久坂部羊のレビュー一覧

  • 医療幻想 ―― 「思い込み」が患者を殺す

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    ネタバレ

    70年代、共同幻想という言葉が流行った。権力による規制があたかも自分たちによって規制されているかのように幻想させられている。その若者たちが老人になった時、回復見込みがないのに薬や治療を求める。それは病院に行けば治療してもらい回復するはずだと思い込んでいるからだ。筆者はこれも幻想だという。老人になると薬を飲んでも治らない。リハビルをしても回復しない。それが現実だと書いている。
    認めたくないが現実はいつも直視しなければならない。

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    2016年11月12日
  • 嗤う名医

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    初めての著者本。単行本の時から、気になってたけど、基本文庫本しか買わないので、文庫発売日に、いそいそと購入しました。

    奥田英朗の「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」と精神科医の伊良部シリーズを読んだ後だったので、お医者さんの話とはいえ、
    患者視点のメディカルコメディ(?)伊良部シリーズとは毛色の全く違う本作。あらすじにも「ミステリー」と銘打っているので、
    どんな感じなのだろうと、わくわくしながら読み始めました。

    最初の話「寝たきりの殺意」を読み始めた時、ちょっと身構えました。
    「ひょっとして・・、ミステリーはミステリーでも、”イヤミス”の類・・?」と不安になりました。
    というのも、あたしは、ミステリーは好きだけど、「イヤミス」と呼ばれるものは、苦手だからです。
    真梨幸子の「殺人鬼フジコの衝動」と乃南アサの「犯意」を読んで、「ストーリーは面白いけど、心理的ストレスが半端ない」
    と思いました。トラウマ的というか、読後感(読んでる間もですけど)の心理的負担というか・・、とりあえず、自分には合わなかったようです。

    話は逸れましたが、それがあったので、この「嗤う名医」も全編そうなのかな・・と読み始めから不安になりました。
    ネタバレになるので、オチは避けますが、結果的に言えば、あたしが心配した「イヤミス」ではありませんでした。
    なので、2話、3話・・と読み進めて、オチは分からないけれど、話の方向的には安心して読めるな、という印象でした。

    ただ・・1点、「名医の微笑」、これだけは、顔をしかめながら本を読みました。
    そういえば、矢崎のストレス発散の場・・似た趣味を持つもの同士の場の描写が、漫画「サイコドクター」にもあったことを思い出しました。
    本作だけしか読んでなければ、「男性作家の妄想の域」なのかなと思いますが、他作でも似た場面があったとなると・・
    ほんとにこういう世界があるのだろうかと思うと、恐怖です。真相はわかりませんが。

    上記を除けば、全体的に面白かったのですが、個人的には、最初の「寝たきりの殺意」と、一番最後の「嘘はキライ」が好きです。
    「寝たきりの殺意」は、自分含め、誰でもそうなりそうだな・・という印象。決して他人事ではないと思います。
    最後の「嘘はキライ」は、他の5編とは若干異なると思います。というか、表現が面白くて、ニヤニヤしながら読んでしまいました。
    一番楽しい話なので、そういった意味では、最後にもってきて正解だな・・と思いました。

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    2016年10月18日
  • 嗤う名医

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    「笑う」じゃ無くて「嗤う」。笑えないお話ばかり。名医の裏の性癖‥‥ちゃんと治してくれればと思い、そんな人に触れられたくないとも思い‥‥複雑。七つのお話に出てくる医者は作者の分身?と感じた瞬間があったけれど、まさかね‥‥

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    2016年09月11日
  • 人間の死に方 医者だった父の、多くを望まない最期

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    超面白い。医者である父の医療嫌いエピソード満載。とっても勇気が出る本だと思う。
    死ぬってどういうことか、医療をどう利用するか考えさせられる。

    2016.8.16.

