グロリアソサエテ

グロリアソサエテ

小説・文芸
2,310円 (税込)

11pt

大正十三年、宗教哲学者の柳宗悦が住む京都の家で女中奉公をはじめた少女サチ。ある日、河井寛次郎という陶芸家が柳家に来訪する。英国帰りの陶芸家・濱田庄司も同席し、男たちはすぐに意気投合した。彼らは共に小道具市を巡り、「下手物」すなわち日用の品に自由な美を見出し、それらを「民藝」と名付けた。薄汚れた古布や、埃にまみれた陶磁器に感嘆し、その美を世に提唱する三人の姿に驚かされるサチ。佳き品々に満ちた柳家での暮らしと、美を愛する人々との出会いを経て、彼女自身もやがて「民藝」に魅せられていく。百年前の京都で、新たな美「民藝」の世界を切り開いた人々の情熱と輝きの日々を描く歴史長編。

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グロリアソサエテ のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

     民芸といってもぴんとこない人も多い。民と芸、民の芸術、と言われても具体的に何なのだろう?と思う。その手探りの状態から、民芸という言葉自体を作り出し、業界を広げていったのが、柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司らである。柳宗悦が中でも有名だ。一見、名字から中国人に思えるが、やなぎ、である。鑑賞する芸術品よりも、国民が普段使う日常品の中に芸術を見いだし、その美しさについて言及することによって、人々にその価値を認めさせる。しかし、価値が高まれば品物自体の価格にもはねあがっていく。人々に見せるためには、どこかに集めて、鑑賞させる事も必要だ。それら全てに金が要る。さあ、その金はどこから出てくるのか。

     柳宗悦の父は海軍少将、母の弟が嘉納治五郎、学習院時代には優等生で、明治天皇から銀時計をもらう。武者小路実篤や志賀直哉、イギリスの陶芸家バーナード・リーチら、白樺派とも親交を深めながら、声楽を専攻していた後の妻・兼子と出会う。

     柳宗悦の家に女中奉公した、サチという架空の女性の目を通じて、柳家や民芸が成立していく様を描く。無名の人物が作り出した民芸を、貴族や芸術に素養のある人物ではなく、まっさらの民の目から描くとどのように見えるかを描写するためである。また、今回兼子のキャラクターも強調されている。これも、女中として奥向きの事に関わってきたサチを語り手にした所以だ。先に挙げた金は、兼子の演奏活動から得られたものを元にしている。金に忖度しない宗悦と喧嘩する場面も描かれるが、気が強くないと、ぎりぎりの生活をしながら、子育てと音楽活動を両立させることは難しかったはずだ。そんな彼女に共感を寄せていたのがサチだ。そして、長らく傍観者とされてきたサチにも、バックグラウンドがあることが最後に明かされる。

     時代背景は大正末期から昭和初期、関東大震災から2.26事件、第二次大戦直前までを描く。ちょうどドイツでヒトラーが台頭してきて、兼子の音楽活動が難しくなる件が描かれる。読者の我々は、これから時代が暗くなっていくことを知っているが、輝ける登場人物たちはまだ、上る一方の日本国を見ており、民芸の明日を信じている。そのねじれが若干切なさを生む。

    0
    2026年09月19日

    Posted by ブクログ

    実は一度圧倒されて感想と言える感想が浮かばず、半年あけて再読した1冊。
    国を征服するとは、されるとはどういうことか。
    最後に怒涛の勢いで情報が入ってきて初回では溺れた。
    読み直すとここに伏線が…となったのも新しい発見だった。
    心に残ったフレーズは下記。
    "子供が最初に出会う理不尽が父親なのよ。いずれ世に出たら必ず出会う理不尽、不条理。その最初の壁なの。"
    確かにそうかもしれない。私自身は両親どちらも理不尽で、祖父母が優しく教えてくれた。
    今の私の家も子どもに対して割と父親が理不尽なことを言っているので、、夫を変えずに私が優しく教えるのも良い手なのかもと。目から鱗だった。

    また、偉ぶらず、驕らず、信念を持って進むことは魅力的だなとも感じた。どうしても評価を求めがちだし、横道に逸れることもあるし、それが悪いことでもないと思うが、そうでない人の魅力はとても輝くなと。

