あらすじ
樋口一葉の師・中島歌子は、知られざる過去を抱えていた。幕末の江戸で商家の娘として育った歌子は、一途な恋を成就させ水戸の藩士に嫁ぐ。しかし、夫は尊王攘夷の急先鋒・天狗党の志士。やがて内乱が勃発すると、歌子ら妻子も逆賊として投獄される。幕末から明治へと駆け抜けた歌人を描く直木賞受賞作。
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朝井まかて、すごい!凄腕!思わず引き込まれてぐんぐん読みました。ラストはこらえきれず、目頭が熱くじーんとなってしまった。知りませんでした。中島歌子がこんな人物だったなんて。もちろん萩の舎のことは知っていたし、一葉さんの師匠だということも知っていたけど。超ド級の純愛物語でした。短歌に限らず芸術に命をかけるって、私には想像もできないけれどその境地に至れるのはこの上ない幸福なのでしょう。萩の舎のあった安藤坂界隈は私の母の育った町。私も学生時代初めてバイトした土地なのでとても思い入れがある。今度訪ねてみよう。
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江戸末期から明治の動乱の時代を生き抜いた歌人、中島歌子の半生と恋心を描く、骨太の時代小説です。
物語は、病に伏した師の見舞に訪れた弟子が、師が書いたものであろう手記を見つけたところから始まる。歌人である師のそれはただの書き付けなどではなく、目の前にまざまざと情景が浮かび上がるようなその半生を綴った長い物語だった。手記は若かりし頃の師――登世の娘時代の淡くも色鮮やかな恋から、水戸に嫁いで何かと苦労をしつつも夫を慕うささやかな日々を描いていたものが一変、水戸藩内の内紛から天狗党藩士の家人への苛烈な弾圧、投獄など時代の潮流に翻弄される妻子たちの姿を浮き彫りにしていく。激動の時代をなんとか生き抜き、憎しみと苦しみの連鎖を目の当たりにしてきた師が最後に望んだことは、手記と遺言書の中にあった。
まるで、一本の大河ドラマを観終わったような読後感でした。作中作は、お弟子さんが師の作品を読んでいる体で書かれているにもかかわらず、作中作こそが本編であるという形を取っているので、途中でお弟子さんたちのパートが入るまですっかり彼女たちの存在を失念していました。それだけお弟子さんたちも師の手記に没入して読んでいたのだ、という表現でもあるように思います。
私はあまり、江戸から近代、近現代の日本史を深く学んできませんでした。学校の歴史や社会の教科書に書かれる以上のことに深い興味を持っていなかったこともあります。けれど、最近時代小説にも手を出すようになって、改めて私は物を知らなかったんだなと感じることが多くなりました。
この物語の舞台である江戸末期から幕末、明治維新にかけての時代、実はどんなことが起きていたのかということを、うまく想像できていなかったように思います。天狗党の乱というのも、そういえば歴史でそんな名前を聞いたかな、くらいの認識でした。血で血を洗うような、復讐を復讐で返し、罪のない妻子を殺された恨みを同じく罪のない相手の妻子を殺すことで晴らすような、そんな時代があったのだと思うと、何故こんなことになってしまうのだと想像するだに苦しく、辛かったです。
それでも、この物語のタイトルは『恋歌』。
時代に揉まれ、激流に流され、それでも"割れても末に逢わんとぞ想ふ"、その心が愛しい物語でした。
この作者の方のお話は、以前読んだ時にも時代の中に名を遺した人の妻の目線で書かれたものを読みましたが、時代の主役でない目線で見るからこそ見えるものがあると思わされます。
機会があれば、また歴史を改めて勉強していきたいと感じました。
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幕末の水戸藩に嫁いだ中島歌子の人生。
門下生の三宅花圃が手記を読む形で物語が始まる。史実に基づいた物語に、和歌に込められた心情を巧みな描写で色をつけていくような、引き込まれる文章です。
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普段あまり時代物を読まないタイプだが一気に読み進めてしまった。
とにかく切なく、やり場のない思い。
と同時に武士の生き様を見たという感動。
どんな状況になろうが誇り高く生きている姿に心を打たれた。
私もこんなふうに真っ直ぐ生きたい。
歴史に名こそ残せなかったかもしれないが、その者たちの人生をかけた戦いにより今の私たちの暮らしがあると思う。今自分が立っている場所は昔誰かが流した血が染み込んだ大地、昔誰かが愛するものを信じ、歩き続けた道なのかもしれない、そう思うと今の、あまり不自由のない生活をできている事に感謝をしながら胸を張って歩きたい。
また、貧しさは人の心を狭くする、という言葉に、税金や物価上昇などのニュースが流れる日本で、それをどうしていけばいいかということも考えた。
そのひとつとして爺や澄世の母、周りの女中など登場人物はとても愛に溢れている。そう言った人に自分もなり、周りにも伝染させていけたらよいなと思う。
まずは隣の人に幸せを分け与える。それはゆくゆくは広がっていくと思う。
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はじめて、朝井まかてさんの作品を読んだ。直木賞受賞作の帯に惹かれて購入。
樋口一葉の師匠である、中島歌子の知られざる過去。
江戸の商家の娘だった歌子は、初恋の相手に嫁ぐ。幕末に水戸藩士の妻となったが、水戸藩は質素倹約を体現する貧しい土地。尊王攘夷を唱えて過激な行動に出る藩士たちと、不安定な情勢。ついに藩内の内乱となり、歌子たちも捕えられ投獄される。その獄内の悲惨さや、次々斬首させていく命のあっけなさが、幕末という革命の時代の恐ろしさを表していて恐ろしい。後半は引き込まれて一気読みだった。
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幕末が好きな私。
"尊王攘夷とはいったいなんだったのか?"
