久坂部羊のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
久坂部さんの今までの小説をすでに読んでいるなら、もうわかりきったことが書かれている。『破裂』や『廃身用』なんか特に、彼の考え方が如実に表れているんだと、改めて実感した。いくら長生きはできても、寿命は決して変わらない、という事実にはハッとさせられた。寿命を迎えてから医療にすがった長生きは、死んでいる身体を無理やり生かせているだけ。長生きすればするだけ、1つずつ何かを諦めていかなくてはならない。例えば歩行。そして飲食。そして意思の疎通。何を諦めてでもいいから生きたいかを、意識しておかなくてはならない。気づけば心臓が動いているだけ・・なんてなりかねない。一度病院に頼ったら最後。まず、自然な死を迎える
-
Posted by ブクログ
立場的に患者と医療者の中間…のような位置にいる私には、賛同する部分と複雑な気分にさせられる部分とがありましたが、筆者の主張は共感する部分が多いように感じました。
研修医の教育システム然り、マスコミの助長による過度な医療不信然り。
医師不足の危機を招いているのは、世間が異常なまでに正義を振りかざし、現実離れした理想論を追い求めた結果かもしれない。
普通の企業に就職しても、新入社員は失敗してそこから学んで成長していくものだと思います。ベテランだって、人間がやる仕事である以上ミスが0なんてことはあり得ない。
医療者だって同じです。命を預かる以上、「ミスしました、はいそうですか」では済まない事は事実 -
Posted by ブクログ
人がどう生きるかはそれぞれの人間だけが決められる、というのが近代社会の大原則なのだが、どう死
ぬかは死期が近づくと、実質的に自分では決められなくなる。
今の何がなんでも延命、アンチエイジングという「とにかく生きさせる」行政・医療・介護全体の方針
は、死が絶対に避けられないものである以上、本質的にムダな部分を含んでいるのに、生きたいという
それ自体は当然の欲望を煽り利潤化する資本主義にばかり貢献して、実質的にそれぞれの人の生を決め
る権利を奪っている。
スーパー老人、元気なお年寄り、あるいはその逆の極端な例ばかりメディアは取り上げるな。
「普通に死ぬ」ことは、今では健康年齢と肉体年齢に -
Posted by ブクログ
書名を見ると週刊誌的に大学病院の内部を告発する内容かと思うが、実質はその反対に近い。
大学病院が一般の病院と違うのは、教育・研究という部門が治療部門とは別についていて、そのため未熟な若い医師のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの場になっていることだ。それは次の世代の医療を供給するのに必須なのだが、当然一定のリスクを伴う。
それで事故が起こるとマスコミは袋たたきにするが、常にベテランが治療に当たるのは物理的に不可能だし、実践を積まないでベテランにはなれない。
筆者ははっきりと、必要もないのにいつもベテランの最高度の医療を求めるのは患者のエゴであり、マスコミの無責任なあおりのつけは必ず将来の医療や -
Posted by ブクログ
日本の医療の現状とその問題点、その問題点の背後の歴史や事情。
それをよく知るマスコミの必要以上の煽動とただ自分たちの利益のための世論誘導。
そしてそのマスコミに煽られる市民。
その市民たちの反発を恐れ、必要以上の(悪ともいえる)制度を作ってしまう役所。
その制度に翻弄される病院と医師。そして押し寄せてくるプレッシャーと世論の反発に耐えられなく辞めていく医者。
そして医療問題がますます深刻になる。
病院、医師の視点、役所の視点、そして患者と一般市民の視点とそれぞれの本音をちゃんと書いている。
作者は医師で作家である。だからこそかけたこの一冊だと思う。
ただし、逆 -
Posted by ブクログ
元々 外科医だった三杉は、現在 認知症専門病棟の医師として働いている。
外科医を辞めたのは過去に色々とあったからなのだが、そんな三杉に外科医時代の元同僚で、今は小説家となっている坂崎が現れる。
坂崎は過去に小説が売れたことで、また何かしらのチャンスを狙っており、三杉に小説の協力を頼んでくる。
しかし、坂崎は三杉の過去をネタにしようと、あれこれ脅しのようなことを仕掛けてくる。
素直で純粋な三杉は困り果ててしまう。
認知症患者を抱える日々も、色々と苦労が多い。
本人への治療の理解が得られない、また家族との意志疎通や考え方の違いなどなど、問題は山積み。
本当にそんな中で日々働いている医師や看護師の方 -
-
Posted by ブクログ
ネタバレガンや糖尿病を患い、かつ、意思決定能力や服薬管理能力などがない患者の治療に向き合う認知症専門病棟。
凄絶で混乱を極める現場で働く主人公の医師に降りかかる危機をミステリー仕立てで描く医療小説。
現役医師しか描けない専門的な世界と、ストーリー性に惹かれ、どんどん読み進めていけた。
主人公・三杉洋一は都内の病院の認知症患者専用病棟の医長。元は外科医だったが、辛い経験を経て、WHOの熱帯医療研究所でハマダラ蚊の防虫対策の従事に転身、家庭の事情で帰国後、新設された現在のポストに就いた。
治療を理解できない患者の医療行為や介護への抵抗、暴言、徘徊などが日常茶飯事の病棟で、三杉は、治療に関して様々な疑