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雪の結晶の研究で有名な物理学者,中谷宇吉郎.寺田寅彦に師事し,随筆家としても名を馳せた.「雪の十勝」「兎の耳」「立春の卵」「地球の円い話」「イグアノドンの唄」など,科学の面白さと味わいに満ちたエッセイ22編.
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Posted by ブクログ
物理学者・中谷宇吉郎による数々のエッセイを、天文学者である池内了が編んだもの。 1960年代の中学・高校の国語の教科書には、彼のエッセイが多く採用されていたと解説にありました。 生い立ちから学生時代、恩師との出会いや実験物理学者としての研究などなど、幅広い内容で飽きません。 その研究も、雪の結晶から...続きを読む飛行船の爆発事件、線香花火から立つ卵、はたまた透視や念写といったものまでとにかく盛りだくさん。 寺田寅彦や湯川秀樹とのやり取りもおもしろい。人柄が想像できます。 冬の北海道での疎開生活を描いた「イグアノドンの唄」は、子どもたちと過ごすお父さんの一面。 辛い状況でもワクワクできる物語の力、さらにそれに匹敵する程の実際の発見の数々。そして、愛らしくて悲しいイグアノドンの唄。 「生きる者はどんどん育つほうがよいのだ」という言葉が沁みました。
石川県を旅した際、行きたかった雪の科学館。今回は日数的に難しかったので次回の楽しみとし、中谷宇吉郎先生のエッセイを読むことに。ユーモアとウィットに富んだ内容に驚いた。気に入ったエピソードの一つは、摩擦電気の実験をしているY君が正しい実験結果を得るためにビーカーや皿を全部氷で作っていて、実験が成功した...続きを読むら「ひとつ氷のコップで葡萄酒の乾杯くらいはしても良いかもしれない」と。なんだこの洒落た感じは!季節の表現も詩的で素敵。「6月、大学の楡の梢に郭公が鳴き始めるとまもなく…そして白い日傘が、よくあざやかな緑の芝生の間に見かけられるような日がしばらく続く。それにもいつの間にか気がつかないようになると、もう夏休みである。セルの感触を乾いた肌に楽しんでいるうちに、夏休みになってしまうのは、少し贅沢なようであるが、…清々しい札幌の夏を、できるだけ長く享楽することにしている。」 出てくる人物が、湯川秀樹先生、寺田寅彦先生などこれまた錚々たるメンバーである。湯川先生が歌を読んだり、美しい字を書かれたりすることも書いてあった。「…皆が心得ておくべき事は、湯川さんはノーベル賞をもらったから、偉い学者なのではなく、偉い学者だったから、ノーベル賞をもらったのだ、ということである。」 長岡半太郎vs寺田寅彦の回も興味深かった。学界における地位と権威のある長岡先生に対しても歯に衣着せぬもの言いで意見する寺田先生。大勢の弟子たちの前で手ひどくやっつけられても、感情的に激昂することも全然なかったという長岡先生。大物!皆が「寺田先生も偉かったが、やっぱり長岡先生も偉かったなぁ」という意見に頷く。 「ケリイさんのこと」の章では、老婆とケリイさんの言葉や人種を超えたコミュニケーションがすごく良かった。「言葉は一言も通じなかったが、言葉などはいらないもので、あの老婆が言いたかった事は、全部わかった。そして、思っていることもすっかり読みとれた。日本人の『言うこと』が、あれほどよくわかったことは、今までになかった」 一番好きだった章は「米粒の中の仏様」。十勝岳の針葉樹がいかに生長が遅く、大切にしなければならないものであるかということを山番の老人が言っていた。「この老人の目には、山奥の木の生命が、まるで国家の生命のように見えるらしかった。内閣がどうなろうか、対英米問題がどうなろうが、この老人にとっては、雪に枝を垂れた針葉樹の密林が亭々としてそびえている間は、日本の国は安泰だと思われるように見えた。」火燵で丸くなって眠るミミー、その仔猫の命名者である子供たちは絵本の切り抜きに夢中になっている…こんなにも美しく、未来永劫大切にしていきたいことが、1938年に書かれていたわけである。