この問いを、忘れてはいけないと感じた。
内戦があってもなくても、
ひとびとの生活は続いてゆく。
そこに影を落としてはならないのだ。
もっと世の中のことを知りたい。
もっと日本を知りたい。
もっと世界で起きていることを知りたい。
これらの、いままでになかった、私の心の奥底から出てきた欲求は、私自身、そして私自身の【人生】を真剣に考えていきたいというおもいの表れであると考える。
この作品で感じたことは、
いまの世の中、いや世界に思いを馳せるきっかけとなるであろう。
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時代の流れ、運命は悲しくて
歴史で学ぶと「尊王攘夷」「水戸藩士」「内乱」と点で終わってしまう事柄に、ひとりひとりの人間のドラマがあることにはっとさせられます。
ひとりの女性がきゅんと恋をして力強く愛を貫いていく姿に胸が熱くなりました
その人の今に至るまでに、どんな人生があったか。
これまでもこれからも出会う相手を、その人の生きてきた過程も含めて大切にしたいなと思いました
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主人公で小説家の三宅花圃が萩の舎を開き樋口一葉の師として知られる中島歌子の過去を手記を読む形で振り返る形で物語が進む。手記を通した読んだ水戸藩内での天狗党と諸生党の争いが凄まじく壮絶で言葉を失った。
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間違いなく自分の記憶に残る作品だな、と思いました。壮絶な人生の中で、女性の生き様、使命、男性とは違った強さやしなやかさを感じます。現代の女性にはもしかしたら残っていないところなのかも、と思いつつ、本質は変わっていないのだろうか?自分にもそんな強さがあれば良いなと思えた作品です。
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やっと気持ちが乗って読み始めたら、一気読み。
なんとない恋物語から一変し、読むのが辛いのに、止められない。
歴史上幸せな結末でないとわかっているのに、水戸藩の幸せを祈ってしまう。
愛する人を失うとは本当に恐ろしいことだ。斬首も自害も戦死も、想像しただけでゾッとした。
それでも、人は、進まなきゃいけないのだよね。
どうしようもない時代を生きた人たち。その人たちが切り開いていった未来。それが、わたしが生きている今。忘れちゃいけないね。
やり切れない切なさ怒り、そして美しさ。
和歌に興味を持っていたタイミングだったこともあり、大変に響きました。
良き涙を流せた。ありがとうございます。
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幕末から明治にかけての水戸藩の内紛、そしてそれに翻弄される決して名を馳せたる人ではなかった武士、そして庶民の悲哀のお話。
明治維新は、「維新」という綺麗な言葉だけには括れない勢力争いの果てのクーデターではなかったのか...
