久坂部羊のレビュー一覧
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久坂部羊『虚栄 上』角川文庫。
さすがは現役医師の作家というだけのことはあり、専門的な医療に関する描写も非常に解り易く、生々しいリアリティを感じる面白い作品である。
最初は医療ミステリーなのだろうかと思いながら読んでいたのだが、途中から『がん』を主人公にした作品ではないかと思うようになった。登場人物が次々とがんに罹患していくのだ。最近、がんに罹患した知人や親戚の話を聞く。それだけに、身近な恐ろしさを感じる作品でもある。
凶悪がん治療の国家プロジェクトを巡り、覇権争いを続ける、がん治療に関わる医師たち。患者のことなど全く考えずに、自分たちの立場を守り、覇権を手にすることだけを考える医師たち -
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久坂部羊『芥川症』新潮文庫。芥川龍之介の作品に着想を得て描いた短編集。医療に対する諷刺の効いた短編7編を収録。久坂部羊がまたまた違う一面を見せてくれた。グロテスク、ブラック、ホラー、ユーモア、様々な要素を取り入れた面白い短編集だった。
『病院の中』。『藪の中』からの着想だろう。父親の死に疑念を抱きつつ、難解な医学用語でたらい回しにされる主人公。そして、最後に待ち受ける結末…
『他生門』。『羅生門』からの着想。多くの人びとの支援によりアメリカで心臓移植手術を受けた主人公の人生はもはや自らのものではなくなる。
『耳』。『鼻』からの着想。何ともグロテスクでブラックなストーリー。
『クモの意図 -
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あの『無痛』の続編。事実と創作とが見事に融合した医療ミステリー小説。
前作よりもスケール感があり、ストーリーも非常に面白い。勿論、続編ということで、前作同様、天才医師の為頼英介と先天性無痛症のイバラの二人が物語の中心人物となる。
エボラ出血熱、エイズ、変種型クロイツフェルト・ヤコブ病、SARSに次ぐ、日本を恐怖に落とし入れる『第五番』の奇病の発生…新型カポジ肉腫。そして、ベートーヴェンの『第五番』…この意味は…
物語の見所は、ウイーンの日本人会医療所で医師を務める為頼英介、刑務所から出所した先天性無痛症の青年イバラ、新型カポジ肉腫の治療にあたる菅井憲弘の三人を中心に展開し、次第に意外な形