【感想・ネタバレ】されど私の可愛い檸檬のレビュー

あらすじ

夢も目標もあるのに決断に時間をかけて周りを苛立たせてばかりの僕。要領が良いのか悪いのか不明な男子が家族を得るまでを描く「されど私の可愛い檸檬」。さらに《理想》を体現する姉に慄く妹や、大きく揺らぐ小さな家族のために奔走する夫の姿を描く、理不尽で面倒だけれども愛するしかない戦慄含みの家族小説集。

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Posted by ブクログ

家族に関して描かれた3篇の小説集。
簡単に関係を断ち切れない『家族』がテーマだからか、たくさん考えさせられたし文章が重く響いた。特に『ドナドナ不要論』は、自分の今の年齢や家族構成に近いキャラクターの話だったので身近に感じたし共感しやすかったと思う。
親やきょうだいは選べないし、配偶者選びだって正解は誰にもわからない。家族を愛し自分が置かれた環境でもがくしかない。私はとても好きだったけど、読む人によってはとんでもなく苦しい小説ではないかと思った。

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2023年08月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「愛」「哀しい・悲しい」という言葉の解釈を解釈にしては長い物語に載せて著している
舞城さんがこれらの言葉の意味をどのように噛み砕いて再構築しているのかがよくわかる作品。興味深かった。

『トロフィーワイフ』
愛情の捉え方の違い
あたかも善いように振る舞っている人の言動が受け手にとっては苦しいことなのかもしれない。しかし、拒絶する理由が明確にないことからその人の善意ありきの行動に染まった生活に沈んでいってしまう。

『ドナドナ不要論』
「悲しい」「哀しい」という言葉は一体どのような状況のことを表すのか。「ドナドナ」というかなしいと感じる曲をあえて聴く(自らかなしい思いをする)のはなぜかということについて、過去のかなしさはどんなことをしても取り返しがつかない。しかし、その出来事は全てが「悪い」でまとめられることではない。「かなしい」とは要らないけど悪いものではない。だからこそ、主体的にかなしみを感じる行為をすることがあるのだ。

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2023年03月06日

Posted by ブクログ

3作品とも好き。
とくに心に突き刺さったのは「ドナドナ不要論」
この世にかなしみはたくさんある。かなしい思いは少しでも減らしたいし、できることならしたくない。でも、かなしいだけじゃなく、そこには美しさもあるかもしれない。
「されど私の可愛い檸檬」は身近にいる人を思い出してしまってなんだかかなしくなった。でも、それも悪くない。

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2022年06月30日

Posted by ブクログ

久しぶりの舞城作品第二弾、本当に胸を貫く。
「ドナドナ不要論」が一番好きだった。椋子の母が、うちの母と、似てる~!!!去年結婚したこともあり、自分が膵臓がんになったら、うーん…そうなるかも。わからん。想像は無意味。舞城を大好きになったきっかけである「煙か土か食い物」の衝撃を思い出すが、苦痛は人を全く別の存在に変えてしまう、それもあれもその人でしかなくて、本当の私、とか繕ったあなた、なんてものは机上の空論でしかない。人間は他者によって認識されたそれぞれのかたちでこの世に発現するだけだ。四苦八苦、人生はほんとうにかなしいものだが、かなしみはかなしみ一色ではない。複雑でリアルな感情を想起させる作品は本当にすごいな…
泥臭く矛盾だらけで悩みながら疾走するそれぞれの登場人物に、苛立ったり愛おしかったりめまぐるしく最後には感極まって通り過ぎてしまった文字をなぞるばかり。この没入感。ほぼ1日で読み終えてしまった。いつまでも調布と西暁が登場する世界に安心する。また色々読み返したくなってきたけど、書店になかった「畏れ入谷の彼女の柘榴」を入手するところから始めなくては。

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2022年04月25日

Posted by ブクログ

3つの話はどれも面白かった。
特にトロフィーワイフが面白かった。
「人はどんな状況でもある程度は幸せになる」っていうのは確かにそうだなって思った。その人がいないとダメだとか、その人がいるから特別幸せなんだっていうわけではないということがわかった。
読み終わって、自分はその人とって特別じゃないんだって思う反面、相手の人に対しても、この人じゃないとダメだって思わなくてもいいんだっていう安心感?みたいなのがあった。
とりあえず、言語化できないと思ってた気持ちをこの小説で明らかにすることができたし、理解することができた。

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2023年10月25日

Posted by ブクログ

3作品とも舞城作品の中でもかなり上位の完成度。
どの物語の主人公たちも試行錯誤してたまに思い直したりを重ねながら"自分の本質"や"本意"にせまろうとしていく。そして、その果てに高度な言語化や行動化を行う姿はまるでドストエフスキーの登場人物たちみたいだ。そういった"純粋性の探求"は舞城作品ではかなり頻発するテーマ、と言うよりも作家性と言うべきものかもしれないが、本作ではその結末に"この部分は考えたけどよくわからん"というのが見つかる。そして、それを"これ以上は解き明かせないもの"として受け入れることを選択するという意味で、さらに一段上の純粋性に到達していると言え、その誠実さに打ち震える。

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2023年07月24日

Posted by ブクログ

大好きな作家。
たまに合わない作品もあるけど、これは大好きだった。
本当に好みだなあとしみじみ思った。
文章のテンポがピカイチ。特に一作目が好き。

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2022年06月24日

Posted by ブクログ

会話中心の短編集で3編とも読みやすくサクサク進む、戦慄含む家族小説とあるが、何気ない日常の中、そこはかとなく漂う不穏な空気が気づけば侵食し振り向けばそこに…
といったホラー?何かわからぬ恐怖を感じさせる。
決して何かオカルト的なものは登場しないが。

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2025年02月09日

Posted by ブクログ

歪んだ人間の冷静なのに怒涛の会話。引き込まれるけれど『畏れ入谷〜』を読んで期待しすぎてしまった。トロフィーワイフが無自覚と善を装った歪みきった自己愛でいちばん良かった。

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2024年07月05日

Posted by ブクログ

いろいろな人の人生を覗き見した感じで面白かった。

「幸福とはそれを感じる人間のものであって、他人が観察するものは全て偽物なのだ。」

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2022年09月25日

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