あらすじ
夜中に目覚めると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた――。あの日から本当に色んなことが起きた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった(表題作)。西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎(「矢を止める五羽の梔鳥」)ほか、「Dead for Good」「我が家のトトロ」「スクールアタック・シンドローム」の全5編を収録。21世紀型作家による、〈愛と選択〉の短篇集。
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単行本『みんな元気。』より、「みんな元気。」「Dead for Good」「矢を止める五羽の梔鳥」の3篇を収録。
『阿修羅ガール』のアイコもそうだったけど、舞城の書く女子主人公ってどうしてこんなにも身に積まされるんだろう。って云うか舞城本当は女性だったらどうしよう。とあらぬ妄想が始まってしまう位、女の子の描き方とか考え方が生々しい。
「ぺろっとめくれて表と裏反対に……」ってならねーよ!ならねーけど何か言われてみればあーなるほど納得しちゃいそう。みたいな。
「Dead…」「梔鳥」では文章のドライブ感を満喫。
特に「梔鳥」の見立て?こじつけ?とにかくそれをあのスピードでやられてポカーンとするのが好きだ。
『スクールアタック・シンドローム』に収められた2篇「スクールアタック・シンドローム」「我が家のトトロ」に比べると、こっちの方が遥かに舞城舞城していて、薦める時は相手を選ばないと……。
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『目を覚ますと、隣で姉の体がベットからだいたい十五センチくらい浮いている。』
『あのさ、これ、ゆりちゃんに内緒な ー だってやっぱ可哀想だろ、夜中に浮いてたなんて。恥ずかしいじゃん』
『昔の恋愛なんて、全部架空の話みたいなもんだからさ ー お互いが好きだったらこうなるっていう、条件結果の話だろ?恋愛のことって。好きっていう前提がなくなったら、起こったことだけが残って、起こった理由とか根拠とかなくなってるから、凄い宙ぶらりんな感じなんだよな。やっぱりいくら事実でも、それが起こるための前提とかなかったら、小説読んだのと感覚変わんないよ』
『南田の大学時代の彼女は秋元則子って名前で、それを聞いただけで私はのりこって名前の女がいきなり全員嫌いになる。のりこなんてろくな女いないと思う。』
『弱くないよ全然強いよ。怖いって別に弱くないんだよ秀之ぃ。歯が痛いのと一緒でさ、痛いのわかんなかったら身体の悪いところわかんないだろ? そういうのと一緒で怖いってのは大事なんだ』
『どうせあんた、ホントはどっちでもような感じなんじゃないの?実際さ、中途半端な無気力君の脱力人生、気張って見せたって底が知れてるよ。やめとけば?みっともないから』
『嫌なら言い返してきなよ。このままじゃまずいと思うんだったら何とかしなよ。いじいじしてたってどうしようもないでしょ?』
『いつまでが子供なの? ー ちょっとさ、ねえ、子供っていつまでよ』
『あんたね、子供のまんまでいたら大人になんないよ』
『こういう泣き方をしている私は母に泣けば済むと思ってるでしょとよく言われてしまう。泣けば済むんだったらいいけど、泣いても済まなくて、それがまた悲しくてくやしくて泣いてしまう。』
『父はハンドルに両手を置き、目をつぶっているが泣いてはいない。でも涙が流れていないだけで、本当は泣いている。』
『欲しい物があるから欲しがるんだけど、本当に欲しいのは、同じ種類の中の、ただ一つなんだよね。種類が同じだったら何でもいいって訳じゃないんだよなあ』
『タイミングはいつだって悪いもんだよ。』
『もっと頑張るべきだったんだ。もっと愛するべきだったんだ。もっと考えるべきだったんだ…。』
『恋愛に怯え、セックスに怯え、怯えることにも怯えてもうぐるぐる訳が分かんない。』
『大体枇杷にはセックス無理なんだよ、そもそも。自分のこと傷つけるか甘やかすか、どっちかのための道具にしかなってないもん。そういうのってちょっと幼すぎるだろ』
『みんな選んでんだよ。こういう選択いくつもいくつもやってって人生生きてんだから。首はいくつも切り落とされてんだよ。このちょっと錆びた植木バサミでちょきんちょきんとさ』
