池内了のレビュー一覧
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ネタバレ科学と人間の不協和音
著者 池内 了
2012年1月10日 発行
角川書店
同じ著者の本「科学の限界」(ちくま新書)は2012年11月10日発行、この本は2012年1月10日発行。内容的に重なる部分もある。
理性の時代である19世紀は、科学者がサイエンテイストと呼ばれ、公的資金(基本的には税金)によって雇用されるようになって、科学者の顔は市民に向かっていった。20世紀に入って科学と技術が密接に結びつくようになると、社会における科学者の役割も変化。まず戦争の時代となって、科学者は愛国者になることを迫られた。二つの戦争の時代が終わると、今度は市場主義が幅を利かせることになった。今日のそんな状 -
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物理学が神との闘いであったことを、無神論者であると自称する著者がここまで熱心に主張することに非常に興味を感じた。アインシュタインが定常宇宙を主張した誤りが宇宙の永遠性を主張することから来たと言いながら、ホイルが揶揄するために使った用語である「ビッグバン」の理論が逆に聖書の記載通りであることを証明してしまったということは、無神論者でも興味深かったのだと思う。最初にトマス・アクィナスが聖書を字句通りに解釈することから解き放つことにより、アリストテレスの天動説から教会を自由にしたにもかかわらず、ガリレイ時代の教会はそれを忘れていた!という皮肉も面白い。そして教会の中から神に一番近いコペルニクスが地動
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筆者は、科学に依拠する部分が多い時代だからこそ、科学がからむ問題に対して適切な決断ができるよう、科学(的な考え方や手法)の特性ゆえの限界や負の側面を知ることが大切とし、本書でそれらについて説明しています。
・科学では、現象のうち、調べたい事柄だけにしぼって問題を単純化した上で法則を導き出す方法(要素還元主義)をとってきた
・もちろんそれで解明が進んだ部分も多いが、それだけに、現実には、科学だけでは解けない問題もあり、それをトランスサイエンス問題と呼ぶ
・特に個人の特性に関わるようなことについては、科学では統計をとって確率としてしか結論をだせないことがある
・しかし現実には選択が必要なことも多 -
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若い人達への科学啓蒙書。現在の文明社会を生きるには、科学的な見方・考え方を日頃から鍛える必要がある。様々な事象に対し科学的な考え方があれば、より良く生きることができるはずと言う。
自分が若い頃は、好き嫌いは別として科学的な考え方を持つこと、勉強することは当然の事と思っていたが、こういう本が若い人向けに刊行されるということは、科学嫌いの子供達が増えているのかもしれない。様々な情報が氾濫して、メディアで流される情報が必ずしも正しいとは限らない。情報を鵜呑みにして失敗する人も多い。だからこそ科学的な見方を鍛える必要があるのだろう。でもそういう観点で読むと、著者がこの本に書いたことも多少見方が分かれる -
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前半の1~3章はこれまでの知識を確認する形で目を通したが、第4章で議論している「安全保障技術研究推進制度」は重要な考察だと感じた.現役時代に多少の接触があった経験からすると、成果の公開について非常にハードルが高いと考える.p156での議論は小生の疑念をほぼクリアしていると感じた.科学者にとって情報の公開を制限されることは、手足をもがれた状態に置かれることで、非常に考えておく必要のある事項だ.この点に関しては米軍のスタンスとの比較が欲しかった.というのは、米国の科学者はかなり機密に属する事項も、データを無次元化する等のテクニックで、公開している.原爆に関する資料もかなり部分が公開されている.防衛
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自然は過去の習慣に忠実である。がんこに、保守的に執念深くやってくるのである。太平洋沿岸の各地を襲うような大がかりなものが、いつかまた繰り返されるであろう。
この一節は、1933年3月に起きた昭和三陸地震直後の2ヶ月後に書かれた『津波と人間』(本書収録)からの引用である。
・・・東日本大震災後に報道された前大船渡市議の平田武氏のエピソードが思い出される。平田氏は、悲願であった越喜来(おきらい)小学校への津波避難用非常通路建設に尽力し、震災9日前に病気で亡くなったが、昨年末に完成したこの非常通路によって平田氏の3人の孫を含む小学校の児童計71名の命が救われた。この非常通路は、児童全員が高台に避 -
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寺田寅彦さんは、明治生まれの物理学者。ノーベル賞の一歩手前まで言っていたといわれているので、相当レベルの高い研究者だったのだろう。しかも、彼は文学的才能にも恵まれていて、東大在学時に夏目漱石に師事し、卒業後にも彼と交際があり、そのため、「我輩は猫である」にも出演?している。本書は、そういったかなりユニークな人の著作であるため、着眼点は傑出しており、このレベルの人の脳はどのようなものにも反応し、それなりの考察をまとめ、提言できることを示している。頭の柔軟性を失いつつあることに自覚症状のある私にとっては、脳をどのように鍛えていけばよいかの示唆をいただいたような気がする。
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科学者の戦争協力の歴史と日本でも急速に進む「軍学共同」の現状レポート。アメリカ軍からの資金流入や自衛隊装備開発への癒着、デュアルユース=軍民両用を隠れ蓑にした偽装など、新聞報道や雑誌記事で断片的に伝えられた既知の情報がほとんどであったが、改めて通時的・歴史的に軍学癒着の拡大を俯瞰すると、もはや致命的な状況にあることがわかる。衝撃だったのは、敗戦から未だ日の浅い1951年の時点で日本学術会議が科学者に行ったアンケートで、過去学問の自由が最も実現されていたのはアジア・太平洋戦争期という回答が最も多かったという事実で、潤沢な資金さえあればそれを研究の「自由」と錯覚する自然科学者の病理性を象徴的に示
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昨年のニュースだったか。防衛省は2017年度の防衛予算のうち、
108億円を軍事研究費に充てるとあった。2016年度の実に18倍
の予算である。膨れ上がっている。
この研究費は防衛装備品の開発や安全保障の充実の為の研究
費用として、「安全保障技術研究推進制度」に応募した大学、研究
機関、企業等に割り当てられる。
太平洋戦争の反省から日本の科学界は軍事研究を拒否して来た。
しかし、どんな研究にも潤沢な研究費が充てられる訳ではない。
自由に研究する為にはもっと研究費が必要だと感じたら、防衛省
の研究をあてにしても不思議ではない。
だが、防衛や安全保障という聞こえのいい言葉 -
Posted by ブクログ
「直感的に把握するということは、各部分をばらばらなものとしてではなく、全体として、あるまとまりを持ったものとして摑むことであります。[…]それがある図形として認識されるのは、人間の持つ直観の能力によるといってもよいでしょう。」(127頁)
「自然は曲線を創り人間は直線を創る。[…]
自然の創造物である人間の肉体もまた複雑微妙な曲線から構成されている。併し人間の精神は帰って自然の奥深く探求することによって、その曲線的な外貌の中に潜む直線的な骨格を発見した。実際今日知られている自然法則の殆ど全部は、何等かの意味において直線的なものである。しかし更に奥深く進めば再び直線的でない自然の真髄に触れるの