久坂部羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの話はノンフィクション?フィクション?どっちだろう。リアリティがありすぎることに驚き、深く考えさせられる小説だった。※小説なのだが、研究発表のような形でストーリーが進むので、一見リアルな話かと思ってしまう。
『廃用身』とは…脳梗塞などで身体が麻痺し、回復する見込みがない手足のことを言うらしい。
小説の中で漆原(うるしばら)医師が提案する『Aケア』というものは、廃用身を切断し、介護する者の手助けをするもの。
(『切断』=アンピュテーションということから)
介護の現場は本当に大変だと思う。小柄な女性ならまだしも、体重が80キロ、90キロあるような方の介護をするのは想像するだけでキツイと思う。動かなくなった四肢を切断することで体重が軽くなれば介護側の負担が減る…小説とはいえ、本当にショッキングだった。(物語では廃用身を切断した老人が性格も明るくなったと書いてある)
しかし現実の介護問題とリンクしているように感じ、とても他人事に思えない。
というのは、うちの母親は昨年脳梗塞になり、右の手足が麻痺し、リハビリしても動かない状態だ。もし動かない手足があることで、本人がうつ状態になったり、床ずれが治らないとして、本人から『Aケアしてほしい』と言われたら、複雑な想いをするだろう。
介護問題の深刻化がこの作品を通して残酷に突きつけてくるようだった。将来に向けて、実際に起こりうるケースであることを作者の久坂部羊さんが語っているネット記事も読んだ。ただ久坂部さんは医者の肩書もお持ちだからこそわかるのだろう。小説の中で漆原医師は週刊誌のスクープでバッシングされる。それほど手足を切断するという『Aケア』は、一歩間違えば残虐非道な猟奇的な虐待であると捉えられてしまうと予想しているのだ。
この小説はつい最近だが染谷将太主演で映画にもなった。(問題作すぎて鑑賞は見送った)小説を読んだ今なら、観てみたかったと思う。配信になるのを待とう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ新米研修医が気づいた真実、引きこもり患者を救う精神科医、無差別殺人犯への緊急手術、友人の脳腫瘍に向き合う脳外科医、深夜の出産に奔走する医療チームなど、医師作家9名がそれぞれの知識と経験をもとに描く医療小説アンソロジー。
医療小説としてのドラマ性だけでなく、診療の段取り、医師同士の距離感、病院という組織の空気、患者や家族とのすれ違いが自然に描かれている。医療者が読むと「わかる」と思う場面が多い。
使命感、判断力、患者を助けたい気持ち。
一方で、自己正当化、権威性、論文や業績への欲、組織内の空気の悪さ。
医師という職業を美化しすぎず、かといって冷笑しすぎてもいないところが読みやすい。
精神科、外科、脳外科、産婦人科、内科的な視点など、作品ごとに医療の切り口が違う。1冊で“医療小説の総合病院”のように読める。
特に「闇の論文」と「空中テント」がよかった
「闇の論文」は、医療者なら笑えないリアリティがある。論文、名誉、組織、倫理の境界がじわじわ不穏になる感じが印象的。
「空中テント」は、認知症の家族の介護問題を忠実に再現していると思った。診断がくだったときに「当事者としての自覚をもつように」と言われてもピンときていなかった主人公が、その本当の意味に気づくまでの家庭がリアルだった。
「魚類譚」は少しホラーっぽい不穏な感じ
「研修医ヒナノの洞察」「救いたくない命」「春に綻ぶ」「峠を越えてきた命」ドラマになりそうな感じで好き。 -
Posted by ブクログ
【一言感想】(小仲サイド)
目の前の大きな不安を受け入れるには"やりきった"という達成感が心の準備として必要
【一言感想】(森川サイド)
相手に起きていることの一側面だけを見て、分かったような顔をするのは欺瞞
【感想】
余命を宣告された末期ガン患者が"なんとしても生きる"という希望を胸にセカンドオピニオン、新たな抗がん剤、免疫細胞療法、ホスピスへと流浪する物語
誰しも"自分は大丈夫"側にいると楽観的に考えることが多く、急に"大丈夫じゃない"側になると心構えが出来ずに、急に目の前に大きな不安が現れた時は直視するのが難しいと思います