『この世の全ては偶然と必然が同時に作用してるって知ってた?』
『愛されている。これからいろいろあるだろうし、あるけれど、愛されて起こるいろいろだから、きっと大丈夫。でもそんなふうに言えば、実は全てがそうなのだ。みんな大丈夫。みんな元気。』
『まだいろいろもっとたくさん選択肢はあるに違いない。いや、選択肢はもっと作ることができるんだ。まだ選択肢になってないところからもっと選べるんだ。そうして増やしたい選択肢の中から私はもっとよく考えて選べるはずだ。もっとよく考えて選んでいかなくてはならないのだ。植木バサミを振るって人の首をちょきんちょきん切るような重い決断をしていかなくてはならないのだ。でも人が人生を生きるというのはそもそもそういうことで、みんなそうやって生きているんだ。平気で、元気に、気づかずに。』
『私は目を開ける。まっすぐ落ちる私の目の前にまず三つの選択肢。迷うことなく私は唯士に向かって手を伸ばす。言わなくちゃ。』
【Dead for Good】
『人間という命の長い、知性を持つ生き物は、それゆえひたすら退屈を厭い、楽しみためなら何でもする。苦しみ、悲しみ、それに耐え、悪意にとらわれ、人を騙し、殺し、それを悔やみ、惜しみ、泣き、涙が枯れた後には死のうと思い、死ななくてはいけないと思い、死ねない自分は駄目だと思うが、それらはすべてそういう気分を楽しんでるだけなので、死なない。』
『人は自分を変えようとするよりは状況を変えようとする。』
『死んだら永遠に死に続けて長いんだし、生きてる時間なんかせいぜい百年のもんだから、俺はひたすら生きまくるよ』
『誰かを殺すと自分も一部死ぬ。誰かを傷つけると自分も一部傷つく。俺は長い長い自傷行為を楽しんでいる。ゆっくりと時間をかけた自殺。でも俺は俺を殺すことで、またさらに深く強く俺を殺しており、その連鎖は俺を死に対して鍛えている。俺はもう死なないんじゃないかと思う。死ぬにはもうすでに死にすぎている』
『前にさ、すんごい何にもやることなくてさ、調布の駅のそばの八百屋の柱に貼ってあった、猫の飼い主探していますってポスター見て、一日で五匹全員、クラスの子とかから飼い主見つけてあげたじゃん?あれってゲームだったけど、あのときすんごい楽しかったし、あれで私、なんて言うか、胸があったまったんだよね。そのときだけじゃなくて、ずっと。なんかこれからもずっと安心して生きていけるって感じ』
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「みんな元気。」は声に出して読みたい日本語。もうたまらない長い台詞。これは外人ですね。お話の国あたりで市村正親に読んでもらいたいな〜
「矢を止める5羽の梔鳥」は非常にロジカルな言葉遊びの連続のような作品。庄野頼子と似てるようで何か大きな違いを感じるんだけど、ずっとその何かがわからなかったんだけど、発想法がそもそも違うんですね。二次創作の二次創作何ですね。(長くなるのでちょっと休憩)
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表題作は、まるでコマ割りのない漫画を読んでいるような文章だった。舞城さんの文章は思考と理屈と情景が感覚的なのが魅力だけど、特にこの作品はその境界線が限りなく曖昧である。
けれども、読んでいて理屈は理屈とわかる。
個人的には、「みんな元気。」は非常に身につまされる話だった。選択しなかったということも、選択に含まれること。
人生は一度きりで、やり直しはできない。<私>以外の人生を<私>が生きることだって、不可能だ。
私たちは生きている限り選び続けなくてはならないし、たとえ選ばなかったとしても、否応なしに人生は続く。失敗しても、間違っても……家族が家族でなくなってしまっても。
平行世界が文字通り同時進行で描かれる場面は圧巻である。それは存在しえたはずの世界であり現実なのだが、<私>の体は一人なのだ。いつだって現実は、経験と感情に振り回される。
「Dead for Good」もとてもよかった。現実に振り回されながらも、何が自分にとってリアルなのか、何を自分は選択していくのかに向き合っている作品なのではないかと思った。
でも、「矢を止める五羽の梔鳥」は全然わからなかった(笑)。
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【みんな元気。/Dead for Good/矢を止める五羽の梔鳥】家族もの。超展開ばかりだけど表題作は比較的綺麗にまとまっていた感じ。愛に溢れている!
