あらすじ
優しかった兄が、三人もの自殺志願者を殺めた――。世間から極悪人と糾弾される村瀬真也。連続凶悪事件を犯した兄が語り始める不可解な動機を解き明かそうと、妹の薫子は奔走するが、一線を越えてしまった真也の「知らなかった一面」に衝撃を受ける。自殺志願者を次々殺めた男の告白から見えてきた真実とは――。行きすぎた正義と、無関心な親切は、どちらが正しいのだろうか。誰もが目を逸らしたくなる問題に、著者自身も懸命に向き合い書き下ろした長編小説。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
生の欲動が当然という考えた方があまりにも常識的すぎて、死の欲動については衝撃的だった。
憶測でや推測では、人の気持ちを完全にわかることはできない。
思いやりとは、肯定するのでも否定するのでもなく、その人の気持ちをありのままに受け入れ、わかろうとする姿勢のことなんだと思う。
Posted by ブクログ
真也が紡ぐ言葉がよくわかると言えば、少数派ゆえに変わった人だと言われるのだろうか。
善意で正義を振りかざす妹のような人に接するたびに、必要以上に関わることを避けたくなる。
自分の考えていることはすべて正しく、他の意見はすべておかしいと切り捨てることは簡単だけれど、とても残酷だ。
Posted by ブクログ
帯にあるように、「これぞ久坂部羊の集大成」と言った言葉がぴったり。私自身、身近な人の自死を経験したことがあるが、自死を止めるのが人道的には正しいとされているけれど、果たしてそれはその人の気持ちに寄り添っているのか、それとも自分の理想や生きていてほしい、というエゴを突きつけているだけなのか、ということについて改めて考えさせられた。
Posted by ブクログ
薫子の家族全員闇を抱えていて結末も家族バラバラになってしまう。
母親の自殺から始まり、次兄の殺人、長男が精神を病み、父親は末期ガン。薫子も遺族に対して心情を重んじない行動をとるなど1人マトモだとおもっていたが家族に対して見ざる聞かざるという行動に出ていた事が判明。読んでいて自分は次兄の意見に同調していたが薫子の死んだら終わり、家族が悲しむ、の意見に同調する人もいる。どっちが正しいのか、今自殺する人が多いが生きろ、相談しろの声が多数を占めている。死にたいと願う人はどう感じているのだろうと色々考えさせられる内容だった。
Posted by ブクログ
評価が難しい。一気に読ませる、とても重い内容、考えなければならない、哲学的要素、安楽死とは、且つ終盤に急にミステリー要素を入れてきてフィクション感溢れされる…医師だから書ける内容なんだろう。
R. I. P.
Rest in pease タイトル通り。
次兄が3名の自殺願望者を殺し、裁判に。
妹が調べて手記にしている、という体で話が進む。
最後はあっけなく収束。
あっけなさ過ぎて星1つ減な感じはあるが、1冊読みながら、自分ならどうする?と答えは決まっているもののなんとなくうじうじ考えてしまう、かなり引きづってしまう作品力に星5つ
「それはもちろんいいでしょう。本人が望んでいるのだから」
「本当の思いやりについて、もう少し真剣に考えてみてください」
冒頭の2行が全てを体現しているかと。
理屈ではそうだが、まるで人間味が感じられない。まるでAIの判断じゃないか。 82
フロイトは死の欲動(タナトス)の存在を主張。
生の欲動(エロス)と両方ある。 202
それは二者択一ではなくてグラデーションなの。203
ほんとうに相手のことを思いやるのいうのは、自分の想いを殺すことなんですね。 212
自殺者の遺族は自分の悲しみと怒りばかり大きくて、亡くなった本人を更迭してあげる気持ちはもちえないのか。かわいそうに、辛かったんだねと、思いやってあげることはできないのか。 220
Posted by ブクログ
読み応えがあった。強烈だし、重い。腹にズドンと来る一冊というのは本書のような作品の事を言う。
自殺志願者たちを殺め続けた男の真相とは。
世間の声とは大抵がメディアが作り出した「作られた声」に過ぎない。誰もがそれに乗っかって発言しているのがほとんどだろう。
本作ではサイコパスへの認識がいかに遅れているか、メディアがいかに扇情的な事件を欲しているかも描かれている。
だがあくまで本書はミステリ。怒涛の如し展開で終盤は目を見張った。違和感は現実になり、架空の出来事がこちらを指差してくる。そしてこう言うのだ。
お前はまともか? 本当に? と。
Posted by ブクログ
2024年8
自殺したい人たちを殺してあげた兄、
それに理解できない妹の話。
ほんとうの思いやりはその人の感情に向き合ってあげること
病気で動けなくなることがわかっているひと
失恋から立ち直れない人
もともと死にたい人
生きてるのが辛いのに、死しか希望はないのにどうして死ぬなって言えるの?
