貴志祐介のレビュー一覧
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ネタバレ弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、徹底的に守りを固められた“鉄壁の密室”に挑む、本格ミステリ。
本作は捜査パートが面白い。監視カメラ、電子錠、厳重なオフィスビルのセキュリティ群。殺人を成立させるにはあまりにも高すぎるハードルに対し、榎本と青砥が手を変え品を変え、思いつく限りの手段で可能性を検証していく。榎本が常識的な手段を潰し、青砥が非常識で奇抜な仮説を実証する。防犯の専門知識をベースにした榎本の解説と、動機や心情に迫る青砥の視点が絶妙に噛み合い、単なる情報整理に終わらない知的な推理劇が展開されていく。
また、犯行トリックそのものも印象的だ。犯人は特別なスキルを持たな -
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カラーの異なる作品群で、それぞれの慄きがあり面白かった!
めくるめくパニック映画のような『アイソレーテッド・サークル』。
ジメッとした薄暗い雰囲気が抜群な味をもつ『お家さん』。
実話怪談の入れ子構造が心地良い『窓から出すヮ』。
自分の身に起きたら一番厭な『追われる男』。
グロテスクな怖気がはしる『猫のいる風景』。
特に好きだったのは、最後にふさわしい静かな余韻がある恩田陸『車窓』。
新幹線内の短いやりとりだけどリアルに空気感を想像できる。私も車窓を眺めて、この町に生まれたらどんな人生だったかな?とか、窓一面の畑の持ち主の日々を想像したりするのが好きなので、これから新幹線乗るたびに思い出しそう -
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短編集
SFが3作、ミステリが1作
以下抜粋して雑感
『夜の記憶』
巻末解説を見てびっくり、初出はなんと1987年!!
ISOLAでのデビューよりさらに9年も前の作品だそうです
この本の出版日が古いわけではありません、文庫の初版は2022年11月です
『呪文』
文中で太字で記されている言葉がいくつかあるのですが、今ひとつその効果がわかりませんでした
でも収録作では一番好きかな
『赤い雨』
藻類の研究所が破壊され、遺伝子操作された繁殖力抜群の真っ赤な藻が世界中にばらまかれて……というお話
血糊藻(チノリモ)と青深泥(アオミドロ)を合わせた名前「チミドロ」というネーミングセンスが最高
途中ま -
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ネタバレ# あらすじメモ
英語教師・蓮実聖司(通称ハスミン)は、生徒や同僚から信頼される完璧な教師だが、実は冷酷なサイコパスだった。
自身の利益を守るため、蓮実は自分にとって不都合な人間を巧妙に排除(辞めさせたり、殺害したり)していく。
# 良かった点、感想
- 一章の括り
冒頭から怪しげな雰囲気はありつつも、正常に物語は進んでいったが、一章の最後のカラスを殺害したシーンで、一気に物語が転調する感じに、惹きつけられた。
- ハスミンの行動原理
上巻を読み終えた今の理解は以下。
1. 若い女性とのイチャイチャが何よりも最優先
2. 1以外は何にも感情が動かされない
3. 2故に、1以外の全ての -
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『将棋は決断のゲームである…決断をテーマに書かれた一挙8編の短編集』という紹介文に惹かれて読みました。
将棋は子供の頃に親に教えてもらって2、3度指したことがある程度でほぼルールも難しいことも分からない状態で読みました。分かってた方が面白いんだろうなぁと思う物語もありましたが、全体的に、話の筋に関わる程度に上手に解説が挟まっていて、あまり調べたりせずに理解でき、読み進めることが出来ました。
強く印象に残ったのは、葉真中顕さんの『マルチンゲールの罠』、白井智之さんの『誰も読めない』でした。
『マルチンゲールの罠』は、最後の最後で、見えている世界がグルンとひっくり返るような感覚がお見事で、読み終 -
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違法な取り調べ、自白偏重主義、その結果起こる冤罪の危険性を描く物語。
450ページ超えの厚さに一瞬怯んだけれど、読みやすい文体ですいすい読み進む。
英之が妙に法律に詳しいところとか、恋人の言動の不自然さとか、成り行きで狂言回しの役割を担った謙介のキャラの薄さとか気になるところはありながら読み進める。
冤罪の問題はよくあるテーマだし、話の展開や、英之の思惑も想像の範囲。ただ、雨の中ウエットスーツで…のあたりはあまりにも運を天に任せすぎな杜撰な計画ではないかな〜。
さらに、弁護士がここまで軌道を逸しているところに現実感がなく残念。
まあ、理詰めで硬派な社会派ミステリではなく、真相を知ってヒヤリと