中村文則のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
天才スリ師の生き様を描いたノワール小説。めちゃくちゃ面白かった。
両利きのスリ師すげえ。
主人公が一人称「僕」なので、主人公が知り得た情報しか読者にも知らされないのがとても効果的でスリリングな読み心地を与えてくれた。何を書くかより、何を書かないかが徹底されていて、そのまま話が進むので主人公の不幸な境遇がそのまま体に入ってくる。極悪人の木島にスリを強要され、何を盗めば良いかわかっても、それがどう使われるのか全くわからない。木崎はとんでもないことをしているのは間違いないのだが「知ろうとするな」と一蹴されるのが痛快だった。クズと悪党しか出てこないアンダーグラウンドすぎる1作。
あらすじ。
主人公は東京でスリをして暮らしている。その手捌きは凄まじく、金持ちそうな男を見つけては尾行して財布をスっている。スった財布は指紋を消してポストに入れると、身分証などから落とした本人の元へ届くのだという。
主人公は過去にスリではなく強盗にも関わったことがある。犯罪で繋がった石川、立花という仲間と共に、資産家の爺さんの家の金庫を盗むミッション。金庫にある金は脱税したものであるため、警察沙汰にはならない。3人に与えられたのは爺さんの愛人の女性が大声を出さないように縛ること。強盗自体は同行した名前も知らない男たちが実行し、報酬の500万円を受け取って別れた。
命令したのが悪の親玉である木崎だった。木崎は明かしていない主人公の名前や過去を全て知っていた。この男と関わったらいけない、そう思い東京を出た主人公だったが、やっぱりスリをするなら東京だと考えを改め、戻ってくる。そして財布をスった相手がなんと木崎だった。
主人公は、東京での暮らしの中、ある親子と出会っていた。その母は子どもにスーパーで万引きをさせていた。主人公は万引きG面にバレていることを見抜き、捕まえられる前にやめろと言う。それから子どもがなつき、絆が生まれていく。
主人公は木崎にほぼ無理ゲーな、新しいミッションを与えられる。失敗したら、その親子二人を殺すと言う。脅迫を受けた主人公は無謀なスリへ身を投じていく。さて逃れられない運命にどう抗うのか—— -
Posted by ブクログ
文庫版発売後すぐに購入したのだけど、大切に大切に読んでいたので気付いたら読み始めてから2年経っていた。びっくり。
ゲラゲラ笑って笑い疲れて本を閉じる日もあったし、唸るほど考えて本を閉じて、それでもまだ考え続けるような日もあった。
P.280
小説には大抵、主人公がいる。
僕達は主人公に同化し、時に客観視しながら小説を 読むけど、「個人」に着目して読んでいることに変わりない。
テレビなどでは人間を「 外側」から見るけど、小説の多くは「内面」から見ることになる。
人間の内面描写に最も適しているメディアは、小説であると僕は思っている。
そして、小説を読む、つまり個人の内面を見、それに寄り添う習慣を持っている人は、排外主義者や、差別主義者などにはなり得ない。人を外側から一方的に見るのではなく、個人の内面に寄り添う想像力が、小説を読む人には養われていることが多いからだ。
という言葉に救われた。
そうだったらいいな。そんな人間になれていたら、いいな。 -
Posted by ブクログ
宗教や原始仏教、脳科学、生物学、宇宙論、量子力学。さらには全体主義や戦争、靖国、東京裁判、テロ、途上国の問題、ODA・国際貢献まで。これほど広範な話題を扱い、世界や日本というマクロな視点から、個人のトラウマや悦びというミクロな視点までが凝縮されています。
これだけの内容を一つにまとめたということだけで十分に称賛に値すると思うのですが、そこに魅力的な「じいさん」やヴィラン(悪役)までもが登場します。さらに、これだけ硬くて重いテーマを扱いながらも読後は清々しく、良い気分になれるというのはただただ、すげえなと感動しています。作中でも触れられていますが、大きなものに取り込まれるのは気持ちいいというのと同様、正解はこれであると落ち着いてしまうのもやはり気持ちいいんじゃないかと思っていて、気持ちわいるを続けることが大事なんだよなと思ったりします。そういった意味ではこの小説で描かれている問題や思想も一つの見方であり正解ではないというのは意識しておく必要があると思う。
個人的にはセックスの描写が多いのは気になりましたが、読み終わるとそれをダメだと切り捨てられなくなるんですよね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ⚫︎感想
人間の意識はどこからくる?本当にその意識は自分のものか?人が「生きる」ことを、哲学、科学、宗教、善悪…あらゆる方向から見せられ、考えさせられる一冊。
教団VS教団を通して、壮大なテーマを飽きさせずに描く筆力に脱帽した。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
ふたつの対立軸に揺れる現代日本の虚無と諦観、危機意識をスリリングに描く圧巻の大ベストセラー!
突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国の根幹を揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、そして光とは何か。
宗教、セックス、テロ、貧困。今の世界を丸ごと詰め込んだ極限の人間ドラマ! この小説には、今の私たちをとりまく全ての“不穏"と“希望"がある。
テレビ番組で多くの読書芸人にも絶賛された著者の最長にして圧倒的最高傑作。 -
Posted by ブクログ
これ凄い好き。
私なんか全然本読んでないなーって思った。
若林さんがそもそも繋がっている、なんなら飲み仲間作家さんとの鼎談から始まって。初めましての作家さんも登壇してくるんだけどこんな会話繋がって凄いなー掘り下げてるなー面白いなーってのが連続するんだから。
タイムリーにみたかったなー。もっと対談して欲しい作家さんいるなー。私が好きな作家さんの本がお勧めされてて嬉しいなー。
もう紹介されてる本片っ端から全部読みたいっ!!すべての回でその時話題に上がったテーマでお勧めの本を作家さんが紹介するんだが、これが垂涎なんです。紹介の仕方にも唸る、だってどれもこれもすっごく読みたくなる。
沢山の本の中からキラっと光る物を探し当てた気分。 -
Posted by ブクログ
「あなたが殺したのは間違いない⋯⋯そうですね?」
殺人犯「木原坂」を取材する「僕」。
冒頭で、木原坂が人を殺したんだなってことが分かる。その後も、姉への手紙、僕の取材記録、何者かと木原坂の文通を通じて、姉の存在、友人や人形師の存在、写真家としての木原坂、火事の話⋯少しずつ情報が小出しにされる。その塩梅が実に絶妙。
姉も僕も木原坂もなんか危うい。言動も行動もどうにもおかしい。ミステリアス?いやもう、出てくる人全員変人です。
全編を通じて温度はなく、湿度を感じる。明るさはないが不思議と視界はクリア。なんかひんやりした地下室みたいな話でした。
オチは⋯なるほどそういうことか⋯と納得。こんな薄い本に、良くこれだけの仕掛けをしたなあ。
すごい。