あらすじ
「もし、君が僕の葬式に来てくれるようなことになったら、そのときは祝福してくれ」自分の死を暗示するような謎の言葉を遺し、37歳の若さで死んだ医師・土岐佑介。代々信州を地盤とする医師家系に生まれた佑介は、生前に不思議なことを語っていた。医師である自分たち一族には「早死にの呪い」がかけられているという――。 簡単に死ねなくなる時代につきつけられる、私たちの物語。
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患者の死期治療に関してこうだと思っていた考えが、自分や身の回りの人間が死に直面することによって揺れ動くお医者さん側の心情がわかります。お医者さんは誰しもこういったジレンマにハマるものなのでしょうか。考えさせられる本であり、すっと読める本でした
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面白かった。面白いけど恐ろしかった。
確かに37歳で死ぬのは早すぎるし、114歳は長すぎる。
私達夫婦には子供もいないし、莫大な貯蓄があるわけでもない。となると、、80歳くらいでふわーっといけたらなぁなんて思ってしまう。
50年後くらいに、この本のような未来になってなきゃいいけど。
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端からみれば同じ短命でも、それぞれ背景や死に様が違って面白い。
後悔と納得の分水嶺はどれくらい自分で悩めたか、が直結するのかな、と思っているのですが、死に方なんて自分自身も周りの環境も変化していくなかで、どれくらい悩んだ結果だ、と胸を張ってそのときを迎えられるんでしょうね。
文中で幸福とは微分という人もいれば積分という人もいる、みたいなフレーズがありますが、もっといろいろ指標はあるんだろうな、と思います。
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超高齢化社会、人生100才まで普通に生きる近未来小説。
現役ドクターが描く専門用語も多いストーリーだけど毎作品考えさせられる。本当に
長生きは幸せなのか?簡単に死ねない時代ってなんか恐ろしいかも
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生きるとか死ぬとか医療とかってなんだろう。
平均寿命って今は85歳ぐらいですかね?
90歳以上の治療のための医療費は、全種類自由診療にしたらどうだろう。緩和の医療費は現行で。
長生きは裕福な老人の特権?別にそれでいいような。
子どもからの老後の医療費をあてにして、1人あたりの金額の負担を減らすために子だくさんとかになって少子化もマシになるかも。
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久しぶりの久坂部羊だ。『無痛』か『破裂』以来、それほど読んでなかったとすれば、10年以上のご無沙汰か。
土岐一族という早死にばかりの医者家系のそれぞれの物語、生き死に、葛藤、諦念というところをオムニバスで。全体では、医療の意味、というところを、ややぼかしつつ提示するような作品。
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祝葬 真令子 ミンナ死ヌノダ
希望の御旗 忌寿
早死にする一族。彼らは不幸なのか?それとも……
精神的にも肉体的にも健全ならば長生きも良いだろう。
けれど、目が耳が足腰がそして脳みそが
長年の使用にミシミシと悲鳴をあげていても、
長生きしたいか?
適当なところで ハイおしまい と言っても良いかもしれない。喜 が 忌 になる前に
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早死する医師一族、なぜなのか?というミステリー要素と、医師の人生観が大筋。6章ぐらいで、それぞれ主人公(視点)が違うのが意外にしっくりきて、続きが読みたくなる構成だった。最後は2060年の話だったりも意外。長生きがいいのかどうかという、絶対的答えがないテーマだから、最後はそりゃそうだよねって落としどころだけど、おすすめの医療小説
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医者の一族土岐氏についての短編集。
「希望の御旗」の冬司と信美夫婦のお話は可哀想でした。積極的医療を突き詰めるとこんな結末なのか…と。
長生きも積極的治療もしたいと思わないのでそれぞれのお話に納得共感出来て面白かった。絶対長生きしたいと思っている人はこの本を読んでどの様に感じるのかなぁとも思う。
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久坂部羊『祝葬』講談社文庫。
奇妙なストーリーと結末の医療小説。普通の小説家ならば、生きることの意味を伝えようとするのだろうが、久坂部久の場合は生きることの無意味、虚しさを小説の世界に凝縮したようだ。
代々医師を務める自分の家系が皆早死であることを常に話していた土岐佑介が37歳という若さで急死する。医学部の同級生だった手島は佑介の葬儀に出席すると、土岐一族の奇妙な因縁の一端が見えて来た……
『祝葬』『真令子』『ミンナ死ヌノダ』『希望の御旗』『忌寿』と5つの連作短編形式で明らかになる土岐一族の奇妙な因縁と生きることの虚しさ。最後は近未来の日本が舞台になるのは全くの予想外。
本体価格700円
★★★★
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代々医師の家系である土岐家は早死にの運命にある。
その家に生まれ、自らも医師である土岐佑介は親友の手島に早死にの呪い語り、その言葉通り37才の若さで急死した。
確かに土岐家の人たちは早くに亡くなっているが、それは本当に呪いなのか?
