朝井まかてのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
吉原というと真っ先に花魁が道中を練り歩く様子が目に浮かびます。しかし、実際はどのような仕組みになっているのか、そこにいる人々はどのように過ごしているのか分からずにいましたが、この小説を読みその成り立ちも含め理解できました。
江戸時代の初め、城下と隔られた日本橋のはずれの町に位置する場所、吉原で遊廓を営んでいる西田屋の女将、かよ。彼女は幼少期に迷子か捨子かもわからず育った素性の持ち主ですが、主人の甚右衛門に拾われ育ち、女房になって間も無い。ずっと年上の甚右衛門は、売色稼業の吉原を発展させるために様々な見世を一ヶ所にまとめた場所を造り、他の町では売色が出来ないように公儀から許しを貰う。ここから始ま -
Posted by ブクログ
江戸の初期、吉原を幕府公認の傾城街にしようと働きかけた者達がいた。大見世の女将の花よの一代記。幼い頃迷い子だったかよを引き取り、後に夫となった甚右衛門と共に吉原を造り、何人もの妓達をまとめて見世を切り盛りするかよ。だが生来の気の強さで周りとぶつかる事も多い。そんなかよを叱咤しつつ導いてくれるやり手婆や揚げ屋の女将、番頭など人に恵まれながら成長する。
後の吉原の安定が、意外にもこんなに多くの苦労があってこそだったのだと知る事ができる。女郎を主人公にした物は多いけど、見世の女将を主人公にした話は珍しいのでは。それも吉原が出来たばかりの頃の話で読み応えあった。
-
Posted by ブクログ
四月から続いた大きな仕事が一区切りした。
ようやく楽しみのために本が読めるようになった。
というわけで、お盆休みのおともの一冊に本書を選ぶ。
葛飾北斎の娘で、絵師となった栄の物語。
偉大な父であり師を持ったお栄。
現代なら、プレッシャーに押しつぶされそうな環境だ。
ところが、彼女はただ、絵の上達に励む。
いわゆる朝ドラ的な前向きさとは違う。
自分が自分になるために、どんなに苦しくても、そうするのだ。
そのためには、女性としての生き方の規範などに拘泥しない。
その振り切り方には、羨望をこめて、かっこいいという言葉しか出てこない。
彼女がそのような人生を歩めるのは、父北斎自身、晩年に至るまで -
Posted by ブクログ
これは恐れ入った。
吉宗の時代、大疑獄事件になった、辰巳屋の相続のもつれ。
主人公の吉兵衛は、辰巳屋に生まれたが別家に養子に出された次男。辰巳屋の主人だった長男が亡くなり、養子がまだ若く不甲斐ないために、辰巳屋の跡を継いだ。
これが不当として奉行所に訴えられ、一旦は治ったものの、今度は江戸の目安箱に訴えが及び、江戸での訴訟となる。
吉兵衛の人となりが今ひとつ好きになれず、前半はとてもダラダラ読んでしまった。
訴訟となり、牢に吉兵衛が入ってからは、俄然面白くなり、一気に読み終えた。
彼が訴えられたために、確かに辰巳屋を潰したと言えるから、悪玉なのだろう。しかしながら、本当にダメだったのは彼なの -
Posted by ブクログ
大坂商人の木津屋吉兵衛は優雅な生活を送っていたが、実家の辰巳屋久佐衛門の急逝で物語が展開する.大番頭の与兵衛に牛耳られていた辰巳屋の跡目争いで本命の乙乃助が与兵衛と組んで良からぬ企みを企ていることを察知した吉兵衛が動き始める.久佐衛門の満中陰は無事に終えたが、乙之助が訴訟を起こし最終的に吉兵衛は江戸送りとなる.牢名主らとうまく立ち回る吉兵衛は、自白はせず事件の拡大を横目で見ながら、最終的に黒幕の唐金屋与茂作との交渉で、遠島の沙汰を減じてもらうことになる.大坂商人の辛抱強い気質と多くの人を巻き込む人柄が最終的な勝利につながる物語だが、江戸時代の風景が滲み出てくるような記述には、著者の力量を感じた
-
Posted by ブクログ
標題の「銀の猫」は別れた夫の義父から貰った銀細工の小さな御守り。別れた理由は、妾奉公ばかりしていた実母が、この義父から大金を借りたことから。この借金を返すために給料が高い「介抱人」となったのも、この義父の介抱があったからでもあった。何も出来ない実母と関わり合いになるのが嫌で、大変な仕事の介抱人をどんどん入れて行く。
現代でも家族の介護は大変だが、江戸時代は息子や後継者が介護をすると決められていたとか。他人が入ることで良い方に向かうという事で、色々な問題を抱えた家に入って、介護される側との交流が小気味良い。元気な意地悪婆さん、大身の旗本の隠居、大奥勤めを引退した老婆など、意外な交流とその後が面白