朝井まかてのレビュー一覧
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明治天皇の崩御にともなって、明治神宮が出来る。
神聖な人口の森(杜)を作る為の、ストーリーが楽しめる。
日本という国が、江戸という共和国からから脱却して一つの国になった。
その初代元首の苦悩と人となりが軸となり、本書が進んでいくのが良く分かる。
自分自身、どんな元首になるべきなのかに一人で悩み、考え、口を出さず、態度と詞華でもって政治に接し、明るかった人となりが、日露戦争を境に寡黙になっていく。
自身のことを二の次にして、国務に精励する。
日本をひとつにし、世界と対等になる為に駆け抜けたのが明治時代。
伝統と風習を守りつつ、欧州の近代国家を目指すという、ジェットコースターな統治。
模倣する国もなく、誰にも教えてもらえない舵取りと、戦争という心痛ましい政治外交にも対処していかないといけない。
「国のため たふれし人を惜むにも 思ふはおやの こころなりけり」
詠み人~明治天皇
落陽 (明治の終焉、日が沈む)
落葉 (明治神宮の杜、落葉樹)
洛陽 (都の異称、つまり京都)
すべて本作品の明治天皇に対する隠語になっている。
門井慶喜氏の言葉で、すっきりした読後感でした! -
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この著者の時代劇小説はどれを読んでもおもしろくて、飽きない。
生物、特に植物に詳しく博識なので、いろんな知識が得られる。
大阪出身の人なので、一度はお目にかかりたいかたである。
昔も変わらないお役所仕事、窓際族の典型の武家さん達が松茸の偽装や産地偽装して、お上にごますり、忖度、手柄横取り、横領、していてるバブル世代と右にならえの上司たち。このままではいけないと 藩政改革をすることになったその御松茸同心に命じられた今時の次世代部下が松茸の知識も何もないまま松茸山を舞台に奮闘する、松茸をよみがえらせ里山を循環させた物語り。歳月をかけて松茸の生態を勉強してちゃんと松茸が育つ環境に戻して里山資本主義のように経済を回し始めたところがおもしろくてとてもよかった、バカにしていた上司、先輩武士たちは横領したり忖度してたりがばれて処分されたのが気持ちよかった、物語の中の出来事が今の安倍内閣を彷彿させてくれて加計学園や森友学園問題もこの小説のように罰せられたら総会なのにな。現実はそうもいかないらしい・・・・ -
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ネタバレ西鶴の盲目の娘「おあい」からの視点で描いた井原西鶴。
最初の部分は、「おあい」は父親の西鶴の人となりに対して、常に嫌悪感をいだき、それが読者にも伝播し、途中で読むのを止めようかなと思ったほどだった。
人を集めてはお山の大将になり、ひときわ騒がしく、人間の欲望の厭らしさを凝縮したような西鶴が、時を経るに従い、特に俳諧で身を立てようとした西鶴が、草双紙の戯作者へと変貌する当りから、娘の「おあい」は、血の通った情の厚い父親として見直していく。
同時代に活躍した俳諧の西山宗因、其角、芭蕉や、浄瑠璃作者の近松門左衛門などが登場し、この時代に興味をそそられる。
特に、芭蕉は西鶴を厳しく批判し、「点者として見当はずれなことを言い散らして、句の良し悪しをちゃんと判じておらぬ。西鶴は、俳諧をまるでわかっていない」、そしてこう批判したのである。「阿蘭陀西鶴、浅ましく下れり」
それに対して、西鶴は「わしが浅ましゅうなったやと。阿呆か。この阿蘭陀西鶴、名乗りを上げたその日ぃから、さもしゅうて下劣な輩やと自ら触れてあるわい。つつくんはそこか。違うやろ。せっかく町人の、俗の楽しみになったもんをわざわざ難しゅうして、皆が手ぇの届かん排風に祀り上げてんのは己やないかい。ああ、なるほど、お前はんは清いわ、尊いわ、言葉に凝りに凝って磨きをかけて、これが芭蕉の句ぅでござい、はっ、それが何やっちゅうねん。小っちゃい言葉の端切れにこだわって、理詰めにあれこれ判じて。それが一体、何になる。凝り性の澄まし屋がっ。俳諧が何ぼのもんじゃい」
この西鶴の言葉は、著者が一番西鶴の人となりを表現しているような気がする。
また大阪弁を使うことで、より俗っぽい人柄を表している。
そして、西鶴の芭蕉への批判が俳諧そのものへの決別となってゆく。
話が脱線するが、私の好きな大岡信は、その著書「百人百句」に、百人の俳人の一人として「井原西鶴」を取り上げている。以下「百人百句」からの引用。
代表句として、
・長持へ春ぞくれ行く衣更
西鶴は、西山宗因の門の談林派の新風における俊英だった。
一定時間に独吟連句の数を競う「俳諧大矢数」に長じ、42歳の時住吉神社で、一昼夜23500句独吟を興行、世間を驚倒させた。
(略)
井原西鶴といえば「好色一代男」「武道伝来記」「日本永代蔵」「世間胸算用」等の作品で、旧来の物語の伝統を破り、好色物や律儀な武家気質、あるいは町人のしたたかな経済生活を描いて、人間の欲望をいきいきと描写した近世最大の小説家である。
西鶴の小説の簡潔で勢いの強い文章は、俳諧の修行にその基礎があるともいえるだろう。
「おあい」の父への感情の変遷と同じように、最初に読み始めた時の西鶴への嫌悪感が、西鶴の人となりが分かるに従って、徐々に薄れ、そして小説の最後に来て、ちょっぴりと泣かせる、良い小説でした。
