類

類

小説・文芸
1,166円 (税込)

5pt

明治44年、文豪・森鴎外の末子として誕生した類。東京千駄木の大きな屋敷で何不自由なく暮らしていたが、大正11年に父が亡くなり生活は一変。大きな喪失を抱えながら、自らの道を模索する類は、次姉の杏奴とともに画業を志しパリへ遊学。帰国後に母を看取り、やがて、画家・安宅安五郎の娘と結婚。明るい未来が開けるはずだったが、戦争によって財産を失って困窮していく。昭和26年、心機一転を図り東京・千駄木で書店を開業。忙しない日々のなか、身を削り挑んだ文筆の道で才能を認められていくが……。自らの生と格闘し続けた生涯が鮮やかによみがえる圧巻の長編小説! 第34回柴田錬三郎賞受賞作品。

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類 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    森鴎外の家の息子の類の一生。面白かった。

    森林太郎と志げとの間に類は生まれた。父は陸軍軍医総監、陸軍省医務局長。類には姉がいて、茉莉、杏奴、兄の於兎は離れに暮らしている。
    類の成績は良くない。ことに算数。父に教えてもらえばわかるのだが。
    於兎がドイツに留学。茉莉も夫が留学中のパリへ。父はイギリスの皇太子が正倉院にいらっしゃるので、博物館長として奈良へ出張。だが父はげっそりして帰宅。病気なのだそうだ。父が亡くなる。

    類は中学生になった。小さな一軒家で使用人と家族と暮らしている。兄の於兎は東京帝国大学医学部の助教授を勤めている。類は中学を中退する。類は絵を描くようになった。茉莉が離縁されて帰ってくる。杏奴は肺を患ったが治る。杏奴は絵に復帰する。庭に池を掘る。杏奴の方が絵がうまくてイライラする。

    モデルの春江に恋をする。茉莉は連載を持つ。茉莉はふたたび嫁ぐ。しかしまた離縁される。

    類と杏奴はフランスに行く。杏奴は原稿を書く。4年ほどだったが実は母にも作家として活動していた時期があったと初めて知る。帰国後杏奴は結婚。子供産まれる。母が亡くなる。茉莉と二人暮らしになる。見合いをする。結婚となる。日本は戦争に突入する。

    子供が生まれる。生活が厳しくなる。いまだに父の印税で生活している。いろんなものが配給制になっている。妻と子供たちを福島に疎開させる。文章を綴り始める。結局、疎開することにする。茉里も連れて行く。空襲で東京の家が焼けた。国債も値下がりして財産がなくなる。父や姉の文章を読む。

    評論社という出版社に勤めはじめる。美術科講師の口も来た。類は出版社で使い物にならなくてクビになった。姉に借金を重ねて、本屋をやることにする。鴎外の小倉日記がタンスから発見される。

    0
    2026年08月18日

    Posted by ブクログ

    おびのりさんのご紹介本です。
    おびのりさんありがとうございます!

    第34回柴田錬三郎賞受賞作


    明治の終わりから森鴎外の末子の類の視点で類の生涯と家族関係を主軸に描かれていました。

    鴎外の志げ夫人の前妻の子で長男の於菟、百日咳で亡くなった次男不律、長女の茉莉、次女の杏奴、そして三男の類。

    七光りという言葉が作中に出てきますが、志げ夫人は元々鴎外の小説のファンで自分でも小説を書いています。

    長女の森茉莉は有名ですので語るまでもないですね。
    次女の杏奴も若い頃、文筆にいそしみ、類も晩年には画の道から文学の道に方向を変えて
    『鴎外の子供たち』
    『森家の人びと』
    など自分の家族についての本を出版します。
    類は「類ちゃん、本当に私たちを売るのね。そうまでして世に出たいのね」と家族に言われますが、本屋と父の印税収入では食べられない類は出版します。

    この家族の中で、もちろん一番才能があったのは鴎外、あとはやっぱり『甘い蜜の部屋』で泉鏡花文学賞を受賞した茉莉でした。

    子供たちに「パッパ」と呼ばれ愛された鴎外ですが、妻の志げは子供たちのしつけ役で、書いていた作品も鴎外の添削が入っているといわれて日の目をみることができず亡くなったというのは森家の家族の立ち位置を表しているように思いました。
    男尊女卑的な家庭でしたが、類は画や文筆で成功できず変わり者の茉莉だけが特別でした。

