久坂部羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
死について、教訓めいた内容だが、健康中毒の日本人には、ぜひ読んで欲しい。
死に際は様々だけど、ある程度の年齢になったら、好きな事をして、自由に生きて死んでいく方が、医療の世話になるよりはいいという主張。
著者がレニリューヘンシュタールに会った、というくだりには感激した。
92歳のレニは、鮮やかなブルーの水着で、恋人の若いカメラマンを連れて、海の生物を撮影にきていたという。ナチに協力したと戦後は裁判だらけの生活で、それでも写真家として、ヌバの写真集を出し、72歳でダイビングのライセンスを取り、海洋写真家として生きた凄い女性。
毎日を精一杯生きることが大切と結んである。 -
Posted by ブクログ
帯が全てを物語る。
舞台は離島。設備は整っている、そこそこの病院だ。
積極的な検査や治療は実施しない。
患者が求める治療を行う。
死を間近にしても、それは変わらない。
患者の家族もまたそれを望む。
離島という環境も大きく関わっているのだが、院長の意向でもあるというから東京からやってきた研修医が混乱するのも無理はない。
患者を救いたいから検査をする、治療を施す。
その当たり前が通用しない。
早期発見、早期治療が当然の謳い文句の世の中にあって、両極だ。
研修医が旗振り役となってお試し健康診断を実施する件では、検査の意義だとか医療機関の儲けの構図のようなものが浮かび上がって、なるほどなーと。
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Posted by ブクログ
ネタバレ人間は不平等なものだが、ひとつだけ平等なものがあるとしたら、誰でも1回は絶対死ぬということだろう。でもその死に方は決して平等ではなく、大往生で安らかにピンピンコロリを上等としたら、親に虐待されて死ぬ子供や強盗に押し込まれて殺される被害者、災害で、戦争で、いじめで自殺…
この本では、在宅看護で死をみとる訪問医療の現実をリアルに描く。「良かったねぇ」の死にざまなどほとんどない。特に最終話、ハッピーエンドと思いきやの大苦のラスト…、何もこんな終わり方にしなくとも…と思ったが、作者は敢えてこれを伝えたかったのだと思う。
いつか俺も死ぬんだが、できれば苦しみは少なくしてほしいし、何より誰かがしんどい -
Posted by ブクログ
作者が医者なんで、医療が前面に出てるのは、そうやけど医療ミステリーやないな。イヤミスでもない。
後味が悪いという意味では、かなりやけど…
世間の矛盾というか、気にしながらも、どうにもなってないのを強烈に皮肉る感じ。
タイトルも何かありそうな感じ。
「無脳児…」は、タイトルからして、おい!そんなタイトルええんか!って思うけど…中身は、間違いでしたで済ませられんオチ。
何にしても、絶対はないのは分かるけど、医者に言われると不安になる…そうしか言えんのやろうけど。
「のぞき穴」は、安易に電車で読めない…覗かれたら、色んな文言で誤解されそう…
にしてもあかんやろ!この医者!
って感じの短編集7つでご -
Posted by ブクログ
久坂部羊『オカシナ記念病院』角川文庫。
医療とは何かを考えさせる少しコミカルな小説。
確かに今の医療は過剰とも思われる検査や予防医療と延命治療など、やり過ぎの部分があると思う。まるで病院は製薬会社や医療機器メーカーと手を組んで患者や国から多額の医療報酬を搾取しようとしているかのようだ。
その結果、高齢者が激増し、高齢者施設は順番待ちの大行列で、死んだ頃にやっと施設に空きが出たと連絡が来るという笑うに笑えない状況。余りにも高齢者が増加したので、政府は高齢者の医療負担や介護負担を増やすというが、もはや焼石に水。待機児童ならぬ待機老人であふれた今の日本に未来は無い。
南国の南沖平島にある岡品 -
Posted by ブクログ
450ページの二段組みで読み応えありました。
厚労省の悪者官僚が超高齢化社会の問題を解決する為、意図的に医療を悪用してPPP(ピンピンぽっくり)を画策し、合法的に高齢者の突然死を実現させようとするお話し。
最後は悪は敗れるとなるのですが、今の日本の平均寿命と健康寿命の乖離を見るに、考えさせられるものがあります。
登場人物の描写などが非常に細かく書かれており、それが長編になってる理由というのもありますが、ダラダラ感はなく情景がよく分かります。また舞台になっているのが身近な所ばかりなのでその点も良かったです。面白かった~!ドラマ化したら話題になるやろなぁ。