朝井まかてのレビュー一覧
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ネタバレ500頁近い長編なれど、ほぼ一気読み。江戸と上方の言葉の面白さ、落語のように引き込まれる世界観、そして一癖も二癖もある人物たち、あっと驚く展開が潜んでいたりと、もう、読み出したら止まらない。
大阪の道具商、母親から道具の目利き譲られたと思い込む寅蔵だが、その目利きを披露したゆえに、奉公先にとんだ迷惑をかけてしまい、実家からも勘当される。仕方なく江戸へ向かう寅蔵が出会ったのは、屑拾いの親分だった・・・。
江戸時代の道具屋や競りのしきたり、真贋の見分けや骨董の持つ意味、玄人との勝負など、知らない世界が展開されて、ただもうワクワクする。
キャラクターも個性的だし、これはぜひテレビドラマで見たい。道具屋の屋号とか、旦那、若旦那がたくさん出てきてわかりにくいから、映像で見られたらいいと思う。8回くらいの中編で、某国営放送さんあたりがやってくれないかな。もう頭の中でキャスティングが始まってしまう。
え?寅蔵って、19歳?!と驚きつつ。誰がいいかなぁ。 -
Posted by ブクログ
江戸末期から明治の動乱の時代を生き抜いた歌人、中島歌子の半生と恋心を描く、骨太の時代小説です。
物語は、病に伏した師の見舞に訪れた弟子が、師が書いたものであろう手記を見つけたところから始まる。歌人である師のそれはただの書き付けなどではなく、目の前にまざまざと情景が浮かび上がるようなその半生を綴った長い物語だった。手記は若かりし頃の師――登世の娘時代の淡くも色鮮やかな恋から、水戸に嫁いで何かと苦労をしつつも夫を慕うささやかな日々を描いていたものが一変、水戸藩内の内紛から天狗党藩士の家人への苛烈な弾圧、投獄など時代の潮流に翻弄される妻子たちの姿を浮き彫りにしていく。激動の時代をなんとか生き抜き、憎しみと苦しみの連鎖を目の当たりにしてきた師が最後に望んだことは、手記と遺言書の中にあった。
まるで、一本の大河ドラマを観終わったような読後感でした。作中作は、お弟子さんが師の作品を読んでいる体で書かれているにもかかわらず、作中作こそが本編であるという形を取っているので、途中でお弟子さんたちのパートが入るまですっかり彼女たちの存在を失念していました。それだけお弟子さんたちも師の手記に没入して読んでいたのだ、という表現でもあるように思います。
私はあまり、江戸から近代、近現代の日本史を深く学んできませんでした。学校の歴史や社会の教科書に書かれる以上のことに深い興味を持っていなかったこともあります。けれど、最近時代小説にも手を出すようになって、改めて私は物を知らなかったんだなと感じることが多くなりました。
この物語の舞台である江戸末期から幕末、明治維新にかけての時代、実はどんなことが起きていたのかということを、うまく想像できていなかったように思います。天狗党の乱というのも、そういえば歴史でそんな名前を聞いたかな、くらいの認識でした。血で血を洗うような、復讐を復讐で返し、罪のない妻子を殺された恨みを同じく罪のない相手の妻子を殺すことで晴らすような、そんな時代があったのだと思うと、何故こんなことになってしまうのだと想像するだに苦しく、辛かったです。
それでも、この物語のタイトルは『恋歌』。
時代に揉まれ、激流に流され、それでも"われても末に逢はむとぞ思ふ"、その心が愛しい物語でした。
この作者の方のお話は、以前読んだ時にも時代の中に名を遺した人の妻の目線で書かれたものを読みましたが、時代の主役でない目線で見るからこそ見えるものがあると思わされます。
機会があれば、また歴史を改めて勉強していきたいと感じました。 -
Posted by ブクログ
初出 2020〜21「読楽」
面白かった!
鎖国直後の江戸初期、田畑のない北国の山あいゆえに支配者がなく、自治を行い籤で物事が決まる「青姫の郷」に、郷役の武士と悶着を起こして逃げ出した名主の弟で杜宇という青年が転がり込む。
彼は借金し、森を切り拓いて1反(1000㎡)の田を造成して米を作るが1石(180kl)の自己申告年貢に対して4合(720ml)しか取れなかったが、なぜか揉めた相手の武士(久四郎)も転がり込んできて一緒に頑張り、翌年は3石8斗の年貢を納めた。(上田でも標準収穫高は反当たり1石2斗とされ、年貢は5公5民で6斗、一般に新開田は3年無年貢なのでこれは法外)
籤によって郷の長をしている満姫は(後水尾)上皇の娘、武の長の朔は父親が南蛮人で、二人とも都落ちしてきたが、この郷では石油が湧き、精製して朝廷に献上しようとしていた。
ところが、久四郎は杜宇をずっと憎悪しており、絶望に落とすために黒雲(山賊)の集団に郷を襲わせる。郷の者たちは防戦し、杜宇も久四郎を倒すが、油井に火をつけられて郷は焼け、人々は散り散りになる。
最終章の杜宇の老後の話はなくてもいいかな。 -
Posted by ブクログ
「そうだ、京都へ行こう」のノリで
「そうだ、北斎美術館に行こう」と謎の閃きに突き動かされ、
あれよあれよと北斎に魅せられて結局、
こちらもコンプリート。
面白くて引き込まれて…娘の人生も味わい深い。
映画『おーい、応為』を鑑賞したけれど、
小説とは打って変わって凡庸な、というか
まぁ人1人の人生ってこんなもんだよな…
と思い出させるような、
人生において忘れられないような大きな出来事が起こった時でさえも現実の生活が続いていく(しかない)日々の儚さの方が強くが描かれていて。
小説ではもっと激動で、リズミカルで
まさに北斎の『The Great Waves 』のような
色彩豊かな応為の人生が描かれている。
私は映画より小説の中の応為に魅せられた…
もっと、善次郎との関係を、知ってみたかった。