    文学者や画家ががたくさん出てくることは出てくるのですが、名前だけで森家の人びととの交流はそんなに描かれていなかったのが、ちょっと残念でした。

    0
    2026年02月27日

    Posted by ブクログ

    森鴎外の息子、類の人生を辿った物語。何か劇的なことが起こるわけでもなく、ただただ類を中心とした森家の70年を辿っているのだが、全く退屈することなく、この長編を最後までじっくりと味わいながら読むことができた。

    大正モダン、鴎外の子煩悩ぶり、戦前の豪邸、芸術家が切磋琢磨するパリ、戦時中の庶民の暮らし、戦後のバラック、「もはや戦後ではない」と言われた昭和の暮らしぶりなどなどの描写が美しく、一つ一つの文から情景や当時の人々の雰囲気が伝わり、実に味わい深い。自分が生まれる前の日本の姿が目に浮かぶようで、このような時代を経て、今の日本があるのかとしみじみ思う。

    「本当の夢は、何も望まず、何も達しようとせず、質素にひっそりと暮らすこと」
    という40を過ぎた類の言葉には妙に納得した。生活に困窮しながらも結局最後までどうにかなって、確執のあった姉らともそれなりの交流を保ち続け、文章でも多少は評価され、このうえなく素晴らしい妻を亡くした後60過ぎて再婚した。「ホント、あなたはそういう感じで生きてきて、生きていったよね」と言いたくなる。同時にそんな類から「三つ子の魂百まで」の品位を感じずにはいられない。

    類の人生が柱ではあるが、同時に大正から平成にかけてのそれぞれの場所の空気感や、そこに生きる人の雰囲気を、じっくりしみじみと味わった。久々の読み応えある一冊。

    0
    2025年05月28日

    Posted by ブクログ

    素晴らしかった。
    ほんとに素晴らしい本だった。
    心にくるものがすごく深く、また大きすぎて、
    【素晴らしい】という言葉しか思い浮かばない。

    あの描写がよかった、あそこの表現に感動した、
    などという、巧い文章にできない。
    そういうところは、言葉より音楽を愛していた、
    幼い頃の私が出てきてしまう。

    文章で表したいのに、言葉にすると、いま感じていることの、とても細かい部分を取りこぼしてしまいそうになってしまい、どうしたらいいのか、私は分からなくなる。

    そんなことを発しても、芸術をも愛していた森類氏は、わかってくれるだろうか?

    想像してみるのも、また面白く、きっといつか、再度読みたい、森家の人間の人生を垣間見たい、と思うのだろう。

    0
    2025年02月27日

    Posted by ブクログ

    森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
    偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。

    類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
    それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
    大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
    現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている空気に、この時代特有の豊かさを感じた。

    誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
    妻と子供達を愛し、死の間際までプライドをもって仕事に励む森鴎外の熱い生き様が、物語序盤に関わらず明治の男の姿を心に読者に焼き付ける。

    独特な感性と文章力を持ち、自分のペースで人生を謳歌する長女、森茉莉。
    一家を支える精神的な強さと優しさに溢れ、絵や文学にも才能を発揮する、森杏奴。
    二人の姉も個性豊かに描かれており、長編の小説にも関わらず、飽きずに読めた。

    作品を通して、実在する人の一生を追体験すると、いつも言葉にできない感慨を覚える。
    朝井まかて作品の中では、1、2を争うレベルで好きだった。

    0
    2024年04月10日

    Posted by ブクログ

    森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。
    550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。

    甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。
    森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。

    「役に立つ立たないじゃないんですよ。あなたのような人が生きること自体が、現代では無理なんです」(40過ぎで初めて働いた出版社の編集部員)
    「威張るんじゃない」「いいか、肝に銘じておきたまえ。鴎外が偉いんであって、君が偉いんじゃない」(小林勇)
    「僕にはこれしかない、死んででもやり抜くという決意、あなたにはそれがないのよ」(妻)

    彼らの言い分は正しい。子どもが4人もいるなら尚更だ。
    しかし、正しいと感じる分だけ、姉森茉莉が体現していた「底抜けの善良さ」や戦前の東京にあった社会の余裕が失われてしまったことが悲しい。

