舞城王太郎のレビュー一覧
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ネタバレうぁ~また『九十九十九』的なアレかぁ……とまず思った。パインハウス内で名探偵たちが次々と推理を披露して死んでいくところは冗長というか、事がどのように収束していくのかまったく予想できないだけに苦痛としか言えなかった。そうして長いイントロダクションが終わってやっと本編……みたいな。こっちはわりと楽しめたかな。
幼児への性的虐待を許容し、そのうえで現在よりも繁栄する〈未来〉っていう世界設定がこの上なく舞城王太郎っぽくあり、そんなでも不思議とリアリティがある。子どもの犠牲に成り立つ世界というのは、けど考えてみれば現在ともそう大差ないのかもしれない。
けどやっぱ、なんか希薄なんだよな。梢ちゃんにしろ小枝ちゃんにしろ、その想いっていうのが言葉だけというか、あくまで〈設定〉であって、まあそこまでイっちゃってるのが面白いんだろうけど……長篇になると重心みたいなものが計れなくてふわふわ~っと漂うような味気なさを感じてしまうのだ。舞城は。
ディスコ・ウェンズデイって世界を変えるために闘志を燃やすようなタイプじゃない。絶対。納豆でも豆腐でもどっちでもいいやつだと思う。 -
Posted by ブクログ
ある意味、これは箱庭小説とも言えるのではないだろうか。
「家族」という箱庭を出て、少女が「個人」へと成長していく物語。
または「物語」という箱庭を出て、人生とか将来とか、そういう「現実」のようなものに踏み出していく物語。
というふうに考えると「臨床心理士」とか「セラピー」とかいうフレーズも思惟的に思えるのだけれど、それは筋違いだろうか。
たとえば63ページの、「ってそんなの興味とも言えない単なる思いつきだけで(…)受験して合格する。認知行動療法に興味を持つ。私は臨床心理士になりたい。」の辺りみたいな、短い平叙文をいくつも並べる書き方が気になったのだけれど、これは意図的なのだろうか。
なんだかまるで、小説のプロットの走り書きそのままみたいに思えて、もしかしてこれはメタフィク小説なのかな、とも思ったりした。
語り手である香緒里はこの物語の時系列にはいなくて、これは別の地平線上にいる彼女が書いた小説なのだ、という。
家族という箱庭を出た彼女が『骨』の次に書き上げた小説がこれであり、そこには彼女の半身のような弟のことが中心に描かれている。
だからその弟を象徴づける「ビッチマグネット」という言葉を、この小説のタイトルに彼女はしたのである。
…というのはちょっと飛躍にすぎる解釈だとは思うのだけれど、
「物語が物語を飲み込んで、時に想わぬ飛躍も起こる」のだから、あながち間違いだとは言い切れまい。
というのはちょっと、強弁にすぎるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表題・個々の題名が良い。
【やさしナリン】
人の不幸に対してパニックになってしまい、自分の安全が確保できないほど相手に親切にしてしまう。(お金をあげてしまったりなど)
そしてそれに対して「人に優しくすることの何がいけないの?」とう態度を取る夫。
【添木添太郎】
「神に愛された子」の周りにいると、自然と彼女を助けるように「何か」に利用されてしまう
【すっとこどっこいしょ。】
将来を決められなくて、何にでもなれるように理系も文系も勉強したりしている高校生の主人公。
人生は目標を決められなくても進んで、そのために新しい選択肢が出たりすることもある。友達の彼女の浮気を問いただしたら腹をさされ、それがきっかけで出会う人もいるように。
「なめた高校生」のアピールがすごくて、主人公を全く好きになれない。
【ンポ先輩】
ショックで心に空白ができる。その「空白」が主人を乗っ取って、自分は何者なのかと親しい人につきまとう。
【あまりぼっち】
毎日、「昨日の自分」が自分を訪ねてくるようになる。
何もする気が起きなかった主人公だが、明日もやってくる「これからの自分がつくる昨日の自分」の存在の為に、生きて働いて行こうと思うようになる。
【真夜中のブラブラ蜂】
子供が独立したのを機に、夫から「グダグダしてるの見るのもやだから、なんか始めてみれば?」」と言われて始めウォーキング。
次第に「単にブラブラしたいんだ」と気付き、ついには離婚して世界中をブラブラするようになる話。
アメリカで偶然(子供に言わせればブラブラの運命めいた理由)出会った事件の犯人の描写が怖い。
複数の60代男性の血まみれのチアリーダー姿。
【美味しいシャワーヘッド】
まあいいや、どうでもいいや、みたいな適当な態度では見失うものや見過ごしてしまうことが多すぎるのだ。
気を付けるというのは、言葉通り、気を張って相手に、対象に、寄り添うということだ。
そうせずにいて見失い取り戻すこともできない、それが自分のそばにあったということを知ることもできない -
Posted by ブクログ
ネタバレ第148回芥川賞候補作「美味しいシャワーヘッド」を収録した中短編集。
舞城王太郎さんの作品は初体験。かなりクセのある文体の作家さんだというのは聞いていて、初めてならこれがお薦めと何人から言われたので手に取りましたが……うーん、文体よりも物語にクセがあるなぁ。
7編の物語とも物語が向かう方向に意外性があって、言葉の選び方一つ一つが特徴的。現実の世界で、あまりウチの周りにいないタイプの登場人物でその違和感が時々、イラッとさせられます。
「やさしナリン」は夫婦の物語。人の可哀想に異常に反応してしまう夫とその妹に振り回されながら、関係を再構築していく過程が伺えます。
「やさしナリン」という言葉の選び方が単純に凄いなぁと思いつつ、突き放した見方に同調仕切れず消化不良。
「すっとこどっこいしょ。」「ンポ先輩」「真夜中のブラブラ蝶」は登場人物に受け入れづらい方が登場するので、読んでいると結構苦痛。
一番好きなのは「あまりぼっち」かなぁ。
ある日突然、自分の目の前に現れる"昨日の自分"。別居中の妻子の元に向かうも、その日の晩には"昨日の自分"は消えてしまう。
SFな設定ですが、他人に興味のない今の自分と、消えてしまう不安を抱えた昨日の自分との対比が面白いですね。 -
Posted by ブクログ
全7編を収録。そのうち、好きだと思ったお話は、まず「やさしナリン」!可哀想な人に弱く、自分を傷付け、身近な人に迷惑をかけてでも、冷静な判断ができなくなり、可哀想な人に親身になってしまう兄妹。優しさっていうのは決して間違いではないからこそ、優しさの振る舞い方でとんでもない醜悪な展開となってしまう。そして「ンポ先輩」!これは全体を理解できているわけではないけれど、空気読んでよ、という圧力に、私は空気の奴隷じゃない・・っていう主人公の主張に痺れた!!最後の「真夜中のブラブラ蜂」もカッコ良くて興奮した。子供を大学まで育て上げた若い奥さんが、「散歩」を極める話。この3点に共通するのは、主人公がある主張について討論するシーンがあること。「やさしナリン」では、ヒステリックになってしまった旦那と、「ンポ先輩」では、空気を読めと詰め寄ってきた友人と、「真夜中のブラブラ蜂」では、散歩することを楽しんでいる主人公に対して、暇ならもう1人子供を作ろうと提案してきた旦那と・・・。意見が合わなくなる、論点が少しずつズレテていくときの、イライラする感じ。悲しくなって、諦めちゃう感じ・・・。面白いな。