朝井まかてのレビュー一覧
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朝井まかてのデビュー2作目。
江戸時代の植木職人の世界を描くという点では、1作目と共通しています。
大名屋敷が集まっている江戸では、庭園づくりに熱が入り、庭園都市になっていたというのが面白く、言われてみればなるほど、と。
江戸は千駄木町の「植辰」の親方に拾われた浮浪児のちゃら。名前もなかったが、ふとしたいきさつで「ちゃら」に。
高いところを飛び回って逃げる浮浪児に辰蔵親方が笑いかけ、植木屋の仕事は空に近い「空仕事」だと言ったのだ。
ひょうひょうとしているが、腕はいい親方と、兄弟子たち。
親方の娘のお百合はまだ15だけど、男所帯をしっかり取り仕切っていて、ぽんぽんと威勢がいい。年齢の近いちゃらとは幼馴染のようでもあり、今もよくケンカになってしまう。
山猫のようだったちゃらも次第に腕を上げ、作庭の仕事が面白くなってきます。
趣の違う庭を作り上げていく実例が面白く、それぞれの家の事情も思いやる様子がわかって、前半は人情噺。
ほのかな初恋なども絡みつつ。
「植辰」に思わぬ災いが降りかかり、それが最近江戸で評判の人物と関わってのことでした。
後半はミステリー?冒険もの?
どんどん読めるので筆力は感じますが、やや驚きながら読んでました。
その間、お百合がちょっとほったらかしな感じだし。
江戸時代は10代半ばで適齢期にもなりますからねえ。どう転ぶのか?と…
結末はややあざといけど、まあそうなるだろうと思っていたし~(笑)
たっぷりした読みごたえに満足でした☆ -
Posted by ブクログ
Tさんのお勧め。
江戸を舞台としていても、
どったんばったん捕り物だったり、
おどろおどろした、またひょろひょろした妖し物だったり。
それはそれで良い話だったりするのだが、
やはり人情物を忘れるわけにはいかない。
ちょっと大人の江戸物。
貧乏くさいお贔屓がついた役者、
神田祭を差配することになった家主、
やたらと大喰いの出戻り女、
看板の文字を書く筆。
一番好きだったのは「莫連あやめ」かな。
流行らない古着屋の娘。
着物やその着方を見ただけで、人となりがわかってしまうが、
近頃兄に嫁できて、よく出来た義姉にちょっとひねている。
そんなあやめが思いついた莫連流は、
若い女の子が男物を粋に着こなす流行りになる。
でも実は本物の「莫連」が近くにいた…。
ファッションに一喜一憂する女の子たちはかわいい。 -
Posted by ブクログ
徳川幕府の将軍で、評判の悪い筆頭に挙げられるのが「犬公方」と称される五代将軍綱吉だろう。
その綱吉を主人公にした歴史長編。
心ならずも将軍となった綱吉は、己の理想を実現せんと、「武」ではなく「文」で治める世の中にと、改革を断行する。
赤穂浪士の討ち入りも、彼にしてみれば暴挙としか見做しえない。
時代は大地震や富士山の噴火が相次ぎ、綱吉は民の安寧を一身に祈る。
正室の信子は、「断じて、最悪の将軍にあらず」と断言する。彼女との仲睦まじい関係は、良き家庭人として、現代の理想の夫婦像にも匹敵。
そんな綱吉の姿勢は、「我に邪無」という言葉に集約される。
綱吉の死後、彼の政の評価について問う信子に対して、側用人の吉保が答える。
「それを判ずるには時を要します。・・・5年、10年。あるいは、100年かかるやもしれませぬ」。
視点を変えれば、人物評価も変わる。
読者にとって、従来の評価を一変する鮮烈な魅力にあふれる綱吉を、著者は生み出してくれた。 -
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上方言葉がぽんぽん飛び出て、でっちや商人が出てきて、上方落語みたいだった。風景描写や年中行事、野菜のことなど、大阪通になれるくらい詳しく書いてあって、面白い。
大阪に来たばっかりの他所の人とか、詳しくなりたい人とか、これを読んだらいいと思う。
大阪の風情を書きたかったのかな、というところで、思っていたより恋愛要素は薄かった。商人としての生き方とか、主人公の自分を励ます言葉とか、さりげない言葉にはっとする、胸に刺さる書き味があって、この人の魅力だなあと思う。
たんかきるところとか、主人公の亡き夫への気持ちとか、ここぞ、というところの聞かせ方がうまい。江戸時代の話だけど、夫婦や子ども、独り身の話などはいまにも通じるところがあった。
上方言葉の意味がじんわり染み込む、まったりとした、江戸時代の大阪の風情を味わえる小説。 -
Posted by ブクログ
江戸から明治へ時代が変わる、150年程も前の大奥が舞台。だけど、これだけ時が経ち、技術も科学も医学も、あらゆることが進化し、女性が働くことが当たり前になった今でも、変わらないことが多いんだなあと思った。
女が集まるところで起こる、嫉妬・足の引っ張り合い(まあ、これは男世界での権力争いも同じことなのだろうけど)。男が起こす戦争に翻弄される女と子供。
解説には、この本は「女の居場所の物語」「戦争と政治に居場所を奪われた女の物語」だと書いてあったけど、そうだなあと思う。そして、そう言う意味でも、今もこの時代も、女性にとって同じだな、と感じる。
男性の中には、そんなことはないと思う人も多いと思うけど、今の時代であっても、女性が1人で自分の足で立って生きていくのは、やはり男性よりは大変なことだし、政治でも経済でも、女性が男性と同じように、中心で動かす力を持つのは、まだまだ先だな、と思うし。
でも、だからこそ、将軍の寵愛を求めて、男性に寄りかかって生きていく為に、女だらけの世界で争っていた印象で語られやすい大奥の女性達が、自分の働きで自分の生活を立て、自分の足で立っていることに、生き甲斐や誇りを持っていたんだと、改めて気づかされた、この本は面白かったな、と思う。
そして、いつの時代も、皆、色々な理由から、経済的にも気持ち(言動)的にも、自由に生きられない人が多くて、周りに忖度せず、自由に生きている人は、輝いて見えて憧れるんだな、と思った。大奥でも、ふきが人気があったように。