朝井まかてのレビュー一覧

  • 落陽(祥伝社文庫)

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    明治天皇崩御に際し、渋沢栄一ら政財界人は神宮を帝都に創建すべしと主張するが、林学者の本郷高徳らは風土の適さぬ土地に森を造るのは不可能と反論し、大激論となる。
    大衆紙の記者瀬尾亮一は神宮造営を調べる同僚に助力するうち、取材にのめり込んでいく・・・。

    明治神宮造営という観点から明治時代がどのような時代だったかを紐解いていく物語。
    かなり堅苦しい主題ですが、さすがは朝井まかてさん。
    一般市民の記者という神宮造営の「外」の視点から専門的なことも噛み砕いてやわらかく語られていくので、読み手も興味をつないでどんどん読み進めていくことができます。

    しかもこの主人公の亮一という男、記者という立場を利用して

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    2020年08月24日
  • 落陽(祥伝社文庫)

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    うだつのあがらない東都タイムス記者の瀬尾亮一から始まる明治天皇崩御から明治神宮建設の時代を描く。

    なかなか中盤あたりまでは、非常に読み進めづらく何度も読むのをやめようかと思ったが、読後は心に残る一冊になった。

    瀬尾亮一が、明治神宮建立に直接関わったわけではない。が、中盤から徐々に湾曲的に明治天皇の生き様、また関わってきた国民の気持ちの移り変わりの
    さりげない描写が明治天皇のための人工林造営と重なりふわっとした優しい輪郭で“その時代”が描写されてあった。

    人工林がゆっくりと150年後、自然林となるように明治天皇の存在も作中では、序盤から中盤、終盤に至るなかで自然に存在感を増していった。

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    2020年07月26日
  • 残り者

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    幕末の江戸城明け渡しのなか、大奥に留まる5人の「残り者」がいた。
    明け渡しの際でそれぞれの立場、過去を絡ませながら大奥で勤めてきた誇りや大事にしてきたものを再確認する。大奥のドロドロしたイメージではなく、よもや現代に設定を置き換えてもすらすら読めるほど5人の勤め人としての矜恃を軽やかに描ぐ。

    最後の終わり方もほっこりとして、とても気持ちの良い終わりかた

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    2020年05月22日
  • 眩(新潮文庫)

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    葛飾応為、お栄を浅井まかて流に描いた一作。山本昌代の応為坦坦録が北斎とお栄に焦点を当てているのに対して、お栄を中心に虚実の物語を組み合わせて、新たな物語を紡ぎだしている。巣ごもりのこの時期に退屈させないi一冊だった。

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    2020年05月05日
  • 先生のお庭番

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    ネタバレ

    先生(=シーボルト)のお庭番になった
    熊吉が主人公。

    植物の描写がとても良かったです。
    主人公が日本の植物を海外に送ろうと
    試行錯誤する場面は学がなくても
    やれる人は存在するなぁ…としみじみ
    感心しました。私は怠け者なので…。

    シーボルト自体はうっすらとしか記憶して
    いなかったけれどなかなか色々な面を持つ
    人物だったようで、日本史は非常に苦手な
    勉強でしたが、シーボルトが来日していた
    時代の歴史を振り返ることができて面白かったです。

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    2020年04月09日
  • 福袋

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    面白かった。時代小説をこんなに身近に感じて読んだのは初めて。まるで自分もその場にいて、事の成り行きを見ているような感覚に…。
    特に、暮れ花火は切なくて泣けました。眩を読んで間もなかったせいなのか、主人公がお栄と重なって、もう1人のお栄を見ている気がした。

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    2020年03月29日
  • 残り者

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    江戸城開城の時、大奥に残った女性が5人いた。
    夫々の思いがあり、城を出ることが出来なかった。
    その5人の江戸城での勤めや開城の時何が起こったかをそこに居たかのように、また女性という立場から捉えていて、
    興味深く面白かった。最後にその後話もあり、こうやって江戸は終わっていったのだなあと感慨深い。

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    2020年03月28日
  • 藪医 ふらここ堂

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    藪?実は名医の三哲とその娘おゆんを中心に、患者たちとの交流を描いた下町情緒たっぷりの医療時代小説。
    解説によると、実在のモデルがいるとか。
    書中、医者を評して、「その医者が名医かどうかは、患者が、世間が決めることです。目指せば目指すほど、多分医者の本分からははずれましょう。・・・人は何者になるかではなく、何をするかが肝心ではないでしょうか」と語る。
    もちろん、医者ばかりでなくほかの分野にも言えることだろう。

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    2020年03月24日
  • ちゃんちゃら

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    朝井まかてのデビュー2作目。
    江戸時代の植木職人の世界を描くという点では、1作目と共通しています。
    大名屋敷が集まっている江戸では、庭園づくりに熱が入り、庭園都市になっていたというのが面白く、言われてみればなるほど、と。

    江戸は千駄木町の「植辰」の親方に拾われた浮浪児のちゃら。名前もなかったが、ふとしたいきさつで「ちゃら」に。
    高いところを飛び回って逃げる浮浪児に辰蔵親方が笑いかけ、植木屋の仕事は空に近い「空仕事」だと言ったのだ。
    ひょうひょうとしているが、腕はいい親方と、兄弟子たち。
    親方の娘のお百合はまだ15だけど、男所帯をしっかり取り仕切っていて、ぽんぽんと威勢がいい。年齢の近いちゃら

