久坂部羊のレビュー一覧
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上下巻まとめて。
医療の進歩と生命倫理というものは、必ずどこかのラインでせめぎ合う、背反する価値観のようなものだが、その葛藤を象徴する最たる具体例ともいえる、"安楽死"をテーマに据えた本書は、まさしく普遍性を持って老若男女遍く人々に訴えかけ得る。
老人の終末期においては容易に想像がつくが、実は患者が若くても、その若さゆえに安楽死が求められる状況がある、という説明に関しては驚いたし、医療従事者にしか書けない描写の一端として強く印象に残った。
小説技巧としては、神業のように卓越している、というわけではないけれど、一本調子ながら、根っこのストーリーが充分に面白いので、グイグイ -
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上下巻まとめて。
医療の進歩と生命倫理というものは、必ずどこかのラインでせめぎ合う、背反する価値観のようなものだが、その葛藤を象徴する最たる具体例ともいえる、"安楽死"をテーマに据えた本書は、まさしく普遍性を持って老若男女遍く人々に訴えかけ得る。
老人の終末期においては容易に想像がつくが、実は患者が若くても、その若さゆえに安楽死が求められる状況がある、という説明に関しては驚いたし、医療従事者にしか書けない描写の一端として強く印象に残った。
小説技巧としては、神業のように卓越している、というわけではないけれど、一本調子ながら、根っこのストーリーが充分に面白いので、グイグイ -
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医者は毎日死に目に会っているから、すべての患者に親身になっていたらやっていられない。だからきもちの上でギャップがあるのは当たり前のこと。
自分は安楽死したいが、親は延命治療をしたい、というのは矛盾。
延命治療をしたがるのは、親孝行が足りないから。
「余命6ヶ月と言われたら」エクササイズ 「お通夜」エクササイズ
夫婦げんかも、相手が死ぬことを考えれば、怒りも収まる
がんで死ぬのがいちばんいい。
がんの一番の危険因子は加齢。年を取れば取るほどがんになりやすい。
元気に死ぬためには、がんを治療しないで自然に死ぬこと。
手遅れの状態で発見された末期がんは、そのとき痛みがなければ最後まで痛みが出 -
Posted by ブクログ
「大往生したけりゃ医療とかかわるな」の著者である中村医師と、医師で作家の久坂部さんの対談。自分も不惑を過ぎ親族の死が身近になってきたので非常に興味深く読ませてもらった。ほとんどみんな病院で死ぬのはどうなんだろうか?寝たきりで食べられなくなっても点滴だけでずっと生き続けているってのはどうなんだろう?などなどの疑問を感じたことがあれば本書はとても有意義な一冊だと思う。もちろん著者らは基本的に現代の医療、とくに終末医療に対して批判的な態度です。とくにガンの治療なんかに関して。そしてタイトルの「思い通りの死に方」というのは無理だ、という結論です。そもそも仏教では思い通りにならないものの4つの中に死があ
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Posted by ブクログ
医療幻想の題名だが、患者が作る医療への幻想について、いくつかの観点から取り上げている本だった。著者が医者であり、また小説家でもあるので、医療事情にも詳しいことと、海外勤務からの経験から諸外国との比較の話もあり、興味深かった。
本書を通じて、製薬会社、マスコミ、厚労省、学会、等々の医療の幻想を作る機関についても指摘しているが、筆者の言葉もかなりキャッチな言葉が並んでいるように感じた。その言葉が、エッセイのように読みやすさにもつながっているのでよいのではないかと思う。
何はともあれ、医療や自分の死は人生で無関係ではいられないことなので、もう少ししっかり考えなくてはと自戒の思いになった本だった。 -
Posted by ブクログ
面白いところだけ抜粋します。
死にたい、という患者さんに「異常ないですね」というと、「まだ死ねないんですか」と言って怒る。
70、80、と年をとると、どうしても前のように動けなくなる。「前のように動けなくなってきた」そんな人が病院にきても困る。病名もつけられない。
「気持ちに体を合わせるのではなく、体に気持ちを合わせて欲しい」皆、自分だけは老衰にならず、まして病気にかからない、と思っている。
サプリについて。「エビ、カニ、サメ、のなんたらを体に入れてなんとかなるなら摂れば?
戦争のとき、「丁種不合格」で生き延びた97歳の、「早くしにたい」という老人がいる。「死ぬにはまだ不合格だな」と