最終盤、貞芳院と歌子の会話「薩長と水戸は何が違うたと思う」の問いへの想い、心に残ります。
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朝井まかてさんのお話を読むのは2作目。
実在する歌人の中島歌子さんを主人公にした物語。
生来の純粋さを持ちながらも、時代に振り回されながら生きてきた彼女が、どうして歌人として生きることになったか。
登世の物語に引き込まれて読み進めるなかで、知らず知らず緻密に張り巡らされていた一つ一つが一気に回収される最後に圧倒された。登世と以徳さまとを結びつけた歌のことと思っていたけれど、手記に書かれる最後の歌を読んだ時に、このタイトルがぐっときた。
全て知った後に、また歌人として生きたパートも含めて改めて読み返したい。
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読みごたえのある一冊だった。
それにしても、その頃の女性の立場のないことに驚く。自分からなにかを希望して行うということが、できなかった時代なのだろうか。登世はひたすら見合いを断っていたら理想の男性が向こうから結婚を申し込んでくれて、水戸に行ったあとは家事もできずに家で待つばかり、政変によって妻子まで牢につながれる経験は凄惨だが常に受け身で…いや、牢に同じくつながれた他の妻女は気丈に息子たちに論語を教えたりしていたのだから、すべての女性が無為だったわけではない。それでも、読んでいるともうなんだかもう少し何とかならないのか!と思ってくる。
最後まで読むことで、この小説の本当の良さがわかると思う。
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時は天下が揺れる幕末の動乱期。時代物の単なる恋物語などという生優しいものでなく、過酷な歴史の荒波に飲み込まれた、(樋口一葉の師でもある)歌人・中島歌子の壮絶な人生を描いた物語です。本屋が選ぶ時代小説大賞・直木賞受賞作品。
主人公の登世(歌子の幼名)は、江戸の商家の娘でしたが、一途な恋を成就させ水戸藩の藩士に嫁ぎます。夫は尊王攘夷を主張する天狗党の志士でした。
水戸藩では、天狗党と保守派の諸生党の対立が激化し、殺戮と拷問を繰り返す内乱へ突き進みます。
賊徒の妻として捕らわれ、女や子どもが次々処刑されてゆく中、登世は夫との再会を願い、命懸けで詠む歌だけが心身の拠り所なのでした。
地獄を潜り抜けて時は明治へ移り、歌子は歌の道に精進し「萩の舎」を主宰します。本書は、密かに書き残した登世の手記を弟子が読む構成です。
志に生き志に死んだ男たち、その事実を抱えて生きた女たち…。これら全てが壮大に描かれた物語でした。歌子が亡き夫に向け詠んだ「恋することを教えてくれたのだから どうか忘れ方も教えて…」という意の歌からは、心の叫び、慟哭が聞こえてくるようで心揺さぶられました。
わずか160年ほどの遠くない幕末。主君のための死・切腹は名誉、斬首は不名誉との恐ろしい価値観で、命がとても儚い時代でした。人間の愚かさを痛感します。私たちはこうした時代を踏まえ"今"を生きているのですね。
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第150回直木三十五賞
第3回本屋が選ぶ時代小説大賞
幕末の動乱を駆け抜けた登世(中島歌子)のドラマティックなノンフィクション小説。
江戸の裕福な商家で育ったお嬢様の登世は、水戸藩士の林忠左衛門に嫁ぎ、その半生はあまりにも過酷。
愛する夫と過ごした時間はどれだけあったんだろう。
賊徒の妻子として投獄されてからの様子は、あまりにも酷いと思ったけど、まかてさんは容赦なくじっくり描写されている。
先に処刑されていく婦人たちが残した辞世の句や、会えない夫を思って詠んだ登世の句がとても切ない。
「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしえよ」
激しい恋心が伝わる印象的な句だと感じた。
貞芳院との釣りの場面や、爺やとの温かい会話が素敵で良かった。
最後は意外な展開で終わった。
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幕末から明治にかけての過酷で混乱をきたした時代。
その時代を運命に翻弄されながらも懸命に生き抜いた、樋口一葉の師・歌人中島歌子の半生を綴った作品。
物語は歌子の弟子が、彼女の手記を読み返すという構成。
人気歌塾の主宰者として一世を風靡した彼女がどの様にして生き、何を思い胸に秘めてきたのかが記されていた。
無知なもので、中島歌子さんの事知らなかった〜。
「恋歌」はSNSでもよく見かけて、なんとなく気になってたので読んでみたのだけど、まさかこんな辛い内容だったとは。。
この時代には珍しい商家の娘・登世(歌子)と水戸藩の武士・林以徳の恋物語。
恋物語でもあり、幕末の内乱の多かった時代を描いた歴史小説でもあった。
武士である以上、命の危険は伴うものなのだろうけど、とにかく読んでて恐ろしかった。
捕らえられてしまうと、その家族まで投獄され、幼い子供にも容赦ないその凄惨な様子に胸がギュッとなる。
こういう時代を生きた人達がいて今に繋がってるんだと思うと、命の重みを感じる。
"君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ"
(恋を教えてくれたあなた、ならば忘れる術も教えて下さい)
生涯ただ1人の人を愛し続けた登世。
歌人になり詠んだ歌が悲しくも美しい。
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朝井まかてさんの歴史小説ははずさない!
