あらすじ
今、いちばん勢いのある時代小説作家・朝井まかてが、こよなく愛する江戸の町を舞台に、歌舞伎役者や職人、商売人など様々な生業の人々の姿を、中身の詰まった8編の人情話に仕立てた傑作短編集。
1編目の「ぞっこん」では、「筆」が語り手になる。看板書きだったあるじと「筆」との出会いや情の深まりを、緩急をつけた落語調の文体で読ませる。2編目の「千両役者」は、ぱっとしない歌舞伎役者に千載一遇のチャンスが巡ってくる。もう後がない役者の焦りと、破滅と背中合わせの功名心が生々しく伝わる。3編目の「晴れ湯」は、湯屋(銭湯)を営む家に生まれた少女が主人公。客の戯作者や長屋のおかみさんたちのふるまい、子どもなりの家業への意気込み、江戸で恐れられた火事……。少女は大小のドラマに遭遇しながら、道楽者の父と働きづめの母という夫婦を、一つの男女の形として受け入れていく。続いて、自分のやりたいことを見つけた古着屋の少女が巻き込まれた揉め事に、愉快なオチを付けた4編目「莫連あやめ」。離縁された大喰らいの姉と、彼女を馬鹿にしながら利用する弟の、それぞれの顛末を活写した5編目「福袋」。さらに、女絵師が描いた枕絵が、昔の恋を照らす6編目「暮れ花火」。堅物の家主が、神田祭のお祭掛になってしまった7編目「後の祭」。その日暮らしの遊び人、卯吉と寅次の二人が助けた男からお礼にもらった品で商売を始める8編目「ひってん」。と、まさに福袋のように、何が入っているかわからないワクワク感とお得感。直木賞作家・朝井まかて初の短編集にして、第11回舟橋聖一文学賞を受賞した傑作!
感情タグBEST3
匿名
天保の改革くらいの時代の、庶民の生活を生き生きと活写した短編小説集。
冒頭の作品は、主人公が筆、というところでもう面白い(笑)
湯屋の少女は可愛いし、莫連女はカッコ良い。
羽織裏の肉筆画を描く女絵師の、少し色っぽい話もあるし、神田祭のトップをくじで引いてしまう旦那、その日暮らしの若い衆が、モノを売る楽しみに目覚める話など。
表題作は大食いが過ぎて出戻りになった姉を抱えて弟が、姉を大食い大会に出させて賞金を得て、うまくいかない妻を離縁しようとする、おかしみの中に少し哀しさも混じる話でした。
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ぞっこん/千両役者/晴れ湯/莫連あやめ/福袋/暮れ花火/後の祭り/ひってん
それぞれが暮らす町でそれぞれの事が起きる。辛かったり苦しかったりしてもしまいには何とかなるのが嬉しい。
ひってんもそれなりにね
Posted by ブクログ
久々に昨年末本屋さんに行って、お正月に読もうと思って買った「福袋」。
朝井まかてさんは贔屓の作家なので、タイトルだけで...
庶民の暮らしは切ないね、笑いのなかにも哀しさが溢れてる。
Posted by ブクログ
時代小説短編集。暗い話はない。
① ぞっこん
付喪神の話
②千両役者
なかなか売れない役者と贔屓の唐辛子屋の話。
これから…!って時に話終わっちゃう。
なんかちょっと物足りない。
③晴れ湯
目まぐるしく働く湯屋の一人娘の話。
店の切り盛りと事件と家族関係と、みたいな
朝ドラ的な話。綺麗な終わり方で良い。
④莫連あやめ
女たちのファッションを絡めた争いの話。
友情ファッション家族関係…いくつかの話が
並行で進むけどどれもちょっと物足りなさがある。
⑤福袋
大食い故に離縁され出戻った姉と欲深い弟の話。
たくさん食べつつグルメの姉の食べっぷり楽しい。
最後は弟に罰が降るし姉は大食を生かす職に就く。
⑥暮れ花火
絵師と笑絵(春画)の話。
今までの話とはちょっと雰囲気が違ってエロス。
男に傷つけられた女が過去を乗り越えて
誠実な男と新しい恋に進むみたいな話。
⑦後の祭
江戸の大きな祭りを取り仕切る事になった町役人。
祭りが始まるまでのドタバタと始まってからの
賑やかなどんちゃん騒ぎ(一方運営は駆け回る)、
そんな雰囲気に没入できて楽しい。
最後には納得いかない。前半がいいだけに残念。
⑧ひってん
自由気ままなその日暮らしの男の分岐点の話。
ひょんなことから商売の才が芽を出し
その日暮らしから立派な商人になる話だけど、
なぜか寂しさや切なさみたいな、漠然とした
もう戻らないあの日々を思わせる。
貧しかったけどあの頃も楽しかったよねという。
Posted by ブクログ
江戸を舞台の、人情溢れる庶民の生活を描く、8つの短編。
ぞっこん・・・お互いがぞっこんになった“筆”と文字職人の歩み。
お上の動向に左右されながらも強かに生きる、人々の姿。
千両役者・・・大部屋役者の花六と、贔屓で通う辛子屋の太之助。
迎えるのは大どんでん返し。そして、一か八かの大博奕へ。
晴れ湯・・・湯屋の娘・お晴。好きな稼業を手伝う中、知るのは、
客の皆に愛される湯屋の事。父母の関係と自分への想い。
莫連あやめ・・・出来の良い兄嫁に心乱される古着屋のあやめだが、
親友を貶めた高慢な娘たちとの諍いが。それを救ったのは・・・。
福袋・・・大食漢で離縁された乾物屋・濱屋のお壱与。
弟の佐平は姉を大食い大会に出場させて、賞金をせしめる。
それは己の目論見のため。が、福袋。福が去ったら、空袋。
暮れ花火・・・羽裏の絵師・おようは、辰巳芸者の美代次から笑絵を
注文されるが・・・フラッシュバックの如きの過去の出来事。
後の祭・・・神田明神の「お祭掛」になってしまった家主・徳兵衛。
番狂わせはあれど奮闘する。町の衆も。神様も?