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    2016年08月16日
  • いつか、あなたも

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    初めて読む作家さんです。
    たまたま電子書籍のキャンペーンがあって、目にして購読してみました。

    実体験を元にした在宅医療の短編集。
    「医療」といっても、ほとんど終末期の看取り
    読んでいてつらいものばかりでした。

    タイトルの「いつか、あなたも」は 
    いつかあなたも終末期の看取られることになるっていうことかと思っていたのだけれども。

    「いつか、あなたも」ってつぶやく患者さん、あそこを取ったのかしら?
    あの編は不気味でした。

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    2016年06月01日
  • 破裂(下)

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    ネタバレ

    高齢化社会問題、安楽死も定義していて興味深いけど、やっぱり残るのは大学病院の白い巨塔かなあ。医療ミスは難しい。医療裁判で原告側がほぼ勝てないのはここだと思う。難しい医学用語を裁判で並べられても分からないしね。それに、「無痛」だったかな、どんな簡単な手術でも成功率100%なんてなく、必ずリスクが伴うものであり、医者は神様という意識は日本独自のもの、というのも理解している。でも遺族が浮かばれないかあ。

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    2016年05月24日
  • 神の手(上)

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    ネタバレ

    安楽死をテーマにした医療ミステリー。
    安楽死って、当事者(患者)とその家族とで意見が分かれそうだな。。耐え難い痛みに苦しむくらいならさっさと殺してくれと思うのは患者自身だけど、それを受け入れてしまった家族はずっと罪の意識を持ったまま生きなきゃならないのかも。難しい。
    積極的な延命治療が苦痛をもたらすなら、治療せず、天命を全うしたほうが幸せなのかな。

    こてこての関西弁をテキストで読むとやらしく聞こえるな(関西人の方ごめんなさい)。。康代のキャラが上手く引き立ってる。でもむかつく!!

    下巻へ。どうなることやら。

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    2016年03月29日
  • 医療幻想 ―― 「思い込み」が患者を殺す

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    医師にして作家でもある久坂部羊氏が、日本の医療に蔓延する「幻想」を明らかにし、医療の在り方を問い直した著書である。
    ◆薬は効くという幻想・・・新薬の認可のための治験(患者でその効果を試すこと)には限界がある。多くのサプリメントは論理的に効くはずがない。対症療法の薬は自然な治癒力を弱めかねない。。。
    ◆名医幻想・・・医療者から見たいい医者と患者が思ういい医者には往々にして大きな隔たりがある。エリート医師の集まる大学病院などでは、臨床よりも研究が重視される。。。
    ◆診断幻想・・・正常と異常を分ける基準値の変更により、それまで正常だった人が病気に分類される(高血圧が好例)。認知症患者の多くは老化現象が加わっているが、その境界など見極めがつくはずはない(老化現象をことさら早期発見して、医療の治療をしても意味がない)。。。
    ◆厚生労働省が増進する幻想・・・厚生労働省は「健康増進法」に基づいてがん検診を推進するが、がん検診にはメリット・デメリットがあり、日本以外の国ではがん検診は推奨されていない。厚労省が進めるメタボ検診の基準も疑問。人間ドックに人気があるのは日本特有の現象。
    ◆高齢者の医療幻想・・・老化現象による身体機能の衰えを医療で治そうとしても無駄。終末期医療はなかなか理想的にはいかない。。。
    ◆医師不足幻想・・・巷で騒がれる医師不足の要因は複雑。医学部の定員を増やすだけでは医療の質が低下する恐れがある。医師の自由を制限する(選択する専門や勤務地に制限を設ける)、患者がコンビニ診断の自制、病院の遠方化、医師以外による医療行為を受け入れることにより解決できる。。。
    ◆マスメディアが拡げる幻想・・・マスメディアでは、奇跡の治療の良いところばかりを宣伝し、副作用の危険や実際の治療を受ける困難さなどのマイナス面は公正に説明しない。。。
    更に著者は、こうした多くの幻想の生まれる最大の要因について、2009年に東大病院でがん患者とがん治療に関わる医師を対象に行われたアンケートで、望ましい死を迎えるためにという質問に、「病気と最後まで闘う」と答えたのは、がん患者では81%、医師ではわずか19%だったことを引用して、医師は治療の実態を知っているのに対し、患者は「治療は良いことだ」と思い込む、情報格差にあるという。
    そして、「その状況を少しでも改善するには、患者と医療者がわずかずつでも歩み寄るしかない。患者はむやみに医療に期待せず、ふだんから老いや死をある程度受け入れる。医療者は、がんの終末期医療や延命治療など、医療現場の悲惨を積極的に世間に伝え、無駄な医療で儲けるのを控え、できるだけ患者に親切にする」しかない、と結んでいる。
    (がんを中心とした)病気の治療や薬、検診の是非等については、近藤誠理論やそれへの批判を含む多くの本が出ているが、本書は医療の制度や業界にスコープを広げてその実態を明らかにしている点で有益な書と思う。
    (2013年5月了)

