久坂部羊のレビュー一覧
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インパクトの強いタイトルである。
脳死は、「本当の死」なのか。
臓器移植をめぐる、患者家族と医師、臓器移植コーディネーターたちのドラマ。
マイナンバーカードの裏などに、何気なく臓器提供意思に丸をつけてしまっている。
自分が死んだら、必要としている人に差し上げてもいい、と思っていたが、「何気なく」表示していいものではなかったし、「自分が死んだら」が実際どういう状態なのか全く分かっていなかったと呆れるばかりである。
正常性バイアスのなせる技か、自分には起こらないとどこか思っていたのだろう。
私は、脳死とはどのような状態なのか、脳死と寝たきりの違いさえ分かっていなかったのである。お恥ずかしい限り -
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ネタバレ2025/08/22予約4
臓器提供を行う側の家族と受け取る側の異なる思い。
突然脳死と言われ心臓を奪われたと思う側、適合するドナーを待ち続ける側。レシピエント側のコーディネーター、ドナー側のコーディネーター。どれにも一理あるように感じてしまう。ダブルスタンダードにはなりたくない、だけど子どもの脳死判定での臓器提供はできない。読んでいると広志の母登志子の非科学的さにイライラするが自分も子どもに対しては全く同じだと気づいた。
不勉強かもしれないがドナーの情報をレシピエントに与えない事と同じようにレシピエントも自分が移植された事を守秘義務にする事はできないのか、と思った。
内容がいいのに表紙がミス -
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医師作家9人によるアンソロジー作品。
どの作品も50頁程なので、スピード感がある。
研修医 精神科医 救急医療 現場医療 研究者 認知症等 医療1つとってもジャンルが違い、心理描写の加減に手に汗握ってハラハラしたり、淡々と読み進めたり、一冊で何度も美味しい読み応えのある本でした。
医師(著者)が実際に経験しているであろうリアリティがそこにある。
認知症対応を生業としている身としては、何度も見た光景で「あーー大変さの中に、いくつも希望が見いだせるんだよ」「怒ったらダメダメ」と逆の意味でハラハラさせられた。
現代はサービスが揃っているので、抱え込まず使える手段を利用していくのがお互いの -
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普段考えることを避けてきた死について、改めて考えることができた。他の国や昔の死についての捉え方は、医療が発達した現代の日本とは違っていた。読み進めること医師などの死に慣れている人の考えは、死を避けている一般の人と異なっていることがわかった。人の死は避けることができず、その時になったら医療は無力である。死に慣れていないと、何とか医療でなると思って延命治療をお願いして下手な死に方をさせてしまうそうだ。
読み終えて、少しは死の恐怖が和らいだ感じがした。
死ぬ間際になってもがくのは良くないし後悔が残る。普段から
メメント モリ 死を忘れるな
とカーぺ ディエム 今を生きる
ということを大切にしたい。 -
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末期がん患者と医師、2人それぞれの目線で話が進んでいく中で、両者の葛藤や苦しみ、考え方の違いがありのままに伝わってくる。患者目線では医師からの余命宣告が突き放したように聞こえ、医師の目線では無理な治療はせず残りの大切な時間を有意義に過ごしてほしい思いでの余命宣告、という立場によって全く考え方が違うところが対象的だと思った。患者は苦しみながらも新たな治療法を求め悪戦苦闘し、医師も患者からの「私に死ねというのか」という言葉がいつまでも頭の中に残り心が晴れないまま生きる日々。医療の最善とは何か、患者に寄り添うとは何かを現実的に突き付けてくる内容が心に残る。
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久坂部 羊さんの小説、新書を最近読んでいるが、この本は2006年に出版された本です。
書かれたこの時は、51歳でした。
高齢者医療にずっと携われてきて、人間の死、特に高齢者の死に多く関われてきての執筆活動です。
1955年生まれなので、私より6歳下で、70歳だと思います。
興味があったのは、51歳の時の執筆内容と現在の執筆内容との違いについてですが、主張されている本筋はまったく変わっていませんでした。
今回この本を読んでよかったのは、9月20日に76歳になる自分自身のしっかりとした「死生観」「諦観」を確立しなければならないと思ったことです。
内容ですが、
第1章 長生きは苦しいらしい
第2章 -
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はじめにの最後の文章から紹介
家族や自分の死が間近に迫ったとき、最良の方法を選び、亡くなったあとに悔いを残さないようにするには、やはり死の実際を知ることが大切でしょう。
だから私はこの本を、「死に関する新しい教科書」のつもりで書きました。