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夜中に目ざめると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた――。あの日から本当に色んなことが起きた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった(表題作)。西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎(「矢を止める五羽の梔鳥」)。
単行本『みんな元気。』から「みんな元気。」「Dead for Good 」「矢を止める五羽の梔鳥」の3篇をセレクト。
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『みんな元気。』は舞城王太郎の短編小説集。文庫版は、単行本と収録作品が異なるそう。さて、僕は日本現代文学の中で、今一番舞城王太郎に萌えています。村上春樹とか村上龍とか阿部和重とかは売れている(阿部和重は微妙だけど)から教養として読んでいるという感じ。中原昌也は好きだけど、読むと影響で、仕事中すごい体が痛くなるし、精神病的症状、絶望状態が現れるから、正直大好きでもあまり読みたくない(笑)。
舞城は残酷表現もあるけど、ある種の理想とか正しさとか、理想も正しさも成立しえないこんな時代に志向しているから、読んでいて体が痛くなることはない。だから好き。そんな生理的理由で小説の好き嫌い決めていいのかという問題もあるけど、今日も舞城推します。というわけで、『みんな元気。』文庫版から名言、名文をお届けします。
<Dead for God>より
『神の怒りも罰も助けにならない。神は試すために怒り、罰するのだ。試されるのは人の気持ちで、神はそいつの気持ちを試すためにそいつの命を奪うことだってある。罰は相手を許すために与えられるものだが、神の罰はあくまでも人間全体に対して与えられるので、一部の人間は死ぬ。人類はダメージを受け、神の気が済んだところで許される。
でも本当は、神なんて人の心中にしかいない。試されたつもりになるのも許されたつもりになるのも心の中だけだ』
(p.175)
『誰かを殺すことが、その殺人者をも一部殺すように、誰かを生むことが、それをする父親、母親をも一部さらに生かすことがあるかもしれない』(p.193)
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さて、表題作『みんな元気。』とか、また家族の問題。日本近代文学伝統のテーマです。もう現代なんて家族という族、崩壊気味だし、一人暮らしの無縁人の方が多いだろうけど、舞城は家族を描きます。家族も交換可能、家族も選択可能。ああでも家族なんてもう文学で扱わなくていいんじゃないか。文学はフィギュア萌えとかゲームキャラ萌えとか、家族がいないことを補完するというか、家族なんて必要なくする仮想現実をもっと真摯に描かないと、仮想現実化の進む社会で存在意義を喪失すると思える。
なんてこともう何年も前から言われていることだろうし、文学の失効化なんてくいとめられないだろうけど。それでも小説を求めていると、舞城が輝いて見える。
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舞城さんはタブーを軽々と破壊していくようなエピソードを出してくるけれど、そのわりには文章のそこここに精神の健全さがにじみ出ているように思う。軸足はあくまでモラルに置いていますって感じなので、下劣あるいはスプラッターな描写もつい穏やかな気分で読んでしまう。「山ん中の〜」は前半の怒濤の勢いが、「みんな元気。」は後半の感傷が印象的だった。
Posted by ブクログ
「みんな元気。」
夜中に目ざめると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった…。
今までに増して意味が分からない。舞城作品は分からないとこがよいのだけどこれはちょっといろいろ詰めすぎたかもしれない。たぶん家族愛の話。
「 Dead for Good」
バイト先の友人が狂的サディストで薬を盛られて散々いたぶられてから身体が不自由で時折奇声を発するようになった主人公は、まともな仕事につくことが出来ずに職を転々とするが老人ホームで働くようになってなんとかなった。サディストの友人は海外でテロリストを捕まえていたぶり殺したり変態に売りさばいたりしてそれをいちいち手紙で報告してくるので「早く死ね」といつも返事を送るのだが、それでも主人公は彼を友達だと思っているのであった。
「 矢を止める五羽の梔鳥」
西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎の話。最早わけわからない。
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前半は山口家が楽しすぎてスリリングで竜巻で迫力。
あえて特別な能力を持っていない主人公がまぶしい。
裏表紙にもあるとおり、愛と選択と、あと可能性の物語。
MVP:朝ちゃん
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「みんな元気。」「Dead for Good」「矢を止める五羽の梔鳥」の3話を収録した短編集。
短編だから、壊してしまった物語を回収できていないような気もする。
しかし、それがいいような気もする。
何か考えさせられてしまう短編集。
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13冊目。
表題作、『Dead for Good』、『矢を止める五羽の梔鳥』3編を収録。
表題作は人が空飛んだりパラレルワールドが交錯したりかなりSFチック。
『みんな元気』は言葉足らずな朝ちゃん(5歳)のお別れの言葉から来ているんですが、素敵な響きですね。
