あらすじ
「もし、君が僕の葬式に来てくれるようなことになったら、そのときは祝福してくれ」自分の死を暗示するような謎の言葉を遺し、37歳の若さで死んだ医師・土岐佑介。代々信州を地盤とする医師家系に生まれた佑介は、生前に不思議なことを語っていた。医師である自分たち一族には「早死にの呪い」がかけられているという――。 簡単に死ねなくなる時代につきつけられる、私たちの物語。
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Posted by ブクログ
早死する医師一族、なぜなのか?というミステリー要素と、医師の人生観が大筋。6章ぐらいで、それぞれ主人公(視点)が違うのが意外にしっくりきて、続きが読みたくなる構成だった。最後は2060年の話だったりも意外。長生きがいいのかどうかという、絶対的答えがないテーマだから、最後はそりゃそうだよねって落としどころだけど、おすすめの医療小説
Posted by ブクログ
著者は阪大医学部卒の医師。
著者自身が疑問に思っているのであろう、行き過ぎた医療行為に一石を投じる趣旨の小説。
短命の医師の家系のそれぞれにスポットライトが当てられるオムニバス。
ある者は死に怯え続け、死を救いのように考え、同じような希死念慮に囚われた恋人に"救済として"安楽死させられる。
ある者は、自身が見てきた延命医療行為に対する疑問から、自身の病気には一切治療をせず病死する。
ある者は、自身が長年推し進めた、がんの検診、切除手術、あらゆる延命のための治療を自身のがんにも徹底的に適応し、壮絶な末路を辿る。
最終話は遠くない未来。医療は発達し、延命治療も同じく進化。無理矢理医療により生かされて"生きているだけの物"になった人々は簡単に死ねなくなってしまう。。。
別の方が書いた本で、がん検診は意味がない(進行性なら発見して治療しても結局死ぬ。進行性でないなら発見が遅れても命に関わらない。むしろ発見することにより無駄な治療(投薬や切除)で体を傷つけ、余命を縮める)と主張していた本を思い出した。
本書の中でも言及されていたが、医療だってその時代で正しいとされていても後年、誤った治療法だったとなることもある。専門家でもない私たちが正しい選択をすることなんか出来るわけがないし、こういう本を読めば読むほど正解(なんてないけど)が分からなくなる。
Posted by ブクログ
いわゆるクオリティ・オブ・ライフがテーマでしょうか。同作者の「神の手」「廃用身」も似たようなテーマだったように記憶していますが、病気との向き合い方を他人に決められてしまうことの嫌悪感を「希望の御旗」にて同じように感じました。
対して「ミンナ死ヌノダ」の覚馬は、検査も治療もしないことを自ら選んで死んでいったわけですが、その様子はとても満足そうに映ります。
本書はこうした終末期医療に対する問題定義がメインかと思いますが、ラスト直前に出てきた誤診と医師の労働環境に関する問題についても作者は訴えたかったのかな、という気がしました。どちらの点についても、いろいろ考えさせられたり興味を持って調べたりするきっかけになったことは、良かったと思っています。