しっかり読ませてくれます。
「類」では森鴎外の末っ子、「眩」では葛飾北斎の娘、この「恋歌」では中島歌子、とあまり他の小説では描かれない人を主人公にして描くのがすごいなぁ、目の付け所が違うなと思います。
幕末というと坂本龍馬や新撰組が有名だけど、水戸藩の話というのは聞いたことがなく、この小説で初めて知りました。
水戸藩内での内乱の末、敗れた天狗党の妻子たちに行った仕打ちは読んでいて辛いものでした。
君にこそ恋しきふしは習つれ さらば忘るることまをしへよ
恋することを教えたのはあなたなのだから、どうか、お願いです、忘れ方も教えてください。
懸命に生きても生きても、一番いてほしい人はこの世にいない。いない。
この箇所にはやられたなぁと思います。胸がぎゅうっとなります。いてほしい人がいない世界でどんな気持ちで中島歌子は生きていったのかを想像するたまらなくなります。
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和歌の話なのかと思っていたら、幕末の水戸藩のハードな話でびっくりした。歴史も中島歌子も全然知らずに読んだから、衝撃の連続で辛かったけど、良い小説でした。
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久しぶりの時代物。
「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ」
宇多田ヒカルさんの「FIRST LOVE」を思い出した。恋はいつの時代も変わらないのか⁈
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水戸藩の武士以徳に嫁いだ、江戸の商家の娘登世の物語。
恋歌を読むことによって、日本史の勉強をしていたのに忘れてしまった事柄を記憶に残せるように思う。例えば、桜田門外の変については、経緯や天狗党が関わっていたことは全く覚えていなかった。単語だけ覚えて、その由来まで学ばなかったからかもしれない。
水戸藩の様子についても全く知らず、天狗党と諸生党の対立と天狗党の乱の発生の様子についても興味深く読む事ができた。
以徳の妹てつの言動によって、武家と商家の違いと水戸藩の質実剛健さを知ることができた。
大日本史の編纂によって他藩より税金が重かった事が天狗党の乱の一因となっている。高邁な目的も大切だけれど、屋台骨を支える民衆を労ることも必要だ。
天狗党の妻子が捉えられてから後の描写は読んでいて辛かったけれど、その中でも階級による振る舞いの違いがよく描かれていて、特に上士の妻の振る舞いには切腹に通じる当時の精神のありようを感じた。
登世が生き抜く事ができたのは、以徳に会いたいという希望があったからなのだろう。
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幕末、水戸藩尊王攘夷派天狗党の志士である一人をただ男として、愛して嫁いだ娘、登世。恵まれた商家の贅沢な生活を惜しげも無く捨てる。
水戸藩は、困窮していた。嫁いだ先でも、持参金を使い果たす生活が続く。それでも、世間知らずな娘には、幸福な日々であった。
官軍になれなかった天狗党は、その妻子までも逆賊として投獄されていく。そこは、飢えと処刑の凄惨な泥梨だった。
内乱と殺戮の水戸から江戸へ逃れた、登世は、和歌の修行に励み、歌人中島歌子となっていく。
この小説は、弟子の一人が歌子の手記を読むという構成になっています。明治になり歌子は「萩の舎」を開き和歌や古典を教えていました。教え子の一人には樋口一葉。彼女には大変期待していたようです。今の娘達は、と自分の過去を振り返りながら嘆く事が多かったようですね。
過酷な幕末を生き抜き、悲惨な歴史を見てきた彼女ですが、歌人として、美しい伝統を残しました。
和歌って良いよねえ。辞世の句までも、美しくという生き様とか。
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明治36年、小説家三宅花圃が「師の君」中島歌子の手記を発見したのをきっかけに、40年前に歌子(本名・登世)の身に起きた物語が展開されている。
手記は一人称で書かれており、前半は豪商の娘として水戸に嫁いだ経緯と水戸での生活が描かれている。自分が望んだ結婚でありながら、夫は尊王攘夷の志士として家にいないときのほうが多い。「天狗黨之亂」の後は完全に生き別れ、そして死別。なので、恋愛から始まった小説なのだが、物語自体は恋愛感がやや薄い。多くは登世が激動した時代に生き抜いた姿である。
水戸を舞台にしたこの小説は、普段よく聞いた幕末の話と一線を画し、示しているのは敗者の物語。水戸藩の主張した尊王攘夷が珍しい考え方ではないものの、薩長のような財力もなく、内部の闘争も抑えできぬ水戸藩は破滅に瀕していた。
