朝井まかてのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
時代小説は得意ではないけど、朝井まかてさんならと手に。
牧野富太郎を描いた「ボタニカ」が面白かったからな…。
久々のファンタジー小説。
学生の頃きちんと国語と歴史を勉強していなかったので、わからない単語や漢字ばかりでなかなか進まない。こういう時、もう少しちゃんと勉強すべきだったな…と思う。(でもルビが頻発するので大丈夫でした笑)
中盤までいけば後は勢いついてイッキ読み。
青姫の郷という隠れた山郷にいる姫とその郷の秘密を廻る物語。
「香君」や「レーエンデ国物語」がお好きな方は愉しめるはず。
弥生時代以降、日本人は稲作を中心として生きてきた訳で、戦は米を育むことの出来る土地の奪い合い。
青姫という隠れ郷で、なぜ米を作らずにいて、果たして作ることになったのか…
戦闘場面もあり、ドキドキ感は十分味わえます。
昔も今も政府は生命を育む作物を作る農家や酪農家に対してとんでもなく酷い扱いをしていると思う。
田んぼを作り、米を育てることの大変さを実感をもって知らなかったので、この本から苦労を知り驚くばかり。
難しい土地でも田んぼや畑、牧場にするために苦労して開墾し農業や酪農を営んできた先祖代々の農家の方々。その苦労を思うと、土地で採れた食べ物をいただくことがどれだけありがたいことかと思う。
現代社会は息苦しいことばかり。
でも日々が生きるか死ぬかの瀬戸際で生きていた頃に比べれば、
温かい食事、暖かい布団、好きな本を好きなだけ読める毎日に感謝だ。
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Posted by ブクログ
現代日本へとつながる、幕末から明治、大正にかけて食で時代を開いた西洋料理店の隆盛を、主人の妻の目線から描いた一冊です。
時代は江戸の幕末。唯一の外国との貿易の窓口であった出島を抱える長崎で、西洋料理屋『良林亭』が暖簾を掲げた。主人の丈吉は幼き頃から苦労をし、オランダ商船で働きながら料理修行をし、ついに得た己の店だった。そこに訪れるのは時代に志して世に名を遺す名士の面々。主人公のゆきは、料理を通じて、また食とその在り方を通じて、なにか大きなことを成し遂げようとしている夫の丈吉を支え、時にともに働き、時に表から退くことで目まぐるしい時代の潮流をともに過ごしていく。初めは長崎の自宅の客間から始まった西洋料理店は、『自遊亭』となり、『自由亭』となり、長崎から大阪に舞台を移してより大きく激しい変化に身を投じていく。
ボリュームのある本のため、手を出すのを少しためらっていた本の一冊でした。しかし、本腰を入れて読むことができてよかったと、読み終わってタイムスリップから帰ってきたような心地で思っています。
小さな店から料理屋に、外国人の泊まれるホテルに、食だけではなく会議や宴席が催せる場を提供できる店に、と信じられないスピードで店を大きくし、手足だけでも足りず背中に羽でも生えているかのごとく羽ばたいていく主人の丈吉を主人公とするのではなく、その妻のゆきが主人公というのもまた良いです。常識外れというか、けた外れの思考と能力と行動力を持った人物の日々を追うのはエキサイティングで面白いのですが、その本人が主人公だと、完全に他人事のようになってしまって感情移入が追い付かないことも多いものです。その点、今回の主人公は身長が高く、力自慢であること以外はさして取り柄もないような女性のゆきで、丈吉と結婚してからの生活風景など、おもわず笑みが浮かんでしまうようなやりとりも度々。ゆきの目から見る世界は面白く、目まぐるしく、主人の丈吉はとんでもない人で、振り落とされないようについていく様は読者を上手く物語の中に引き入れてくれます。
作中、たくさんの人物が出てきます。時代を拓いた、今では偉人とされる人たちや、歴史の教科書で名前を暗記したり、漢字を書けるように練習をした人たちです。歴史の一環として、彼らの功績ややったこと、事が起きた年代だけを機械的に覚えていたものですが、その彼らもこの時代を生きて、食べて、飲んで、友と語らっていたのだと思うと、もう少し歴史にも違う興味が持てるような気がします。
江戸の幕末、明治、大正。昔のこと、歴史上の時代だと無意識に考えてしまっていた時代が舞台ですが、年齢によってはこの時代全てで生きていた人がいるのだと改めて感じて、なんと変化に富んだ時代だったのだと新鮮な気持ちで読むことができました。
古くて、新しい、自分にない思想を見せてもらった心地です。近代日本の歴史を、もっとたくさん勉強したくなりました。
歴史に残った人々と時代背景を料理と共に味わうことのできる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