小説の中でガンを発症した患者が希望を捨てず、治療のためにお金も体力も疲弊しながら二転三転していきますが、目の前にある大きな不安を受け入れるには、人によっては無駄•無意味に思える行動だとしても"やるだけやって、力を尽くした"と思える自己満足とも思える達成感が必要になるのかもしれないと思いました
また登場人物が現状起きている事を受け入れられない他要因に"人生の意味が必要"だと思っていたというのがあり、「自分は何か立派なことや社会のためになる人生しか認めてこなかったのでは無いか。普通の人や、弱い立場の人を無意識に否定して…なんという傲慢」と思っていたことから「懸命に生きたことだけは、人後に落ちないつもりだ。それなら、それでいいじゃ無いか。」(p329)と今までの行動に評価を求め過ぎずに"普通の人生をやりきった"と自分で納得出来れば、精神的な余裕が出来て現状も少しずつ直視出来ていけるのではないかと思ったりしました。
一方で自分が理解できない他人の言動でも、相手なりの考えや思いがあり、自分の持っている知識•経験だけで相手を理解しようとしたり、説得をすると気持ちの溝は更に拡がるのだと思います。
事情に精通している人が正論を言えば良いというわけではなく、分かりあう第一歩は相手の見当違いな意見にも相手なりの考えや思いがあるという事を理解する事で、そうでなければ自分が正しい内容だとしても受け入れられずに反発が起きてしまうのだと思います。
自分は間違っていないという考えは少なからず誰しもが持っている事なので、自分の考えや意見に反対の意見が出たとして、受け入れるにも精神的な余裕が必要なのだと勝手に思ったりしました。
末期ガン患者が終わりを受け入れ、医師が患者の心境を理解しようとする物語で、途中読んでいて少し辛くはなったけれど読後はスッキリ出来る小説だと思います。
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Posted by ブクログ
定年後勤めだした仕事が少なからず医療に関係しているので、一つ現役医師の小説家が書いた小説を読んでみようと思い、手始めに新潮文庫にある『夜明けのカルテ』という9人の医師小説家の短編を集めたアンソロジーを読んでみた。収録されていたのは下記の作品である。
牛島志季『研修医ヒナノの洞察』
朝比奈秋『魚類譚』
春日武彦『パイナップルのある光景』
中山裕次郎『救いたくない命』
佐竹アキノリ『春に綻ぶ』
久坂部羊『闇の論文』
遠野九重『言葉が消えるまえに』
南杏子『空中テント』
藤ノ木優『峠を超えてきた命』
それぞれ主人公が外科医だったり産婦人科だったり研究職だったり患者を抱える家族だったり。自分に身近な問題が扱われていたり、医療関係者だからこそ書き込める医療用語が出ていたりすると、読む側としても気が引き締まる。研究職を経験したことのある自分にとっては『闇の論文』に興味を持ったが、一番印象に残ったのは救いたくないのに医者と言う立場ですく若くてはならない『救いたくない命』だった。これを機に、医療小説をまとめて読んでみようと思っている。 -
Posted by ブクログ
臓器移植の現実に直面できる小説でした。
私は、1997年の臓器移植法の制定後に医療系の国家資格を取得しています。けれど…
脳死判定の検査や倫理観の授業等は少しあったように思いますが、臓器移植について深く考えたことがなかったし書かれていた内容についても初めて知ることばかりでした。
“命の横どり”と“命の贈り物”、本当に色々考えさせられました。18歳になったら皆、1度はこの事について考える機会が与えられる社会にすべきだなっと思いました。
ドナーになった側のサポートも必要だと思ったし、立花真知さんのような移植コーディネーターの仕事ずっとは精神的に厳しい…
ドナーから動いてる心臓を摘出する医師やその施設の負担もすごいだろうなと。
高杉夫婦や千恵さん家族のように、時間が迫るなか決断できるだろうか。子どもに関しては無理な気がする。でも、自分の子どもが移植が必要になったら…
難しいですよね…
涙が溢れすぎて、外では読めない本です。