朝井まかてのレビュー一覧
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彼女と私を考えた。
少し似ていて、決定的に違っていて、彼女は私の師匠にはなるかもしれない、同年代なら親友にはなれないけど、ライバルにはなれるかもしれない。
志すものは違えど、無二のライバルに。
それは自分を高く見積もりすぎかしら、「あんたなんか眼中にありゃしねぇよ」と嗤われるかしら。
そんなことを考えた。
彼女の生き様は私には決して真似できないものではあって、美しくも不格好で誇り高い絵師の生き様だった。
時折あまりに女の思考回路に虫酸が走ったこともあったけど、最後の数章のお栄は生き生きとしてこれぞ葛飾応為なのだと思った。
波乱であったとしてもいい人生を生きたのだろうと思うこの物語の最後がとても美しくてとても清々しいと思う。
いい作品を読めた。
作中の葛飾北斎の言葉を自分自身のために残しておこうと思う。
「たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。なぜだかわかるか。こうして恥をしのぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ喰いしばって世間の目に晒す。」
私も忘れてはいけない言葉だと思う。
まだ三流であったとしても、玄人でありたい。
これからも高みを目指す、玄人であり続けたい。 -
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ネタバレ森鴎外の末子、類を主人公とする小説。
評判の良い小説と聞き、内容を全く知らずに読んだが面白かった。
昔の風俗などよく調べ、上質の文章で綴られていると感心しながら読んでいたが、途中でモデル本人たちの著作が多いに下敷きになっているはずと気づいた。
よって、評価はできないが、引き込まれて読んだことは確かだ。
戦後は、お金がないないと貧しい生活に終始した類だが、晩年は別荘地の家を建て替え、後添いをもらって暮らす。一体庶民には真似のできない暮らしぶりだ。どうやって成り立っていたのか、謎のまま終わった。
どんなに貧しくても生まれながらのお坊ちゃんは内面が貴族のままなのであった。
もともと鴎外はあまり好きではないが、やや興味をひかれた。 -
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幕末、長崎の油商・大浦屋の女あるじ、のちの貿易商・大浦慶の胸躍る生涯の物語である。
個人的に、ラストシーンが膝を打つほど決まっている作品は傑作だと思っている。本作はまさに膝を打つほど。胸アツでございました。
幕末のころ、いわば「女子はだまっとれ」という時代に、海の外の者たちと商売を始める──お慶とともに「どうやって!?」と胸をつかれ、「なんとかしたい」と願い、失敗し、商機を手に入れてホッとしたり。そんな思いを存分に楽しめる作品なのだ。
中盤から幕末でおなじみの面々の名前がにぎやかしていくのも楽しい。後半では、きっと朝井さんもお慶たちと別れるのが淋しくなっているんだなあとまで感じる愛おしい文章。
最初から最後まで、お慶とともに怒涛の日本を駆け巡っている心持にさせてくれた、わくわくする1冊だ。 -
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NHKの人形劇『新八犬伝』観てたんだけど覚えてない。ただ、八犬士が持つ珠の文字「仁義礼智忠信孝悌」はあの番組で覚えた。そっか、曲亭馬琴さんが原作者なんだ。しかしなんとも精力的な執筆活動ではありませんか。筆が早いったって矢継ぎ早の創作。おまけに超几帳面で、徹底した校正は出版社泣かせ。妻の百はかなりの癇癪持ちとあるけど、馬琴の性格に対するストレスは相当なものだったんじゃないの。滝沢家再興へのこだわりは尋常ではないし、歳時における食などの支度も指示があまりに細かい。とはいえ、江戸読本を育んだあの気力は凄まじい。
PS これってタイトルと中身がどうなんだろう? -
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大河ドラマ、というよりは連続テレビ小説。
なんと激動の世の中を生きた画師であることよ。
生きるとはままならないなあ。
しゃあんめえ。
祈ることの尊さと描くことへの業がないまぜになって明治から大正、昭和という時代の荒波に揉まれている。こういう時代が有ったのだと、一口に語ることは簡単だけれど、社会の有り様というのはこうまでも変化してしまうものであるのだと驚愕する。
いま私が見ている景色、社会はほんの少し先にはまったく違ったものになっているかもしれない。
それでも生きていく。
醜かろうが、過去の己の無知に恥の念を覚えようが、圧倒的劣勢だろうが、誰かに嫌われようが。
しゃあんめえ、と唱えて、それでも歩いていく。