競走馬には安楽死があるのに?
肉は食べるのに?
自殺をした人に可哀想、のひと言で済ませるほうがおかしいし普通ではない
その人の一部しか知らないのに全部を理解した気になって、自分からしか見えない側面で自分の考えを基準に説得しようとして、思いやりのないのはどっち?
人はもともと本能的に生きたい人と死にたい人に分かれてる
Posted by ブクログ
うむ〜最近ニュースでも話題となる自殺幇助に関する内容で多岐の事情は異なるが精神的に生きる事への執着が薄れるのも病と考えるので有れば、医師による安楽死(尊厳死)とも関係も少なからず有ると思う。。
ダイバシティ化が叫ばれる世の中に有り、虐め、SNSによる誹謗中傷も酷い世の中にあっては全否定出来ない難しい内容。
読むにつれて3人の自殺希望者を殺害した村瀬真也の言い分は一貫性も有り理解も出来るのは筆者の力なのだろう。
真也が3人(若い芸術家の男性、失恋に悩む女性、不治の病の男性)の自殺希望者とSNSで「希使天使」の名で知り合い希望に添い殺人と遺棄を行った裁判を通して話が進む。真也は兄一也、妹薫子の3人兄妹で母を自殺で無くした優しい性格を見て育った薫子が、裁判を通し真也を解ろうとするが殺人を犯すと言う一線が解らない。事件前から真也の主治医精神科医の白鳥に真也は「善良なサイコパス」である助言で少し救われるも理解出来ずに真也は死刑を求刑される。
然し。。。この殺人の裏には「邪悪なサイコパス」で仮面を被った白鳥が自殺希望者と真也を結び付け糸を引いていた、その事実が判明した時は薫子は行方不明に真也は死刑執行で白鳥は海外に高跳びした状況で終える。
この最後の裏のサスペンス的なストーリーは無くても確りとしたストーリーで成り立っておりちょっと残念な終え方だった。
Posted by ブクログ
久坂部さんの著書はどれも引き込まれる
「Rest in peace」
「善良なサイコパス」と「邪悪な健常者」
ある日突然殺人容疑者の妹になった薫子の思いも常識的なものだが、真也の発言も当事者の気持ちに寄り添ったものだったりしてわからなくなる
「生きることを無意識にいいことだと思い込んでいる」
死の欲動が強い人として女の太宰治といわれた久坂葉子という作家をあげている
真也は最後に自殺について
「漫然と憐れむことの無神経さ、思慮のなさにおまえは気づかないのか、そういう悪気のないふつうの感覚が、浅はかな自殺の否定につながっているんだ。」と薫子に言っている
ほんとうの思いやりとは…
薫子の最後は…
Posted by ブクログ
家族のことを思うことや、死を悲しむことまで
エゴだと言われてしまうと、何も言い返せない。
でも、エゴと言われても人間には感情というものがある。
でも、本人が本当に悩んだ結果としての自死を
本人を尊重してあげるのも分かる。
でもその本人のために自分の感情をないがしろにするのも
なんか違う気がするし。
あ~難しい。正解なんて無いよなー。
Posted by ブクログ
自殺志願者を殺めた真也の妹、薫子の視点で物語は語られる。家族の立場と当事者の立場の違いで、何が最善の選択なのか答えは出ない。生き方の多様性 は受け入れられるが、極論過剰な気がした。
Posted by ブクログ
小説としてはあまり好みではないが、ノンフィクション風味として読むと大変興味深い本だった
私自身、死は救済だと思っているところがあるので、始終薫子の意見には疑問を抱きつつ読み進めた
亡くなった方の気持ちに寄り添うとしたら、今世から解放されてよかったねと思うけど
亡くなった人が親しい人だった場合、諸手を挙げてよかったねとは思えない、それこそ薫子のように相談してくれたらよかったのにと思ってしまう気がする
希死念慮と長年同居している私でさえそう思うのだから、通常の死を恐れる人たちにとっては自殺した人に寄り添うことなんてとてもじゃないができないのではないかと思った
生きる自由があるのだから死ぬ自由もあればいいのに
身体の自由が効かなくなる恐怖と戦えというのは生き残る側のエゴだなと
いじめを苦にして亡くなる人に対して頑張って生きろというのは残酷以外の何物でもない
私は優しくないので真也氏のように自殺願望者の方を今世から解き放ってあげることはできないけど
考え方は真也氏に同調してしまった
死ぬなというだけなら簡単だもんね、そもそも死にたいという感情を解決することは難しいし
死にたいなら死なせてあげればいいと思う
早く安楽死制度が充実すればいいのになと改めて思った
