久坂部羊のレビュー一覧
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ネタバレ【ネタバレあり】
無痛の続編。
謎の新型感染症とパンデミックの恐怖が描かれる。新型カポジ肉腫に感染した人がじわじわと肉腫に蝕まれていく様子には戦慄した。以来ほくろが大きくなってないか気になってしかたない。現在では滅多に命を落とすことはないような病気でも、その治療法が確立するまでにはたくさんの人の命が犠牲になってきたんだな、と改めて思った。医者の地位向上のためにWHOが自作自演のバイオテロみたいなことをしているというのは、本当にあったとしたら恐ろしすぎる話だ。
イバラは前作に引き続き、洗脳されて利用されて殺人の道具にされかかって…真面目に更生しようとしていたのに、どうしてそんな目に遭わなけ -
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「安楽死を執り行う医師は、”神の手”を預託された存在」とはいっても、人の命を奪う殺人行為に変わりはない。
安楽死をめぐって、その賛否両勢力がせめぎ合う。
医師ばかりでなく、読者にとっても安楽死の問題は、けっして他人事ではない。
医療技術の進化は、新しい命題を我々に突きつける。この小説をきっかけに、その是非について考えてみるのもいいだろう。
物語は、安楽死問題も絡む医療庁設置の画策や、それに纏わる殺人事件に自殺も相次ぎ、いよいよミステリーの様相を呈してくる。
そして明らかになる「センセイ」の正体・・・
医療情報小説にミステリー小説と、二倍楽しめるエンターテイメント。 -
Posted by ブクログ
常に患者を最優先することを心がけている主人公の医師。
そして、末期がんの患者に真摯な対処をしたにもかかわらず、その賛否をめぐり否応なく安楽死の論争に巻き込まれてゆく。
患者の母親を中心とした執拗に安楽死を認めない勢力に対し、安楽死法の成立を画策推進する勢力。
その後ろ盾となる政治家が、「センセイ」と呼ぶ人物は誰なのか。推進勢力には何やら不穏な思惑がありそうで、ミステリアスな展開が続く。
また、著者の作品の数々は、医療情報小説としても読むことができる。
例えば、「医師会がこだわり続ける出来高払い制度では、・・・出来の悪い医者ほどもうかる仕組み・・・」とか。
現役医師の著者ならではの著述が続き、楽 -
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下巻に至っても、外科、内科、放射線科、免疫療法科、それぞれの科の、しがらみと嫉妬と利己主義に凝り固まった医師たちが互いの足を引っ張り合う。
思惑が錯綜し、医師たちの醜さがこれでもかと、描き出される。
そんな中、唯一誠実な医師雪野の行動が、清涼剤となっている。
書中、著者はタイトルの言葉を使い、医師に語らせる。
「今は医学が進んでいるから、何でもわかるはずだと考えている人が多いようです。決してそんなことはない。実際はわからないことばかりです。何でもわかるように見せかけているのは、医者の虚栄ですよ」
一方で、一人の医師にこんな発言もさせる。
「日本の超高齢化社会のひずみと、進みすぎた医療の矛盾、寝 -
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現役医師ならではの、専門知識に満ちた医療小説。
次々と専門用語が飛び出し、治療法が語られ、読んでいるだけで、がんに関する知識が身につく!?
増殖遺伝子の制御。がん幹細胞。センチネル・リンパ節。電磁波がん凶悪説。真がん・偽がん説。・・・etc
小説は、国内でがんの凶悪化が問題視され、その対処のため時の総理大臣の肝いりで”プロジェクトG4が結成される。
手術でがんそのものを取り除く外科、抗がん剤等薬で治療する内科、がんに放射線を当て治療する放射線科、がんを攻撃する免疫細胞の攻撃力を高める免疫療法科。
この四科の医師たちがそれぞれの優位性を誇り、様々な手を使い、策を巡らす。
やがて、がんを研究する医 -
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ネタバレがん治療の国家プロジェクト発足の理由が衝撃的、かつ現実にありそうで恐怖すら覚えます。また、それをネタに事実を脚色して金稼ぎするマスコミと、そのマスコミを利用して権謀術数を企てる医療界の面々を見ていると、ホント何を信じたら良いか分からなくなります。
そんな中、象徴的だと思ったのは矢島塔子の存在。治療法を医者に丸投げせず、自分なりに治療法を調べ、その方針に基づいた治療を行なった結果の生還。
現在、医療に関しては様々な情報源がある時代。(利権を追い求めているかもしれない)医者に頼り切るのではなく、患者側も自分で自分が抱える病を知り、どのように向き合っていくかを自分で決めるべきではないか。
そん