貴志祐介のレビュー一覧
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『青の炎』主人公はまだ17歳だ。
青い。青過ぎる。
家族を守るために炎を燃やし続ける。
感情に任せて暴走するのではなくて、むしろ冷静で、頭も切れる。その分、「これは本当に正しいのか?」と考えながら、一線を越えていく過程が生々しい。
読んでいて、「まだ戻れたんじゃない?」と何度も思った。でも本人はもう引き返す気がなくて、淡々と準備を進めてしまう。その冷たさが痛いし、同時にすごく孤独だ。
誰かを守るための選択だったはずなのに、最後に残るのは、一直線に走って行く若者の姿だけ。スカッともしないし、救いもない。
読後は、熱くもない青い炎が胸の奥にずっと燃え続けた。
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特集タイトルに惹かれた過去号の怪と幽、勢いで2冊お迎えしたものの、前号の「あやしい家」ほどはまらなかった。。
今号の特集は「呪術入門」だから、うわぁ呪術だね〜(ぼんやりし過ぎた表現しかできない 泣)ていう術とか、呪物とか、不穏な感じの内容ばかりかと想像してたんだけど、節目に玄関先に飾るやつ(お節分の柊とイワシの頭とか。うちにはそういう習慣はないから飾ったことはないけど)とか、ちょっとしたおまじない的な内容も紹介されていて、それが興味深かったです。あの飾りたちも呪物と呼ばれていることに驚いたのと、どれも初めて見るお品ばかりで、日本って狭いようで広いな〜って改めて感じました(私の実家の玄関先に掛け -
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目を覚ました主人公の視界に広がる、深紅色の奇岩。その「深紅(クリムゾン)」は、やがてサバイバルの暴力と交錯し、血の深紅とも重なる。
昔観た映画「トータル・リコール」の火星の風景を思い出すような非現実的で異様な光景でした。
貴志祐介さんの『青の炎』『天使の囀り』と同時期の作品と思うと、現実と虚構の境界をあえて曖昧にしながら、人間の本能や恐怖を描いていた時期なのかな。
この作品は、私の苦手なゲーム的展開。
早く真相に辿り着かないかな、とこの「ゲーム」に潜む悪意の表現へのシフトに期待していましたが、むしろこれは展開そのものを楽しむタイプの小説なのだと思います。
仕組まれた舞台で、読者自身もゲーム -
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過去の父親の冤罪事件。
その清算を目指す青年の大胆な構想。
冤罪の“冤”は、ワ冠に兎。
あまり意識したことはなかったけれど、
面白いところをついてきたなと感心します。
そして、薄氷を踏むのですではなくて“駆ける”。
割れる前に抜け切るんでしょう。
青年の中で閉じ込められたままの父の“兎”。
自らが、再びの“兎”となり、取調室へ向かう。
薄氷を少しでも証拠で重ねつつ、
警察・検察と対峙していく様子は、
ラストが予測されるとはいえ緊張感があります。
そして、迎えるラストには『青い炎』で読んだあの破滅感を味わうことになります。
上手くいきすぎかなとか、
叔父さん反省してない方が面白かったのにと -
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貴志祐介の短編集。SFがほぼかな。
『夜の記憶』は、現状が全く分からない状態で始まり、徐々に情報が明かされていく感じ。なかなか理解に手間取った。
好きだったのは『呪文』。
植民惑星における、諸悪根源神信仰を中心とした憎悪の物語だった。極限の環境下で、文明がどう歪んでいくのかが描かれている。前提として、私の知る地球の外での物語であるため、到底現実的だとは言えないはず。それでも何故かリアルだと感じてしまうほど、憎悪の書き出し方が巧み。主人公が、生きて星を去ることができるのか最後までヒヤヒヤした。
PKや呪いが主軸になっている点が、同著者の『新世界より』や『さかさ星』に近しいところを感じる。 -
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ネタバレ八ヶ岳の山荘で目覚めた小説家・安斎智哉は、スズメバチの大群に遭遇。
外は吹雪いていて、とても蜂が活動できる季節ではない。妻・夢子は知らぬ間に姿を消していた。以前蜂に刺された経験があり、次に刺されると命に関わる。自然にできたとは思えない蜂の巣は、妻が自分を殺すために仕組んだものなのだろうか。
非常に地味。
敵の戦闘力は高いものの、ただの虫であるので、換気口を目張りして籠城してしまえばそこまでの危険はない。巣も寝室にあるわけではないので、廊下を歩く分には数匹見かける程度だ。ハラハラ感は少し物足りなかった。浴室で全裸で蜂に熱湯をかけるシーンは、映像として想像してみると結構シュールで笑えた。
真相