薫子は何の問題を抱えていたんだろうか?サイコパスという言葉はあまり好きではないが(誰でもサイコパスの要素もっていると思うので)
客観的に立てないというのも要素の一つなのではと思ったりした
モヤモヤしながら終わってしまった…
Posted by ブクログ
読んだことを後悔すらした読後。専門職、しかも経験あるシニアのDrですら、こういうものなのだと正直思った。
帯カバーに「著者自身、懸命に向き合い・・」とあるのが逆に空々しい宣伝文句と思ったが。
100%ではなくとも嘘ではないと思うだけに、最後までついて回る不消化な、未消化な、もやもやの槍都市と作者のメッセージともいえる「登場人物の口をついて出る」論理的説明、そして結末。
メンタルがきつい時は読むべきじゃないだろうね。
まして身内や友人がターミナル期にある時も絶対薦めない。
しかし、誰しもが現実から目をそらすことなく、この本を読むことは薦めたい。
Posted by ブクログ
善人で相手の立場を考えて行動する、心優しい人。
独りよがりで思いこみが激しく、軽はずみな人。
1人の人の印象は、その人を見る人数の分だけ種類がある。
誰かにとっての心遣いは、その人にとっての迷惑以外の何物でもないこたもある…。
難しい。
Posted by ブクログ
医師作家による「人間の尊厳」を問い続ける内容であり、とても重く答えが出せなかった。
薫子の次兄が、自殺志願者を3人も殺害するという凶悪事件が起きたことから物語は始まる。
検察官のあざとい法廷戦略にも臆するとこなく、自分の意思を告げる次兄。
優しい次兄が、世間から極悪人と糾弾されるのが納得出来ず、以前通っていた心療内科医に相談したりと奔走する。
兄のことを善良なサイコパスだと言っていた心療内科医師こそが…。
すんなり納得できる結末ではなかったものの、テーマ事態が、自殺を容認できるか…につきると思ったので、自分にとっても重い課題を背負ったようだ。
昨今、特にコロナ禍になってからも感じるのだが自殺者が多くなっている。
有名人ですら、そうだ。
いじめ、病気、リストラ、借金、さまざまな要因で死を望むのだろう…。
生きることがいいと判断する根拠も無いが、
やはり完全に否定できるか…と問われると
自分が、難病になり苦しみ、周りに迷惑をかけるのなら、考えるかもしれない…と。
Posted by ブクログ
被告の言い分に同意していまいそうになる気持ちが読み進むにつれて大きくなる。
殺人犯に同意してはいけないとの思いの間で気持ちが揺れる。
死に惹かれる人や死にたいと強く思うほどつらい思いの人に、どのように寄り添っていけばよいのか、とても難しい。
それは希望の押し付けや自殺の全否定ではないのであろう。
本当の思いやりを真剣に考えたい。
Posted by ブクログ
一般的な幸せ論は人によりさまざまな形をとる
ことこそが一般的となりつつある世の中。
ここにある死生観もあるのだろう
生きていたいと思えない事実を抱えている人を
認めることと、死なない努力する人もまた
認めていたいがそれは気持ちの中だけのこと。
やるかやらないかは自分の意思でありたい。
Posted by ブクログ
3人の自殺幇助をしたとして逮捕された兄。
妹の薫子は未だついていけない状況の中、事件を知ろうと奔走する。
医師作家による自殺、自殺幇助といった重いテーマ。
人の命を救う医者は自殺志願者をどう思ってるんでしょうね…(お勉強だけができて人間性はカスみたいな医大生の事件もよくあるから、崇高な人間ばかりじゃないと思いますが。)
P226生と死の欲動が人間にはあって、人によって比率が違うって、すごくしっくりきた表現。
自殺完全否定派と、希死念慮に一部でも理解がある人との価値観は交わらない気がする。
失恋ぐらいで、時間が経てば立ち直れたのに、ってその時の故人が耐えられないから自殺を選んだ辛い状況だったことには思いを馳せない「自殺の全否定」が彼の動機だったんだろうなぁ。
自分の人生を賭けて自殺幇助するのに共感はできないけど。
Posted by ブクログ
優しかった兄が、三人もの自殺志願者を殺めた――。世間から極悪人と糾弾される村瀬真也。連続凶悪事件を犯した兄が語り始める不可解な動機を解き明かそうと、妹の薫子は奔走するが、一線を越えてしまった真也の「知らなかった一面」に衝撃を受ける。自殺志願者を次々殺めた男の告白から見えてきた真実とは――。行きすぎた正義と、無関心な親切は、どちらが正しいのだろうか。誰もが目を逸らしたくなる問題に、著者自身も懸命に向き合い書き下ろした長編小説。
☆3つにしてるけど 3.5にしたい!