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    2016年03月21日
  • 第五番 無痛II

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    無痛II
    前作にもましてのスピード感がたまらない。
    時間を忘れたい時、集中することによってドーパミンを出したい時にオススメ( ̄▽ ̄)

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    2016年02月24日
  • 第五番 無痛II

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    ネタバレ

    「無痛」の続編。この作者の作品好きかも。

    「新型カポジ肉腫」に不気味さを感じながらも読む手が止まらない。ヨーグルト食べるの躊躇するなあ。。。それにしてもアイツがあんな形で戻ってきたのもびっくりだけど、こんなラスト。。なんだか物悲しかった。

    医療従事者じゃないのに医療系の話が好きなんだけど、日本と海外の「医療」の考え方の違いが面白い。そっか。。人が健康になると病院はいらいないか。でもそれを逆手に取っているのか、健康でも検診を勧める今日の日本。病院が閑散としてるなんて日は来ないのでは。。

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    2016年02月16日
  • いつか、あなたも

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    在宅医療の短編集。実際の医師の話だけにいずれも良かった。ほとんど回復しない人々を診るのは楽ではないのだ。

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    2016年02月14日
  • 第五番 無痛II

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    『無痛』の続編。
    医師と患者の思いの違い。
    医療の現実と裏側。
    とにかく病気とか様々な医療に関して、複雑に感じるところがある。
    私も何かで聞いたことがある。
    「すごい薬が開発されると医師とか製薬会社が儲からなくなる」とか…
    そんなことをふと思い出したなぁ。

    2016.2.14

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    2016年02月14日
  • いつか、あなたも

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    在宅医療・・・される方はとてもいいんだろうが、家族の大変さを思うと私は病院で最期を迎えたい、かな。。。

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    2016年02月11日
  • 破裂(下)

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    ドラマが見応えあったので、原作も手にとりました。

    下巻は少し勢いが失速したような気がする。

    しかし問題提起としては、原作の方が重苦しい結末になった。最後は結局皆いなくなり、問題だけが山積み…。江崎も結局自分のことで手一杯だし、芹沢とかどうするの、一体?

    原作は本当に医者の描かれ方がいやらしくて、ちょっと辛かった。いくら何でもそんな嫌な人ばっかりじゃないと思うよ…。作者こそがある意味一番医者に嫌気を感じてるんだなあと感じた。

    ドラマの香村は原作の香村と江崎を足して割ったような人物設定、佐久間は割とそのままかな。ドラマ版は親子関係とかも入って来てたし他も皆何かしら信念がある風になっていたのはまだ救われたかも。対立軸が思い切りブラックジャックになってました。まあ、手塚治虫先生も、医学部ですからね。

    恋愛要素はいらないと思う、なんか古くさかったし。カラオケで歌うシーンとか…うん…。

    個人的には自分の出身地周辺が舞台なので、地名とか、病院の名前とかが分かりすぎて笑ってしまう。これ怒られないのかな〜…(^^;;
    そして阪◯医学部は「白い巨塔」から何も変わってないんだなあと思った。disられすぎ(笑)!

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    2016年01月08日
  • 破裂(上)

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    とにかく皆が自分のことしか考えてない話(笑)だったけど、面白かった。
    続きが気になる小説は久しぶり。

    作者は医師なのに、もはや医師を憎んでるの?な勢いの書き方が時々引っかかる。
    言い方を変えれば、医師批判に偏重しすぎてる部分がある。
    他の先生は厳しい書きかたされてるのに、江崎先生やその周辺には全体的に甘い評価なのがなんだか違和感がある。内部告発すれば薬中なのはたいしたことないみたいな扱い…ドラマではいなかったことになってたし。
    あと江利子の江崎に対する惹かれかたも嫌。旦那さんには別に落ち度ないのに…。松野はジャーナリスト失格だし。

    佐久間はかなり魅力的なキャラだと思う。
    厚労相のマキャベリとかカッコイイな(笑)!
    高齢者を意図的に殺す発想は恐ろしいが、今の延命最優先の医療と高齢化社会が本当に正しいのか、はかなり核心を突いている。

    さて、意図せずにその佐久間の協力者に選ばれてしまった、イラチで偉そうな香村先生が下巻はどう動くのかな?

    下巻に続く!