    また、この話のように綺麗にまとまらずとも、すべての経験は糧になるとも改めて思わされた。
    改めて日々を大切にしたいと強く思う。

    また読みたい本。

    0
    2026年09月09日

    Posted by ブクログ

    最近民藝に惹かれているので、民藝にかかわる人たちの物語を知りたくて読んでみた。
    柳宗悦は民藝を創設したすごい人かもしれないが、家族から見れば困った人。
    自身の散財で家計が苦しいのに、金に糸目をつけずに民藝の品を収集する。
    若い仲間たちを気遣うのはよいが、手間や費用は人任せ。
    自分は好き勝手しているのに、声楽家である妻の留学には難色を示し、子どものように不機嫌になる。

    一方で、河井寛次郎は、卓越した才能があり仕事には厳しいものの、誠実で温かい人物として描かれている。
    柳の散財で窮する彼の妻に「困ったらいつでも来なさい。黙って耐えたらいけない。必ず相談してください」と言い、実際に援助を続ける。

    先日、河井寛次郎記念館を訪れたとき、彼自身が設計し、彼の美意識にかなった家具調度がおかれた空間がとても心地よかった。
    あの場所を居心地よく感じたのは、河井の人柄があの家をつくっていたからかもしれない。
    小説の本筋からはそれるが、創作とはいえ、河井の人柄や陶工としての姿勢に接して、ますます河井寛次郎が好きになった。

    0
    2026年08月08日

    Posted by ブクログ

    柳宗理のバタフライスツールやキッチン用品は知っていたが、その両親については初めて知った
    奉公をしているねえや、サチの目を通して描かれる一家の美しい暮らし、哲学、仲間たちとの交流が鮮やかに描かれている
    日本の生活に根づいた工芸や文化に光を当てた彼らの活動や、信念に心を打たれる
    奥様を筆頭に家族みんながお互いを尊重し合い、奉公人達にも優しく、だからこそ彼らも忠義心を忘れない
    日本の素晴らしいクラフトマンシップが継続しているのも、柳宗悦らの人生をかけた活動があったからこそなんだと日本文化を誇らしく思った

    0
    2026年06月19日

    Posted by ブクログ

    大正から始まった民藝
    柳宗悦の家で女中奉公を始めた少女を
    通して河井寛次郎や濱田庄司との交流
    民藝の発展とその紆余曲折
    経済を支えた柳家の才能ある妻
    それぞれ個性豊かで暮らし方が伝わってくる

    日々の暮らしを丁寧に工夫しながら
    過ごす大切さを感じさせられる
    最後は奉公していた少女は琉球の出で
    時代に翻弄された一族の末裔だった
    苦労した彼女にも希望が灯りそうな
    場面で終わる

    こんな作品が好きだ

    0
    2026年06月13日

    Posted by ブクログ

    日本民藝運動の創設者・柳宗悦と、声楽家の妻や子どもたちの暮らしを、女中サチの目を通して描いた物語。史実に基づく面白さに加え、語り手であるサチが少しずつ成長していく様子が心に残った。
    柳宗理のミルクパンやフライパンが好きなこともあり、その父である宗悦の人生を知ることができたのも嬉しい発見。良書と出会えて嬉しい!
    どこか原田マハの『晴れの日の木馬たち』に通じる空気も感じられる一冊。

    0
    2026年04月15日

    Posted by ブクログ

    時は大正時代。
    柳宗悦は、陶芸家の河井寛次郎、濱田庄司らと共に日常の生活品を「民藝」と名付けて、美術品に負けない美があると提唱する。そんな彼らの生活や交わりを、柳宗悦の家で女中をはじめた17歳のサチの目線で描かれた物語。

    最初は、どうにも退屈な話しだなと思って渋々読み進めていた。それが半分を超えたあたりから途端におもしろくなって後は夢中。

    民藝が好きなので、黒田辰秋や芹沢銈介などがちらっと登場したことにもテンションが上がった!

    サチと、声楽家の奥様、ばあやの3人の作る料理がどれも美味しそうなのもいい。それらが柳宗悦の選んだ器に盛り付けられている様子は、想像しただけで豊かで美しい。

    渋々読んでいた前半部分は、後でもう一度読み返したら、伏線がいろいろと隠れていたことも発見できてとてとおもしろかったー!

