朝井まかてのレビュー一覧

  • 落花狼藉

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    吉原というと真っ先に花魁が道中を練り歩く様子が目に浮かびます。しかし、実際はどのような仕組みになっているのか、そこにいる人々はどのように過ごしているのか分からずにいましたが、この小説を読みその成り立ちも含め理解できました。
    江戸時代の初め、城下と隔られた日本橋のはずれの町に位置する場所、吉原で遊廓を営んでいる西田屋の女将、かよ。彼女は幼少期に迷子か捨子かもわからず育った素性の持ち主ですが、主人の甚右衛門に拾われ育ち、女房になって間も無い。ずっと年上の甚右衛門は、売色稼業の吉原を発展させるために様々な見世を一ヶ所にまとめた場所を造り、他の町では売色が出来ないように公儀から許しを貰う。ここから始ま

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    2022年11月16日
  • 落花狼藉

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    花街としての吉原を江戸初期の幕府に認めさせた実質的創始者である庄司甚右衛門の貰い子で後に女房となった花仍の一代記。

    売色御免(専売)の公許を受け、侍の世から商人の世に変わる中、幾度の大火事や公儀の命令による移転、裏で売色をする風呂屋や茶屋との争いなどの困難と戦いながら、太夫を擁する花街としての矜持を失わず、吉原を他と同格の「町」として築き上げた甚右衛門とそれを支えた花仍。

    町を支える大女将としての生を全うし、孫たちに見守られて迎える眠るような最期は、激動の生涯の末のご褒美だろうか。

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    2022年11月12日
  • グッドバイ

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    幕末、長崎の地で異人との交易を始めて時代を切り開いた女傑の波乱万丈。

    既得権と仕来りの中で細る家業に飽き足らず、世の流れを嘆くばかりで旧弊から抜け出せない同業者組合や家業大事の番頭に囲まれながらも世界を相手の交易に乗り出す大浦希以。わずかな絆と信義を手掛かりに、茶葉の輸出で一時代を築き上げる。

    詐欺に会わなければ、もっと胸のすく活躍をなさったのではないだろうかと思うと惜しくてならない。こずるい悪党、ホント嫌い。

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    2022年10月30日
  • 落花狼藉

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    江戸の初期、吉原を幕府公認の傾城街にしようと働きかけた者達がいた。大見世の女将の花よの一代記。幼い頃迷い子だったかよを引き取り、後に夫となった甚右衛門と共に吉原を造り、何人もの妓達をまとめて見世を切り盛りするかよ。だが生来の気の強さで周りとぶつかる事も多い。そんなかよを叱咤しつつ導いてくれるやり手婆や揚げ屋の女将、番頭など人に恵まれながら成長する。
    後の吉原の安定が、意外にもこんなに多くの苦労があってこそだったのだと知る事ができる。女郎を主人公にした物は多いけど、見世の女将を主人公にした話は珍しいのでは。それも吉原が出来たばかりの頃の話で読み応えあった。

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    2022年10月24日
  • グッドバイ

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    ネタバレ

    幕末の動乱が目の前で起きている感じ、ただし、通信手段が今のようでないなかでの時代の変化、すごい時を過ごした気分になった。

    ビジネスのために、勘を磨くこと、信を得ること、心に刻まれた。

    そして、この時代なのに女ではなく、大浦慶として生きていることがすごいと感じた。

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    2022年10月20日
  • 銀の猫

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    介護のことなんかがサラッと書かれているけど、じっくり読むとなるほどーということも多くて楽しめた。母親との確執もそれほどきわどくなくて読みやすい。

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    2022年10月14日
  • 阿蘭陀西鶴

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    大衆小説の創始者 井原西鶴と、盲目の娘 おあいの物語。
    ゴッホがそうであったように、創始者はなかなか時代に受け入れられず周囲の人に迷惑をかけつつ己の道を邁進するものなんですね。多くは朝井さんの創作でしょうが、父娘の関係が変わっていく様子は胸を打ちました。
    一方で研ぎ澄ますことで道を極める芭蕉のような存在も貴重だと思いますが、間口を狭めることで一部の人たちだけのものになったことが、いつくもの日本の伝統文化が細々としか継承されない結果を招いたのかな。

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    2022年10月01日
  • 落花狼藉

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    吉原が舞台なので、遊女たちの色恋沙汰が淡々と続く小説かとの思惑は、見事に外れた(良い方に)。
    主人公とも言うべき西田屋の女将花仍も夫の甚右衛門も狂言回しとも呼ぶべき役割で、主役は傾城町吉原そのものではないだろうか。
    著者は、江戸随一の遊郭となった吉原をその黎明期から緻密なタッチで描き出し、吉原の変遷や遊女たちの実態を、読者の目の前に開かせてくれた。

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    2022年09月23日
  • 落花狼藉

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    202208/とても面白かった!さすが朝井まかて先生!これも名作!素人考えなのは承知の上で、もっともっと読みたいので、年月とばさずに日常や再建のとことか細かく書かれた上下巻にして欲しかった…。

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    2022年09月14日
  • 草々不一

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    変な言い方だけど、山本周五郎と池波正太郎を混ぜて、藤沢周平を振りかけて、
    なお、なんともいえない、いい味を出している文。
    解説の人選もいい、作者が選んだひとなのだそうだから当然。
    好きなのは「紛者」「春天」