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    2020年03月19日
  • ぬけまいる

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    非日常に飛び出したくなるよね!わかる!!!
    って共感しながら読んだ。
    今まで人生なんだったんだろうって思いながらも、培ってきたことに助けられてる。けしてムダじゃないんだよねどんなことも。
    江戸に帰った三人のその後が知りたいな。

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    2020年02月16日
  • 最悪の将軍

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    最悪の将軍犬公方綱吉を文治の治世を行った将軍として捉えなおす時代小説。もともと話の展開、心をつかむ挿話の見事さなど筆力のある作家だが、災厄の世を治める権力者を描き切ろうと力が入っている。最後に「我に邪なし」と言い残したと書くあたりに作者の権力者像が買い切られていると感じた。

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    2020年02月02日
  • 福袋

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    Tさんのお勧め。

    江戸を舞台としていても、
    どったんばったん捕り物だったり、
    おどろおどろした、またひょろひょろした妖し物だったり。
    それはそれで良い話だったりするのだが、
    やはり人情物を忘れるわけにはいかない。

    ちょっと大人の江戸物。
    貧乏くさいお贔屓がついた役者、
    神田祭を差配することになった家主、
    やたらと大喰いの出戻り女、
    看板の文字を書く筆。

    一番好きだったのは「莫連あやめ」かな。
    流行らない古着屋の娘。
    着物やその着方を見ただけで、人となりがわかってしまうが、
    近頃兄に嫁できて、よく出来た義姉にちょっとひねている。
    そんなあやめが思いついた莫連流は、
    若い女の子が男物を粋に着

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    2020年01月28日
  • 最悪の将軍

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    徳川幕府の将軍で、評判の悪い筆頭に挙げられるのが「犬公方」と称される五代将軍綱吉だろう。
    その綱吉を主人公にした歴史長編。
    心ならずも将軍となった綱吉は、己の理想を実現せんと、「武」ではなく「文」で治める世の中にと、改革を断行する。
    赤穂浪士の討ち入りも、彼にしてみれば暴挙としか見做しえない。
    時代は大地震や富士山の噴火が相次ぎ、綱吉は民の安寧を一身に祈る。
    正室の信子は、「断じて、最悪の将軍にあらず」と断言する。彼女との仲睦まじい関係は、良き家庭人として、現代の理想の夫婦像にも匹敵。
    そんな綱吉の姿勢は、「我に邪無」という言葉に集約される。
    綱吉の死後、彼の政の評価について問う信子に対して、

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    2020年01月21日
  • 最悪の将軍

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    徳川綱吉、徳川五代将軍、生類憐みの令、犬公方……
    単語でしか知らなかった一人の将軍の生き様を見せてもらった。
    こんな人だったかもしれない、こんな人だったらいいなと思える。そして 側近の二人は仕事上の、妻 信子は心を支えてくれる強力な味方だったのだろう。
    特に 姑や側室にも気持ちを寄せながら夫との気持の繋がりを豊かにしている信子の在り様に惹かれた。

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    2019年12月16日
  • 福袋

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    江戸庶民の生活色々の短編集。
    江戸という時代に一所懸命生きている人達の生活が中々愛おしい。
    祭り、湯屋、長屋、古着屋などで起こる出来事は、人情にも包まれて温かい。
    大食い女の「福袋」、弾ける女の子のいる「晴れ湯」などなど楽しかった。

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    2019年11月24日
  • 残り者

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    オモシロかった。朝井まかてさんに間違いないなって感じで満足でした。
    女5人の立場や背景に引き込まれて楽しかった。

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    2019年11月08日
  • すかたん

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    ネタバレ

    再読だけど、面白かった。銀二貫とかを彷彿とさせるね。一生懸命農村を何とかしようとする若旦那に惚れちゃうよね。女ぐせ悪いけど。お家さんがとっても魅力的です。

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    2019年11月07日
  • 福袋

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    まかてさんらしい人情噺で面白かった。表題の福袋、弟がちょっといい気味(笑)。最後のひってんがちょっと切なくてなかなかよかったな。食べ物屋が出来たら、誰かと再会するかも。莫連あやめも面白かった。

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    2019年11月07日
  • 最悪の将軍

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    味わい深い名著。文治を貫く綱吉に、邪なところは何一つない。にもかかわらず、次々と起こる天災と悪評。静謐な文章が、世の理不尽さと人間の怖さを増幅して感じさせる。しかし、吉保の言葉にあるように、最後は歴史が評価する。そして、信子が、仔犬を飼いたがる子供達の姿に、綱吉の目指した真の憐みを見出だしたラストシーンに救いを得た。

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    2019年11月01日
  • すかたん

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    上方言葉がぽんぽん飛び出て、でっちや商人が出てきて、上方落語みたいだった。風景描写や年中行事、野菜のことなど、大阪通になれるくらい詳しく書いてあって、面白い。

    大阪に来たばっかりの他所の人とか、詳しくなりたい人とか、これを読んだらいいと思う。

    大阪の風情を書きたかったのかな、というところで、思っていたより恋愛要素は薄かった。商人としての生き方とか、主人公の自分を励ます言葉とか、さりげない言葉にはっとする、胸に刺さる書き味があって、この人の魅力だなあと思う。

    たんかきるところとか、主人公の亡き夫への気持ちとか、ここぞ、というところの聞かせ方がうまい。江戸時代の話だけど、夫婦や子ども、独り身

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    2019年11月15日