中村文則のレビュー一覧
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購入済み
まさに今を捉え絶妙な展開の傑作
いま考えられている最新の科学、宗教、国際政治の
知見を土台に、まさに今読みたい「物語」になっている。
展開がスリリングで、反権力側も権力側も、またさらに
細かく多数の者たちの思惑が干渉しあって先が読めない。
ラプラスの悪魔でもなければすべては見通せない。
リラックマ、子育て侍、ネット環境のまさに今の平和、
チェ・ゲバラ、ドストエフスキーなどが併存する。性的
描写も秀逸。世界や人類史といった大きなものを描ける
と同時に今を生きる個人の内面もよく描けている。
4人の男女は、闇ばかりでなくそれぞれに光を有して
いる。権力側も反権力側も、善のみ悪のみで純粋に存在
はせず、決着も、さらなる不幸を食い止めた夕闇の状況
で、それでも全体の中に埋没しない多くの自己を実現
していく希望だけは残ったと言えそうだ。
沢渡という人物は大きな問題提起だ。『リア王』の
「神々の手にある人間は腕白どもの手にある虫だ。
気まぐれゆえに殺されるのだ。」を思い出す。また、
『戦争と平和』の、颯爽たるナポレオンと老人も含む
ロシア軍首脳の対比や、大きな流れの中で、倒れ悩む
個人たちが神や秘密結社とつながること、平凡な幸せが
実現すること、大江の文学での、文中の太字の部分、
性と反権力の動きといったことが思い出される。 -
Posted by ブクログ
ネタバレめちゃめちゃ面白かった。
話の流れがまだ見えてこない前半に仏教哲学っぽい話がかなり長く続いたが、興味深い内容で飽きることなく読めた。この内容が後半の沢渡の過去編にリンクしていて、沢渡は手術のシーンで意識が脳を超えた(=神になった?)と思う。「人間は素粒子に過ぎない」が、素粒子で表せない意識こそが言語化できない神の領域なのではないか、みたいな話に説得力があった。
世界の出来事は全て化学反応式なのだから、生まれた瞬間に全ての運命が決まっている、我々の意識はその観客に過ぎない、という内容があったけど、これは自分もたまに思っていたことで、この考えを踏まえて「全てがどうでも良くなった」沢渡と、気楽に生きることを信者に薦めていた松尾が対照的だった。
強いて言うなら↑の量子論とか人とは神とは、みたいな壮大な話を突き詰めて欲しかったところで、最後物語の盛り上がりに使っていたのが世界企業による陰謀論だったのが、ちょっと残念だった。松尾も沢渡も死んじゃったから仕方ないけど…… -
購入済み
独特の雰囲気に呑み込まれ一気読みできる作品。
個人的には、内容も良かったですが、何よりもタイトルが洒落ていて、言葉のセンスが素晴らしいなと思いました。 -
購入済み
壮大な作品
久々にスケールの大きい作品を読んだと思った。又吉氏が勧めているから気軽に手を出す人が多いようで、レビューを見ていると過激な性描写に嫌悪を抱く読者が見られたが、この作品はそんな一点に立ち止まって評価すべきではない。描写や教団の異質性にばかりに囚われず、作中にひしめき合う複数の群像や視点やテーマに心を向けて読んでみるといいと思う。エンターテイメント作品というよりも、これは壮大な哲学・文学作品だ。
生きるとはなにか。平和とはなにか。安保に揺れる渦中の今、一層私の心には多くのものが飛び込んできたように思った。多くの人に読んで欲しい傑作。 -
Posted by ブクログ
さすがは並みいる男性作家が選んだ作品集である。全部面白い。
「ちょっとちょっと…」と傍で話しかけられるような親しげな語り口と
抜群のリズム感が心地いい。特に気に入ったものを少し…。
「道化の華」
ラスト3行でいきなり視界がぱあっと広がり、ぞくっと怖くなる。
視点のトリックで読者を驚かせるのが上手い。
「彼は昔の彼ならず」
心の本質が似通った人間が近くにいると、お互いに感応してしまうのだろう。
口先三寸のペテン師のような男を非難している主人公の男もまた、
親の遺産で遊び暮らす怠け者。
才能ある芸術家のパトロンになりたいという、
彼の下心を見透かしたペテン師の作戦勝ち。 -
Posted by ブクログ
町で知り合った彼女未満の女性が急に消えてしまったので、その行方を探しに行ったら1つの教団に突き当たる。でもその教団はもうなくて、別の教団に行ってしまったらしい。そこは公安に目をつけられている所で通称「X」と呼ばれている所だった。どうやら元いた教団を騙して多くの土地やお金を取っていったらしい。松尾さんは宇宙の理論、人間の意識は人間の細胞が出てそれを送ったことによって生まれるらしい。人間の細胞は常に放出されていて常に入れ替わり続けている。だから常に同じ人間はいないと説法を説いていた「X」の方では特に教えや行動はなくただ人間の欲求SEXをするということだけを繰り返す。そんななか「X」の内部でテロを起こそうという組織生まれ実行に移す日人が死んでしまう。テロと恋愛が絡み合い好きな人を告発するか迷う。けど結局、1人だけが死んで墓を閉じる。宗教とは何か人間の生き方とは何か何を信じるかが書かれていた。少し長かったけどすごい面白かった