朝井まかてのレビュー一覧
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森鴎外の末子、森類が大正から昭和、平成を生き抜く物語。
偉人の息子として生まれた森類の煌びやかな少年時代と、偉大すぎる親を持った故の懊悩を描いている。
類は森鴎外の事をパッパと呼ぶ。
それだけで、当時の森類の生活レベルが分かるようだ。
大正時代に海外文化を生活に積極的に取り入れ、食事や芸術を楽しんでいる森家の雰囲気がなんともモダンで、読んでいるとなんだか羨ましくなる。
現代のように日本の生活と海外の文化が混ざり合っておらず、それぞれを大事にし、意識を持って向き合い大切にしている空気に、この時代特有の豊かさを感じた。
誰もが名前を知っている森鴎外という作家の人間像も温かく描かれる。
妻と子供 -
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森鴎外の末子、明治時代のお坊ちゃんである森類の生涯。
550頁超の読み応えだが、類さんの名前も知らなかったくらいなので、どのような展開になるのかがわからなくて、ずっと面白い。こういう人の小説こそ読みたい。
甘ったれで勉強ができず、社会に出て苦労したことがなく、パッパのような何者かになろうとするが、画家としても作家としてもなかなか芽が出ない。贅沢をして煙草ばかり喫んでいる。
森家の財産を食いつぶしていく様子、特に鴎外の版権が切れた後、戦後は読んでいて恐い。それでも、お坊ちゃん特有のおおらかさ、無邪気さ、善良さのため、どこか話が深刻にならないのがおかしい。
「役に立つ立たないじゃないんですよ。 -
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明治神宮外苑内苑は人工の杜である。この事業のとてつもない苦労は想像できました。それだけでも、興味深いのですが、更に明治天皇の人柄にもスポットライトが当てられ、あっと言う間に読み進んでしまいました。明治から大正、昭和と時代は移り変わり、杜も豊かに育っている。そして、現代は令和、明治天皇のお人柄と今上天皇のお人柄、共通する所が多く、変わらない皇室の姿勢に胸が熱くなりました。世界一歴史のある天皇と言う存在を守り続ける日本。私はなんと素晴らしい国に生まれて来たのか、今、とても感動しています。日本人の在り方を今一度考え、忘れてはいけないと思いました。
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ネタバレ実在の人物をあつかう物語にはそれなりの制約がある。事実を歪めての展開はできない。にもかかわらず、これだけの広がりを物語に持たせる朝井まかてさんはさすがと思う。
綺羅星の如く、幕末明治の歴史をを作ってきた人々が次々と表れるが、彼らはこの物語の中では、時代の背景にすぎないとさえ思われる。事実の隙をつくように、いきいきと描かれた庶民たちが、時代の中で精一杯生き、次の時代へと命を繋ぐ物語だ。
草野丈吉の妻であるゆきについても、どれだけの資料があったのか。色白で大柄ということくらいしかわかっていないようだ。そこからこんなにも個性的な人物に仕立てられて、見事というほかない。
引田屋の女将の凛とした佇ま -
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朝井まかての大奥もの、というか、幕末ものでしょうか。
仕事に生きてきた女性たちの、江戸城最後の日を描きます。
江戸城の無血開城が決まった後。
天璋院篤姫が出立前に一同を集め、粛々と城を出ていくように諭します。
荷物はすべて後から送ってくれるはずだからと。
天璋院が去った後、奥勤めの女中たちは皆右往左往して、出来る限り荷物を持って我先に出ていくのでした。
呉服之間に勤めるお針子だったりつは、もう一度部屋を確かめたくなり、戻ります。
お蛸という女中が天璋院の猫を追いかけているのに出くわし、一緒に捜し歩きます。
すると、ちかという女中もまだ残っていました。
さらには御中臈のふきと、和宮のほうの呉