村瀬真也の考え方に共感してしまう部分もあり 自分がちょっと怖くなる
本人の意思を尊重するのはとても大事だと思うけど 嘱託殺人って本人の意思がどれだけ本気なのかってどのようにしてはかる?わかる?のか難しいところだと思うし それを他人が決めれることなんだろうか?とも思ってしまう
海外では安楽死が認められている国もあるけど それを仕事としてやっている人達の心は大丈夫なんだろうか?
苦しんでいる人のためにしていることだと 割り切れるものなんだろうか?
依頼する人は 自分が依頼されたら出来ることなんだろうか?
だけど 本人にしたらとても苦しく苦しくてしょうがないことなのだろうな…とも思う
答えの出せない難しさがあって いろいろ考えさせられる内容なんだけど…ラストがなんだかちょっとアレ??って感じだったな
Posted by ブクログ
結局先生がサイコパスで真也を操ってた、でFA?
一也は妹に懐いてほしかったのにそうならなくて
拗ねてたってこと?
もやもやして安らかに眠れない・・
Posted by ブクログ
途轍もなく気が滅入る作品だった。
SNSで自殺志願者を募り、三人もの人を殺め、死体遺棄したのは優しかったはずの兄。
妹の手記形式で事件の全貌が明らかになっていく。
自殺幇助の是非、真の思い遣りとは。
根底に流れるテーマは重い。
私の心の中が誰にも分からない様に、死を考え苦しんでいる人の気持ちを理解する事は不可能だ。
自殺して欲しくないと思う時、それは私の感情であって、当人の本当の苦しみに寄り添えていない事を突きつけられる。
人間らしさが欠如しているのは一体誰なのか最後まで振り回された。
今夜は安らかになど眠れそうにない。
Posted by ブクログ
本当の思いやりとは……人に寄り添うということは……
優しい次兄が自殺志願者 3人を殺め、死刑宣告……
彼は自殺志願者を殺したことは、悪いことではなく、寧ろ人助けをしたと、淡々と述べる。
殺めることは、その人に寄り添い、理解した上で行っていることと。なかなか理解はできないが、自分に置き換えてみたとき、自分勝手な考えで動いている自分が身に詰まされる思い……
Posted by ブクログ
久坂部氏の一貫した人間の尊厳を問う作品群は、どれも一読に値するものだが、これも終盤までは家族やDVの問題、行き過ぎた正義と傍観する偽善等を絡めて、深く読ませる内容で感じ入ったが、この終わり方のモヤモヤは本作を台無しにしている。別に答えのある問題ではないので明確なハッピーエンドもバッドエンドも期待するものではないが、それにしてもこのミステリータッチの終わり方は無いだろう。で評価3。
Posted by ブクログ
もうひと展開あるのかなと思っていたら、終わってしまったよ。ミステリーなのか、生死感を突き詰めた深淵なテーマなのか、モヤモヤ感だけが残った。「ラベルを貼った瞬間から人はそういう目でしか見なくなる」
Posted by ブクログ
2021/12/26予約 5
R.I.P
Rest In Peace
安らかに眠れ
同じ年に産まれた兄二人を持つ、薫子は下の兄、村瀬真也が嘱託殺人で捕まり、とうてい本当の話とは信じられなかった。できることをするべき、とかつて診てくれていた心療内科のドクターにアドバイスされ、自力で動き始める。
母が病院に行くことを拒否する時、無理に治療を受けさせるのが親孝行ではない。本人が望むことをさせるのが、親孝行。世間一般で良しとされても、母が嫌がることはしたくなかった。
自殺を否定するわけではなく、自殺をすることの全否定を否定したかった。本当の思いやりとは?
生きるのが辛い人に行う殺人は、競走馬が骨折したときの安楽死と同じ。
死んでほしくないという家族の意見もあるが、それは、いざ自分が死ぬしかない苦しみに至ったとき、自分より家族が優先されるということ。
これが、村瀬真也の発言の一部だが、正直で、ある意味全うで、大方の人の本音ではないのかと、考えた。
本当の思いやりとは何なのか、深いテーマです。