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    2015年12月21日
  • 神の手(下)

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    安楽死と現在の日本の医療に問題提起する社会派サスペンス。患者を安楽死をさせてしまった医師の苦悩と、それを取り巻く安楽死推進派と反対派の攻防、政府も巻き込み、安楽死法、医療業界再編に話は及ぶ。

    医師の仕事が多義に渡るようになったり、リスクの高い科が避けられ、医師不足の背景など今の医療問題が見えて学びになる。色々な思惑が絡み、安楽死させた医師が苦悩し話が進様も読んでいて興味深い。

    この本を読み、反対派の意見も理解した上でもやはり、私もそういう風になれば死の選択が欲しいと思う。

    【引用】
    私自身、親を安楽死させる事ほど親不孝は無いと思いましたが、でも実際によってケルヒムで最後を迎えた母を見て、ああ、これは親孝行な事だと思いました。そ

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    2015年11月24日
  • 第五番 無痛II

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    前作とはまた違う恐ろしさがありましたねぇ。今回は医師のモラルと人間性を問われる作品です。まったくのフィクションじゃないかも?と思ってしまうのは私だけでしょうか…(笑)前回のあの人があんな形で出てくるのと、最後の最後に読書を驚かせるしかけがしてある。前作同様、分厚いけどほどんど一気読み。読んでいる間は「イボができたらどうしよう」なんて思ってしまいましたね(笑)

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    2015年11月21日
  • 破裂(下)

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    医療事故、高齢化社会、汚職、隠蔽、殺人、中毒、権威欲、正義といった言葉がキーワードかな。
    結末が明らかにならずに終わってしまったことでモヤモヤ感が残ったので星ひとつマイナス。
    医療関係への取材力は凄いと思う。

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    2015年11月07日
  • 破裂(下)

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    老人介護に関わる者として、後半は一気読みでした。
    介護保険、年金、医療保険、高齢者が増えていく中で、いつまでこの体制が保てるのか。もう破綻は見えているのでしょう。綺麗事ではすまない。
    とても重たい読後感です。

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    2015年10月20日
  • 第五番 無痛II

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    「無痛」の続編にあたる作品。

    ある日、原因不明の新型カポジ肉腫の恐怖が日本を襲う。
    小さな斑点のようなものにはじまり、劇的に悪化して死に至る肉腫。
    その病にかかるひとびとと治療法を探る医療人。
    同じ頃、ウイーンで在日本人のための診療所で医師として働く為頼のもとに、白神と共に日本を離れた南サトミが現れる。

    エボラ出血熱、エイズ、狂牛病、SARSといった日本でも話題になった疾患と、WHOを絡め、物語は進む。
    医学の世界の光と闇。それも、利権争いや汚職といったものではない、もっと恐ろしく深い闇。
    こんなことあるわけない。馬鹿らしい。
    こう言って一笑に付すことの出来ない真実味がこの作者の文章にはあると思う。

    本作でも疾患の進行の様や、殺人事件の描写において残酷とも言える程鮮明に描かれているため、苦手なひとはいることと思う。
    その描写が余りに凄まじいため、読み手を引き込んでしまうとも思える。

    前作に登場した為頼にはじまりサトミ、菜見子、イバラのその後も描かれている。
    最後がやや残念だとも思えた。
    残念というのはつまらない終わり方ということではなく、イバラにはそうではない形でのやり直しをさせて欲しかったということ。

    前作と同じく長編ではあるが、大変読みやすい。
    ページを繰る手が止まらないため、一気に読み進められる。興味深く面白い一冊だった。
    今回は、菜見子の夫ほどの強烈なキャラクターはいないが、精神的に歪んだ人物は登場する。
    久坂部さんの描く歪んだ人物は、嫌いじゃない。嫌いじゃないって、友達になりたいということではなく、歪みっぷりが気持ちいい。

    この「無痛」、どうやらテレビドラマ化されるらしい。
    確かにテレビ向きかもしれない。
    社会問題を上手く絡めているため、ドラマでなら普段本を読まないかたへも問題提起にもなるかもしれない。そういった作り方をしてくれたらではあるが。
    ちなみに今回のテーマは、健康に拘りすぎる日本人。
    風邪であっても抗生物質を飲み、体にいいこと、健康、長寿といった言葉が大好き、病院大好き、薬が少ないと文句を言う、こんな日本人への警鐘を鳴らしている。

    ドラマも興味がある。
    好きな役者さん、出てるといいなあ。

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    2015年09月29日