あらすじ
「この作品が自分は一番嫌いだ」(奥泉光選「道化の華」)、「不思議な明るさに包まれた怯えの百面相」(堀江敏幸選「富嶽百景」)、「『男性というものの秘密』を知っている作家」(松浦寿輝選「彼は昔の彼ならず」)――七人の男性作家がそれぞれの視点で選ぶ、他に類を見ない太宰短篇選集。
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Posted by ブクログ
さすがは並みいる男性作家が選んだ作品集である。全部面白い。
「ちょっとちょっと…」と傍で話しかけられるような親しげな語り口と
抜群のリズム感が心地いい。特に気に入ったものを少し…。
「道化の華」
ラスト3行でいきなり視界がぱあっと広がり、ぞくっと怖くなる。
視点のトリックで読者を驚かせるのが上手い。
「彼は昔の彼ならず」
心の本質が似通った人間が近くにいると、お互いに感応してしまうのだろう。
口先三寸のペテン師のような男を非難している主人公の男もまた、
親の遺産で遊び暮らす怠け者。
才能ある芸術家のパトロンになりたいという、
彼の下心を見透かしたペテン師の作戦勝ち。
Posted by ブクログ
中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。
太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました。
個人的に良かったのは富嶽百景の一場面で、天下茶屋の2階に寄宿している主人公が店の人間とも親しくなってきた頃、店の若い女性店員が1人で客の相手をしている時に、わざわざ1階に降りて隅でお茶を飲みながら遠巻きに見守ってあげているところです。
そんなにあからさまな優しさを出す感じの主人公じゃないんですが、さりげない描写の中に書き手の優しさが滲み出ているなぁ、と感じました。
Posted by ブクログ
女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。