久坂部羊のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
認知症の介護の話。
最初は高齢者の車の事故が増えていることから、義父にも運転をやめてもらった方がいいと嫁の雅美が言い出したことから始まる。
義父を説得しているうち、何か様子がおかしいと思うようになり、なんとか脳ドックという名目で病院に連れていく。
初めは事故が起こったら自分たちにも被害があるとか、世間体ばかりだった。
とにかく介護が進むに連れて色々なことがある。
介護される側もする側も疲れてくる。
壮絶な日々である。
自分も近いうちに介護をする側になり、その先には介護される日が来るだろう。
それがわかっていても、受け止められないような過酷で残酷な真実がある。
そんな重い話でも、目を背けることは -
Posted by ブクログ
久坂部羊『生かさず、殺さず』朝日文庫。
在宅医療を知る医師でもある著者の『老乱』『老父よ、帰れ』に次ぐ認知症小説。
古くは、有吉佐和子の『恍惚の人』、ここ数年で読んだ認知症の元刑事を主人公にした佐野広実のミステリー小説『わたしが消える』と認知症を描いた小説は幾つかあるが、現役医師の描く認知症小説というのは非常に珍しい。
本作では、高齢者の医療、介護、認知症と様々な高齢者問題が赤裸々に描かれており、読んでいると歳を取ることに恐怖を感じて来る。
伍代記念病院で各科の認知症患者を集めて治療する通称『にんにん病棟』で病棟医長を務める三杉洋一を主人公にしたサスペンスフルな小説。
少子高齢化の -
Posted by ブクログ
おもしろかった。
難題が出るたびにどうにかして解決していく(ただ一筋縄ではいかないところにハラハラする)のがおもしろい。
解説の通り、たしかに悪者は悪者ではないのかもしれないと思った。
「悪者」にも正義があり、守るものがある。
視点が変わりながらの進んでいく話、おもしろい。
最後の終わり方も良かった。
高血圧の診断基準が昔より低くなってる点、
学生の頃知ったときは、素直にいいことだと思ったけれど
単なる症状悪化改善の他に
薬(製薬会社)の売上増、病院の儲け、ひいては医療費の増大…と確かにそうなるわけだ。あと薬価というものを気にしたことなかったけどそれも前述に繋がる。。
何においても健康 -
Posted by ブクログ
くも膜下出血の終末期医療を行った医師が、悪意も落ち度もなかったにもかかわらず、周辺の思惑に押し流され、殺人罪で有罪判決を受ける。
実際に起きた事件を元に書かれたという本書は、安楽死、尊厳死が制度化されていないために、終末期医療の現場で医師たちが負わされている過大なリスクと責任を如実に示した。
本書は返す刀で司法制度の欠陥にも切り込んでいる。
人の死をタブー視し必要な議論を避ける風潮は、防衛論議とも共通する。
悪意というか、保身と視野狭窄に陥った人物ばかり登場する展開に辟易とするが、控訴審に向かう主人公たち、特に宗旨替えした雑誌記者の存在は、そんな現実に対する作者のわずかな希望の象徴とも -
Posted by ブクログ
事実を基にしたフィクションとのこと。
それだけに真に迫った説得力があり、死を肯定する安楽死や尊厳死の問題に目を向けない世間に対し、鋭く問いかけるサスペンス。
主人公の女医白石ルネが担当する患者が、これ以上生存の見込みがない状態に陥る。延命治療を断っていた患者を思い、最善の治療を行うが、その甲斐無く死に至る。
その死がマスコミにリークされ、安楽死の疑いがかけられる。患者の死が発端となり、賠償金を狙う患者の家族や、死の責任を医師個人に押しつけようとする病院、同僚や看護師の裏切り、医療の専門知識が無いまま彼女に罪をかぶせる警察と検察。
様々な思惑が絡み合い、やがて起訴され裁判に持ち込まれる。己の信じ