生きるとはそういうことかもしれない。 -
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幕末から明治にかけての過酷で混乱をきたした時代。
その時代を運命に翻弄されながらも懸命に生き抜いた、樋口一葉の師・歌人中島歌子の半生を綴った作品。
物語は歌子の弟子が、彼女の手記を読み返すという構成。
人気歌塾の主宰者として一世を風靡した彼女がどの様にして生き、何を思い胸に秘めてきたのかが記されていた。
無知なもので、中島歌子さんの事知らなかった〜。
「恋歌」はSNSでもよく見かけて、なんとなく気になってたので読んでみたのだけど、まさかこんな辛い内容だったとは。。
この時代には珍しい商家の娘・登世(歌子)と水戸藩の武士・林以徳の恋物語。
恋物語でもあり、幕末の内乱の多かった時代を描いた歴史小説でもあった。
武士である以上、命の危険は伴うものなのだろうけど、とにかく読んでて恐ろしかった。
捕らえられてしまうと、その家族まで投獄され、幼い子供にも容赦ないその凄惨な様子に胸がギュッとなる。
こういう時代を生きた人達がいて今に繋がってるんだと思うと、命の重みを感じる。
"君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ"
(恋を教えてくれたあなた、ならば忘れる術も教えて下さい)
生涯ただ1人の人を愛し続けた登世。
歌人になり詠んだ歌が悲しくも美しい。
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初まかて作品。
江戸城無血開城。言葉は知っているけど漠然としていたものが、大奥に焦点を当てて鮮明になりました。
大奥ものが好きで、さらに江戸城明け渡しの日の出来事ということで楽しみにして読み始めました。
自分も一緒に大奥に残っているように、登場人物たちと一緒にドキドキしながら読み進めました。
いつ官軍が来るかと思いながら、自分の身の上を打ち明ける夜の語らいの場面が1番心に残りました。
残念だったのは、自分の中の和服に関する知識が乏しく、これってどんな色?とか、どんな服?と逐一調べながらでないとわからなかった事です。改めて和服や色に関して調べて、きちんと知識を持って読むとより楽しめたな、と思いました。 -
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朝井まかてさんの歴史小説ははずさない!
しっかり読ませてくれます。
「類」では森鴎外の末っ子、「眩」では葛飾北斎の娘、この「恋歌」では中島歌子、とあまり他の小説では描かれない人を主人公にして描くのがすごいなぁ、目の付け所が違うなと思います。
幕末というと坂本龍馬や新撰組が有名だけど、水戸藩の話というのは聞いたことがなく、この小説で初めて知りました。
水戸藩内での内乱の末、敗れた天狗党の妻子たちに行った仕打ちは読んでいて辛いものでした。
君にこそ恋しきふしは習つれ さらば忘るることまをしへよ
恋することを教えたのはあなたなのだから、どうか、お願いです、忘れ方も教えてください。
懸命に生きても生きても、一番いてほしい人はこの世にいない。いない。
この箇所にはやられたなぁと思います。胸がぎゅうっとなります。いてほしい人がいない世界でどんな気持ちで中島歌子は生きていったのかを想像するたまらなくなります。 -
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江戸時代の戯作者、曲亭馬琴の波乱万丈な生涯を描く。
第一章 ある立春 第二章 神の旅 第三章 戯作者
第四章 八本の矢 第五章 筆一本 第六章 天衣無縫
第七章 百年の後
主要参考文献有り。
9輯98巻106冊の読本『里見八犬伝』を28年かけて
完結させた、曲亭馬琴の生涯は、茨の道の如く。
家督を継ぐが、仕えた若君の癇症に耐えかね出奔。
紆余曲折を経て、山東京伝との出会いがその後の運命に。
蔦屋重三郎の耕書堂の手代になり、出版業界の内情を学ぶ。
そして戯作者となり、潤筆料を得るまでになっていった。
だが武士の誇りと拘りは山東京伝や葛飾北斎、様々な板元など
対人関係に仇をなす。また、常に滝沢家の再興を考えるが、
家族や一族の不幸に見舞われてしまう。それでも筆は止まらない。
家族関係もかなり強烈。妻の百や息子の宗伯の癇症の激しさよ。
でも小さな秘密の花園で、病弱の息子の宗伯での庭仕事をする
ひとときは、何とも心温まるものであり、父と子のお互いの
告白で一人の秘密を二人の秘密にした、心の絆が感じられます。
見えぬ目でも心に浮かぶ秘密の花園の光景の幻。
思えば百もその子らを育て上げたから、そこに現れたのか?
ある意味、似た者同士の夫婦だったのかもしれない。
八人と八本の矢など『里見八犬伝』へ至るキーが
潜んでいるのも良かったです。表紙にも八匹の犬がいるし~。