久坂部羊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
元々 外科医だった三杉は、現在 認知症専門病棟の医師として働いている。
外科医を辞めたのは過去に色々とあったからなのだが、そんな三杉に外科医時代の元同僚で、今は小説家となっている坂崎が現れる。
坂崎は過去に小説が売れたことで、また何かしらのチャンスを狙っており、三杉に小説の協力を頼んでくる。
しかし、坂崎は三杉の過去をネタにしようと、あれこれ脅しのようなことを仕掛けてくる。
素直で純粋な三杉は困り果ててしまう。
認知症患者を抱える日々も、色々と苦労が多い。
本人への治療の理解が得られない、また家族との意志疎通や考え方の違いなどなど、問題は山積み。
本当にそんな中で日々働いている医師や看護師の方々には頭が下がる思いである。
2026.3.11 -
Posted by ブクログ
ネタバレガンや糖尿病を患い、かつ、意思決定能力や服薬管理能力などがない患者の治療に向き合う認知症専門病棟。
凄絶で混乱を極める現場で働く主人公の医師に降りかかる危機をミステリー仕立てで描く医療小説。
現役医師しか描けない専門的な世界と、ストーリー性に惹かれ、どんどん読み進めていけた。
主人公・三杉洋一は都内の病院の認知症患者専用病棟の医長。元は外科医だったが、辛い経験を経て、WHOの熱帯医療研究所でハマダラ蚊の防虫対策の従事に転身、家庭の事情で帰国後、新設された現在のポストに就いた。
治療を理解できない患者の医療行為や介護への抵抗、暴言、徘徊などが日常茶飯事の病棟で、三杉は、治療に関して様々な疑問を感じる。
意味を理解しない相手に無理やり苦痛のある検査や治療をすることは、拷問や虐待ではないか、本人が十分な意思決定ができないとき、家族や医療者がどこまで決めることを許されるか。
家族が求めるからといって、本人が希望しない医療行為をすることに正当性はあるのかなど。
この小説では、これらの疑問を産み出す実例として、様々な患者やその家族を登場させ、三杉や看護師など医療スタッフが苦悩し、葛藤する様子を生々しく描く。
ミステリー風の展開は、三杉のもとに元同僚で鳴かず飛ばずの小説家・坂崎甲志郎が現れ、認知症をテーマにした長編を書きたいと取材を依頼するところから始まる。
三杉には、外科医をやめるきっかけとなった苦く、触れられたくない外科手術に関する過去があった。
坂崎は、写真週刊誌や出版社の記者を使って、三杉の過去や病棟内での看護師による患者への対処の問題点につけ込み、三杉に脅しをかける。
病棟内での生死をかけた患者への措置や家族の感情への対応に神経をすり減らしながら、坂崎の脅しに追い詰められ、三杉は、窮地に陥っていく。
だが、終盤、悩みを打ち明けられた妻の機転や問題だった過去の手術事例で亡くなった患者の遺族の穏やかな応対に三杉は救われる。
このあたりは、突飛で、慌ててまとめたような感が否めず、小説の出来栄えとすれば、残念ながらマイナスの印象を抱いてしまった。
しかし、ウジ虫に壊死した組織を食べさせるマゴットセラピーや繊細な外科手術で外科医が経験する緊張の場面の描写などは、さすがに著者ならではの醍醐味があった。
また、まやかしの高額な認知症治療を信じ込み、患者を退院させた家族が洗脳により、介護を受け入れることを一種のプラセボ効果と称した記述は、言い得て妙だと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実写の予告で気になって、この本を手に取った。予告は不気味でホラーチックな雰囲気だったから、怖い場面がいつ来るかと警戒しながら読み進めてた。
だけど、予想に反して前半は恐ろしさを全く感じなかった。廃用身を切り落とすと聞いて、残虐な場面や患者の悲痛な声を想像していたから驚いた。
後半から語り手にが変わって漆原を客観的な視点でみるようになる。ここで物語の印象、すなわち漆原の印象が何度もひっくり返り始める。
私は頭の中で漆原が本当は善人か悪人か何度も考えていた。だけど、最後まで読むとそこに答えがないことに気が付く。人間は善人と悪人の二種類に単純に分類できるものではない。
「漆原が嗜虐的な一面を持ち合わせていたとしても、Aケアが悪ということにはならない。施術と人間性は別問題」というような語りが、この本の1番本質をついていると思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ老いにあらがわない。抵抗すると敵は増える一方。精神の健康を目指す。
何事にも、良い点と悪い点がある。
長生きも良い点ばかりではない。
老いのマイナス面を拒否するのではなく、受け入れる。
自ら奮起させても、いつかはできなくなる。
周囲に迷惑をかけたくない、も欲望。それも受け入れる。
脳卒中のリハビリは6ヶ月と決まっている。それ以上は効果がない。やるだけやったら、結果は受け入れる。
杖、おしめ、車椅子も受け入れる。
プライドは高齢者を苦しめる。
配偶者に先立たれる悩み。夫婦仲がいいと残されたほうは苦しむ。愛情が冷え切っていれば悩まない。
高齢になっても頭がしっかりしていると、体が動かなくて有り余る時間を悩みに使う可能性がある。
何事もいい面と悪い面がある。
長生きしすぎる悩み。高齢になると生きていてもいいことがなにもない、ことになりかねない。
自殺者は60歳以上が37%を占める。健康問題、家族問題が多い。生きていてほしいと思うことは家族のエゴかもしれない。
独身で友達がいないと、一人で生きる術が身について高齢の孤独に耐えられる。何事にもいい面悪い面がある。
何かを選ぶというのは別の何かを捨てること。ハンバーグエビフライセット、ラーメンチャーハン定食、など。何かを捨てるトレーニングが必要。
アルコール依存は、48時間飲まずにいられるか、を試す。
考えても詮ないことは考えない。残っている時間を大切にする。
幸福には、相応の代償が必要。結婚の幸福を味わうには代償が必要。期待しなければ楽になる。バランス感覚が大事。少欲知足。
自分探しは必要ない。今の自分を認める。新しい自分ではなく今の自分を大切にする。
悩みが起きないようにするのは不可能。悩まない心を手に入れる=期待値を下げる、悪い予測を立てておく。最悪を想定しておく。お店が休みであることも想定しておく。行列1時間を予想しておく。すぐに返事はこないと想定する。病院も治らないかも、と想定する。
普段からクセを付けると、当たり前を喜べる。
渋滞してもいい面を見る。子供が自殺未遂をしたあとは、生きているだけでいい、と考えるようになる。
幸せかそうでないか、は比較の問題。悩むのは比較するから。比較しないで自分のことだけを考える。当たり前の基準を下げる。
思うがままにならないことを、思うがままにしようとして人は苦しむ。 -
Posted by ブクログ
病院側の視点で書かれているが、
看取りにおいての儀式という名の芝居をおこなっているという点や、
看取りを経験すると箔がつくということで、看取り経験者たちの話を指をくわえるようにして聞いていた、など、
ちょっと不愉快になる表現があった。
また、看取りは在宅ですべきで病院の治療は無益とあるが、
それは急変をしていない患者の場合であって、
現に吐血などの慌てて救急車を呼ぶような患者を受け持っていない著者が、断言すべきではないのではないかと思った。
教科書というには少し偏ったものであり、経験をもとに語られすぎているかなと思ったが、
医療はやりすぎると恐ろしいことになる、ということなどは勉強になった。