最後に付け足すと、前に読んだこの著者の葛飾北斎といい、上記の井原西鶴といい、浮世絵師や戯作者は、人気の割には貧乏で、この時代の社会的地位の低さがよく分かる。 -
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おあいが父、西鶴の本音というか気持ちに、少しずつ気づいていく様子がとても良かった。
おあいの目線なので、読んでいる方も最初は西鶴のことをうとましく思い、理解不能だと感じるように引っ張られている。
それが、辰彌、それから荒砥屋、そしてお玉らの言葉によって、父の内面、知ろうとしなかった気持ちに気づかされる。
見えていれば、もしかしたら、言葉と表情が違うことがもっと早く分かったかもしれない。でも、おあいには口に出された言葉が全てだった。でもでも逆に言えば、言葉がしっかりしていればなんだって伝わるってことなのかも。
西鶴の造形もなかなか興味深かった。けしていい父親ではなかったけれど、人として一本筋が通っているというか。ぶれなければいつか、どこかにたどり着けるという泥くさい道を地で行った人生だったんだろうか。
おあいのふとした言葉に「そうか、曲節や」とヒントを得るところ。
商人の物語を出そうとしたら本屋に難色を示され、「何が安心や。好色ものを出す時、お前はんら、何て言うた」と啖呵をきるところ、とかが良かったな。
「お前はんらは、己の足で道を見つけたいとも思うてないんやろう。ほなら黙ってわしについて来んかいっ」
そして、西鶴が貧乏人の身過ぎ世過ぎを書いた新作を聞いて、「これぞお父はんの真骨頂や」と思うおあい・・・じーんとしたなぁ・・・。 -
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井原西鶴とその娘おあいの物語。
亡き母親から炊事洗濯を仕込まれた盲目の娘おあい。
見栄っ張りで威勢だけはよく、娘の気持ちを忖度しない父西鶴を嫌っているのだが――。
日常の音や匂い、人の声、季節の気配を繊細にとらえるおあいの一人称で書かれているため、あらゆる描写が新鮮に感じられます。
かたくななおあいの心。
近くにいるのに互いに伝わらない父と娘の気持ち。
物語が進むにつれて変わっていく様子が、温かくも切ない。
すべて読み終えて、帯にある「お父はんのお蔭で、私はすこぶる面白かった」という言葉を見ると、ぐっとくるものがあります。
大阪弁の会話、ってなんかいい。
感情とか情感が加味されて、表現としてずるいなあ、という気もします。 -
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若いころは「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれ、ブイブイ言わせていた三人娘も、それぞれの人生や家庭に、鬱屈と閉塞感を感じる年齢になってきた。その三人がふとした思い付きと勢いから、伊勢参りに行くこととなり…
旅の醍醐味がいっぱいに詰まった小説です。旅先での様々な人との出会いは、クスリとさせることもあれば、しんみりとさせられるところも。だんご屋を営む老夫婦の家に居候したり、奥さんに尻を敷かれるご主人を叱咤したり、はたまたお金をだまし取られたり、危ない男との恋の予感があったり…
三人娘の個性の強さも読んでいて楽しく、旅先での様々な事件、出来事もどれも読ませます。それは三人娘以外のどの登場人物たちにも表情があり、個性があるからだと思います。
読んでいる自分も三人と一緒に旅に出ているような、そして自分も旅に出たくなるような、魅力あふれる小節だったと思います。 -
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2015年9月23日
女3人のお伊勢まいりは抜けまいり。
幼馴染の3人は長所短所を知り尽くし、気のおけない仲間で、ずけずけものは言うけど、放っておいてほしいと察することもうまくやる。 みすずちゃんにしてやられたときの団子屋の切り回しや朝顔尽くしの小間物屋、博打で稼ぐきっぷの良さが痛快。みすずちゃんへの仕返しもすごく良い。
でも今思い返すと3匹のおっさんシリーズと似たところあるかも。
博打で稼ぐのは結構いろんな本に出てきてた。
おしかちゃんがまたあの家に戻るのか。ようやくできた恋人から離れていくおいのもせつない。元の鞘に戻ろうとも心持ちはかわってる。成長物語だね。
すごく面白くて好きな本です。 -
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ネタバレチャペックのエッセイからこの小説を読むという順番、読書の神様もイキな計らいをしてくれるものである。
造園業を舞台にした時代小説。人情モンであり、推理モンであり、恋愛モンでもあり意外や意外に怪奇譚の一面も持った盛りだくさんな中身。盛り込みすぎかなと思いきや、庭・空仕事と言うしっかりした幹を据えているので意外と腰の据わりが良い読み心地。
主人公のまわりを囲む登場人物たちの人物像が爽快。出来すぎかと思うくらいのキャラ設定、江戸時代にそんな生き様するヤツおらんやろと思う部分も少々あるも、読み心地損なうには至らず。
朝井まかて、前から気になっている小説家だったけど、かなり好みの小説を書く作家のようである。追いかけてみようと思う。