久坂部羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
書名を見ると週刊誌的に大学病院の内部を告発する内容かと思うが、実質はその反対に近い。
大学病院が一般の病院と違うのは、教育・研究という部門が治療部門とは別についていて、そのため未熟な若い医師のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場になっていることだ。それは次の世代の医療を供給するのに必須なのだが、当然一定のリスクを伴う。
それで事故が起こるとマスコミは袋たたきにするが、常にベテランが治療に当たるのは物理的に不可能だし、実践を積まないでベテランにはなれない。
筆者ははっきりと、必要もないのにいつもベテランの最高度の医療を求めるのは患者のエゴであり、マスコミの無責任なあおりのつけは必ず将来の医療や -
Posted by ブクログ
日本の医療の現状とその問題点、その問題点の背後の歴史や事情。
それをよく知るマスコミの必要以上の煽動とただ自分たちの利益のための世論誘導。
そしてそのマスコミに煽られる市民。
その市民たちの反発を恐れ、必要以上の(悪ともいえる)制度を作ってしまう役所。
その制度に翻弄される病院と医師。そして押し寄せてくるプレッシャーと世論の反発に耐えられなく辞めていく医者。
そして医療問題がますます深刻になる。
病院、医師の視点、役所の視点、そして患者と一般市民の視点とそれぞれの本音をちゃんと書いている。
作者は医師で作家である。だからこそかけたこの一冊だと思う。
ただし、逆 -
Posted by ブクログ
ネタバレ思い通りの死に方、というタイトルに惹かれて読む。
思い通りの死に方ができれば、こんな安心なことはないではないかと考えたため。
筆者は「人間の死に方」で有名な久坂部羊さんと「大往生したけりゃ医者と関わるな」著書の中村仁一さん。
この2人の延命治療反対派2人の対談なので、反対意見を差し挟まれることもなく、話が弾む様子が文字から見て取れる。
以下、心に残ったところ
①「自分の死を考えるための行動」として一番のおすすめは棺桶に入ること
②死に方は意のままにならないが生き方は思い通りになる。納得の行く尊厳ある生き方をすれば最後はどんな死に方であろうとどうでもよくなる
→ほんとそのとおり。やはり結局 -
Posted by ブクログ
すごくシンプルに強引に書くと「死が近づいた時に無理に病院で生かすことはせず、自然に任せることが最善」ということです。
このことは小説家でもある久坂部さんの作品にも何度も登場人物に言わせています。
ちょうど母が看取りのタイミングが近づいていて、健康ではあるけど体力がなく、食べられない。でも胃瘻はせずに水分と栄養の点滴になり、あとは自然に旅立つのを待っていますが、父も(元気)近くで看取ることができるので、久坂部さんの考えに賛同しています。
医者は家族に頼まれれば後でトラブルにならないように一見必死に生かすけど、「医者はホントは知っている」という副題があるように、医者としては家族と会話ができる(無理