    森茉莉、杏奴との姉弟関係が変化していく様子、当時のその場所に居合わせたような感覚になれるのも楽しい。

    0
    2024年03月15日

    Posted by ブクログ

    歴史系小説と朝井まかてにハマるきっかけになりそう。好きな部分→でもパッパ、パッパがいないと花の名を教えてくれる人がぼくにはいません。

    0
    2023年11月26日

    Posted by ブクログ

    読みごたえがあった。鴎外の息子ということでの生涯はあまりに波乱万丈で・・・
    時代に流されながらも生き抜いていく強さみたいなものも感じられた。兄や姉たちとの個性のぶつかり合いも、なるほどーと・・・面白かった。

    0
    2026年08月22日

    Posted by ブクログ

    2021年 第71回 芸術選奨文部科学大臣賞
    2021年 第34回 柴田錬三郎賞

    本日は森鷗外の誕生日。
    文久2年1月19日、旧暦のままです。
    誕生日当日は、文京区の森鷗外記念館が無料開館となります。今年は残念ですが、鷗外の旧居・観潮楼跡に建てられたこの文学館に行けませんでした。来月には伺う予定にしています。

    今年は、その文学館が建てられた観潮楼で育った森鷗外の三男・類を描いた朝井まかてさんの『類』

    この小説は、1911年(明治44年)に生まれ、1991年(平成2年)に亡くなるまでの森類の生涯を 本人の視点から描いた作品です。
    時代と家と個人が重なり合うこの構成は、大河小説としてよいのではないかと思います。

    類さんは、いわゆるイケメンですね。
    茉莉さん、杏奴さん、そして類さん。
    三人姉弟の母が大変美しい人だったことも、なるほどと腑に落ちるます。
    そして鷗外はというと 家では子どもたちに甘い「パッパ」でした。

    物語は、パッパ森鷗外の死後、森家に訪れる「あれやこれや」を、類さんの性格を映した、実におっとりとした雰囲気で描かれます。

    鷗外は第二章で亡くなり、妻と子どもたちには、多くの資産と、豊潤な人脈が残されます。
    それでも、主人を失ったあとの家の不安定さは拭えません。長男の於菟さんは、すでに家族を持っていらして、それなりには気を配っているようなのですが、そこは前妻さんのお子さんというところで 鷗外自身も遠慮がちな関わりになっていたようですね。

    鷗外の子として見る社会。
    優秀な姉たちの存在。
    その間で揺れ動きながら、「何者かになろう」とし続ける類さん。

    森家の内情の深さには、ただ驚かされるばかりだが、これほど踏み込んだ描写が可能だったのは、
    森類氏のご子息ら、ご家族の理解があってこそ。

    この小説で初めて知った森家の話は数多いが、特に印象に残ったのは次の三点ですね。

    ⚪︎森鷗外の日記のこと
     鷗外の日記のうち、「小倉日記」は長年所在不明とされていた。
     松本清張は、この日記を追い求める青年を描いた『或る小倉日記伝』で芥川賞を受賞しました。実際にその日記を見つけたのは、引越し準備をしていた類さん本人だったという事実。

    ⚪︎類さんの長女の名付け
     類さんは、長女の名を木下杢太郎に頼んでつけてもらった。その名は、森鷗外『渋江抽斎』に登場する妻の名前から取られたものだった。
     ……正直なところ、これは少し嫌だったのではないか、とも思ってしまう(笑)。

    ⚪︎『半日』と嫁姑
     森鷗外の短編『半日』は、嫁と姑の関係を描いた作品だが、モデルとも取られかねない嫁の志げさんは、この作品を鷗外全集に収録することを拒否していたらしい。
     文学史の陰に、「生活者の意思」があったことを思わされる。
    森鷗外ファンはもちろん、
    そうでなくても東京・谷中界隈が好きな方には、
    ぜひこの『類』を、急がず、ゆったりと読んでほしい。類さんという方が、あのお二人の才媛を持ちながら 穏やかにちょっと大丈夫かなって感じさえ漂わせながら 浮かびあがります。

    0
    2026年01月19日

    Posted by ブクログ

    私だったら『頼むから働いて!』って言っちゃうな。

    当時の森家の生活が詳細に描かれてるのは圧巻。
    すごいリサーチをしたんだな…と感服。

    0
    2025年01月04日

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