そう、祭りってのは楽しむもんだ、あたしらの天下祭だ!
ひってん・・・生業の無い卯吉と寅次が、人助けで貰った櫛を売る。
商いの思案に目覚める卯吉。時が過ぎ、商人として
歩む彼の心に浮かぶのは、ひってん長屋の想い出。
江戸には様々な生業がある。
それらに携わる人々の喜怒哀楽と生活を描く、人情溢れる短編集。
江戸の庶民の生活には生業があります。
順風満帆もあるし、努力を重ねるものもある。
だが、何かをきっかけにして、多大な変化が訪れることもある。
大御所・家斉、老中・水野の質素倹約、北町奉行・遠山の登場。
時代の風潮の変化もさることながら、人の関わりや縁も同様。
その変化の中での、喜怒哀楽溢れる人々の生き方が描かれています。
場所は江戸。江戸っ子の胸をすく鯔背な言葉は心地よく響き、
変化に対峙する心根には、粋を感じることも。
そして江戸の情緒溢れる詳細な、暮らしの情景描写の見事さ。
神田祭の熱量の凄さは行間から迸るほどの熱さでした。
Posted by ブクログ
売れない役者、湯屋の娘、絵描き・・・等々
江戸の市井に生きる人々を描いた短編集
どの登場人物も懸命に生きていて
その懸命さが可笑しみを誘う
じみじみと楽しい1冊
Posted by ブクログ
ラジオ深夜便 ラジオ文芸館
暮れ花火
ガッテンの小野さん朗読(^_^;)
なんか変だなぁって思ったのは一瞬
たちまち登場人物が生きて語り出します
以前に読んだ「百日紅」を思い出す
北斎の娘も絵師だったもんね
カッコいいですね
江戸の人々って魅力的です
2022/4
前回は朗読で一部を↑今回は改めて文字で全体を
生き生きとした江戸の人々がいい感じ
現在もこんな時間が何処かで流れてるかもしれないけど
やっぱり江戸という時代が面白い
人間じゃない筆が語る話よかったな
Posted by ブクログ
面白かった。時代小説をこんなに身近に感じて読んだのは初めて。まるで自分もその場にいて、事の成り行きを見ているような感覚に…。
特に、暮れ花火は切なくて泣けました。眩を読んで間もなかったせいなのか、主人公がお栄と重なって、もう1人のお栄を見ている気がした。
Posted by ブクログ
Tさんのお勧め。
江戸を舞台としていても、
どったんばったん捕り物だったり、
おどろおどろした、またひょろひょろした妖し物だったり。
それはそれで良い話だったりするのだが、
やはり人情物を忘れるわけにはいかない。
ちょっと大人の江戸物。
貧乏くさいお贔屓がついた役者、
神田祭を差配することになった家主、
やたらと大喰いの出戻り女、
看板の文字を書く筆。
一番好きだったのは「莫連あやめ」かな。
流行らない古着屋の娘。
着物やその着方を見ただけで、人となりがわかってしまうが、
近頃兄に嫁できて、よく出来た義姉にちょっとひねている。
そんなあやめが思いついた莫連流は、
若い女の子が男物を粋に着こなす流行りになる。
でも実は本物の「莫連」が近くにいた…。
ファッションに一喜一憂する女の子たちはかわいい。
Posted by ブクログ
江戸庶民の生活色々の短編集。
江戸という時代に一所懸命生きている人達の生活が中々愛おしい。
祭り、湯屋、長屋、古着屋などで起こる出来事は、人情にも包まれて温かい。
大食い女の「福袋」、弾ける女の子のいる「晴れ湯」などなど楽しかった。
Posted by ブクログ
まかてさんらしい人情噺で面白かった。表題の福袋、弟がちょっといい気味(笑)。最後のひってんがちょっと切なくてなかなかよかったな。食べ物屋が出来たら、誰かと再会するかも。莫連あやめも面白かった。
Posted by ブクログ
音読したら面白いだろうなあと思うような小気味のよい会話で物語が進んでいく。いずれの短編も終わりは爽やか。
疲れてお茶さんで一息入れたり、季節のもので簡単なおかずを作ったり、疲れた時はお惣菜を買ったり…… と、随所に今に通ずるごくごく普通の暮らしぶりが垣間見えるのがとても興味深い。時代は流れても、人間のすること、欲することはさほど変わらないんだなあと思わされる。登場人物誰もが身近な存在に感じられた。