の名前がにぎやかしていくのも楽しい。後半では、きっと朝井さんもお慶たちと別れるのが淋しくなっているんだなあとまで感じる愛おしい文章。 -
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NHKの人形劇『新八犬伝』観てたんだけど覚えてない。ただ、八犬士が持つ珠の文字「仁義礼智忠信孝悌」はあの番組で覚えた。そっか、曲亭馬琴さんが原作者なんだ。しかしなんとも精力的な執筆活動ではありませんか。筆が早いったって矢継ぎ早の創作。おまけに超几帳面で、徹底した校正は出版社泣かせ。妻の百はかなりの癇癪持ちとあるけど、馬琴の性格に対するストレスは相当なものだったんじゃないの。滝沢家再興へのこだわりは尋常ではないし、歳時における食などの支度も指示があまりに細かい。とはいえ、江戸読本を育んだあの気力は凄まじい。
PS これってタイトルと中身がどうなんだろう? -
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大河ドラマ、というよりは連続テレビ小説。
なんと激動の世の中を生きた画師であることよ。
生きるとはままならないなあ。
しゃあんめえ。
祈ることの尊さと描くことへの業がないまぜになって明治から大正、昭和という時代の荒波に揉まれている。こういう時代が有ったのだと、一口に語ることは簡単だけれど、社会の有り様というのはこうまでも変化してしまうものであるのだと驚愕する。
いま私が見ている景色、社会はほんの少し先にはまったく違ったものになっているかもしれない。
それでも生きていく。
醜かろうが、過去の己の無知に恥の念を覚えようが、圧倒的劣勢だろうが、誰かに嫌われようが。
しゃあんめえ、と唱えて、それ -
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幕末から明治にかけての過酷で混乱をきたした時代。
その時代を運命に翻弄されながらも懸命に生き抜いた、樋口一葉の師・歌人中島歌子の半生を綴った作品。
物語は歌子の弟子が、彼女の手記を読み返すという構成。
人気歌塾の主宰者として一世を風靡した彼女がどの様にして生き、何を思い胸に秘めてきたのかが記されていた。
無知なもので、中島歌子さんの事知らなかった〜。
「恋歌」はSNSでもよく見かけて、なんとなく気になってたので読んでみたのだけど、まさかこんな辛い内容だったとは。。
この時代には珍しい商家の娘・登世(歌子)と水戸藩の武士・林以徳の恋物語。
恋物語でもあり、幕末の内乱の多かった時代を描