久坂部羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初めての著者本。単行本の時から、気になってたけど、基本文庫本しか買わないので、文庫発売日に、いそいそと購入しました。
奥田英朗の「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」と精神科医の伊良部シリーズを読んだ後だったので、お医者さんの話とはいえ、
患者視点のメディカルコメディ(?)伊良部シリーズとは毛色の全く違う本作。あらすじにも「ミステリー」と銘打っているので、
どんな感じなのだろうと、わくわくしながら読み始めました。
最初の話「寝たきりの殺意」を読み始めた時、ちょっと身構えました。
「ひょっとして・・、ミステリーはミステリーでも、”イヤミス”の類・・?」と不安になりました。
というのも、あたしは、ミステリーは好きだけど、「イヤミス」と呼ばれるものは、苦手だからです。
真梨幸子の「殺人鬼フジコの衝動」と乃南アサの「犯意」を読んで、「ストーリーは面白いけど、心理的ストレスが半端ない」
と思いました。トラウマ的というか、読後感(読んでる間もですけど)の心理的負担というか・・、とりあえず、自分には合わなかったようです。
話は逸れましたが、それがあったので、この「嗤う名医」も全編そうなのかな・・と読み始めから不安になりました。
ネタバレになるので、オチは避けますが、結果的に言えば、あたしが心配した「イヤミス」ではありませんでした。
なので、2話、3話・・と読み進めて、オチは分からないけれど、話の方向的には安心して読めるな、という印象でした。
ただ・・1点、「名医の微笑」、これだけは、顔をしかめながら本を読みました。
そういえば、矢崎のストレス発散の場・・似た趣味を持つもの同士の場の描写が、漫画「サイコドクター」にもあったことを思い出しました。
本作だけしか読んでなければ、「男性作家の妄想の域」なのかなと思いますが、他作でも似た場面があったとなると・・
ほんとにこういう世界があるのだろうかと思うと、恐怖です。真相はわかりませんが。
上記を除けば、全体的に面白かったのですが、個人的には、最初の「寝たきりの殺意」と、一番最後の「嘘はキライ」が好きです。
「寝たきりの殺意」は、自分含め、誰でもそうなりそうだな・・という印象。決して他人事ではないと思います。
最後の「嘘はキライ」は、他の5編とは若干異なると思います。というか、表現が面白くて、ニヤニヤしながら読んでしまいました。
一番楽しい話なので、そういった意味では、最後にもってきて正解だな・・と思いました。 -
Posted by ブクログ
医師にして作家でもある久坂部羊氏が、日本の医療に蔓延する「幻想」を明らかにし、医療の在り方を問い直した著書である。
◆薬は効くという幻想・・・新薬の認可のための治験(患者でその効果を試すこと)には限界がある。多くのサプリメントは論理的に効くはずがない。対症療法の薬は自然な治癒力を弱めかねない。。。
◆名医幻想・・・医療者から見たいい医者と患者が思ういい医者には往々にして大きな隔たりがある。エリート医師の集まる大学病院などでは、臨床よりも研究が重視される。。。
◆診断幻想・・・正常と異常を分ける基準値の変更により、それまで正常だった人が病気に分類される(高血圧が好例)。認知症患者の多くは老化現象が加わっているが、その境界など見極めがつくはずはない(老化現象をことさら早期発見して、医療の治療をしても意味がない)。。。
◆厚生労働省が増進する幻想・・・厚生労働省は「健康増進法」に基づいてがん検診を推進するが、がん検診にはメリット・デメリットがあり、日本以外の国ではがん検診は推奨されていない。厚労省が進めるメタボ検診の基準も疑問。人間ドックに人気があるのは日本特有の現象。
◆高齢者の医療幻想・・・老化現象による身体機能の衰えを医療で治そうとしても無駄。終末期医療はなかなか理想的にはいかない。。。
◆医師不足幻想・・・巷で騒がれる医師不足の要因は複雑。医学部の定員を増やすだけでは医療の質が低下する恐れがある。医師の自由を制限する(選択する専門や勤務地に制限を設ける)、患者がコンビニ診断の自制、病院の遠方化、医師以外による医療行為を受け入れることにより解決できる。。。
◆マスメディアが拡げる幻想・・・マスメディアでは、奇跡の治療の良いところばかりを宣伝し、副作用の危険や実際の治療を受ける困難さなどのマイナス面は公正に説明しない。。。
更に著者は、こうした多くの幻想の生まれる最大の要因について、2009年に東大病院でがん患者とがん治療に関わる医師を対象に行われたアンケートで、望ましい死を迎えるためにという質問に、「病気と最後まで闘う」と答えたのは、がん患者では81%、医師ではわずか19%だったことを引用して、医師は治療の実態を知っているのに対し、患者は「治療は良いことだ」と思い込む、情報格差にあるという。
そして、「その状況を少しでも改善するには、患者と医療者がわずかずつでも歩み寄るしかない。患者はむやみに医療に期待せず、ふだんから老いや死をある程度受け入れる。医療者は、がんの終末期医療や延命治療など、医療現場の悲惨を積極的に世間に伝え、無駄な医療で儲けるのを控え、できるだけ患者に親切にする」しかない、と結んでいる。
(がんを中心とした)病気の治療や薬、検診の是非等については、近藤誠理論やそれへの批判を含む多くの本が出ているが、本書は医療の制度や業界にスコープを広げてその実態を明らかにしている点で有益な書と思う。
(2013年5月了) -
Posted by ブクログ
ドラマが見応えあったので、原作も手にとりました。
下巻は少し勢いが失速したような気がする。
しかし問題提起としては、原作の方が重苦しい結末になった。最後は結局皆いなくなり、問題だけが山積み…。江崎も結局自分のことで手一杯だし、芹沢とかどうするの、一体?