大丈夫。恐くありません。不吉でもありません。慣れます。ときに笑えます。死には滑稽な側面のありますから。
一回きりの死を失敗しないために、多くの人が死の恐怖から解放され、上手な最後を迎えられることを、心より願っています。
とあります。
医者であった父の泰然とした死、そして、医者としての長年の経験、特に高齢者医療に携わって凝られた貴重な経験から感じ取られてこと -
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長年高齢者医療に携わってきた医師が、さまざまな老いのパターンを見てきた中で、上手に老いる方法や失敗しないコツを伝えている。美貌も健康もいつかは失われ、その時になってからの未練は無駄で抵抗すれば余計に苦しむのでそれを理解して受け入れること、そしてその時がいつ来てもいいように悔いを残さないように生きることが大切だと説いている。また、現代は医療が発達しているので、悲惨な延命治療、苦しい長寿、過酷な介護の問題が深刻になっており、家族も同様の考え方が必要だと力説している。一方で、医師が死の直前の医療行為が本当に必要だと思っていないとか、クリニックの収益の観点から過剰な検査や処方があることも告白しており、
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物語の舞台は国立大学の最高峰、天都大病院。そこの病院長が謎の死を遂げたので、次期新院長選挙が行われることになった。主人公は女性ライター、医療崩壊について記事を書こうと取材を申し込んだ…
ところが、新院長候補者は4教授いるが、心臓至上主義の内科・徳富、内科嫌いの外科・大小路、眼科・百目鬼、改革派の整形外科・鴨下。お互いに他の科をとにかくけなしあう。このさまが何とも滑稽でした。シビアな空気の白い巨塔を少しユーモラスにした感じかな、最終章のタイトルは『面白い巨塔』でした(笑)
例えば循環器内科の教授は、医学科にはメジャーな科(内科、外科、小児科、産婦人科)とマイナーな科(眼科、耳鼻科、皮膚科)が -
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義父が膵臓癌で亡くなったばかりだったのであまり他人事とは思えず、読み進めました。義父はこの物語の主人公とは性格も選んだ治療法も全然違うのですが、何度もこんなふうに辛かったのかなと思うシーンがありました。
死の直前であっても医者には突き放されたくない、治療法がなくても一緒に考えて悩んでくれる人がいるということが死の淵において、いかに希望になるか。
治療の継続不可が事実だとしても、自分の伝え方でよかったのか、患者はどう思ったのか、もっといい言い方はなかったのか、正解のない答えをずっとずっと考えて続けている医師がいるということを知るだけでも診てもらう側が救われます。言葉の大切さもすごく考えさせら -
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先日読んだ久坂部羊さんの『老乱』がセンセーショナルでしたので、もう一冊認知症の父親のことを描き、話題になった久坂部さんの小説を読んでみた。
今回のお話は自宅(マンション)で認知症の父親を介護する夫婦の物語だ。『老乱』よりも、認知症患者を取り巻く周りの人の感情などに焦点を当てているような感じでした。
マンションにはいろいろな人がいて、隣近所の方も皆んなが認知症の老人に理解があるわけではなく、徘徊したり、大声を出したり、糞尿を撒き散らしたりされたら迷惑だから、早く老人ホームに入れろとまで言ってくる人もいる。この話ではマンションの理事会で認知症問題についての話し合いまでされる(結論は平行線となる -
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なかなかズシっと精神的に重い本でした。しかし読んだ価値はある貴重な小説。
妻を亡くし78歳で独り暮らしをしている幸造さんが主人公であり、ヒシヒシと押し寄せてくる認知症への恐怖と、彼を取り巻く家族の心理状態の描写が非常に細かくリアルでした。久坂部羊さんは医師でもあるので、よく分かった上で執筆しているのだろう。
幸造さんが単に老いを感じ始めてから、どんどん認知症が進行していく様が、彼の毎日書いている日記にあらわれはじめ、漢字が書けなくなったり、車をぶつけたり、孫の名前が思い出せなくなり…徘徊が始まり、免許や預金通帳を取り上げられ、家族がわからなくなり…病院に入院…その後、施設に入居する費用を捻 -
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マジか!すごいな!
見るだけで病気や助かるかどうかも分かる町医者
養護施設で働くシングルマザー
その母親をストーカーするクズ男
養護施設に入所した14歳の少女
同じ見るだけで病状が分かる大きな病院の医院長
その病院で働く無痛症の男
街中で次々と子供たちが通り魔に襲われる
とある家族の惨殺事件が起こる
刑法39条をテーマに想像もできないことがそれぞれに起こる
生々しい描写やこちらが顔を歪ませてしまうほどの言動が衝撃的すぎる
でもただリアルなわけじゃなく、登場人物たちの動きが読めずのめり込んでしまう
目の前で映像を見ているくらいあっという間だった
そしてラストの1行
なんとっ!!