久坂部羊のレビュー一覧
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脳外科医の白石ルネは、担当していた患者が意識不明で運ばれて来た後、悲惨な状態になるのが目に見えていたことから、家族に延命治療の中止を投げ掛けた。
家族の同意も得たが、最後の別れの場で思いもかけない状況が起こり混乱があった。
しかし、最終的には家族の理解は得られた。
ただ、それから3年後にルネを気に入らない麻酔科医がやってきて、その際の延命治療に安楽死だったと焚き付けた。
そこからの病院側や遺族、治療に関わった看護師の態度に、ルネは愕然とする。
それは人間不信になるにも十分なものだった。
そして終末医療の難しさを痛感する。
2025.8.15 -
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優れすぎた観察眼により外見から病気を診療できる医師、為頼と彼が町で偶然助けた親子のお話。
為頼は犯罪者特有の犯因症も見分けられたがため親子を無差別殺人から救うことになる。その能力を見込んで母親、菜美子は自身が務めるサナトリウムにいる少女のことを相談する。
時を同じくして医療界の拡大勢力となっている白神メディカルクリニックの白神院長も為頼と同じ能力を持ち、とある患者の治療にあたるが、二者の考えは全く異なっていてー
自分には割とグロ耐性がある方だと思っておりましたが、物語の後半、初めて文章をまともに読めなくなり何度も本を閉じながら、深呼吸をしてしまいました。でも読まずには先に進めない、でも想像 -
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ネタバレ私も医療関係者であり、患者を看取った経験と重なってこの本を読んでました。確かに日本の医療では尊厳死や安楽死は認められていない。だからといって治療を続けていくとルナ先生が言ったように、浮腫が出て外見、肌の色などが生前とは異なり、更には出血が伴い酷い状態へと変わって行きます。
ルナ先生はそのような酷い状態になる前にインフォームドコンセプトを家族にしてレスピレーターを外した。
人間はお金が絡むと欲望のために人が変わってしまう。患者サイドも病院サイドも利益のために責任を1人の医師に被せようとする。
読んでいてルナ先生を応援している自分がいました。 -
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ブラックなテイストに対しての人々の反応は、三つくらいに分けられると思う。
①ブラックユーモアが分かる人 ②面白さが分からない人 ③怒り出す人。
この本は①に該当する人にお勧めしたい。
かなり濃い。
そしてお医者様の書く医療物は本格的であり、ああ、こんな患者に悩まされているんだろうなー、そりゃ気晴らしも必要だ、と思う。
【寝たきりの殺意】
寝たきりの高齢男性・守山(もりやま)のモノローグで終始する。気難しくわがままな老人だ。
舅の介護が嫌でたまらない様子の嫁だが、なぜか嫁の方の肩を持ちたくなってしまう。
守山はついに嫁に殺意を抱き、さてどうやって殺してやろうかと想像するくだりが、ブラックユーモ -
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まず表紙の絵を見て、笑った。
白衣を着ている芥川龍之介。
タイトルが『芥川賞』、いや『芥川症』だ。どういう意味だろう…
短編集、そしてタイトルが全て芥川龍之介の作品をもじったもの。
病院の中(薮の中)
他生門(羅生門)
耳(鼻)
クモの意図(蜘蛛の糸)
極楽変(地獄変)
バナナ粥(芋粥)
或利口の一生(或る阿呆の一生)
中でも面白かったのが、『病院の中』だ。病院内で父の死因をめぐり、医師は専門用語を使いうやむやに、看護師は医師に聞いてないことをくちばしる…だんだんと父の死が不審になってくるという病院内の摩訶不思議なことを書いた話。
あと複雑な思いをしたのが『他生門』だ。心臓病を患った主 -
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「病」をめぐる6篇の短編集。
医師であり作家だからこそ鋭く描けているなぁと思う。
それぞれ違った角度で攻めてくる、ちょっとブラックな感じが楽しめる。
「つめの伸びた遺体」学生時代に自殺した親友と瓜二つの男が、新人医師として入ってくる…どっちがサイコパス!
「闇の論文」2年以上もの年月をかけての努力が、何の価値も残らない無駄なものになるという医療の世界の不都合な真実。
「悪いのはわたしか」新聞の人生相談が好評の精神科女医に脅迫状が届くが、女医には別人格が…。
「絵馬」信心よりも医学のみを信奉する内科医が、同僚の外科医が書いた絵馬を誤って割る。それ以来、気になって仕方がない。
「貢献の病