あらすじ
認知症の父親を施設から自宅マンションに引きとると決めた矢部好太郎。家族の協力を得て自宅介護を始めるも、食事に排泄の介助とままならぬことばかり。隣人からは過度に問題視され……。高齢者医療を知る医師でもある著者が介護をめぐる家族の悲喜劇を描く。
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Posted by ブクログ
先日読んだ久坂部羊さんの『老乱』がセンセーショナルでしたので、もう一冊認知症の父親のことを描き、話題になった久坂部さんの小説を読んでみた。
今回のお話は自宅(マンション)で認知症の父親を介護する夫婦の物語だ。『老乱』よりも、認知症患者を取り巻く周りの人の感情などに焦点を当てているような感じでした。
マンションにはいろいろな人がいて、隣近所の方も皆んなが認知症の老人に理解があるわけではなく、徘徊したり、大声を出したり、糞尿を撒き散らしたりされたら迷惑だから、早く老人ホームに入れろとまで言ってくる人もいる。この話ではマンションの理事会で認知症問題についての話し合いまでされる(結論は平行線となる)そのあたりのことが非常にリアルで、実際に問題として直面している人もいるだろうな…と想定する。
数学の教員をしていた父親は厳格できれい好きだったのに、今は自分のこともわからずに、オムツをして、あちこちを徘徊し、他人に迷惑をかける…それだけでも息子としては胸が痛む。でも現実を受け入れるしかない。人はいつかは最期を迎える。
我が身に照らし合わせ、なかなか考えさせられる内容が盛りだくさんで、綺麗事にならずラストシーンまで現実的な小説でした。
Posted by ブクログ
感謝の気持ちと敬意をもって接すれば、認知症でも穏やかになるということを聞き、自宅介護に踏み切った好太郎。持ち前の楽観主義があるとはいえ、この時点で尊敬に値するとまずは思った。現実はなかなか厳しいものがあり、なかでも排泄の問題は避けては通れないがゆえ、凄まじいと痛感した。一生懸命お世話をしている人に必ずしも見返りがあるわけではないし、メンタル面の持続も大変だと思った。好太郎の家族や弟たちが、介護をする好太郎を、客観的にみて、的確な言葉をかけているのも印象的だった。当事者は懸命になりすぎて見えなくなることもあるということも参考になった。
それぞれの家の中で、介護に奔走する人たちがたくさんいる。きれいごとではすまないし、いつかは自分にも関わる問題なので、とても考えさせられた。
Posted by ブクログ
実体験がないと書けない話しです。
最後にお父さんが死んでおわるなかと思ったら 元気に回復して終わりました。
あらあら
またまだ介護は続くやうです。
痴呆は人それそれ
主人の両親は見送りました。
自分の両親は 弟が主になって見送りました。
今度は私の番です。
どんな痴呆生活が待っているんでしょう?
母は明るく楽観的は人で そのようにボケました。
自分がどうなるかはわかりません。
子供がみるのが 正しいとも言えません。
明るく楽しい施設生活ができるといいですね!
介護は抱え込むと大変です。
この本では あまりふれていませんが 同居をOKした奥さんや娘さんも 大変だったと思います。
みんなが幸せに暮らすのは 難しいけど なんとかなるでしょう。 と思うことにしましょう。
Posted by ブクログ
久坂部羊『老父よ、帰れ』朝日文庫。
高齢者医療に携わる著者が認知症の高齢者介護に奮闘する家族の悲喜劇を描いた小説。
古くは、有吉佐和子の『恍惚の人』、昨年読んだ認知症の元刑事を主人公にした佐野広実のミステリー小説『わたしが消える』と認知症を描いた小説は幾つかあるが、余り多いとは言えず、そういう点で本作は珍しいテーマを描いた小説と言えよう。
認知症の家族を持ったことの悲劇をユーモラスな描写で喜劇に変え、高齢者医療の抱える様々な問題を提起する秀作である。
ある医師の認知症に関する講演を聴いたことを切っ掛けに有料老人ホームに入所している認知症の父親を自宅マンションに引き取ることを決めた矢部好太郎。
家族やヘルパーの手を借りながら自宅介護を始めるが、食事に排泄、問題行動と様々な苦難が待ち受ける。
認知症の父親を家庭で介護する難しさ、困難を通じての家族の結束……
超高齢化社会が到来し、施設に入所できない待機老人の増加、高齢者の運転による交通事故など、問題が多発している。現役時代には社会保険料だ、健康保険料だ、介護保険料だ、税金だと政府に搾取された挙げ句に肝心の受け皿の整備や高齢者福祉が充実されないが故の結果だろう。
最早、超高齢化社会の抱える問題は他人事ではない。これからは誰もが避けては通れない問題になるだろう。
自分も昨年、大腿骨を骨折して余り動けなくなった高齢の父親を特別養護老人ホームに入所させるのには難儀した。いくらヘルパーが来てくれても、母親一人では父親の介護は無理だと判断した上での決断だった。7ヶ所の施設に申込書を書き、施設との面談などを行い、その中の2ヶ所の施設から待機リストの上位に入ったと連絡が来た。暫く待つとその中の施設から空きが出たので受け入れるとの連絡があった。正式な入所申込書を書き、住所変更に、施設費用の引き落としのための銀行口座開設と奔走し、何とか申し込みから4か月で入所させることが出来た。施設によっては300人待ちとか聞いていたので、父親はかなりラッキーだったようだ。
本体価格780円
★★★★★
認知症で施設入所していた父親を家に連れ帰り、介護した主人公。
壮絶な介護をおもしろおかしく描写されていましたが、介護の本質は何かと問う周囲との軋轢や葛藤、理想と現実のギャップに、自ら父親を連れ帰った主人公が、「この野郎」と手を上げようとした姿が実感として迫りました。
読んでいる私も、いずれは親の介護を、と、勉強のつもりで読んでいます。
主人公の言動が強引に感じる場面があり、介護の難しさを感じもしたり。
お嫁さんの泉さんと、弟さん夫婦の穏やかさが印象に残りました。
Posted by ブクログ
ある医師の講演を聞き、認知症の父親を施設から自宅へ引き取ることにした好太郎。
好太郎は影響を受けやすいタイプだ。
良いと思ったら一直線。
そして、すぐに焦って先走るタイプでもある。
それが介護の中にも出ている。
それにしても、介護はやっぱり大変だと思わざるを得ない。
好太郎の性格や腹が立つけど個性的なマンションの住民たち。
それがまたリアルでユーモアもあるけど、笑えない。
家族だけでなく、地域からの冷たい対応…
これから、高齢化社会になっていき、誰もが向き合うことになる可能性も高い認知症なのに、そんな風に扱われるの?と思わず顔がひきつる場面も。
ただ、介護するだけでなく、その先の最期まで、考えることはたくさんある。
好太郎にイライラしたが、きっと自分も似たようになるだろう…
2023.11.6