エッセイ集なので、軽く読めるかと思いきや、専門的な内容。筆者自身が体得されている「科学の愉しさ」が文章から滲み出ている。科学的な物の見方の入門書として最適。 特に「立春の卵」での「少なくてもコロンブス以前の時代から今日まで、世界中の人が間違って卵は 立た無いものと思っていただけのこと」で「今日にでも...続きを読むすぐに試してみることが大切である。」から、筆者の科学に対する姿勢がわかる。 また「イグアノドンの唄」での子どもに伝説の怪物がどこかで、ひそかに棲息しているのかもしれないと語りかける姿から、科学者としてのロマンを感じました。 とても人間味のあるエッセイでした。
雪は天からの手紙なのです こんなこと言われてしまったら もう、 地球に五体投地してしまいたくなってしまいます 何回読んでも 読むたびに 新しい発見がでてくる一冊です
世界で始めて人工雪を作るのに成功したのは 北海道大学で、雪の結晶の研究を続けていた 中谷宇吉郎博士でした~ このエッセイから過酷な気象条件のなかで行われた 研究の様子を知ることができます。 表題にもなっている“雪は天からの手紙”は 雪の研究に一生を捧げた博士が残した 結晶のように美しい言葉です
雪の結晶がキラキラと。 胚芽米に言及されている部分を興味深く読んだ。 「科学を尊重せよ」「科学を警戒せよ」 青空文庫でも一部著作が読めるのだな。うほう。
読んでいたら「自由学園」のことが出てきてびっくり! 同窓の友人M君から自由学園学術叢書第一を贈られたのでさっそく読んでみた。この小冊子には霜柱の研究と布の保温の研究とが収められていて、研究者は自然科学グループという名前であったが、内容を見ると5、6人の学園のお嬢さんの共同研究であることが分かった。...続きを読む 初めの霜柱の研究というのをなにげなく4、5ページ読んでいくうちに、私はこれはひょっとしたら大変なものかも知れないという気がしたのでゆっくり注意しながら先へ読み進んでいった。(略)これはまことに(略)、広く天下に紹介すべき貴重な文献であるということが、読み終わって確信されたのである。 この研究を読んで、私は非常に驚いたのである。この仕事についてはまず第一に指導した先生がよほど偉かったのであろうということが考えられた。それから「物理学」の知識がさほど深いとは思われぬ若い娘さんたちが、優れた「物理的」の研究をある場合には立派になしとげるという良い例がわが国に出たということをうれしく感じた。 高校生の女の子たちが、霜柱の研究をあっけらかんと、しかしかなり深いところまで成し遂げたことにびっくりしておられるのですね。 驚くべきことに、これ、1940年に書かれた文章です。 ということは、このときの女の子たちは、ご存命であれば、88歳くらいという計算になる。 ああ、でもわたし、自由学園がそういう学校だということは、学園出身者の99歳の方のお話を母から聞いていて、わかるんだ。 そういう教育を行っていて、純粋に興味を抱いたことを研究できる環境が整っているということ。 それにしても、びっくりしました。 中谷さんの著述には、日本の発展にとって科学的に考える市民が増えることが大事というようなことが書かれていたのが印象的でした。 いわゆる専門馬鹿、の学者さんではなく、科学と社会とのつながりを考えていた人だったようです。
線香花火の燃え方を観察した際の文が、科学的な説明と文学的な表現が混ざっていて印象に残った。こんな美しい見方をできるようになりたい。
どこまでもおだやかな物理おじさんのエッセイ。すとんと腹に落ち、さり気なく興味をもたされます。立春に卵が立つ話なんか、読んだらやらずにはいられない。 似非科学が簡単に蔓延してしまうことへの苦言なんかも、本心はどうあれ、文章に書くならこの穏やかさを持ちたいものです。
中谷宇吉郎・雪の科学館に行って来ました。 この本が面白かったので ぜひ行ってみたかったのです。 本の中では、 実験室の様子や茶碗の湯の話が 今でも印象深いです。 ここに来て,スライドショーで、 映像と一緒に中谷先生の事を学びましたが、 本の中の先生のほうが生き生きしていた様な感じがします。 し...続きを読むかし、百聞は一見に如かず 雪のことを学ぶには、 展示や実験が、ばっちりでした。 喫茶室で 湖を眺めながら、人口の霧を眺めながら 頂くコーヒーは、素晴らしいだろうなー。
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雪は天からの手紙 中谷宇吉郎エッセイ集
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池内了
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