僕もこれからもそして今までも、植木バサミを振るって人の首をちょきんちょきんと切るような思い決断をしていかなくてはならないわけで、でも人が生きるというのはそもそもそういうことで、みんなそうやって生きているそうです。
平気で元気に、気づかずに。
自らが植木バサミを振るう、まさにちょきんちょきんの時期に読めてよかった。
ちょきんちょきん。
『Dead〜』は舞城のほとばしるサディズムが堪能できます。
『矢を〜』は文章が破綻しまくりの実験作兼意欲作。KoRnのTwist的な。まあおまけ。
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“みんな元気。”と“Dead for Good”と“矢を止める五羽の鳥梔鳥”の3つからなる本。
もう、この人の書く本に常識とか一般とか普段生活する上で必要不可欠な概念が通用しないのが改めてよく分かる一冊です。
Posted by ブクログ
お気に入りの舞城さん。
短編を3篇収録なのですが、なかなか。
愛をテーマにしてるんですかね?そういう意味ではいつもとちょっと色が違ったかも。少し爽やかなようなそうでもないような。後の2つは短すぎて難しかったなぁ。
だけど好き。癖になるよね。
Posted by ブクログ
内容がくるくると変わっていくのについていけずむーんと唸っていたけど最後のまとまり方は素敵だなと。舞城さんの作品はもっと読んでみたいと思いました。
Posted by ブクログ
こちらは「<愛と選択>の短編集」と裏表紙にあった。
スクールアタック同様、夢を見ているように訳が分からない話の展開が提示されるが、ついついそれを読まされてしまうのは文章の力が強いせいか。
3作品の中ではやはり表題作が好きだった。
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なんだかぐちゃぐちゃ。破天荒といえば聞こえはいいがよくわからんというのが本音。表題作は途中まではクソかと思ってたけどラストが良かった。みんな元気。
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「目を覚ますと、隣で姉の体がだいたい十五センチくらい浮いている。」という、冒頭から前触れもなくいきなり舞城節炸裂でうごごごごごごごごごごおおおおおー!ってアドレナリン勝手に燃焼。全体のスピード感も相変わらずはやいはやいはやいはやい。個人的に『阿修羅ガール』やら『ビッチマグネット』やらに似た女性一人称スタイルをキープしていて、テーマはやはり「家族愛」に落ち着くんだろう。もちろん読めばわかるけど、そんじょそこらの家族愛の枠にははまらないだろう強烈な家族愛だけど。「にゃ~だ~。はわ~ん枇杷ちゃんにゃだ~、にゃだよ~。もう~にゃ~だ~~」とせがむ朝ちゃんの猫語がめっちゃ可愛い!「Dead for Good」、「矢を止める五羽の梔鳥」の両辺共に異色でGood。総体して鑑みるに至るに「みんな元気。」ってやっぱ、良い言葉。
Posted by ブクログ
「みんな元気。」「Dead for Good 」「矢を止める五羽の梔鳥」の三作が収められている
この人の本は「阿修羅ガール」に続いて二冊目
あいかわらずシュールで若い女の子言葉で
下ネタたっぷり暴力たっぷりくるので振り落とされそうになる
それでも時々“本当のこと”がかいまみられて
自分にとってはいい引きになっている
でも実は、そんな“本当のこと”も必要ないのかもと思うくらい
この作家の
“薄っぺらさ”にとられかねない世界のギリギリをいく感じは好きだ
Posted by ブクログ
読みかけて忘れていた…。以前も書いたが舞城大好きで文体だけで読めちゃうんだけど、特にこれは気がつくと普通に時間が前後してて挙句いきなり未来の架空子供とか旦那がでてくるから、置いてきぼりくうかんじがあった。そして相変わらずとっぴょうしない。面白かったけどね。もちっとシンプルでいかったんじゃ?って感じかな。
でもねえ、じんせいのせんたくが、人の首チョン切るくらい大変だとか言っちゃうこの人がやっぱ好きなんだと思う。
空から落下して、お姉さんと、弟と、好きな人とが一生懸命に自分を受け止めにきてくれたら、本当に幸せだ。でも一人しか選べないときがきたとしたら
私の透明魔人は誰かなあ…。
Posted by ブクログ
いくら舞城とはいえ、やりすぎ。やりすぎコージー。コージー富田。一気に読めばもっとおもしろかったかも。3つめの短々編はすごく面白くなりそうなところで終わって残念無念。
Posted by ブクログ
表題作『みんな元気。』だけ読んだ。
言葉が次から次へと溢れてきて、その洪水に巻き込まれるようにして気づいたら物語は終わっている。この、わけわかんない感じに爽快感すら覚えた。
Posted by ブクログ
これはなかなか良かったという印象があるのだけれどなぜか内容が思い出せない…
私のこういうところどうにかならないものか。感動をずっと覚えてられるのに内容が思い出せないのは本当は感動してないのかしら??
Posted by ブクログ
表題作は3。短編2本は4に近い3くらい。
十分楽しめた。文章がうまいという感じではないし、独特な表現手法をとっているのが少し気になる。
でも構成力はすごいと思った。突然の転回のせいで読み手として置き去りにされる感があり「は?」となるが、それは翻弄されている登場人物の視点であるわけだ。で、登場人物の順応に応じる形で把握が進むことが、物語に入っていく助けとなっている。設定も肯定的な意味で荒唐無稽でおもしろい。くどくどしい説明とかを一切してないせいで、余計に話を分かりにくくする一因になってるとは思うけど。
わけの分からない小説にありがちな雰囲気重視の印象派的な話じゃなくて、かなり寓意的な作だと思った。少し主題を前面に押し出しすぎな気もするが、ところどころで披露される洞察は鋭いしそれを持ち出してくる流れも自然でいい。