そのような時代のなかに、「勝てば官軍」という言葉があると同時に、「世が世であれば」と考えずにはいられないことも少なくもない。でも、本のなかに、こう言った。
「「世が世であれば」などと詮方ない想像はよそう。誰もが今生を受け入れてこの骸だらけの大地に足を踏みしめねば、一歩たりとも前に進めぬのだから。」(361)
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途中まではなかなか読み進まず、挫折しそうになりながら時間をかけて読んだが、中盤の天狗党の乱あたりからは夢中になり一気に最後まで読んだ。
幕末から明治への激動の時代に翻弄されながら懸命に生きた、1人の女性の物語。
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恋歌
著者:朝井まかて
発行:2015年10月15日
講談社文庫
初出:2013年8月発行単行本(講談社)
*第150回(2013年下期)直木賞受賞作
歴史検証をするノンフィクションの大書(「ラジオと戦争」)とか読んでいると、楽しめる小説が無性に恋しくなる。どれを読んでも面白い朝井まかての文庫を少し前に買ってあったので、貪るように読んだ。朝井まかて作品といえば、女性を主人公に、市井の生活感あふれる日常を描いたものが多く、平凡な人間なりの頑張りで、苦労をしながらも最後にはうまくいく、それも大成功ではなく、そこそこいい人生に落ち着く、といった趣の小説を期待する。ところが、この小説は珍しく結構きつかった。読むのがしんどくなるような部分もあったが、でも最後はきっとうまくいくと信じることができたので読み切ることができた。読んだ後で、これが直木賞作品だと知った。
明治の歌人、中島歌子の数奇な生涯を描いた作品だという。中島歌子は、樋口一葉の和歌の師匠でもあり、この小説は、一葉の姉弟子でもある作家の三宅花圃(田邊龍子)が、世を去る直前の中島歌子の手記を読むスタイルで書かれている。舞台は江戸時代の水戸。江戸で池田屋という宿屋に生まれた登世(歌子)は、兄がいたが、母親がその接客の才を見抜いて宿屋を継がせるべく婿を取る算段をしていたが、水戸藩士で宿屋の客であった林忠左衛門以徳(もちのり)に一目惚れする。母親の反対を押し切り、水戸へと嫁ぐ。
以徳は攘夷派の若き志士で、天狗党という集団を作り、諸生党と対立していた。桜田門外の変に参加する予定だったが、別件で怪我をして間に合わず、それで命を長らえていた。生麦事件なども起き、水戸藩も益々ややこしくなっていった。嫁いだ後、以徳は下士などの子弟に剣術を教える学校の宿舎に住んでいたため、水戸の屋敷に戻ることは少なかった。ランクは中士であり、質素倹約を大切にする水戸藩として生活は裕福ではない。以徳の妹のてつともしっくりいかない。
攘夷の志士でさらに若い藤田小四郎が、屋敷にやってきた。てつは好きになった。彼はさらに過激な尊皇攘夷論者だった。ついに天狗党の反乱がおきた。妻や子供たちはつかまり、牢獄に入れられた。登世もてつも、入れられた。牢獄は劣悪な環境だった。永久に入れられるもの、死刑になっていくもの。悲惨な日々が続く。しかし、わが身よりも以徳が生きているかどうかが気になる。会いたい、の一心だった。凄絶、いや、壮絶な日々。
次々と牢仲間が処刑されていく中、2人は解き放たれた。そして、江戸へ向かった。世の中の変化に翻弄される2人。維新になると、今度は天狗党が英雄になる・・・小四郎は捉えられて斬首されていたが、以徳は怪我のために生きのびて京に向かったという噂だった。一縷の望みにかけて、江戸で暮らしたが、結局、それは根も葉もない嘘で、獄死(病死)していたことが分かった。
中島歌子に長年仕えた下女。それは、なんと諸生党の大物武士(仇敵)の子供だった。歌子はそれを知って雇っていた。そして、その下女の三男に自分の財産などを与えるという遺言を残していた。
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歌人中島歌子の話かと思いきや 幕末の水戸藩 天狗党の事が 詳細に描かれて それはそれで とても興味深く 時に辛く胸を締め付けられながらも 一気に読んでいました。
そこここに 散りばめられた歌も 良くは分からないなりにも その時代の人の心が伝わるもので 歌の良さが沁みてきました。
歌人としての中島歌子は 分かりませんが 水戸藩天狗党の妻として生きそして逝った人だったのかなと 一人の人を想い続けた気持ちの強い女性という印象でした。
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不慣れな時代もので、さくさく読めかったけど、教科書とか学ぶ幕末なんてほんの数ページだけど
、こんな時代があって、生きた人がこんな思いだったのだと、ただただ衝撃だった…。