朝井まかてのレビュー一覧

  • 雲上雲下

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    初めのうち、草どんが子狐にひたすら昔話を語るお話かと思ったんですが…読み終えてみたら、いやはや、雄大というか壮大というか、とても大きくて深いお話でした。確かに今の世の中、おばあちゃんのそのまたおばあちゃんから口伝えで伝わったお話を知ってる人の方が少ないでしょうし、元のお話が持っていた残酷さもきれいに削られて「めでたしめでたし」なお話になっているとも聞きます。こどもの育ちのためには多少の痛みやいやな思い、残酷さや少々の毒気も知っておくべきとは思うのですけどねぇ。神様はいないのではなく、人が信じて初めて存在するのだと改めて思いました。

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    2022年05月07日
  • 最悪の将軍

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    生類憐れみの令で人々の心に養いたかったもの。
    戦国の世から、泰平の世にするのに必要だったもの。

    文を以て、真に泰平の世を開き申す。

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    2022年04月26日
  • 雲上雲下

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    良い本を読んだ。この本の言おうとしていることに私も共感する。
    お伽噺が最初は語られていくが、後半になり語り部の草どんの話へ。日本の古来からある八百万の神などの神々を存在たらしめるものが人々が語り継ぐお伽噺の中にある。それを現代の人間は忘れ、疎かにして神々の存在を儚いものに。
    そう言う意味からも「にほん昔話」復活も併せて望みたい。

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    2022年02月17日
  • 先生のお庭番

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    シーボルトの薬草園の庭師として雇われた熊吉とシーボルトの心の交流を描く物語。向学心旺盛な熊吉の成長、シーボルトの妻、滝の生活があの事件に依って大きく変わってしまう。

    シーボルト事件は歴史の勉強の時に出てきて知ってはいたが、この作品でシーボルトなる人物の一部を知ることが出来た。兎に角、面白い作品であった。この作者の作り出すフィクションの部分がさも事実であるが如く感じさせるのは作者の力量の表れだと思う。

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    2022年02月10日
  • すかたん

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    高田郁の「みをつくし料理帖」や「あきない世伝金と銀」の様な味わいを感じる小説でした。
    商いに対する思い、周りの人に対する思い、何かに取り憑くように事に勤しむ思い、楽しんで読ましていただきました。少し出来すぎた結末に軽さを感じるも、御寮人志乃の最初からの思いも最後に明らかになり、納得。次は、「恋歌」のページを括りたいと思います。

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    2022年02月03日
  • 眩(新潮文庫)

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    葛飾北斎の娘、葛飾応為の生涯を描いた歴史小説。

    朝井まかてさんの小説って近作を読めば読むほどに、名人芸の域に達してるような気がします。葛飾応為のことは全く知らなかったのですが、鮮やかに彼女の生き様が思い浮かんでくる。

    天才葛飾北斎を父に持ち、幼いころから絵に親しみ、父の元で腕を磨いてきた応為ことお栄。口うるさい母親、つかみどころのない甥、気まぐれな兄弟子、そして偉大ではあるけれど、人間味のある父の北斎。そうした周りの人々の姿を生き生きと描き、そしてお栄自身の描写もとても生き生きと、それでいて心理は丁寧に描かれる。

    父や兄弟子と比べての自分の絵の腕に対する葛藤、絵ではその兄弟子にライバル心

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    2022年01月23日
  • 阿蘭陀西鶴

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     井原西鶴とは、文学年表だけの人でした。彼の一人娘が盲目であったことなど知る由もなかった。娘から見た、偉大な父を描くのは著者の得意とするところか。娘に対する父の思い入れは、不器用になるのだが、二人の心の通い合いがとても良く描かれて感動を誘う。今になっては、読み直そうとすることはかなわないが、とても興味のある作家であることを教えてくれました。

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    2021年12月31日
  • 最悪の将軍

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    読みはじめは文章が固くなかなか進まなかった。慣れると歴史再発見で綱吉の見方が変わってきて面白い小説だった。理想を追い続けた政治をした人だったんだなぁ。

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    2021年12月30日
  • 眩(新潮文庫)

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    朝井先生の本は面白いです。後半は、葛飾應為の絵を調べながら読み進めましたが、本物を見たくなりますね。小布施や太田浮世絵美術館を訪れてみたいです。後日、スイカの皮の絵など、ストーリーに纏わる絵に出会えるのはとても楽しいことでした。

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    2021年12月30日
  • 草々不一

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    短編は一気に読めない性格ゆえ、ゆっくり堪能いたしました。

    どの作品も、温かい。江戸らしい。
    素敵な作品ばかりでした。

    タイトルと同じ、最後の『草々不一』は一番好き。
    こういう、賢い女性にあこがれるし、子どもたちに混じって一生懸命努力する親分も素晴らしいと思いました。
    やっぱり江戸っていいな。

