久坂部羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
書名を見ると週刊誌的に大学病院の内部を告発する内容かと思うが、実質はその反対に近い。
大学病院が一般の病院と違うのは、教育・研究という部門が治療部門とは別についていて、そのため未熟な若い医師のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場になっていることだ。それは次の世代の医療を供給するのに必須なのだが、当然一定のリスクを伴う。
それで事故が起こるとマスコミは袋たたきにするが、常にベテランが治療に当たるのは物理的に不可能だし、実践を積まないでベテランにはなれない。
筆者ははっきりと、必要もないのにいつもベテランの最高度の医療を求めるのは患者のエゴであり、マスコミの無責任なあおりのつけは必ず将来の医療や -
Posted by ブクログ
日本の医療の現状とその問題点、その問題点の背後の歴史や事情。
それをよく知るマスコミの必要以上の煽動とただ自分たちの利益のための世論誘導。
そしてそのマスコミに煽られる市民。
その市民たちの反発を恐れ、必要以上の(悪ともいえる)制度を作ってしまう役所。
その制度に翻弄される病院と医師。そして押し寄せてくるプレッシャーと世論の反発に耐えられなく辞めていく医者。
そして医療問題がますます深刻になる。
病院、医師の視点、役所の視点、そして患者と一般市民の視点とそれぞれの本音をちゃんと書いている。
作者は医師で作家である。だからこそかけたこの一冊だと思う。
ただし、逆 -
Posted by ブクログ
元々 外科医だった三杉は、現在 認知症専門病棟の医師として働いている。
外科医を辞めたのは過去に色々とあったからなのだが、そんな三杉に外科医時代の元同僚で、今は小説家となっている坂崎が現れる。
坂崎は過去に小説が売れたことで、また何かしらのチャンスを狙っており、三杉に小説の協力を頼んでくる。
しかし、坂崎は三杉の過去をネタにしようと、あれこれ脅しのようなことを仕掛けてくる。
素直で純粋な三杉は困り果ててしまう。
認知症患者を抱える日々も、色々と苦労が多い。
本人への治療の理解が得られない、また家族との意志疎通や考え方の違いなどなど、問題は山積み。
本当にそんな中で日々働いている医師や看護師の方 -
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Posted by ブクログ
ネタバレガンや糖尿病を患い、かつ、意思決定能力や服薬管理能力などがない患者の治療に向き合う認知症専門病棟。
凄絶で混乱を極める現場で働く主人公の医師に降りかかる危機をミステリー仕立てで描く医療小説。
現役医師しか描けない専門的な世界と、ストーリー性に惹かれ、どんどん読み進めていけた。
主人公・三杉洋一は都内の病院の認知症患者専用病棟の医長。元は外科医だったが、辛い経験を経て、WHOの熱帯医療研究所でハマダラ蚊の防虫対策の従事に転身、家庭の事情で帰国後、新設された現在のポストに就いた。
治療を理解できない患者の医療行為や介護への抵抗、暴言、徘徊などが日常茶飯事の病棟で、三杉は、治療に関して様々な疑 -
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ネタバレ実写の予告で気になって、この本を手に取った。予告は不気味でホラーチックな雰囲気だったから、怖い場面がいつ来るかと警戒しながら読み進めてた。
だけど、予想に反して前半は恐ろしさを全く感じなかった。廃用身を切り落とすと聞いて、残虐な場面や患者の悲痛な声を想像していたから驚いた。
後半から語り手にが変わって漆原を客観的な視点でみるようになる。ここで物語の印象、すなわち漆原の印象が何度もひっくり返り始める。
私は頭の中で漆原が本当は善人か悪人か何度も考えていた。だけど、最後まで読むとそこに答えがないことに気が付く。人間は善人と悪人の二種類に単純に分類することはできない。
「漆原が嗜虐的な一面 -
Posted by ブクログ
ネタバレ老いにあらがわない。抵抗すると敵は増える一方。精神の健康を目指す。
何事にも、良い点と悪い点がある。
長生きも良い点ばかりではない。
老いのマイナス面を拒否するのではなく、受け入れる。
自ら奮起させても、いつかはできなくなる。
周囲に迷惑をかけたくない、も欲望。それも受け入れる。
脳卒中のリハビリは6ヶ月と決まっている。それ以上は効果がない。やるだけやったら、結果は受け入れる。
杖、おしめ、車椅子も受け入れる。
プライドは高齢者を苦しめる。
配偶者に先立たれる悩み。夫婦仲がいいと残されたほうは苦しむ。愛情が冷え切っていれば悩まない。
高齢になっても頭がしっかりしていると、体が動かなくて有り余る -
Posted by ブクログ
病院側の視点で書かれているが、
看取りにおいての儀式という名の芝居をおこなっているという点や、
看取りを経験すると箔がつくということで、看取り経験者たちの話を指をくわえるようにして聞いていた、など、
ちょっと不愉快になる表現があった。
また、看取りは在宅ですべきで病院の治療は無益とあるが、
それは急変をしていない患者の場合であって、
現に吐血などの慌てて救急車を呼ぶような患者を受け持っていない著者が、断言すべきではないのではないかと思った。
教科書というには少し偏ったものであり、経験をもとに語られすぎているかなと思ったが、
医療はやりすぎると恐ろしいことになる、ということなど全体を通して勉 -