朝井まかてのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
江戸を舞台の、人情溢れる庶民の生活を描く、8つの短編。
ぞっこん・・・お互いがぞっこんになった“筆”と文字職人の歩み。
お上の動向に左右されながらも強かに生きる、人々の姿。
千両役者・・・大部屋役者の花六と、贔屓で通う辛子屋の太之助。
迎えるのは大どんでん返し。そして、一か八かの大博奕へ。
晴れ湯・・・湯屋の娘・お晴。好きな稼業を手伝う中、知るのは、
客の皆に愛される湯屋の事。父母の関係と自分への想い。
莫連あやめ・・・出来の良い兄嫁に心乱される古着屋のあやめだが、
親友を貶めた高慢な娘たちとの諍いが。それを救ったのは・・・。
福袋・・・大食漢で離縁された乾物屋・濱屋のお壱与。
弟の佐平は姉を大食い大会に出場させて、賞金をせしめる。
それは己の目論見のため。が、福袋。福が去ったら、空袋。
暮れ花火・・・羽裏の絵師・おようは、辰巳芸者の美代次から笑絵を
注文されるが・・・フラッシュバックの如きの過去の出来事。
後の祭・・・神田明神の「お祭掛」になってしまった家主・徳兵衛。
番狂わせはあれど奮闘する。町の衆も。神様も?
そう、祭りってのは楽しむもんだ、あたしらの天下祭だ!
ひってん・・・生業の無い卯吉と寅次が、人助けで貰った櫛を売る。
商いの思案に目覚める卯吉。時が過ぎ、商人として
歩む彼の心に浮かぶのは、ひってん長屋の想い出。
江戸には様々な生業がある。
それらに携わる人々の喜怒哀楽と生活を描く、人情溢れる短編集。
江戸の庶民の生活には生業があります。
順風満帆もあるし、努力を重ねるものもある。
だが、何かをきっかけにして、多大な変化が訪れることもある。
大御所・家斉、老中・水野の質素倹約、北町奉行・遠山の登場。
時代の風潮の変化もさることながら、人の関わりや縁も同様。
その変化の中での、喜怒哀楽溢れる人々の生き方が描かれています。
場所は江戸。江戸っ子の胸をすく鯔背な言葉は心地よく響き、
変化に対峙する心根には、粋を感じることも。
そして江戸の情緒溢れる詳細な、暮らしの情景描写の見事さ。
神田祭の熱量の凄さは行間から迸るほどの熱さでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ学校で習った歴史上の人物で、その後大きく評価が変わったのが田沼意次とこの徳川綱吉だと思う。
人間より犬の方を大事にする法律を作った暗愚な将軍、と習いましたが、それは当時の江戸の庶民レベルの評価だったようです。
戦国時代はすでに過去のものとなり、太平の時代を迎えているはずなのに、武士の意識だけが変わらずにいる。
そんな世の中を変えようと、武よりも文(法律)で世の中を統べようとする綱吉。
しかし、世間はそんな綱吉の思いを一向に理解することはなかった。
学校で習ったのは暗愚な将軍。
その後、将軍になった当初は善政を布いたが、その後民衆を顧みることなく「生類憐みの令」を発して庶民を苦しめた、とした説も聞いたことがある。
けれど、この本に書かれる綱吉は最後まで誠実で、最後まで清廉で、最後まで公正だった。
堀田正俊や柳沢吉保のように、綱吉を理解し支えてくれる家臣がいなかったわけではない。
けれど、前将軍の直系ではなく、将軍就任直後の強権的な治世の方針転換に反発するものも多く、在位が長かったにもかかわらず逝去後にあっという間に綱吉の政策は撤回または停止となった。
つまり全然浸透していなかったということだ。
将軍として無能だったわけではないと思う。
しかし綱吉の時代、地震が頻発し、富士山が噴火するなどの自然災害が多発したというのは、当時、将軍の治世に問題があるからだとみられてしまったのはしょうがない。
にしても、だ。
元禄文化を謳歌できたのは、綱吉が太平の世を創り維持してきたからではないの?
確かに極端な政策は庶民を混乱させただろう。
命は等しく大事であるというのは理想だけど、人間と野良犬が飢えていたら、野良犬を見捨てるのはしょうがない、くらいの余裕がなかったのが敗因なのではないかとも思う。
だけど将軍と身近に接する幕臣たちの多くが、綱吉の政策を支持しなかった理由は、今後の研究をもう少し待ちたいと思う。
「我に邪無し」
最期にそう言ったのは、自身を誇っていたのか無念だったのか。
ほかの作家が綱吉を書いたら、また読んでみたいと思う、興味深い人物。