舞城王太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
13冊目。
表題作、『Dead for Good』、『矢を止める五羽の梔鳥』3編を収録。
表題作は人が空飛んだりパラレルワールドが交錯したりかなりSFチック。
『みんな元気』は言葉足らずな朝ちゃん(5歳)のお別れの言葉から来ているんですが、素敵な響きですね。
僕もこれからもそして今までも、植木バサミを振るって人の首をちょきんちょきんと切るような思い決断をしていかなくてはならないわけで、でも人が生きるというのはそもそもそういうことで、みんなそうやって生きているそうです。
平気で元気に、気づかずに。
自らが植木バサミを振るう、まさにちょきんちょきんの時期に読めてよかった。
ちょきんちょきん。
『Dead〜』は舞城のほとばしるサディズムが堪能できます。
『矢を〜』は文章が破綻しまくりの実験作兼意欲作。KoRnのTwist的な。まあおまけ。
-
Posted by ブクログ
こんな人に薦められない小説ないなあと。
小説読んでると、空気を掴むような話でさっぱり意味わかんないとかよくあるじゃないですか!
でもこれはそんなんじゃなくて普通に話が難しすぎてよくわからない。1話の内容は実は二話の主人公のもとに届いた小説の内容で、実際その二話の主人公(1話の主人公と同一人物)が体験した過去とリンクしてるんだけど、そこには嘘と真実が混在しててどれが実際に起こったことかわからないです。で、その二話の内容も三話の主人公の元に届いた小説で…という風になっています。それぞれの話で創世記やヨハネの黙示録に見立てた殺人事件が起きるんだけどそれも嘘だったりホントだったり、そもそも見立てても元ネタ知らないからそれもよくわからない。それぞれの話で共通の人物(主人公の弟とか)も出てくるけど、それぞれの話で言ってること違うからどれが真実かもわからず。
話自体はよく分からないだけど、そもそもこの話はその難しい構造を分からせようとしているんじゃない気がします。ただ遊びたかったんじゃないかと。
実際に言いたいことはやっぱきっとそんで愛で、恋人に対する愛だとか、自分の子供に対する愛だとか、兄弟に対する愛だとか、育ての親に対する愛だとかそんなんな気がします。グロかったらりエロかったりするんだけど愛がにじみ出てるのです。それがまた心地よいです。 -
Posted by ブクログ
<僕の首の後ろにも、他人よりもちょっと濃いめの産毛が生まれたときから生えていて、これが物心ついたころから僕の抱えた爆弾だったのだけれど、十三歳になってすぐのある晩、自分の鎖骨をこすっていて、そこにいつもとは違う感触を感じてうつむいて、首元に赤くて長くてコリコリと固い明らかな鬣の発芽を確かめたとき、それまでは祖父と父と同じように背中に負ぶっているつもりだった爆弾が、気づけば僕だけ胸の上にも置かれていたと知ってショックで、その上さらにその導火線にとうとう火が点けられたのを実感して、僕は絶望した。―福井県・西暁の中学生、獅見朋成雄から立ち上がる神話的世界。ついに王太郎がその真価を顕し始めた。ゼロ年代デビュー、「ゼロの波の新人」の第一走者が放つ、これぞ最強の純文学。>
現実と薄い膜で隔てられた(というような)異世界の話なので、疲れたときなんかにいいと思う。おもしろかった。 -
Posted by ブクログ
究極の「愛」の小説!
冒頭の『愛は祈りだ。』からはじまり、とにかく愛が詰まったお話だと感じました!
でも、この小説を読むと「愛」と一言でまとめるのはどうなのか…と考えてしまう。それほどに深く深く「愛」について書かれていました。
主人公の小説家が恋人を亡くしたお話です。そして、小説家の作中作も挟まれています。ファンタジー要素も強く、全部を理解しきれたわけではないですが、想いの強さは受け取った気がします。
ASMAのお話とアダムとイブのお話が印象的でした!
慶喜くんの「メタ化された友達」についてもちょっと共感してしまった。友情からくる行動か、友達という役割からくる行動か…、何だか友達関係について考えさせられました。
舞城さんの作品は初めて読みましたが他の作品も気になる。ちょっとクセが強い作風だけど読んでみたいです。
-
Posted by ブクログ
過剰な程に強調された「好き」が溢れるタイトルは、決して過剰では無いと同時に過剰である。過剰である事が唯一の愛情の反映であるからこそ、それは過剰で無いと言えてしまう。
私は本書を最強の「恋愛小説」であると思う。本書は「恋愛の小説」であると同時に、「恋愛と小説」であるから。それは大きな挑戦であったと思うが、見事なまでに成功を果たし、恋愛と小説を嘗てないほどの強いイコールで結び出して見せた。
語りかけるようでいて、大人びていない真っ直ぐな文体は心地良い。恋愛を描く上で、人と人の複雑な接触は避けられないだろうけども、その絡みでさえも軽々しくも、重厚に感じさせたのだと思う。人間が抱く、矛盾したような二面性の気持ちが至る所に姿を見せて、それは物語の中だけでなく、読者である自分たちにも同じ様に感じさせる技術は素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ独特のリズムと速度で、目玉が文章に運ばれていくような感覚に陥る。そして、倫理観が結構ぶっ飛んでいる。過去も現在も暴力が蔓延っているので、読んでいて麻痺してくるというか。犯人が奈津川家に乗り込んでくるシーンのインパクトが少し薄まった気さえする。
前述した暴力の連鎖には、(世間的には?)名家が家庭内に抱える不和が根本原因にあり、ミステリにはお約束の舞台となっている。
異様な形で曰く付きの蔵から姿を消した次男、招かれた名探偵、目的不明の連続襲撃事件など、こう書き出してみると本格ミステリ的要素がてんこ盛りなのだが、先の展開が読めないまま、もの凄いスピードで話が進むのが一番の特徴かと。
ただ、二郎が失踪するまでの経緯は他の場面と雰囲気が違い、丹念に描かれていた気がして、一番ひきこまれた部分だった。
事件自体というより、事件を通して自分と家族に向き合って蟠りを解くお話だったと考えると、納得がいった。