原作は本当に医者の描かれ方がいやらしくて、ちょっと辛かった。いくら何でもそんな嫌な人ばっかりじゃないと思うよ…。作者こそがある意味一番医者に嫌気を感じてるんだなあと感じた。
ドラマの香村は原作の香村と江崎を足して割ったような人物設定、佐久間は割とそのままかな。ドラマ版は親子関係とかも入って来てたし他も皆何かしら信念がある風になっていたのはまだ救われたかも。対立軸が思い切りブラックジャックになってました。まあ、手塚治虫先生も、医学部ですからね。
恋愛要素はいらないと思う、なんか古くさかったし。カラオケで歌うシーンとか…うん…。
個人的には自分の出身地周辺が舞台なので、地名とか、病院の名前とかが分かりすぎて笑ってしまう。これ怒られないのかな〜…(^^;;
そして阪◯医学部は「白い巨塔」から何も変わってないんだなあと思った。disられすぎ(笑)! -
Posted by ブクログ
とにかく皆が自分のことしか考えてない話(笑)だったけど、面白かった。
続きが気になる小説は久しぶり。
作者は医師なのに、もはや医師を憎んでるの?な勢いの書き方が時々引っかかる。
言い方を変えれば、医師批判に偏重しすぎてる部分がある。
他の先生は厳しい書きかたされてるのに、江崎先生やその周辺には全体的に甘い評価なのがなんだか違和感がある。内部告発すれば薬中なのはたいしたことないみたいな扱い…ドラマではいなかったことになってたし。
あと江利子の江崎に対する惹かれかたも嫌。旦那さんには別に落ち度ないのに…。松野はジャーナリスト失格だし。
佐久間はかなり魅力的なキャラだと思う。
厚労相のマキャベリとかカッコイイな(笑)!
高齢者を意図的に殺す発想は恐ろしいが、今の延命最優先の医療と高齢化社会が本当に正しいのか、はかなり核心を突いている。
さて、意図せずにその佐久間の協力者に選ばれてしまった、イラチで偉そうな香村先生が下巻はどう動くのかな?
下巻に続く! -
Posted by ブクログ
安楽死と現在の日本の医療に問題提起する社会派サスペンス。患者を安楽死をさせてしまった医師の苦悩と、それを取り巻く安楽死推進派と反対派の攻防、政府も巻き込み、安楽死法、医療業界再編に話は及ぶ。
医師の仕事が多義に渡るようになったり、リスクの高い科が避けられ、医師不足の背景など今の医療問題が見えて学びになる。色々な思惑が絡み、安楽死させた医師が苦悩し話が進様も読んでいて興味深い。
この本を読み、反対派の意見も理解した上でもやはり、私もそういう風になれば死の選択が欲しいと思う。
【引用】
私自身、親を安楽死させる事ほど親不孝は無いと思いましたが、でも実際によってケルヒムで最後を迎えた母を見て、ああ、これは親孝行な事だと思いました。そ -
Posted by ブクログ
「無痛」の続編にあたる作品。
ある日、原因不明の新型カポジ肉腫の恐怖が日本を襲う。
小さな斑点のようなものにはじまり、劇的に悪化して死に至る肉腫。
その病にかかるひとびとと治療法を探る医療人。
同じ頃、ウイーンで在日本人のための診療所で医師として働く為頼のもとに、白神と共に日本を離れた南サトミが現れる。
エボラ出血熱、エイズ、狂牛病、SARSといった日本でも話題になった疾患と、WHOを絡め、物語は進む。
医学の世界の光と闇。それも、利権争いや汚職といったものではない、もっと恐ろしく深い闇。
こんなことあるわけない。馬鹿らしい。
こう言って一笑に付すことの出来ない真実味がこの作者の文章にはあると思う。
本作でも疾患の進行の様や、殺人事件の描写において残酷とも言える程鮮明に描かれているため、苦手なひとはいることと思う。
その描写が余りに凄まじいため、読み手を引き込んでしまうとも思える。
前作に登場した為頼にはじまりサトミ、菜見子、イバラのその後も描かれている。
最後がやや残念だとも思えた。
残念というのはつまらない終わり方ということではなく、イバラにはそうではない形でのやり直しをさせて欲しかったということ。
前作と同じく長編ではあるが、大変読みやすい。
ページを繰る手が止まらないため、一気に読み進められる。興味深く面白い一冊だった。
今回は、菜見子の夫ほどの強烈なキャラクターはいないが、精神的に歪んだ人物は登場する。
久坂部さんの描く歪んだ人物は、嫌いじゃない。嫌いじゃないって、友達になりたいということではなく、歪みっぷりが気持ちいい。
この「無痛」、どうやらテレビドラマ化されるらしい。
確かにテレビ向きかもしれない。
社会問題を上手く絡めているため、ドラマでなら普段本を読まないかたへも問題提起にもなるかもしれない。そういった作り方をしてくれたらではあるが。
ちなみに今回のテーマは、健康に拘りすぎる日本人。
風邪であっても抗生物質を飲み、体にいいこと、健康、長寿といった言葉が大好き、病院大好き、薬が少ないと文句を言う、こんな日本人への警鐘を鳴らしている。
ドラマも興味がある。
好きな役者さん、出てるといいなあ。