父を亡くし、老人ホームに入居した母は軽度認知症で、記憶がなくなる感覚に怯えながらいつも私に「早く死にたい」と訴えます。正に死にたくても死ねない「長命地獄社会」というのが身近過ぎて、冒頭から引き込まれました。
元気で長生きしてほしいと思うけど、その時が来たら延命治療はせずに穏やかに死を迎えたいと、母の
...続きを読むみならず自分自身の時もそうしたいと心底思いました。
そして80歳でガンで逝った父の時のことを思い返して、とにかく良い病院を、良い治療をと促した自分を悔やみました。
何も不調はなかったのに検診でガンが見つかり、手術を繰り返したこと、本当に可哀想でした。
父の死にふれ、なにしろガンが怖くなり、
本の中の笑い話のように「ガンにさえならなければ死んでもいい」みたいな健康オタクになりつつありました。
でもガンになる最大のリスクは『加齢』でこれは予防しようがないし、ガンも無駄な治療さえしなければ痛みもなく穏やかに死ねると知れて、その恐怖心は半減し、抵抗感がなくなりました。
「がんにならない唯一の方法は、なる前に死ぬこと」この言葉最高です。
人はガンで死ぬか寿命で死ぬか、どちらにせよ死亡率100%なんだから、そこにばかり気を取られず、死ぬまでの時を謳歌しようという意識に変わりました。
毎年きっちり受けている人間ドッグもガンが見つかる前に辞めようかな。
そんなに長生きしたくもないし、もしガンで死ぬなら、最期まで知りたくない。「知らずにいる権利」を行使したいです。
とにかくこの本は、今まさに高齢医療の現場にいる医師の話なだけにリアリティがあって、とても参考になり、読んで良かった一冊です。