久坂部羊のレビュー一覧
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同じ自由が認められながら、なぜ今までは日本の医療はまがりなりにもやってこられたのか。それは端的に言えば、医師と時代そのものにモラルがあったからであろう。自由に任せていても、医学生は自分の能力に応じた科を選び、必要とされる場所で勤務し、節度をもって開業していた。医学部がそれほど多くなく、優秀なものが医師になり、世間から尊敬される分、それに見合う責務を果たしていた。
時代のモラルが低下したことも大きい。ルールさえ守れば何をしてもいいという風潮、少しでも自分が得をすることが要領のよい生き方とされ、若者はそのための情報収集に奔走している。
診療にすぐれた医師を優遇せよ
良い医療が優遇されれば、医師は水が低きに流れるごとく良い医療に向かう。しかし今、良い医療を行おうとすれば、医師の私生活が破壊されかねない状況になっている。 -
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途中までノンフィクションかと思って読んでたんだけど、途中からフィクションであるということを知ってからはとても長く感じた。だけどノンフィクションだと言われたら信じてしまうほどのリアリティ。ノンフィクションだと思って読んでた時の気味の悪さがすごい。
老人介護は介護するものだけが苦しむわけじゃなく、本人だって苦しい。老人介護を多角的に見た時に浮かび上がる問題があり、これはフィクションにするには惜しいと思ってしまった。介護のシーンが辛すぎて読み終わったあとに「安楽死 日本」で調べてしまった。いつか来る介護の問題、というか私だって関わらなければならないし、この問題は考え続けないといけない。自分ごととして考えるきっかけとなる。3人に1人が老人なんて…どうなっちゃうんだ… -
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後半は紀尾中にとっての障壁が次々と現れ、悩み苦しみつつも誠実に対処していく。
紀尾中のように誠実で、心から「患者ファースト」を信念としている医療関係者は果たして何人いるのだろう、と思った。あそこまで真っ直ぐに患者のためを思って行動できる人間ばかりであれば日本の医療はもっと良くなるのだろうな、とも感じた。しかし、そのような理想的な医療の実現は厳しいのだろうとも思った。紀尾中を含む数人を除き、多くの登場人物が会社の利益や自身の名誉のために動いているし、実際もそうなのではないだろうか。
私自身も医療に関係する立場ではあるが、紀尾中のようには立ち回れない。やはり自分の利益や生活が大事だし、患者のことは大切に思うが、自らが不利益を被ってまで尽くしたいとは思わない。むしろ、現実に紀尾中のような「完璧な人間」がいたら疎ましく思ってしまうかもしれない。そんな自分がすこし恥ずかしくも思った。
ドラマはWOWWOWのみの配信なので、早くネトフリやアマプラで見られるようになってほしいと期待している。 -
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死ぬだなんて縁起でもない、と目をそらす人間を椅子に縛って読み聞かせたい。
「人生100年時代」とかいうどこぞのマーケティング用語も、床にビターンと音がするくらい投げつけたい。
100歳以上の人口はいま約11万人
人口の0.09%
うち女性が87%
(特に男性諸君は100歳を甘く見ちゃいけない…)
介護ベッドのうえでまだ若い母の目から魂が抜けた、その記憶が浅いうちに読んだ。だからこの本に書かれてることが前衛的だとは思わなかった。当たり前に知っておけ、ということを、言葉選ばず書いてるところがある。
人生50過ぎたらボーナスステージ、と思っている。その方が有意義な時を過ごせる。
明日生きてるかもわからんのに30~40年後の老後の心配なんて老後の私がしろ。扶養家族がいたら別かもしれないけど。
なんにせよ死ぬんだから、生と向き合うことと同じように、死に向き合おう。
軽い気持ちで口にしてる突然死が理想的かどうか、ちゃんと考えてみよう。
考えられないなら、この本を読んでみよう!
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久々に一気に読み終わる、センシティブな話。他人事だからエンタメで読めるけど、自分がそうだったら?って移植を待つ側、移植に提供する側、そのコーディネーターだったら?言葉の尻を捉えての攻撃。失言するつもりはなくとも、言葉は同じ内容でも相手の捉えた先に変化が起きるものだから、怖い。
誰の思いも間違いではないけれど、生きること、死ぬこと、生きがい、夢、信念、簡単に折り合いのつくことじゃない。積み重ねで花開くつもりが途切れる絶望から自分をどう立て直すか、正論は理解すれど心に馴染むには時間がかかる。
いい意味でハッピーエンドになり、安心して本を閉じれた。 -
Posted by ブクログ
短編集ではあるものの、主な登場人物(医療者側)は一貫していてとても読みやすかった。
私は在宅医療の現場も、少ないながら実際に見た経験がある。あとがきで作者が「在宅医療で診た患者をモデルにした」と語っていたが、本当にどの話にもリアリティを感じて面白かった。
病院とは違って在宅は「生活の場」であるとよく言われる。実際その通りで、たくさんの患者が入院していて、ある程度の制限がある病院に対し、患者と家族の意思や価値感が大きく反映されるのが在宅医療である。本作でもその色は濃く映し出されていて、特に「アロエのチカラ」では顕著であるように感じた。そんなまさかと思いたいが、ああいった患者家族もいるだろうな、と感じた。病院ではないのだから当事者の気持ちを尊重するべきではあるが、かといってどこまで許容するかというのは難しい話だ。病気を治すため、楽にするため、安全に生活してもらうため。「正解」を知っている、あるいは自分の中の「正解」を信じている医療者は、どうしても患者と家族を思うように動かしたくなってしまう。しかし、それが果たして当事者のためになるのか、そもそもそれは「正解」なのか。同じ病気でも、きっと「正解」は患者によって違うだろうし、同じ患者でも時と場合によって変わってくるだろうし、元から「正解」なんてないかもしれない。在宅医療で「正解」を導き出すのは、病院でのそれよりも難しいのではないかと感じた。在宅での生活を支える医師や看護師へのリスペクトが強まる作品だった。