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    2021年12月18日
  • 福袋

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    江戸を舞台の、人情溢れる庶民の生活を描く、8つの短編。
    ぞっこん・・・お互いがぞっこんになった“筆”と文字職人の歩み。
       お上の動向に左右されながらも強かに生きる、人々の姿。
    千両役者・・・大部屋役者の花六と、贔屓で通う辛子屋の太之助。
       迎えるのは大どんでん返し。そして、一か八かの大博奕へ。
    晴れ湯・・・湯屋の娘・お晴。好きな稼業を手伝う中、知るのは、
       客の皆に愛される湯屋の事。父母の関係と自分への想い。
    莫連あやめ・・・出来の良い兄嫁に心乱される古着屋のあやめだが、
     親友を貶めた高慢な娘たちとの諍いが。それを救ったのは・・・。
    福袋・・・大食漢で離縁された乾物屋・濱屋のお壱

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    2021年12月17日
  • 草々不一

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    赤穂浪士からペリー来航まで、江戸時代って言っても様々ですが、何なら維新の後の不平士族の反乱も含めて、武士の社会を味わえます。

    短編集ですが、いずれの話も「続きが知りたい」終わり方でもやもやしてたら、解説で佐藤江梨子さんが二つだけ続編を書いてくれてました。

    「蓬莱」「草々不一」の二編の妻が実にとっても純愛でステキ。

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    2021年12月05日
  • 先生のお庭番

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    自然は制覇するものだと考えるシボルト先生と、自然は共に生きるものだと考えてきた熊吉。いや、熊吉はそんなこと当たり前過ぎて考えたこともなかっただろう。

    周囲の人々が悲惨な事態となり、シボルト先生の配慮は充分だったのか正直疑問が残った。

    アジサイに、そんなに種類が多くあったとは知りませんでした。一斉に咲いていたら、見ごたえあるだろうなぁ。
    あれ?これって、自然を制覇しようとしてる?

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    2021年10月13日
  • 藪医 ふらここ堂

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    ちょっと、ちょっと!なんでお医者になんかなろうと思ったのサー!
    と、啖呵の一つもきりたくなるような医者だけど、まあーその周りの怪しげな連中!も含めて、私の好きな江戸話しです。


    時々、江戸を注入して元気をもらいます。

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    2021年10月09日
  • 御松茸騒動

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    名古屋の市政の人々の愛あふれる話し。
    松茸のお世話って大変なのねー
    政治の中心から嫌われると大変なのねー


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    2021年10月06日
  • 阿蘭陀西鶴

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    身体障害者の身内に、あなたは、どんなふうに接しますか?
    西鶴は、ダメな父ちゃん、として接します。
    完全護衛もしません。
    自分が死んだあとも、娘は生き続けるのだから。

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    2021年10月06日
  • 雲上雲下

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    子狐が、森の「草」にお話をせがむ。
    草といっても、大きな木のような不思議な植物だ。
    最初はうるさそうに、短い話をしてやるだけの草。
    しかし、なぜか自分の内部から物語がよみがえってくる。

    物語内物語が次々と展開する。
    贅沢なつくりだ。
    これはもう、面白くなるはず。

    山姥が、子狐が、最後に「草」が、語る物語を通して、自分が何者であったのかを見つけ出す。

    最後はちょっと文明批評のようだった。
    物語が、不思議が存在できない現代日本を批判する。
    ちょっと『平成狸合戦ぽんぽこ』的な雰囲気を感じたが…。

    物語を読む楽しさを思い出させてくれる一冊。

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    2021年10月03日
  • 悪玉伝

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    大岡越前守忠相日記に辰巳屋一件と記される実際にあった事件を作者が江戸対大阪、幕府の経済政策という観点から捉え直した歴史小説。
    大阪の商家の相続争いがなぜ、江戸で裁かれ、死罪の者まで出ることになったのか?登場人物のくっきりとした人物像と相まって、納得できるストーリーになっている。
    カバーはなぜ牡丹の花なのか?「悪玉」とどう関係するのか?最後まで読むと、そこに複数の意味が込められているのがわかる。

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    2021年09月11日
  • 最悪の将軍

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    評価は難しい。信念を理解することも難しい。
    ひとはやすきに流れ易いから、みの周りの事で精一杯。五代将軍のイメージが変わります。

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    2021年08月09日
  • 最悪の将軍

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    ネタバレ

    学校で習った歴史上の人物で、その後大きく評価が変わったのが田沼意次とこの徳川綱吉だと思う。
    人間より犬の方を大事にする法律を作った暗愚な将軍、と習いましたが、それは当時の江戸の庶民レベルの評価だったようです。

    戦国時代はすでに過去のものとなり、太平の時代を迎えているはずなのに、武士の意識だけが変わらずにいる。
    そんな世の中を変えようと、武よりも文(法律)で世の中を統べようとする綱吉。
    しかし、世間はそんな綱吉の思いを一向に理解することはなかった。

    学校で習ったのは暗愚な将軍。
    その後、将軍になった当初は善政を布いたが、その後民衆を顧みることなく「生類憐みの令」を発して庶民を苦しめた、とした

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    2021年07月31日