2012年の作品。昔から男女の組み合わせは東男と京女がよいといわれているが、この話は東女と難波男子の組み合わせ。文化の差異に本人の出自の違いも重なり、場面が次々と展開していき一気に読み進められた。江戸中期の設定でものの流通が問屋ー仲買で安定した供給を維持していた歴史が読み取れ、それに終盤で生産者と市場を結ぶ運搬業者「青田師」まで登場して、今につながる流通の仕組みを知ることができた。それにしても値上がりを期待して思惑買いをして流通が滞るところは今のコメ値上がりに通じるところだと思った。しっかりした時代考証とそんなことないでしょうというお話し部分と織り交ぜて朝井まかてさんのおもろい話でした。
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Posted by ブクログ
知らなかった。こんな女の人が日本にいたなんて。
朝井まかての本によく抱く感慨ではあるけれど、これは群を抜いていた。
前半は痛快だ。
ご一新直後の明治、「わたくしも開化致したく候」と書き置きを残して笠間から江戸まで歩き通す。連れ戻されても絵が描きたいという熱は冷めない。
東京ではできたばかりの芸術大学を試験だけでもと受けて合格し、ついには通うことになる。
やがて師を失い、友に誘われ教会に入り、ついにはそこからロシアへ留学する。
ロシアでの日々は読むこちらも苦しかった。冬の暗さや寒さ、押し込められたような空気がりんをますます追い詰める。彼女の姿は青ざめ彷徨う宗教画の登場人物そのものだ。
「聖像画は芸術であってはなりません」というオリガ姉の言葉は、りんだけでなく私にもショックだった。美術館でいわゆる宗教画を観てもなにも響いてこないと感じるのは、このあたりに理由があるような、と思い当たったからだ。
しかし一方で、知人の芸術家が言っていた言葉がよみがえる。「東南アジアとかインドの石窟寺院や遺跡のレリーフや仏像・神像の無名性に惹かれる。個性が没した先の個性に興味がある」という主旨だった。
若き頃のりんは、ロシアで学べると思った西欧画(ルネサンスのイタリア画)から遠ざけられて憤慨する。まずは型があってこそ、万人が見てその時々に彼・彼女らの心持ちを映すものであるべきで、そこに個人の思い入れや考えは邪魔である、という教えに気付けない。
いや、彼女には夢と希望があったのだ。華やかで生き生きした、美しい絵画を描きたかった。その技術をモノにしたかった。それを言葉もわからず押さえつけられては、誰だって反発するだろう。
この点ーーーなぜりんにじゅうぶんなロシア語教育を施してから発たせなかったのか、行きの船での仕打ちーーーについてはニコライ師の判断を疑う。
最近世界史の教科書的なものを読んでいるので、プロテスタント、カトリック、正教会の考え方の違いやそれらが引き起こした国同士のあれこれに深く納得がいった。ニコライ師の考え方が正教の考え方だとするなら、正教は日本人向きだ。「沈黙」の宣教師たちとの考え方・感じ方の違いの大きさに驚く。かねてから「人は生まれながらに罪を背負っている」という考え方がどうにも腑に落ちなかったのだが、正教はそうはとらえておらず、性善説だというのも視界が明るくなるようだった。落語の人間感に通ずるところがある。
歳を重ね、一度は放擲した聖像画に戻ってからのりんが、じわじわと信仰について、描くということについて腹落ちしていく過程が生々しい。
芸術とはなんだろう、と考え込まされる。
長生きしたりんが次々人を見送って、でも穏やかに郷里で暮らす姿にホッとする。ロシアという国の越し方にも思いを馳せた。地政的にも難しい国だ。
大河か朝ドラになってもおかしくない、波瀾万丈な山下りんの人生であった。
直後に読み始めた「猫の刻参り〜三島屋変調百物語」の冒頭、冨次郎がりんと同じようなことを言われるのでぶんぶん頷いてしまった。洋の東西を問わず、絵の習得の肝は同じらしい。
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Posted by ブクログ
2024年7月に朝井まかて先生の『朝星夜星』を1ヶ月かけて読み終えました。この小説は、早朝から夜遅くまで働くという料理人の重労働を描きつつ、自分の好きなことに一生懸命になる姿を描いています。最初は少し心配でしたが、読み進めるうちに面白くなり、一気に読み終えました。ユーモアと感動が織り交ぜられており、笑ったり涙が出そうになったりしました。料理のレシピや晩年の認知症についての描写もあり、現代の問題にも触れています。
舞台は幕末から明治維新。その偉人の活躍の話ではなく、ごく庶民の眼からみた話です。主人公の草野丈吉とその妻ユキのホテル創業の苦労が描かれ、丈吉は自分の命をかけて働く偉大な人で、日本の洋食の父と称されるにふさわしい人物です。丈吉夫妻は読み書きができなかったものの、行動力と記憶力、実践力で大成功を収めました。
小説を読んで感じたのは、仕事は健康あってのものであり、一生懸命になることが重要だということです。また、目標を持ち、それに向かって努力する姿勢が大切だと感じました。草野丈吉が外国語の知識を実践で習得したことや、部下との関係をうまく築き、尊敬される人物であったことも印象的でした。ユキの性格にも親近感を覚え、夫婦の在り方や和を保つことの大切さを学びました。
今後、朝井まかて先生の他の小説や陸奥宗光の作品も読みたいと思っています。また、草野丈吉の偉業を偲んで、長崎や大阪の地を訪れたいと考えています。