医療の進歩で人の寿命も長くなり、人の健康に対する考え方も変わる。
なかなか死ねない時代と土岐家の謎。
2025.7.26
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著者は阪大医学部卒の医師。
著者自身が疑問に思っているのであろう、行き過ぎた医療行為に一石を投じる趣旨の小説。
短命の医師の家系のそれぞれにスポットライトが当てられるオムニバス。
ある者は死に怯え続け、死を救いのように考え、同じような希死念慮に囚われた恋人に"救済として"安楽死させられる。
ある者は、自身が見てきた延命医療行為に対する疑問から、自身の病気には一切治療をせず病死する。
ある者は、自身が長年推し進めた、がんの検診、切除手術、あらゆる延命のための治療を自身のがんにも徹底的に適応し、壮絶な末路を辿る。
最終話は遠くない未来。医療は発達し、延命治療も同じく進化。無理矢理医療により生かされて"生きているだけの物"になった人々は簡単に死ねなくなってしまう。。。
別の方が書いた本で、がん検診は意味がない(進行性なら発見して治療しても結局死ぬ。進行性でないなら発見が遅れても命に関わらない。むしろ発見することにより無駄な治療(投薬や切除)で体を傷つけ、余命を縮める)と主張していた本を思い出した。
本書の中でも言及されていたが、医療だってその時代で正しいとされていても後年、誤った治療法だったとなることもある。専門家でもない私たちが正しい選択をすることなんか出来るわけがないし、こういう本を読めば読むほど正解(なんてないけど)が分からなくなる。
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うーん、医者にはなりたくないなあ、と思った。いや、なれないけど。
現在から過去に遡り物語がつながったと思ったら、近未来の話になったのはなかなか面白い。
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小説というよりお医者さんが思う本音
長生きがいいという時代が終わりどうやって死を迎えるか、考えなければいけない時代になる
わざと不健康な暮らしをして寿命を縮める時が来るかも…
がんを切って意識を戻さず亡くなると訴えられ、何もしないで亡くなると何故手術しなかったか、訴えられる
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代々若くして死を迎える医師の家系土岐一族。
祝葬・真令子・ミンナ死ヌノダ・希望の御旗・忌寿
の5つの短編集のように描いているが、4番目までは土岐一族の一人ずつが主人公で、死までの物語となっている。長編好きの自分には、気持ちよく入り込めないばらばらな世界だった。
希望の御旗は、この作者の『悪医』にもあるように、ガン治療(根治を目指す治療と、治療によって命を縮める矛盾)の難しさを改めて感じる。
最後の話、忌寿で、西暦2068年の世界にとんで、一つの大きな物語として納得できる気がした。
病の診療、死、寿命、長生き、それらを考えさせるこの作者らしい作品。
Posted by ブクログ
信州にある大病院経営の土岐一族は、代々医者の家系であるが、その大半が早死にしている。この一族の4代に渡る物語。正直最終章までは、もう投げ出そうかと思っておりましたが、最終章はだいぶ未来の話になり、超高齢化社会を映し出す。それまでの章はこの最終章への前振りにも思える。
一貫として「長生きすることは幸福なのか」というテーマで一冊の本を書き上げているところも素晴らしい。
Posted by ブクログ
いわゆるクオリティ・オブ・ライフがテーマでしょうか。同作者の「神の手」「廃用身」も似たようなテーマだったように記憶していますが、病気との向き合い方を他人に決められてしまうことの嫌悪感を「希望の御旗」にて同じように感じました。
対して「ミンナ死ヌノダ」の覚馬は、検査も治療もしないことを自ら選んで死んでいったわけですが、その様子はとても満足そうに映ります。
本書はこうした終末期医療に対する問題定義がメインかと思いますが、ラスト直前に出てきた誤診と医師の労働環境に関する問題についても作者は訴えたかったのかな、という気がしました。どちらの点についても、いろいろ考えさせられたり興味を持って調べたりするきっかけになったことは、良かったと思っています。