人はどう老いるのか

人はどう老いるのか

957円 (税込)

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老いればさまざまな面で、肉体的および機能的な劣化が進みます。目が見えにくくなり、耳が遠くなり、もの忘れがひどくなり、人の名前が出てこなくなり、指示代名詞ばかり口にするようになり、動きがノロくなって、鈍くさくなり、力がなくなり、ヨタヨタするようになります。

イヤなことばかり書きましたが、これが老いるということ、すなわち長生きということです。
にもかかわらず、長生きを求める人が多いのはなぜなのか。それは生物としての人間の本能であり、長生きをすればいいこともいっぱいあるからでしょう。
世の中にはそれを肯定する言説や情報があふれています。曰く、「八十歳からの幸福論」「すばらしき九十歳」「人生百年!」「いつまでも元気で自分らしく」「介護いらず医者いらず」等々。
そのことに私は危惧を深めます。そんな絵空事で安心していてよいのかと。
思い浮かぶのが、パスカルの言葉です。

我々は絶壁が見えないようにするため、何か目を遮るものを前方に置いた後、

安心して絶壁のほうに走っているのである。
下手に老いて苦しんでいる人は、だいたい油断している人です。浮かれた情報に乗せられ、現実を見ずに明るく気楽で前向きな言葉を信じた人たちです。
上手に老いて穏やかにすごしている人は、ある種の達観を抱いています。決していつまでも元気を目指して頑張っている人ではありません。いつまでも元気にこだわると、いずれ敗北の憂き目を見るのは明らかです。
老いれば機能が劣化する分、あくせくすることが減ります。あくせくしても仕方がないし、それで得られることもたいしたものではないとわかりますから。そういう智恵が達観に通じるように思います。

多くの高齢者に接してきて、上手に楽に老いている人、下手に苦しく老いている人を見ていると、初体験の「老い」を失敗しない方法はあるような気がします。それをみなさんといっしょに見ていきたいと思います。

第一章 老いの不思議世界
第二章 手強い認知症高齢者たち
第三章 認知症にだけはなりたくない人へ
第四章 医療幻想は不幸のもと
第五章 新しいがんの対処法
第六章 「死」を先取りして考える
第七章 甘い誘惑の罠
第八章 これからどう老いればいいのか

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人はどう老いるのか のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    長年高齢者医療に携わってきた医師が、さまざまな老いのパターンを見てきた中で、上手に老いる方法や失敗しないコツを伝えている。美貌も健康もいつかは失われ、その時になってからの未練は無駄で抵抗すれば余計に苦しむのでそれを理解して受け入れること、そしてその時がいつ来てもいいように悔いを残さないように生きるこ

    0
    2025年07月29日

    Posted by ブクログ

    長生きは苦痛、認知症は不幸ではない。現役時代とのギャップや高望みが不満のもと…。努力しすぎず達観して足るを知る、現実を受け入れることが大事だ。カミさんや子供達をケアラーにしてはならないと改めて自戒。期待しすぎず頑張りすぎず、ちょっとだけ今を大切にしていこう。良本、他の著書も読んでみよう。

    0
    2024年12月21日

    Posted by ブクログ

    何で本書を知ったのか?
    覚えていないんですが、ようやく読めました。

    私が〝タブー〟だと思っていることをズバズバを書いていて、納得させられることが多い。
    父と義母が80歳を超え、色々と覚悟しなければならないタイミングで読めてよかった。

    0
    2024年11月13日

    Posted by ブクログ

    医師だからわかる綺麗事ではない、老いるとはどういう事なのかを、赤裸々に語っています。医療、医師への信仰とも似た過度な期待。
    まさに老いる事について、死について予習することができる一冊。

    0
    2024年10月23日

    Posted by ブクログ

    いろいろ考えさせられた。
    両親のこと。自分のこと。
    老いを受け入れるというのは、ホントに難しい。
    「足るを知る」というのも。

    0
    2025年08月01日

    Posted by ブクログ

    高齢者の介護に長く携わっていた筆者だからこその視点で書かれた死生観に関する一冊。
    認知症、がんに関しては医者ではない一般人からしたら「こんな風に考えたことなかった」と目から鱗ではないでしょうか。また、そのエピソードがリアルでサクサクと読み進められるのも特徴的です。
    医者だって金を稼がないといけないと

    0
    2025年05月11日

    Posted by ブクログ

    気がついたら両親が亡くなった年に近づいている。
    これから先どう生きたらいいものか?その思いに答えになるかなと
    思い読んだ。
    鏡をみれば白髪、シワの顔、歯はガタガタ、腰痛は良くならない、背中を丸めて歩くようになった。
    老いる自分の姿は悲しい。
    だけどジタバタしたところで仕方ない。
    老いを受け入れ今を楽

    0
    2025年04月28日

    Posted by ブクログ

    高齢者医療に長年携わってきた方だけに、高齢者の具体的事例が沢山書かれており、とても参考になる。健康診断やがん検診を受け、悪いところが見つかったとしても、高齢になったらあまり意味がない。ジタバタせずに、充実した最後を送るべきだと思った。無駄な治療をしたところで、満足のゆく結果は得られない。怪しげな治療

    0
    2025年04月06日

    Posted by ブクログ

    老いについて肩意地張らずに読めました。

    1年でも長く生きることが良いことなのか、を改めて考えさせられました。

    医療従事者である私としては兎に角合点が行く話ばかり。

    筆者は安楽死や胃ろう、人工透析などについていても語っていて本人の意思よりその周囲の意見が結果的に本人を社会を苦しめているとの意見に

    0
    2025年04月02日

    Posted by ブクログ

    老いも死も嫌なものだが、欲望や執着を捨て、老いや死を受け入れること。与えられた状況に感謝し足るを知る方が心安らかに過ごせる。
    武道というのは与えられた状況に最適化することを目指すこと。最適化とは相手の状況に合わせて最も自由度の高い状態を作ること。そうすることで次の行動の選択肢が最大化し、何が起きても

    0
    2025年02月14日

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