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    2022年09月07日
  • 落花狼藉

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    売色御免/吉原町普請/木遣り唄/星の下/
    湯女/香華/宿願/不夜城

    「吉原」が誕生した経緯。その後の幕府との駆け引きを吉原が生き残る方向へ向けるための思案。何となく栄華を誇っていたと思っていたけれど、それなりの努力があってこそだったのですね。春を売らせる男たちにも矜持があった。そういう人もいたかもしれない……

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    2022年08月28日
  • 落花狼藉

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    大変失礼な言い方だけど、最初あんまり期待しないで読み始めたのだけれど、期待?に反して、面白かった。志を持っていれば、仕事に貴賤はないのだと思った。

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    2022年08月22日
  • 雲上雲下

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    日本昔話のパロディ版かと思いきや、現代にまで繋がるストーリー展開で驚いた。
    短編の中でも小太郎と山姥の話が切なく、ぐっときた。

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    2022年08月22日
  • 眩(新潮文庫)

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    四月から続いた大きな仕事が一区切りした。
    ようやく楽しみのために本が読めるようになった。
    というわけで、お盆休みのおともの一冊に本書を選ぶ。

    葛飾北斎の娘で、絵師となった栄の物語。
    偉大な父であり師を持ったお栄。
    現代なら、プレッシャーに押しつぶされそうな環境だ。

    ところが、彼女はただ、絵の上達に励む。
    いわゆる朝ドラ的な前向きさとは違う。
    自分が自分になるために、どんなに苦しくても、そうするのだ。
    そのためには、女性としての生き方の規範などに拘泥しない。
    その振り切り方には、羨望をこめて、かっこいいという言葉しか出てこない。

    彼女がそのような人生を歩めるのは、父北斎自身、晩年に至るまで

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    2022年08月18日
  • 悪玉伝

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    これは恐れ入った。
    吉宗の時代、大疑獄事件になった、辰巳屋の相続のもつれ。
    主人公の吉兵衛は、辰巳屋に生まれたが別家に養子に出された次男。辰巳屋の主人だった長男が亡くなり、養子がまだ若く不甲斐ないために、辰巳屋の跡を継いだ。
    これが不当として奉行所に訴えられ、一旦は治ったものの、今度は江戸の目安箱に訴えが及び、江戸での訴訟となる。

    吉兵衛の人となりが今ひとつ好きになれず、前半はとてもダラダラ読んでしまった。
    訴訟となり、牢に吉兵衛が入ってからは、俄然面白くなり、一気に読み終えた。
    彼が訴えられたために、確かに辰巳屋を潰したと言えるから、悪玉なのだろう。しかしながら、本当にダメだったのは彼なの

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    2022年08月18日
  • 藪医 ふらここ堂

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    朝井まかてさんの手慣れた江戸物語。小児医三哲、その娘おゆん、その弟子次郎助など脇役も個性豊かに書き分けられて飽きない。あー面白かったと読み終えられる一冊。こんな先の見えない今に一服の涼を得られる。

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    2022年07月21日
  • 悪玉伝

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    大坂商人の木津屋吉兵衛は優雅な生活を送っていたが、実家の辰巳屋久佐衛門の急逝で物語が展開する.大番頭の与兵衛に牛耳られていた辰巳屋の跡目争いで本命の乙乃助が与兵衛と組んで良からぬ企みを企ていることを察知した吉兵衛が動き始める.久佐衛門の満中陰は無事に終えたが、乙之助が訴訟を起こし最終的に吉兵衛は江戸送りとなる.牢名主らとうまく立ち回る吉兵衛は、自白はせず事件の拡大を横目で見ながら、最終的に黒幕の唐金屋与茂作との交渉で、遠島の沙汰を減じてもらうことになる.大坂商人の辛抱強い気質と多くの人を巻き込む人柄が最終的な勝利につながる物語だが、江戸時代の風景が滲み出てくるような記述には、著者の力量を感じた

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    2022年07月21日
  • 銀の猫

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    標題の「銀の猫」は別れた夫の義父から貰った銀細工の小さな御守り。別れた理由は、妾奉公ばかりしていた実母が、この義父から大金を借りたことから。この借金を返すために給料が高い「介抱人」となったのも、この義父の介抱があったからでもあった。何も出来ない実母と関わり合いになるのが嫌で、大変な仕事の介抱人をどんどん入れて行く。
    現代でも家族の介護は大変だが、江戸時代は息子や後継者が介護をすると決められていたとか。他人が入ることで良い方に向かうという事で、色々な問題を抱えた家に入って、介護される側との交流が小気味良い。元気な意地悪婆さん、大身の旗本の隠居、大奥勤めを引退した老婆など、意外な交流とその後が面白

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    2022年06月11日
  • 先生のお庭番

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    面白かった。きっとそういう結末なんだろうなぁと思いつつ十分楽しめた内容だった。登場人物がどれも個性的で良かった。

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    2022年05月31日
  • 草々不一

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    時代小説の短編集。太った女芸者のヒモぐらしをする「紛物」、不貞な妻と思っていたら良妻だった「蓬莱」、隠居が手習いする「草々不一」などが、斬新な設定のお話に感じられてとても良かった。長編が読みたいね。

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    2022年05月11日