久坂部羊のレビュー一覧
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長年高齢者医療に携わってきた医師が、さまざまな老いのパターンを見てきた中で、上手に老いる方法や失敗しないコツを伝えている。美貌も健康もいつかは失われ、その時になってからの未練は無駄で抵抗すれば余計に苦しむのでそれを理解して受け入れること、そしてその時がいつ来てもいいように悔いを残さないように生きることが大切だと説いている。また、現代は医療が発達しているので、悲惨な延命治療、苦しい長寿、過酷な介護の問題が深刻になっており、家族も同様の考え方が必要だと力説している。一方で、医師が死の直前の医療行為が本当に必要だと思っていないとか、クリニックの収益の観点から過剰な検査や処方があることも告白しており、かなりオープンな印象を受ける。
本書の中には、はっとするような言葉も多い。「人は不幸には敏感だが、幸福には鈍感」にも納得、日々の幸せに気づくことの大切さを再認識した。また、将来の事を心配して幸福になるためにあくせくしている人は、自分ではそうとは気づかず準備ばかりに追われて、味わうことを忘れているという言葉も身につまされる。 -
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物語の舞台は国立大学の最高峰、天都大病院。そこの病院長が謎の死を遂げたので、次期新院長選挙が行われることになった。主人公は女性ライター、医療崩壊について記事を書こうと取材を申し込んだ…
ところが、新院長候補者は4教授いるが、心臓至上主義の内科・徳富、内科嫌いの外科・大小路、眼科・百目鬼、改革派の整形外科・鴨下。お互いに他の科をとにかくけなしあう。このさまが何とも滑稽でした。シビアな空気の白い巨塔を少しユーモラスにした感じかな、最終章のタイトルは『面白い巨塔』でした(笑)
例えば循環器内科の教授は、医学科にはメジャーな科(内科、外科、小児科、産婦人科)とマイナーな科(眼科、耳鼻科、皮膚科)があると言い切り、その中でも循環器内科は1番エース格。扱う臓器が人間で1番大事な心臓であり、脳や肺、肝臓や腎臓よりも扱いが難しく、心臓部を治す我々が一番偉いと言う。(その理由も長々と書かれているのが可笑しい)
さらに他の科の教授もそれなりの理屈で1番は自分の科で、他の科の悪口が止まらない…
・整形外科なんて骨と皮だけをいじる単なる修理業社
・泌尿器科はシモの臓器を扱う汚い科
・消化器外科は糞をいじるクソッタレの科
・眼科はひとつの臓器だけを診る狭い範囲でコセコセ治療する守備範囲の狭い科(耳鼻科は耳と鼻があると自慢)
・内科や外科は死ぬ病気が多く、救急外来も大変、楽で安全で儲かるのが眼科
担当科の医師が聞いたら激怒しそうな内容ばかり。
もちろん誇張はあると思うが、現役医者の久坂部羊だからこそ、実態に近いのかなあ…と想像できる。(久坂部さんは外科らしい)
果たして誰が院長の座に着くのか…
いつもいく大病院の循環器内科の先生に聞いてみたい。
『やっぱり循環器内科が1番偉いんですかね?』と(笑)
自慢が始まったらどうしよう…
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義父が膵臓癌で亡くなったばかりだったのであまり他人事とは思えず、読み進めました。義父はこの物語の主人公とは性格も選んだ治療法も全然違うのですが、何度もこんなふうに辛かったのかなと思うシーンがありました。
死の直前であっても医者には突き放されたくない、治療法がなくても一緒に考えて悩んでくれる人がいるということが死の淵において、いかに希望になるか。
治療の継続不可が事実だとしても、自分の伝え方でよかったのか、患者はどう思ったのか、もっといい言い方はなかったのか、正解のない答えをずっとずっと考えて続けている医師がいるということを知るだけでも診てもらう側が救われます。言葉の大切さもすごく考えさせられました。 -
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先日読んだ久坂部羊さんの『老乱』がセンセーショナルでしたので、もう一冊認知症の父親のことを描き、話題になった久坂部さんの小説を読んでみた。
今回のお話は自宅(マンション)で認知症の父親を介護する夫婦の物語だ。『老乱』よりも、認知症患者を取り巻く周りの人の感情などに焦点を当てているような感じでした。
マンションにはいろいろな人がいて、隣近所の方も皆んなが認知症の老人に理解があるわけではなく、徘徊したり、大声を出したり、糞尿を撒き散らしたりされたら迷惑だから、早く老人ホームに入れろとまで言ってくる人もいる。この話ではマンションの理事会で認知症問題についての話し合いまでされる(結論は平行線となる)そのあたりのことが非常にリアルで、実際に問題として直面している人もいるだろうな…と想定する。
数学の教員をしていた父親は厳格できれい好きだったのに、今は自分のこともわからずに、オムツをして、あちこちを徘徊し、他人に迷惑をかける…それだけでも息子としては胸が痛む。でも現実を受け入れるしかない。人はいつかは最期を迎える。
我が身に照らし合わせ、なかなか考えさせられる内容が盛りだくさんで、綺麗事にならずラストシーンまで現実的な小説でした。 -
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なかなかズシっと精神的に重い本でした。しかし読んだ価値はある貴重な小説。
妻を亡くし78歳で独り暮らしをしている幸造さんが主人公であり、ヒシヒシと押し寄せてくる認知症への恐怖と、彼を取り巻く家族の心理状態の描写が非常に細かくリアルでした。久坂部羊さんは医師でもあるので、よく分かった上で執筆しているのだろう。
幸造さんが単に老いを感じ始めてから、どんどん認知症が進行していく様が、彼の毎日書いている日記にあらわれはじめ、漢字が書けなくなったり、車をぶつけたり、孫の名前が思い出せなくなり…徘徊が始まり、免許や預金通帳を取り上げられ、家族がわからなくなり…病院に入院…その後、施設に入居する費用を捻出するために、息子夫婦が妻との思い出がたくさん詰まった家を売りに出す…仕方のないことだが、儚いものだ。
これから老いを迎える人、そしてその家族…生きている以上避けられない定めがあるが、心の準備をしているかどうかでも多少は違うのだろうか。問題作ではあったが、読んでよかったと思える小説でした。
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マジか!すごいな!
見るだけで病気や助かるかどうかも分かる町医者
養護施設で働くシングルマザー
その母親をストーカーするクズ男
養護施設に入所した14歳の少女
同じ見るだけで病状が分かる大きな病院の医院長
その病院で働く無痛症の男
街中で次々と子供たちが通り魔に襲われる
とある家族の惨殺事件が起こる
刑法39条をテーマに想像もできないことがそれぞれに起こる
生々しい描写やこちらが顔を歪ませてしまうほどの言動が衝撃的すぎる
でもただリアルなわけじゃなく、登場人物たちの動きが読めずのめり込んでしまう
目の前で映像を見ているくらいあっという間だった
そしてラストの1行
なんとっ!!
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Posted by ブクログ
結婚して新築マンションを買ったけど、手続きの関係でなかなか入居できず、「今死ぬのは本当に嫌。望んでいるものが手に届きそうで届かない時に人生終わるのだけは勘弁!」と思ってた時に、この本を見つけた。
お医者さんとしてたくさんの人の死に関わってきた視点から、死とどう向き合うべきか書かれたエッセイ。
結論の死との向き合い方は、難しい方法ではあるが、本当にその通りだな、そうしてみよう、と思える内容だった!
自分が、何となく死を怖がっていて、何となく今を生きていて、感謝や足るを知る心が充分じゃなかったんだと感じた。
また死が怖くなった時、生きるのが嫌になった時に読みたい。