    0
    2026年03月29日

    Posted by ブクログ

    「下手物(げてもの)」として軽んじられてきたふだん使いの品々に美を見出し、「民藝」と名づけて世に出した柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司の交わりを、柳家の女中サチの視線を通して描いた作品。

    民藝が大好きなわたしにとって、柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司の3人はまさに神。プラス、女中さんモノも好きなので、読む前から面白いと確信していました。柳宗悦というと、やはり『手仕事の日本』のイメージなので、日本全国津々浦々の、土地に根づいた品々、顧みられることのなかったなんということのない日用品、あるいはもうすでに廃れてしまった工芸品なんかを発掘し、熱い思いを持ちながらも淡々と紹介する、というフラットな印象の人だったけど、フィクションとはいえこれを読む限り激ヤバの人じゃないですか!結婚当初から「借金がある」「稼がない」と宣言し、声楽家である妻の収入も朝市での「下手物買い」に全振りする。漬物を切らした、みたいなちょっとしたことでもすぐに癇癪をおこして家族をピリつかせる。ただ、ありふれたもののなかに隠れた美を見つける目だけはたしか。そして、そういった美を解する者には当たりも比較的柔らかい。サチは女学校出で学があって(それゆえ先輩女中の”ばあや”に謎の女中マウントをとられたりするんだけど)、芸術や文学の知識もあるし、感じる心も持っている。そのせいもあってか、サチが旦那さまから大目玉を喰らうことはない。この、女中として従順で、口に出していうわけではないけれど内心ではめちゃくちゃ柳家での暮らしに魅せられているサチの目から見た柳家の日常が、ほんとうに魅力的なんです。新鮮なバタを使ったハットケーキや、鶏のクリイムスチウにポテトサラド。盛りつけるのは朝市で見つけた古伊万里や古い九谷焼。湯呑がわりの蕎麦猪口。オーブンがないからと、いちかばちか直火で挑戦するスリップウェアでのペッパーライス。この物語に描かれてあったのはほかでもない、大正から昭和を生きたふつうの日本人のふつうの日常でした。日々のなかで山あり谷あり事件あり、嵐のときもあれば凪のときもあって、さまざまなことを経験しながら、毎日季節の物を手際よく工夫して料理して、お気に入りのふだん使いの食器に盛りつけて、気づけば一年、また一年と時が経っていく。特別でもなんでもないけれど、時が経つほどに味わい深さを増していく、この物語自体が「民藝」でした。サチの青春や、思いも寄らない彼女の出自が描かれていたり、この時代に女性として生きること、母親として生きることの息苦しさや不自由さなんかも描かれていて、あまりのもどかしさや不条理さにウッとなる場面もあるけれど、とにかく結末まですべてがすばらしかった。現時点での2026年ベスト本です。

    0
    2026年03月16日

    Posted by ブクログ

    【民藝】を主催した柳宗悦の家に「ねえや」として奉公したさっちゃんの目を通して語られる、柳宗悦家族と民藝を取り巻く人々の昭和初期までのお話。
    去年だったかな…民藝の美術館で展示会があって、民の中から生まれる美を楽しんだので、その精神が生きている世界での暮らしが楽しめた。
    経済的な事は与り知らない…と公言する柳宗悦に振り回されながらもきっちり自分を貫く奥様が素敵だ。
    河井寛次郎や浜田庄司等々、みんな魅力的。
    そして最後に語られるさっちゃんの事。
    沢山の悲しみや差別の中から、民藝を探し出す事の意義を思う。

    0
    2026年03月15日

    Posted by ブクログ

    『青姫』に続いて2冊目の朝井まかてさん。
    『青姫』で心をわしづかみにされた記憶も新しい。
    こちらも素晴らしい作品だった。

    大正から昭和へ。今の私たちからみれば女性は窮屈な時代と思われるが、奥様もサチ子も優しくしたたかに生き、魅力に溢れている。
     「ごまかさないで生きるのよ。」
    信念を貫くことはいつの時代も難しい。


     「とるに足らぬと見過ごされがちな、ごく普通のものにも、一筋の価値はあるのだ、と。」

     戦争の影が忍び寄り、読者に不安を残して物語は終わる。サチ子、奥様、生き延びて幸せになってほしいと願う。

    0
    2026年03月02日

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