池内了のレビュー一覧
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科学の装いをした何か。それは私たちの心の拠り所であると同時に危険性を孕んでいる。それらを「疑似科学」と名付け、それについてどのようなものがあるのか、なぜ信じてしまうのか、どのような態度で対応するべきなのかを記している。
中々に興味深く面白い点がいくつもあった。
世の中が便利になり、考えることなくさまざまなサービスを受けられる時代になった。それは「お任せ」の精神を育んでいると筆者は言う。信用して「お任せ」すれば、細かなことには煩わされずに済むのが普通になっている。便利な世の中しか知らない、Z世代やα世代は考えることが少なくなっているのは事実そうだと感じる。分からないことがあればすぐ調べ、それ -
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中谷宇吉郎の『雪は天からの手紙』を読んだので積読していたこちらも。
明治生まれの物理学者・寺田寅彦による随筆を、天文学者の池内了が編集したもの。
茶わんの湯気や昆虫の思考、金平糖のトゲトゲから植物の不思議な構造、満員電車、妖怪、災害…などなど、身近にわんさか転がってる科学のタネがどんどん出てきます。
自分、こんなに観察しがいのある物に囲まれていたんだなと再認識。
夏目漱石との関わりも深く、登場人物のモデルにもなっているんですね。
中でも「線香花火」は好きなエピソード。火をつけてからどんどん姿を変える線香花火は魅力的だし身近だし、研究するのにお金もかからない。いろんな人に「線香花火の研究やりなよ -
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物理学者・中谷宇吉郎による数々のエッセイを、天文学者である池内了が編んだもの。
1960年代の中学・高校の国語の教科書には、彼のエッセイが多く採用されていたと解説にありました。
生い立ちから学生時代、恩師との出会いや実験物理学者としての研究などなど、幅広い内容で飽きません。
その研究も、雪の結晶から飛行船の爆発事件、線香花火から立つ卵、はたまた透視や念写といったものまでとにかく盛りだくさん。
寺田寅彦や湯川秀樹とのやり取りもおもしろい。人柄が想像できます。
冬の北海道での疎開生活を描いた「イグアノドンの唄」は、子どもたちと過ごすお父さんの一面。
辛い状況でもワクワクできる物語の力、さらにそれに -
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科学でない事物をまるで科学であるかのように見せる、いわゆる「疑似科学」を概説した新書。
多岐に渡る得体の知れない疑似科学をざっと分類・体系化し、分かりやすくまとめている。大きくは下記の3種。
第一種
科学的根拠のない言説によって人に暗示を与えるもの。
占い系、超能力・超科学系、疑似宗教系など。
第二種
科学的装いをしているが実体がないもの。
永久機関、ゲーム脳・スマホ脳、マイナスイオン、健康食品、クラスター水、波動など。
第三種
科学的証明が困難な複雑系で、疑似科学と真正科学のグレーゾーンに位置するもの。
地球温暖化への温室効果ガスの寄与、電磁波公害など。
感想として、情報が -
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2008年4月に発行された本です。私が手にしたのは2018年に印刷された第17刷でした。
筆者は疑似科学を3つに分類しています。
第一種疑似科学は、人の欲望や悩みにつけ込み、科学的根拠のない言説によって人に暗示を与えるもの。
第二種疑似科学は、科学を援用・乱用・誤用・悪用したもので、科学的装いをしていながらその実体がないもの。
第三種疑似科学は、「複雑系」であるがゆえに科学的に証明しづらい問題について、真の原因の所在を曖昧にする言説で、疑似科学と真正科学のグレーゾーンに属するもの。
何事も自分でしっかりと考えて、人の話を鵜呑みにしないことが大切だと思いました。
カール・ポパーは、科学が有 -
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石川県を旅した際、行きたかった雪の科学館。今回は日数的に難しかったので次回の楽しみとし、中谷宇吉郎先生のエッセイを読むことに。ユーモアとウィットに富んだ内容に驚いた。気に入ったエピソードの一つは、摩擦電気の実験をしているY君が正しい実験結果を得るためにビーカーや皿を全部氷で作っていて、実験が成功したら「ひとつ氷のコップで葡萄酒の乾杯くらいはしても良いかもしれない」と。なんだこの洒落た感じは!季節の表現も詩的で素敵。「6月、大学の楡の梢に郭公が鳴き始めるとまもなく…そして白い日傘が、よくあざやかな緑の芝生の間に見かけられるような日がしばらく続く。それにもいつの間にか気がつかないようになると、もう
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今なお存在しているのが「相対性理論は間違っている」とする人 たちである。研究会を組織し(会誌まで発行されている)、アインシュ タインの特殊相対性理論を否定し続ける人たちの集団だ。おそらく 世界中で1000人はいると思われるが、自分たち自身が問違って いる(論理の誤解、計算間違い、思い違いなど)にもかかわらず、飽きず に主張し続けている。
実際には、各社ともマイナスイ オン効果を厳密に実証しておらず、根拠は至って薄弱であった。 イナスイオンという言葉が客の気を惹きつけられることに目を付け て、こぞって売り出したのが真相だろう。事実、マイナスイオン効 果はあっても微々たるものでしかなく -
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エッセイ集なので、軽く読めるかと思いきや、専門的な内容。筆者自身が体得されている「科学の愉しさ」が文章から滲み出ている。科学的な物の見方の入門書として最適。
特に「立春の卵」での「少なくてもコロンブス以前の時代から今日まで、世界中の人が間違って卵は
立た無いものと思っていただけのこと」で「今日にでもすぐに試してみることが大切である。」から、筆者の科学に対する姿勢がわかる。
また「イグアノドンの唄」での子どもに伝説の怪物がどこかで、ひそかに棲息しているのかもしれないと語りかける姿から、科学者としてのロマンを感じました。
とても人間味のあるエッセイでした。 -
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まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝える
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